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07 勝利への執着

長らく更新をあけてしまい、申し訳ありません!!

時間の合間を縫って、どうにか1話分書きました。

前回までの内容を思い出していただくために、少しおさらいを……(泣)



リーチの王都訪問の護衛を選抜する腕相撲勝負の最中です。

ミノコvsロドリコ……引き分けで勝者なし

魔王ザインvsメロリナ……メロリナ勝利

拓斗vsフレア ←今ココ


拓斗は脱げば脱ぐほど強くなりますが、

フレアもまた、拓斗が脱げば脱ぐほど強くなります。

さらに、時間の経過と共に勃起強化の効果も薄れていくため、

拓斗、絶体絶命のピンチ!

というのが前回までのあらすじです。


「んふ♪」

「ぐ、ぐぎぎッ!!」

『フレア選手! タクト選手! 動かない! 両者拮抗状態に入ったか!?』


 全く入ってねェ。

 こんなの、フレアの遊びで生かされているようなもんだ。

 平時の筋力差は言うに及ばず。

 しかも、今の俺はレベル25、フレアはレベル26。レベルでも上回られた。

 本来フリーであるはずの左手は、ズボンからナマステしていたお亀さんを隠しているが、勃起強化の弱体と共に、その意味を失いつつある。


「こんなに近くでタクトさんの必死な顔を見られるなんて夢みたい。次はベッドの上で見たいナ、なんて。キャッ、言っちゃった。今日のフレアってば大胆」


 うおおおい! その台詞でレベルが24に下がっちまったじゃねェか!

 こちらが脱いだ分だけ相手も強化する以上、脱衣強化を試みるのはナンセンス。

 ただの脱ぎ損だ。

 この状況を覆すには、勃起強化をかけ直すしか手はない。フル勃起でもフレアに勝てる保証はないが、やらなきゃ確実に負けることだけは確かだ。


「カリィ、そんな遠くで観戦してねェで、ほら! もっと近くに来いよ!」

「黙れ。貴様の目的など、お見通しだ」


 取り付く島もねェ。さすがに学んでいやがる。

 負けるのか。

 利一の前で。


「タクトさん、勝負に負けること自体は恥じゃないワ」

「それは状況次第だろ」


 負けるところを絶対に見せたくねェ奴が、そこにいるンだよ。


「ちなみに、アタシの考える恥は、負けた相手のプロポーズを、『今の俺に、お前はもったいねェ』とか『俺では、お前に釣り合わねェ』とか理由をつけて逃げようとすることヨ。そんなの、アタシがいくらでも鍛えてあげるのにネ」

「まるで、俺の言いそうな台詞を先回りして封殺しにかかってるみてェだな」

「タクトさん、アタシ……この戦いが終わったら」

「おっと、やめときな。それは死亡フラグだぜ」

「もう、つれないんだから」


 お前が言うと、なんかマジっぽいンだよ。重いからやめて。


「……にしても……強ェ」

「うふ、どーも。騎士団に所属している以上、日々の鍛錬は欠かしていないワ」

「俺だって、こっちの世界に来てからの一ヶ月、毎日鍛えてンだけどな」

「カリィちゃんに剣の基礎も習ってるみたいだしネ」


 それでも、たかが一ヶ月だ。

 地力でフレアの域に辿り着こうとすれば、それこそ気の遠くなるような時間と、血の滲むような修練が必要だ。付け焼き刃のトレーニングで勝とうと思うことが、そもそも失礼にあたる。

 だからこそ、割り切る。

 割り切って、ちんこを勃てることに俺は専念する。

 半勃ちで勝てる相手じゃねェのはわかっているが、俺に残された手段は、もはや自分で刺激を与えるくらいしかない。

 いくら勝つためとはいえ……こんな衆目の中で。

 これだけの人数だ。こっそりやっても、何人かは気づいてしまうだろう。

 だったらせめて、利一にだけは見られないように。


「本当言うとネ。アタシ、騎士じゃなくて、教会のシスターになりたかったの」


 お亀さんを覆うだけだった左手の親指と中指で輪を作りかけたところで、不意にフレアが内心を吐露した。それはフレアにしてみれば、勝負の最中に挟む何気ない呟きの一つのつもりだったンだろう。

