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成長そして再会

 色々と検証した結果、力の実は毎年実を宿すが、実が落ちる事は無く、養分が木に吸収されると、翌年また実をつける事が分かった。

 どうやら実や種というより、溢れ出た木の栄養をストックする仕組みらしい。


 そして一度に取りすぎなければ影響は無く、少しずつ採取したら二つの木から、年間150近くの実を取ることができた。


 あれから5年の月日が流れた今、約750個、正確にはもう少し多くの実を食べてきた俺は……


 勇者:Level:8


 力:2714

 速さ:205

 器用:104

 知力:42

 魅力:46

 魔力:229

 HP:871

 MP:240


 保有スキル

 頑健(神):Level:MAX

 頑健(波):Level:1(0/10)

 棍棒術:Level:5(46/160)

 投擲(石・棒・ボーラ):Level:7(24/640)

 格闘技:Level:3(7/40)


 装備

 牛殺しのメイス

 石のボーラ

 丈夫な服

 聖別の実の護符


 主な持ち物

 魔力の緑石


 なんというか、それなりに成長していた。村長からもらったダボダボの丈夫な服も今やピチピチ。みなぎる筋肉は分厚く体をおおい、たぎるパワーを抑える器用さも身に付けつつある。


 知力が低いってか? それはしょうがない。こんな狭い村では、長老の話くらいしか勉強になる事がないし、それだって生活の知恵とかだ。伸び悩みもいたしかたないだろう?


 投擲のレベルが高いのは、投石や、ボーラと呼ばれる、二つの石を革ひもで結んだ道具で狩りをしているせいだ。

投げて足に絡めて狩りをするのだが、最初は軽く投げただけでも、獲物を吹き飛ばしてしまい、えらく叱られた。


 今では村長に次ぐ狩りの名手として、皆に認められつつある。それにともない、力加減も身についてきた。


 それに何より頑健(神)がついにLevel10を突破した! これによって体をおおう生命力オーラのようなものを感じはじめ、それにともない、周囲の生き物全てのオーラから湧き立つ波動を受け止めるようになった。


 その影響だろうか? とつじょ派生した頑健(波)! これは何となく理解できる。大魔女様に言われてあれから毎日集中してきたひたいの温かみが、チリチリとうずくようなかゆみをともなっているからだ。


 これは宿題完成か? 浮き立つ俺は、村長の許可を取ると、早速高地村をたずねた。


 久しぶりに見るご神木は、相変わらず陰気なムードを漂わせている。その門には、見たことの無い村人が立って、見張りをしていた。


「こんにちは、隣村のカミーノといいます。ちょっと大魔女様に用事があって来ました」


 と告げると、


「おお、お前さんの事は覚えちょるよ。次代様の初陣の時にお供していた子供だね? そうけ、こんなに大きくなったかい」


 と、門の扉をコンコンとノックして、俺を通してくれた。


「ちょっとまっとれ、お〜い、大魔女様にお客さんだ! お前さん案内してやってくれ」


 と奥にいる若者に声をかける。以前に見た時より、何故か大勢の男衆が集まっている。しかも皆の手には、槍や斧などの武器が握られていた。


「何かあったんですか?」


 用事を言いつけられて、嫌々そうにやってきた若者に聞くと、


「あ〜、大魔女様が村はずれにモンスターが出ると予言されてな〜。皆心配で警戒しているところなんだ〜」


 面倒くさそうに話す。


「じゃあ大魔女様は忙しいんじゃ? 大丈夫かな?」


 と聞くと、


「ま〜邪魔だろうけど、用事があるんでしょ〜? 一応行ってみたら〜?」


 どうでも良さそうに言われたので、まあ行ってみるか、と歩き続けた。

 モンスター退治とか、ワクワクする単語を聞いては、行かない訳がない。


 浮きたつ心を隠して建物に入る俺を見て、


「カミーノ! 久しぶりじゃない! ちょうど良かったわ、あなた一緒にきなさい! ね、いいでしょ? 大魔女様」


 と声をあげたのは、あのティルンだった。見違えるほど女性らしくなった彼女は、俺の村にはいないタイプの、スラッとした美少女に成長していた。相変わらずサイドに結った髪をお団子状にまとめている。


「おぉおぉ、待っておったぞぉ。そろそろ何か変化がぁあったじゃろう?」


 年月が経っても変わらぬ様子の大魔女様が近寄ると、ひたいに触ってスリスリとなでた。

 全身にみなぎる力がスゥッとおとなしくなじんでいく。

 力が落ちるというより、なじんで流れが良くなったため、無駄な放出が無くなった感じだ。


「そう、そうなんです。なんだか魔力という様なものが感じられるし、わかるかな? 頑健(波)って能力に目覚めたらしいんです!」


 俺は訳の分からないなりに、必死になって訴えた。ティルンは、


「はぁ? 頑健? しかもカッコ波って何のこと?」


 と眉間にしわをよせて聞き返すが、大魔女様は、


「フォッフォッフォッ、わかるよぉ。ワシはさいしょからぁ、しっかりお前さんの能力をぉとったでなぁ」


 と全てお見通しとばかりに笑みを深めた。その言葉にドキリとする。この人は全てを知っている! もしかして俺が前世の記憶を持っていることも、ステータスの一番上に勇者とついている事も分かっているのだろうか?


