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お約束

 翌日。


 今日は食料を少し買い足してからウェルズ山脈へ向かう事にする。


「これくださいな」


 ティアが商店で携帯食料やら干し肉やらを買っている。

 旅の途中では機会がないが、ティアは料理が上手い。

 村にいた頃は良くお母さんの手伝いをしていたそうで、料理だけじゃなく家事全てにおいて完璧といっても過言ではない。


 そのティアはというと、店主のおばちゃんと何やら楽しげに話している。長い。女性の買い物が長いのは異世界でも変わらないようだ。


「おーいティアさんやーい。そろそろ行きますよー」

「はーい!今行きますよータクミさんやー!」


 少しおどけて声をかけたら同じノリで返してくれた。なにこれかわいい。

 振り向いたティアのポニーテールがキラキラ揺れる。


「なぁなぁティアさんよ、そんなに髪の毛長いと戦闘の時邪魔にならない?」

「えっタクミショートの方が好きなの!?すぐ切ってくるね!」


 いやいやそういう事じゃないから。

 本当に散髪に行くつもりなのか走り出してしまったティアの右手を捕まえる。


「いや俺はロングの方が好きだしティアにはロングの方が似合うと思うからそのままでいてください!」

「そ、そう?えへへ、ありがとう♪」

「ああ、何せ俺が一目惚れしたのは綺麗な髪の毛に、だからな!」

「えっ本当に・・・?」

「もちろん嘘だが?」

「タクミ!?」


 軽口叩きながら村の外へ。


 そのままウェルズ山脈に向けて歩こうとした所門番のオジさんに声をかけられた。


「君たち、ウェルズ山脈へ行くのかい?」

「ええ、そのつもりです」

「賢者様のお家まで?」

「そうですけど・・・」

「だろうね、わざわざ山脈まで行く用事なんてそれ位しかないからねぇ。それだったら少し待てば賢者様のお家行きの馬車が来るよ。乗って行くといい、料金はかからないし」

「はあ、どうも・・・」


 そう言って馬車乗り合い所へ。

 そこには既に10人程馬車を待ってる人がいた。女性と子供しかいない。


「しかし賢者の家まで馬車が出てるってどういう事なんだ?テーマパークか何かなのか?」


 ティアの反応を待っていたのだが、それより早く先に馬車を待っていた女性の一人が声をかけてきた。

 栗色の髪が緩くウェーブしたおっとりした雰囲気のある女性だ。胸が大きい。


「あら、ご存知ないですかー?賢者様は3ヶ月前位から毎週ウェルズ山脈で魔法を使ったショーを見せてくれてるんですよー」

「へぇ、そうなんですね。でもなんでそんな事を?」

「そこまでは・・・。でも村の子供たちは大喜びなのでとっても有り難いんですよー?魔法で馬車まで作ってくださって」

「馬車まで魔法で・・・すごいですね」


 馬車を作る魔法とかちょっと想像つかない。馬車魔法!とか?


 それからティアも交えて少し談笑していたら馬車が到着した。

 魔法の馬車なんていうからどんなものかと思っていたが見た目は案外普通だった。普通じゃない所と言えば馬車馬の収まる場所がなく、車体がかなり大き目な所か。これは馬車というよりバスだな。


 全員乗り込んだら動き出した。どうやって動かしているのだろうか。乗客以外に人は乗っていないというのに。


 先ほど話していた女性はシャノンさんと言うらしい。

 どうやら村の子供を連れだって賢者ショーに連れて行くのは彼女の仕事の一つの様だ。


「他にも私は村を訪れる旅人さんなんかの案内などをやってましてー、でもこんな辺境の村を訪れる人なんて中々いなくてー、やる事がないので子供たちの事を引き受けたんですよねー」

「なるほど、それはーーーおっと!」


 言いかけた所でなにかあったのか馬車が急停止し、慣性の法則でシャノンさんがよろけたので思わず肩を抱きとめる。あ、ティアさんがちょっと宜しくない顔してる。すぐに離す。


