表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

HappybBrthday!!

また遅くなりましたすいません…!

遅筆が憎いぜ…

 この世界の事で分かったことが幾つかある。


 まず言語。

 これはどういう訳か完全に日本語である。平仮名ありカタカナあり漢字まである。少しだが英語も有るようだ。

 魔法名とか思いっきり英語だったしね。

 もっとも俺はまだアステルダム王国内から出たことは無いので、他国の言語がどうなってるかは定かでないが。


 次にこの世界の形。

 異世界なんて未だに天動説が信じられてるレベルだと思い込んでいたのだがどうやらキチンと自らの住む星の形や動きなどを理解しているようだ。

 しかし地球の様に海を隔てて幾つもの大きな大陸がある訳では無く、どデカイ一枚の大陸、メタモ大陸が横たわっている。勿論小さな島は点在してはいるが。

 と、賢者様の家にあった書斎とは名ばかりの図書館にあった本に書いてあった。ちょっと見ただけでも科学なんて全然発展してない事が分かるのに魔法って凄い。


 あと、この世界の住人。

 俺の召喚された国、アステルダム王国は人間の国。この世界に於いて最多の種族だ。しかし人間の他にも幾つかの種族が存在している。

 まず獣人族。魔法適正は高くないが身体能力が高いという異世界もののテンプレの例に漏れないようだ。

 次に魔族。今人間国がバチバチやり合っている相手で魔法適正が高く、個々人の力が強い。これもテンプレと言えるだろう。実に覚えやすくていい。

 この他にも人間以外の生物の特徴が混じった亜人。長き時を生きるエルフ。自然を司る精霊なんかが各地に点在しているが、どれも国を名乗れるほど数が多くない。

 因みにティアは亜人に分類される。


 最後にこの世界、エストにおける勇者の立ち位置。

 俺が召喚されたのは人間の国だったが、獣人や魔族も勇者召喚の技術を持っているようだ。

 勇者召喚魔法が初めて使われたのは300年程前で当時最弱の種族として虐げられていた獣人国は、状況の打開を図る為に勇者を召喚。

 結果として勢力は覆され今度は魔族が他ニ国に侵略を受ける。そして勇者を召喚し優位に立ち、次は人間が・・・といった具合に次々と異世界から勇者とは名ばかりの戦争の矢面に立たされる体のいい駒を引っ張って来ている。

 何とも迷惑な話だよな。

 しかしながら、こと人間領土内においては勇者の待遇は悪くない。

 戦闘に関する事は何だって1から丁寧に教えてもらえるし衣食住も困らない。望めば大抵の物は手に入る。来るべき時が来たら気持ち良く戦ってもらえる様にって事なんだろう。




 あの衝撃的な未来を告げられた日からもう一ヶ月だ。

 あの日より俺とティアは賢者様から魔法と剣術の指導を受けている。


 賢者様と出会ったその日から修行が始まり、先ずは魔法の修行から始めたのだが・・・最初に抱いた感想は「以外と地味」だった。

 魔法の修行ってもっとこう派手なものを想像していたのだが、始まったのは日本で言うところの座禅みたいなものだった。

 座り、心を落ち着かせ、己の内に眠る魔力を自覚する。それが大事なのだと賢者様に教わった。

 彼女が言うには魔法を使える人の9割はただ使えてるだけ、なのだそうだ。

 一度習得さえしてしまえば魔力があれば誰でも使える魔法。しかしそれでは応用が利かずに型に嵌ったままなのだそうだ。

 例えば水を対象にぶつける魔法がある。大量の水をぶつけるのだからそれなりに威力の出る魔法ではあるが、それだけだ。この魔法は、水を生み出す→生み出した水を操る→対象にぶつける、という工程を踏んで発動してる訳だ。この工程が長いほど詠唱と呼ばれる『タメ』の時間が長くなる訳だな。しかし己が魔力を自覚し操れる様になるとこの工程の部分を変更できる様になる。つまり自由にオリジナル魔法が創れる様になる。それこそが魔法の真髄だと熱弁された。