 しかし、こっちは大ダメージだ。

 うっかりゴツい修道女を想像してしまい、完全に勃起強化が解けてしまった。

 レベルが24→20にダウン。


「あら、急に力が弱まったワ」


 脳裏には、マッスルポージングを取るガチムチな修道女が浮かんでおり、エロい想像やセルフマッサージ程度では回復できない状態異常(デバフ)を食らってしまった。

 ……ヤベェ、詰んだ。


「ここまでかしら。じゃ、そろそろ倒させてもらうワ。後で優しく慰めてあげる。んふ、ベッドの上でネ」


 ――と、そこで突然の気づき。

 死よりも恐ろしい危機に直面したことで、天界人としての思考速度が加速。

 無意味だと諦めていた脱衣強化を有効にする手立てを思いつく。

 これが叶うなら、まだ逆転の目はある。


 問題は、左手しか使えないこと。

 ズボンを破り捨てるにしても、レベルが下がった今では容易じゃないこと。

 そして、全裸になったところで、俺のレベルは26止まりだってこと。

 これらをクリアする方法は――


「フレア、決着をつける前に、お前をシスター(仮)と見込んで頼みがある」


 テーブルの面すれすれまで追いやられていた手が、ピタッ、と止まる。

 明らかに、シスターという単語に反応した。


「勝ちを譲れというのなら、聞けない相談よ?」

「そうじゃない。懺悔したいことがあるんだ」

「懺悔? え、アタシに?」

「一度はシスターを志したというのなら、フレア以上の適任者はいない」


 ごっことはいえ、フレアは俺と手を組み合わせたまま嬉しそうに姿勢を正した。


「そ、そういうことなら仕方ないわネ。迷える子羊よ。汝の罪を懺悔なさい」


 わずかな罪悪感の中、俺はそれを告白する。


「今朝、洗濯物から利一のパンツを一枚盗みました」

「あらま。お姫ちゃんのパンツを?」


 ざわざわ。

 ざわざわ。

 瞬く間に、店内がざわめきで満ちた。


「拓斗がオレの? え、なんのために?」


 アホな子が不思議そうに首を傾げている。

 俺が自分のパンツを盗む理由がわからないって顔だ。

 男が女のパンツを盗む目的なんて、そんなの決まっているだろうに。

 どれだけ信用されてるンだか……。


 いや、信用とは違うな。

 異性と認識されていないだけだ。

 盗んだのがエリムだったら、正しい反応を見せるだろう。

 それが悔しくてたまらない。

 あ、一応断っておくけど、盗んだってのは嘘だから。作戦だから。


「懺悔を続けましょう。盗んだパンツはどこに?」

「俺が今穿いているズボンのポケットの中です」


 もちろんこれも嘘だ。


「それは洗濯する前の物ですか? 後の物ですか?」

「前の物です」


 ざわざわ。

 ざわざわ。

 ざわめきが倍に膨れ上がった。


「盗んだことを悔いているのですか?」

「激しく後悔しています。盗みはしましたが、神に誓ってやましいことには使っていません。ああ、なんて罪深いことをしてしまったンだ。すぐにお返ししたいが、俺は今、見てのとおり手が塞がっています」


 ここでぐるりとギャラリーに視線を一巡させる。


「代わりに誰か一人、俺のポケットから取り出して、返してやってくれませんか? ――昨日一日穿き通しだった、利一の使用済みパンツを」


 その一言がスタートの合図だった。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

「「「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

「「「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」


 比喩ではなく、店が揺れた。

 群がる。群がる。群がる。飢えた男たちが俺に飛びついて来る。


「リーチちゃんのおぱんちゅ!」「俺のだ!」「切れ端だけでも!」


 口々に欲望を撒き散らし、あるはずのない宝を求めて俺のズボンに手をかける。

 体ごと持っていかれないよう、俺はお亀さんを離し、テーブルにしがみついた。


 ビリッ。


 一度でも切れ目がついてしまえば、もう元の形状を保つことは不可能。

 俺のズボンは男たちによって、加速度的に蹂躙されていった。

 それはさながら、自らを食わせた雌型の巨●を思わせる。


 男たちは戸惑い始めた。

 ないぞ。どこにもないぞ。

 そう口走りながらも手は止まらない。

 そしてついに、凶行は俺のパンツにまで及ぶ。


「お前ら! どこ触っていやがる! そんなところにはないって! ちょ、誰だ、敏感な部分を握りやがった奴は! 一旦中止! これ以上はまずい! やめろォ! 俺の下半身をいじめるなあああああああ!!」


