09 リーチ姫&クッパ
リーチ・拓斗・メロリナの三人で王都へ向かっています。
引き続き、拓斗視点です。
「や、んぅ……。拓斗……早く、ついて。我慢、できない」
「もう少し耐えてくれ」
はぁ、はぁ、と息を荒らげ、熱を帯びた声で利一が懇願してくる。
可能な限り要望に応えるべく、俺はスピードを上げた。
「ふあっ。そんな急に、ガシガシ……揺らさ、ないで」
「無茶言うな。ここまで来て止まれねェよ」
かく言う俺も、二時間以上ぶっ通しなので腰が痛くなってきた。
「拓斗……オレ、もう……限界ッ!」
「ちょ、待て! 待て待て! 中はダメだ! 外に!」
エロエロエロエロ……。
馬車酔いの限界にきた利一が、とうとう吐いた。
馬車の外に顔を出したおかげで大惨事は免れたが、ゲロの花道ができてしまっただろう。この雨が洗い流してくれることを期待する。
【ホールライン】→【ラバントレル】
天気の良い日なら早馬で一時間ほどの道のりだが、雨風が強く、しかも馬車での移動となると、片道でその三倍はかかる。
土を固めただけの道なので、ある程度の揺れは我慢してもらうしかない。逆に、アスファルトみたいな舗装路だと、馬が足を滑らせてしまう危険がある。
「やれやれ、サキュバスのくせに情けないのう」
首だけで後ろを振り返ると、メロリナさんが利一の醜態に呆れていた。
利一が口を開ける状態じゃないので、代わりに俺が質問してやる。
「サキュバスと乗り物酔いに、何か関係あるんスか?」
「もちろんじゃ。サキュバスと言えば、乗られることもあるが、基本は男に乗ってナンボの種族。男とアレする時に比べれば、この程度の揺れ、屁でもないわい」
「だからって、利一にそれを求めるのは酷でしょうよ」
「まーの。馬も男も慣れじゃな」
「つーか、アレって、そんなに揺れるもンなんスか?」
「なんじゃ、わちきにセクハラかえ?」
「ただの興味本位っス」
メロリナさんにセクハラとか無理じゃね?
あらゆる下ネタを受け入れて、倍返しされそうだ。
「場合によるの。一度に六人相手した時なんぞ、そりゃもう凄かったぞい。上から下から前後左右からギッコンバッコン。自分が寝ておるのか、逆立ちしておるのかすらわからんくなりんす」
六人って、え? どうやンの?
1、2、3……手は二本だから……え……足とか?
「尻尾も使えば、同時に八人までなら可能じゃ」
「八人!?」
「乳技を使えるりぃちがその気になれば、九人――いや、十人イケるかもの」
……想像もつかねェ。
利一が文句を言いたそうにしているが、途中で諦めたのか、俯いてしまった。
「しかしの、世の中には一人でこれに勝るとも劣らぬ凄い奴がおる。巨人族という種族でな。規格外に馬鹿でかいち●こを標準搭載しておる上、興奮すると、なんと地震を起こしよる。パないぞい。体どころか大地を揺らしおるのじゃ。天変地異の中でヤるアレも、なかなか乙ではあるがの」
「いやー……もうワケわかんねェです」
「お前さんも、童貞を捨てたくなったらいつでも言いんさいや」
「ありがたい話っスけど、俺、巨乳派なんで」
「カカ、言いおるわ」
誓って俺はロリコンじゃないが、彼女に一切性的魅力を感じないわけじゃない。
だって、子供にしか見えないけど、とても子供だとは思えねェもの。
だからこそ、下手に世話になるわけにはいかない。道を踏み外したくねェから。
「それよか、利一を介抱してやってくださいよ」
馬車を止めるのが一番だけど、この雨ざらしの道中では馬の消耗が激しい。
帰る時に雨が収まってりゃイイけど、最悪の場合、一泊は覚悟しねェとだな。
「こういう時は、男に跨らせるのが一番なんじゃが、たくと坊は手が離せんしの」
仕方ないと言って、メロリナさんが利一の背中を壁にぴったりつけさせた。
お、それ聞いたことあるぞ。
できるだけ接地面積を増やして身体を安定させ、乗り物の動きに合わせることで酔いを軽減するってやつだな。メロリナさん、適切な処置だぜ。
と、感心したのも一瞬。
そこからメロリナさんが利一の両膝を掴み、豪快にガバッとM字に開いた。
さらに、利一の右手の人差し指と中指を立てさせ、股に添えた。
意味不明だが、メロリナさん本人は、これでよし、と満足気に頷いている。
「……何やらせてンですか?」
「酔い止めじゃが?」
真顔で答えられた。
抵抗する気力が湧かないのか、利一はされるがままだ。
そんなンで、マシになるわけが。
「どうじゃ?」
「……………………ちょっと……楽かも……です」
マジかよ。
「この〝くぱぁ〟のポーズは、誰に教わるでもなく、馬が産まれ落ちてすぐに立ち上がるように、サキュバスが生を受けた時、最初に取る行動じゃと言われておる。すなわちサキュバスにとって、もっとも自然体になれるポーズなのじゃ。りぃちは今、完全に馬車の揺れと一体化しておる」
言われてみれば、この揺れの中でも利一の体軸はまったくブレていない。まるで泰然自若とした弥勒菩薩像のように安定している。
「拓斗……こっち……見ないで……。恥ずい……」
「わ、悪ィ!」
食い入るように凝視していた俺は、慌てて前を向いた。
「ふむ。ようよう考えてみれば、相手もおらんのに、一人でくぱぁしておったら、確かにマヌケなポーズでありんすな。どれ、わちきも付き合うてやろ。たくと坊も一緒にくぱらんかや?」
「俺が何をくぱるんスか?」
「尻があるじゃろ。いざという時のために、少しずつ広げておきなんし」
どこぞの腐女子が食いつきそうなネタを振らンでください。
聞こえなかったことにして、俺は手綱に集中した。
お?
王都の外壁が見えてきた。
そんなに日が経ってるわけでもねェのに、すげェ久々な気がするな。
せっかくだし、アーガス騎士長やドッティにも挨拶しときたいところだけど。
まあ、それは時間の都合がついたらで。
まずは、お務めをしっかり果たさねェとな。
ちょうど三時間ってとこか。座りっぱなしで腰が痛くなっちまったが、ようやく俺たちは(うち二人がくぱぁしながら)王都に到着した。
え!?
この作品のサキュバスって、尻尾あったっけ!?
と思われた方もいらっしゃると思います。
すみません、文庫本の改稿過程で生やすことにしました。
詳しくは2巻を読んでやってください!(※10月現在、まだ発売しておりません)
もう少しだけ先まで書いてあるんですが、なかなか区切りのいいところまでいけなかったので、短いですが、一旦ここで切らせていただきました。
次の更新はできる限り早くしたいと思います。
今月からコミカライズがスタートします!
ご存じかもしれませんが、コミカライズも雪月佳さんが描いてくださっています。
また追って宣伝させてください(≧▽≦)ゝ
http://webaction.jp/Mcomics/