「すいません、ありがとうございますー」

「いえいえ、それより何かあったのか?着くにはまだ早いよな・・・これは・・・!」


 外を覗くと武器を持った屈強そうな男達に囲まれているようだ。


「貴様ら大人しくしろぉ!この馬車には女子供だけで護衛も居ないとの情報を掴んだからな!お前らに身を守る力も無いのは分かっている!大人しくしていれば危害は加えない!最も、お前らは奴隷商に売り払うからその後はどうなるか知らんがなぁ!ガハハハ!」


 盗賊の類だろうか、よく喋るしなんか説明口調だし・・・。


「タクミ、どうする?」


 後ろからティアが小声で話しかけてくる。


「そうだな、奴らはレベルも低いし、俺たち2人で何とかなりそうだ。ティアは馬車の左側を頼む。子供達が怖がっている、速攻で無力化しよう」

「分かった。気を付けてね!」

「ティアこそな」


 2人同時に馬車から飛び出す。

 取り敢えず1番近くに居るハゲを鞘を外していない龍骨の炎刀で殴り付ける。ハゲはそのまま吹っ飛んで大岩に頭からめり込んだ。

 次いで驚いた硬直から立ち直れていない近くの男も同様に吹き飛ばす。そのままの勢いでもう2人大岩に頭からめり込ませた所でリーダーと思しき最初に声を上げた男が吠える。


「てめぇら狼狽えるな!相手はたった2人だ!数で囲んでぶっ殺せ!」

「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」


 その声で盗賊(仮)は冷静さを取り戻した様だ。

 しかし鑑定を発動させた所、こいつらは高くても8レベルとかでレベル差があり過ぎる。対人練習なんてティアとしかした事無いから多少不安はあったのだがこれは技術以前の問題だな。相手の攻撃が殆ど止まって見える。

 剣で斬りかかって来たのを半身になって躱し龍骨の炎刀の柄で腹を突きカウンターをいれそのまま後ろにいた仲間諸共吹き飛ばす。後ろからの斧での攻撃を刀を盾代わりにして受け、ガラ空きの胴体にヤクザキックを食らわせてまた吹き飛ばす。


「おっと、囲まれたか」


 気付いたら4人に囲まれていた様だ。

 というか気配察知仕事しないな・・・レベル1だと相当接近しないとダメか。戦闘中じゃなかったらそれなりにいけるんだけどなぁ。


「しねええええ!」


 盗賊が怒声をあげながら迫ってくる。しかも4人それぞれが微妙に時間差を付けて避けづらい様に攻撃してくる。


 攻撃が避けづらいなら避けなければいいじゃない。


「『コンフュージョン』!」


 4人全員を錯乱させて一応防御の体制。

 狙い通り盗賊×4は同士討ちを始め、程なくして斧使いが辛うじて立ってるのみになったので鞘で殴って吹き飛ばす。また岩に刺さった。


「さて、ティアは・・・終わったか」


 反対側を覗くと、丁度ティアも殲滅し終えた所の様だった。リーダーっぽいのはティアの方行ったんだな。


「タクミ!大丈夫?怪我はない?」

「大丈夫。ティアは怪我してないか?」

「うん!準備運動にもならなかったわよ!」




 取り敢えずアイテムボックスからロープを取り出し全員一纏めにグルグル巻きにする。元々崖を降りたりするのに使うと思って買った物だが意外なところで役にたったな。


「さて、こいつらどうしたらいいかな?」

「・・・・・・」

 

 あれ、ティアさん反応がない。


「ティア?どうした?」

「タ・・・タクミ・・・!アレ・・・アレ見て!」


 ティアが俺の背後、ウェルズ山脈方面の上空を指指している。


「アレ?アレってなんだ・・・よ・・・ッ!アレはまさか!?」


 山脈方面からこちらに向かって飛翔してくる物体X。それは日本にいた頃漫画やゲーム、ライトノベル等で良く目にしたある種馴染みの深いもの。


 逞しい体躯に大きな翼、凶悪な顔つき。


 どこからどう見ても、ドラゴンそのものだった。




早く花粉消え去れ(呪詛)


今回も読んでくださりありがとうございます。

花粉症酷すぎて仕事も字書くのも手に付きません。

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