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泥棒バカ犬

日曜の更新を守れそうで、余力がある時は積極的に更新していきたいです。

 俺は朝からあたまを悩ませていた。昨日の魔法は初めてだったとはいえ正直やり過ぎだった。

 もっと魔力のコントロールを身に付ければ威力や範囲を落としたり詠唱を短縮したり出来るようになるんだろうか。

 やっぱり魔法にしても剣術にしてもしっかりとした先生がほしい所だな。


 今日は先生をさがしつつ王都の観光をする事に決めた。まだちゃんと観光とかした事もなかったしな。


 美味しい出店でも探そうかな。異世界の料理はまだ宿でしか食べてないけど結構美味しかったし。2日目の宿で取った夕食で出たステーキは美味しかったな。なんの肉か聞いたらドデカイ蜘蛛の肉って言われてから食材何使ってるか聞いてないけど。


「いらっしゃい!王都名物セルンイノシシの串焼きちょうど焼きあがったよ!にいちゃんなんにする?」


 適当に出店覗いてみた。どうやら串焼き屋の様だ。炭火のいい匂いに釣られてしまった。というか店主女の子だ。この世界来てから初めてまともに女の子と会話した気がする。


「じゃあそれ一本くださいな」

「はいよー!」


 香ばしい香りの立ち昇る串焼きを受け取るべく手を伸ばす。しかしその手がそれを手にする事は無かった。


「は?」


 目の前で串焼きが掻き消えたのだ。

 いや、正確には早すぎて掻き消えたように見えただけだ。レベルが大きく上がり動体視力も上昇していた俺の目は白い何かが横から串焼きを掻っさらうのを捉えていた。


「おい、待てよ!」


 即座にダッシュして白い影を追う。なんだあれ?魔物か?


「ちょっとにいちゃんお代は!?」


 後ろから叫び声が飛んでくるが取り敢えず無視だ。今は串焼きを取り返したい。


「くそ、早いな…」


 白い影は足が早い。が、それでもまだ俺の方が早いようだ。徐々に距離が縮まってきた。


「ふふ、そっちは行き止まりだぞ?」


 白い影が細い路地に飛び込んだのが見えた。その路地はさっきぷらぷらしてる時に迷い込んでいるのだ。袋の鼠だ。

 路地に入ると行き止まりの壁の前でオロオロしてる白いお尻が見えた。


「さあ観念しろ。そして串焼きを返すんだ」


 お尻が振り返る。


「犬…か…?」


 漸く拝めたその姿はどう見ても日本にいる小型犬そのものだった。大きさは膝下くらいで真っ白な毛がふわふわと触り心地が良さそうだ。ていうか触りたい。何を隠そう?俺は無類の犬好きなんだ。日本にいた頃は親が犬とアレルギーだったから飼う事は叶わなかったが…。


「くぅ〜ん…」


 観念したのかこちらにトボトボと近づいてきた。ていうかダメだ、肉がヨダレでデロデロだ…。はぁ…。


「もういいよお前それ食えよ…」

「わん!」


 嬉しそうだな。ていうかこいつ言葉理解してないか?

 鑑定。


 ★

  ティア・ユーミリア 女 15歳 変幻人

 レベル 27

 HP 1105/1105 MP 30/540

 筋力 705

 耐久 304

 敏捷 2480

 魔力 460

 スキル

 変幻【固有スキル】

【駿足】Level 3

【剣術】Level 3

【雷魔法】Level 4



 何これ…変幻人ってなに…人?人なの?串焼き泥棒の馬鹿犬が?しかもレベル高くない?城に居た兵士とか高くて10とかだったよ?


「お前…人なのか…?」

「きゃん!?」


 うわっすごい人間みたいなリアクションしてきた…。

 なんかあれだな。こうして見るともう人間にしか見えねえな。


「人間なんだろ?鑑定スキルで見えてるから」

「……わん!」


 ちょっと考えた素振りを見せた後一鳴きすると犬の身体からモクモクとした白い煙が立ちのぼり、やがてそれが人型に収束し、完全な人間の姿になった。


「……ど、どうも…」


 現れたのは犬形態の時と同じ真っ白なワンピースを着た金髪の美少女だった。なにこいつめっちゃ可愛い。あとなんで頬を赤らめてるんだろう。

 一瞬全裸で現れたらどうしようと思ったがちゃんと服着てるんだな。別に惜しいなんて思ってない。思ってないったら。


「色々聞きたい事はあるんだけど、まずはこれから。なんで人の串焼き盗ったの?」

「お腹空いてたから…!」


 実に簡潔な答えである。因みにまだこいつの手にはセルン肉の串焼き〜馬鹿犬のヨダレを添えて〜が握られている。


「そりゃそうだろうけどさ。まあそれ食べていいからさ、ちょっと話聞かせてよ」


 言っておくが俺は断じてお節介が好きな訳でも他人の力になるのが好きな訳でもない。俺の行動原理は基本的には一つしかない。それが自分の為になるか。この1点のみだ。今回の場合はこいつの固有スキルについてだ。後は犬可愛かったし。こいつの可愛さに誑かされたわけでもない。ない。