 これら全てが虚言。握られてもいないし、いじめられてもいない。

 まあ、たまに誰かの手が当たりはするけど。

 たまにっていうのは、アレね。まれにっていう意味ね。


「何!? ナニがどうなっているの!? 見えないワ!」


 群がる男たちに埋もれた俺の姿をフレアは捉えることができない。

 よってパワーアップはない。

 最終防壁であるパンツをもむしり取られ、俺は局部裸身拳の本領を発揮する。

 だがしかし、真の狙いはここからだ。



「……ど、どういう状況なんだ?」



 野郎共で積み上げられたドームの中で、俺はその声を聞いた。

 来ている。

 すぐ近くまで。

 俺は男ドームを突き破るようにして、左腕を声のした方向へと伸ばす。


「そこだあああッ!!」

「ワキャアアアッ!?」


 正しくは、声から約1メートル下を、巻き込むようにして鷲掴みで捕えた。

 引き寄せるために指を鉤爪状に立てたことで、ぷすっと肉の渓谷に刺さったようだが不可抗力ということにして、スリットを上下になぞるが如くわしゃ揉みする。


「き、きき、貴様! この揉み方は、かつてない遠慮のなさだぞ!」

「その声はカリィか!? どうしてそんな所に!?」

「そこだッ! などと叫んでおきながら、しらじらしい!」


 天の岩戸作戦成功。

 今だから言おう。

 脱ごうと思えば、左手だけでもズボンは脱げた。

 しかし、あえて男たちに剥かせたのだ。

 全ては尻――もとい、カリィを手の届く範囲まで誘い出すために。

 これぞ、肉を切らせて骨を断つ。

 ではなく、パンツを切らせてちんこ勃つ。


 わしゃわしゃしているうちに布地がめくり上がり、質感の異なる触り心地が掌に現れた。ここでもぷすり|(※不可抗力)


「にゃひいいいいいいいいいいい!!」

「俺はいったい何に触れているんだ!? わからない! 全くわからないぞ!」


 妄想やセルフマッサージでは無理だとしても、極上の尻をダイレクトタッチして十代の健康なムスコが勃たないなんてことはありえないのだ。


「きた、きた、きたきたああああああああ!!」

「イ、イケない! タクトさんが完全体になる前に――」

「もう遅ェ」


 決着を急いだフレアが力を込めたが、今度は俺の意思でそれを阻む。

 男ドームの隙間から、うろたえるフレアと目が合った。

 互いに悟る。

 この時点で、勝敗は決していることを。


「……やられたワ」


 観念したかのように、フレアの腕から力が抜けていく。


「その気になれば、いつでも勝てたお前と違って、俺はこんな()り方しか……」

「アタシの性格をよく理解した上で立てられた作戦じゃない。恥じることないワ」

「……俺は、どうしても負けたくねェんだ」

「妬けちゃうわネ。でも、勝ちに執着できる男は強くなれる。イイじゃない。それでこそ、アタシの愛した男ヨ」


 普段なら顔をしかめる台詞も、今だけは素直に光栄だと思うことができた。

 俺はフレアに礼を言い、幾重にも覆い被さっている男たちもろとも投げるようにして、右腕で半円を描いた。

 ドドド、と男の山が雪崩を起こしていく中、腕の振りにブレーキをかける。

 俺は、フレアの手の甲を、そっとテーブルの面に触れさせた。


「あら、優しいのネ」


 何が起こったのか、ギャラリーの大半は理解できなかっただろう。

 それも男ドームの中から現れた俺の雄々しい姿を見ることで、決着を知る。

 審判のスミレナ店長も我にかえり、俺の腕を取って高々と掲げた。



『勝者、アラガキ・タクト!!』



 その瞬間、歓声が吹き荒れ――――ない。

 決着後もまだ、「リーチちゃんのパンツはどこだ!?」「これか!?」「それはタクトのパンツの切れ端だ!」などなど。男たちは俺の勝利になんて興味を示さず、消えたお宝の行方を捜し続けていた。


「あれ? レベルが31になってる」


 今までは脱衣強化+勃起強化でレベル30が最大だったのに。

 地力が上がったことで、最大値にも影響が出たのか。これは嬉しい。


「あと一つ上げれば、ザインに追いつくな」


 まだ上にミノコがいるけど……それは考えないようにしよう。

 店のエプロンを装着し、升裸王を封印した俺は、丸出しの尻を容赦なくカリィに蹴られながら、勝利の報告ついでにパンツ盗難の件を利一に弁明した。



 三組目 :アラガキ・タクト VS フレア・ユニセックス

 決まり手:カ●チョー

 勝者  :アラガキ・タクト

書籍1巻発売中でっす!(≧▽≦)ゝ

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