 一方、剣術の修行。

 これはあんまり好きになれなかった。痛いのだ。賢者様は本当に剣術が達者なようでこっちは長〜い龍骨の炎刀を使ってるのに、向こうは刃渡10cm程のダガー一本でいい様にあしらわれる。

 しかし幾ら俺の身体が斬り刻まれても、即座に回復魔法が飛んできて一瞬で元に戻る。故に怪我したからちょっと休憩・・・とかは許して貰えない。

 しかしすぐに傷が治るといっても斬られた事には変わらない。平和な日本でヌクヌク過ごしていた俺には痛みは余りにも苦痛すぎた。

 だから文字通り死ぬほど練習を重ねた。

 元々刀なんて触った事なんてない。この世界に来てティアと出会ってからは多少なりとも練習はしていたが、完全に我流だ。

 先ずはその身についた我流をまっさらな状態に戻して、そこから賢者様の剣術のコピーを始めた。構え方から振り方、振りきった後のフォロースルーや足運び、体重移動の仕方まで技を受けて、斬られて、ティアとの修行を見て、学んだ。

 自分で言うのもなんだがそれなりにモノになってる実感はある。

 まだ始めて一ヶ月だし荒削りにも程があるけどね。


 ティアは剣術は俺と同じくらいの上達具合だが、魔法、魔力の操作が中々上手くいかないらしい。


 そんなティアは今日誕生日だ。16歳になる。


「誕生日おめでとう、ティア」

「おめでとうございます」


 異世界ながらケーキでお祝いするという風習はある様で、夕食後に賢者様が焼いたケーキを前にしている訳だ。


「ありがとうございます!」


 ティアはとってもニコニコしている。

 そんなに喜ばれると祝い甲斐があるってもんだ。


「ティア、これ終わったら渡したい物と話したい事があるから部屋に来てくれ」

「えっうん、分かった」


 渡したい物とは勿論誕生日プレゼントの事。この日のために下山して村の職人さんに作ってもらった。


 話したい事とは、俺が異世界人である事。

 一ヶ月以上一緒に暮らしてきて今更だと思われそうだが、怖かったのだ。受け入れられないかもしれないと思うととても話せなかった。しかしもう覚悟は決めた。


「タクミ?入るわよ?」


 ささやかな誕生祝いも終わり、部屋に戻るとすぐにティアが訪ねてきた。いや、俺が来いって言ったんだけど。


「どうぞ」

「お邪魔しまーす」


 入ってきたティアは、ベットに腰掛ける俺のすぐ隣に腰を下ろした。


「まずはティア、改めて誕生日おめでとう!これ、プレゼント」


 アイテムボックスから小さな箱を取り出し、渡す。


「ありがとう!開けてもいい?」

「勿論」


 ティアが小箱を開ける。中身は指輪だ。何の魔法効果も無い、唯の指輪。しかしそこには俺の想いが籠っている。

 それを察したのだろう。ティアの目には涙が浮かんでいた。


「タクミ・・・これ、すっごく嬉しい・・・ありがとう、大好き!」


 極上の笑顔で抱きついてきた。この笑顔の為なら魔族だって滅ぼしてみせると、本気で思った。



 その後少しのイチャイチャの後にもう一つの話題。話したい事。

「ティア、落ち着いて聞いてくれな。真面目な話をします」

「ん?なに?」

「実は俺はこの世界の人間じゃなくてーーー」


 話した。

 俺が話してる間はティアは黙って聞いていてくれた。


「ーーーで、ティアと初めて出会ったんだ。・・・どう思った?」


 ティアはなんだかキョトンとした顔をしている。そりゃそうだよな。今まで一緒に過ごしてた人がこの世界の人間じゃなかったなんてーー


「なんだそんな事なの?」


 そんな事!?


「だってタクミはタクミじゃない。むしろその神様に感謝しなきゃね!だって神様が間違えてくれたおかげてタクミと会えたんだもの!」


 ティアには一生、敵いそうにないなぁ。



 追伸。

 俺が初日に消しとばしたセルンの森。賢者様が手を回して騒ぎにならない様にしてくれてたらしいです。

 賢者様にも頭が上がりませんなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