「あ、ありがとうございます〜!実は私もう3日も水しか口にしてなくてそろそろ本気で死を覚悟してました頂きます!!」


 言うや否や串焼きにかぶりつき、一瞬だけで平らげてしまった。


「落ち着いて食えよ…。まあいい。俺は新城 匠。冒険者をやってる。そっちはティアでいいのか?変幻人ってなんだ?」

「なんで知ってるんですか!?……はい、私はティア・ユーミリアといいます。変幻人っていうのは魔物は動物に自在に変化出来る私の種族の事です」

「ふーん、なるほどな。というか、なんでわざわざ盗みなんてリスクのある事したんだ?お前くらいのレベルなら魔物狩って討伐報酬でも貰えばいいじゃん?」

「ええっと実はですねーーー」


 こういう事らしい。

 ティアの種族、変幻人というのは魔物に変化出来るなんていうスキルのせいで昔から迫害を受けていた。元々戦闘の素質が高い方ではない種族性のせいで、その数をどんどん減らして言ったそうだ。

 このままじゃマズイと考えたティアの村の村長は村で一番素質が高かったティアを武者修行の旅に出し、強くなったティアに村ごと守って貰おうと画策したらしい。だが、当然ティアは反発し村長と大喧嘩。結果的に村を出る事になったらしい。


「追い出されたんじゃなくて自分から出て行ってやったのよあんな村!」とはティアの談だ。


 そしてなんで窃盗するまでに落ちぶれたのかと言うと


「コロポックルにやられました…あはは…」


 コロポックルというのは洞窟や森の中などの暗い所に好んで生息し、休んでいる旅人や商人、冒険者の荷物を根こそぎ置き引きするという非常に手癖の悪い魔物らしい。因みに戦っても弱いそう。


「それでなんとか街に辿り着いて空腹でフラフラしてたらすっごく良い匂いがしたので思わず…すいません」

「はぁ…まあ良いけどさ。これからどうするつもりなの?」

「ええっと、せっかく王都まで来たので冒険者になって生活しようかと思ってたんですけど・・・」

「けど?」

「わ・・と・・・んして・・さい・・・」

「ん?ごめん聞こえなかった。もう一度言って?」


 ティアは大きく息を吸い込みーーー


「私と結婚してください!!!!」


 え、えええ・・・。


「な、なんでそうにゃる」


 駄目だ、動揺しすぎて噛んでしまった。


「タクミさん動揺ししゅぎですよ!」

「お前もじゃねえか・・・」


「で、なんでそうなるんだよ!?」

「それはもう一目惚れとしか!一目見てビビッときたんですよ!」

「でもそれでも結婚はいきなりすぎだろ!?」

「それだけじゃありません!タクミさんは完全に泥棒な私にご飯を恵んでくれましたよね?それで更に惚れ直しました!普通なら殺されたっておかしくないのに!まだあります!村を出てからずっと一人だった私の話を優しく聞いてくれました!そんなに優しくされたらもう惚れるしかないじゃないですかていうかもう一人になりたくないんですよおおおおうわああああああん」


 泣き出してしまった・・・。

 というか別に優しくしたつもりは皆無なんだがな・・・。

 それにもう一人になりたくないって、そりゃそうか。今までは村で普通に暮らしてきたのにいきなり一人旅だもんな。そりゃ寂しくなるわ。


「分かった!分かったから泣き止んでくれ!」

「う、ぐず・・・分かった?分かったって言ったの?結婚してくれる?」


 そう言いながら見上げてくる。うっ、やばいな。目が潤んだ美少女の上目遣いはかなりグッとくる・・・。


「悪いが結婚はまだ出来ない。俺はまだまだこの世界を知りたい。見て回りたい。冒険者したい。だから身を固めるつもりはない。ただ恋人になる事は出来る。けど、本当に俺でいいのか?」


 実をいうと俺も完全に一目惚れだった。だってしょうがないだろう?日本にいた頃じゃあり得ない、それこそ二次元からそのまま飛び出して来たような美少女だ。惚れるなっていう方が無理な話。


「いいも何も、タクミさんじゃなきゃイヤなのよぉ・・・ぐず・・・」


 こんなに想われて、それに応えなかったら男じゃないな。


「そうか、ありがとう。実はな、俺もティアに一目惚れだったんだ。こんな俺で良ければ、恋人になってくれる?」


 未だ女の子座りで涙を拭っているティアに手を差し出す。


「ううぅ・・・こちらこそよろしくお願いしますうううう!」


 そう言って俺の手を取り立ち上がるティア。

 やばい、また泣き出しそう。



 父さん母さん、お元気ですか?

 僕は異世界3日目にして彼女が出来ました。



 因みに結局泣き出してしまったティアを宥めて宿に戻る頃にはすっかり夕方になってしまっていた。



ヒロイン登場ですが、可愛く描けていたらいいなぁ…。

初手犯罪系ヒロインってどうなんでしょうね…w

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