 心臓がバクバクとうるさい。冷や汗を流す俺を見たティルンは、


「何よ、私だけかやの外って訳? 大魔女様の魔鑑定の凄さはわかるけど、教えてくれても良いじゃない」


 ちょっとむくれて腕を組む。


「フォッフォッフォッ、それはぁ、ひみつ、じゃぁのぉ?」


 俺を見てウインクする大魔女様、シワが深すぎて、伝わりづらすぎますぜ。


「ではぁ、ワシのぉ、手をにぎってぇ、みんさいやぁ」


 シワだらけの震える手を差し出してくる。それを握ると、昔ひたいに指をついた時のような温かみが湧いてきた。しばらくすると、ひたいのチリチリとしたかゆみも、熱を帯びてくる。するとみぞおち、腹のした、お尻の穴と、順番にチリチリからあったかくなっていった。


 しばらく握っていた手を離すと、


「これでぇ、お前さんの頑健はぁ、他の人にもぉ、放つことがぁ、できるようにぃなったでのぉ。どれ、やってみてぇくれんかのぉ」


 俺は大魔女様の全身を眺める。すると淡い光に包まれたオーラの様なものが見えてきた。さらにそこに影を落とす部分が見える。どうも心臓らへんがかげっているようだ。


 そこに手をかざして、俺の光を放射するイメージをもつと、実際に手から光が放射される。


 これが頑健(波)か! 大魔女様の心臓に見えた影が、他と変わらぬ光を見せだすと、俺は手を離した。


 目の前には少し血色の良くなった大魔女様がニッコリとほほえんでいた。


「ありがたいぃことだぁねぇ。生き神様のようなぁ、ありがたいぃ力だねぇぇ」


 手を擦りながら拝まれる。なんだかくすぐったいような気がして、ティルンを見ると、驚き固まっていた彼女が、


「神聖魔法? にしても大魔女様の心臓の病を治すなんて、どんな高位の司祭にも無理なはずよ!」


 興奮して俺の肩をゆすった。すかさず発光するステータスを見ると、


 勇者:Level:9


 力:2717

 速さ:207

 器用:79

 知力:46

 魅力:49

 魔力:232

 HP:878

 MP:190/240


 保有スキル

 頑健(神):Level:MAX

 頑健(波):Level:2(5/20)

 棍棒術:Level:5(46/160)

 投擲(石・棒・ボーラ):Level:7(24/640)

 格闘技:Level:3(7/40)


 おお! レベルが上がった! しかも生まれて初めてMPを消費している! こいつは……凄いぞ!


 テンションの上がる俺に、


「熟練すればするほどぉ、少ない魔力でぇ、大きな効果をぉもたらすことがぁできるでぇのぉ。病気と毒を治しぃ、自己治癒力ぅ、それにぃ魔法やぁ呪いにぃ抵抗をぉもたらすでのぉ」


 大魔女様が教えてくれた。俺にも魔法が使える! という事実に浸っていると、


「それよりも! 早くキマイラ退治に行かないと! 森の魔力がゆがめられてしまうわ!」


 ティルンが声をあげた。そうだ、何か急ぎの用があるらしい事をいっていた。

 俺も興味を持って、


「何それ? 強いモンスターがでたとか?」


 と聞くと、


「西の森の魔力がおかしいのよ。そこに生まれたモンスターが強大化してしまって、早く倒さないと、これ以上育ってしまったら、手が付けられなくなるわ」


 と一気に話す。それを聞いちゃあ行かない訳が無い。という気持ちをぐっとこらえて、


「今度は俺が力を貸しても良いよ」


 と言うと、唖然とした顔で、


「当たり前でしょ? 今さら何言ってるのよ?」


 と叱られた。どうやら俺の意思は関係無いらしい。


「ホッホッホッ、だからもぉ少ぉしまてってぇ、言ったんだぁ」


 大魔女様がティルンをたしなめる。それを聞いて頬を赤らめたティルンは、


「そうならそうと、言って下されば良いのに。では善は急げ! さっそく出かけるわよ」


 と俺の手を握って出ようとする。そこに、


「まぁまってぇ、倉庫にぃ、実を分けておいたからぁ、食べてからぁ、行ってらっしゃいなぁ」


 と大魔女様が教えてくれる。ありがたい! ちゃんと約束を覚えていてくれたんだ! 俺は礼を言うと、ティルンを置いて倉庫に行った。


 そこにはバスケットに入った山積みの魔力の実が置いてある。


 むさぼり食べた俺のステータスは、


 魔力:335

 MP:190/450


 おお! 凄く上がっているぞ! しかもMPは回復していないとはいえ、即増えている! こんな仕様だっけ? 以前食べたのは大分と前だから忘れてしまったが、魔法を使える今、これはありがたい。


 倉庫を飛び出した俺は、大魔女様の部屋に戻ると、


「ありがとうございます!」


 と九十度に腰を曲げて、お礼を言った。


 ニコニコ笑う大魔女様を置いて、早速出かけるティルンと俺。今回の討伐は二人きりのようだ。


 ティルンは以前に見たのとは違う杖を持ち、立派な衣に身を包んでいる。


 俺の余りにもボロボロな服を見て、


「あの時と同じ服じゃない! やだ貧乏って。おおじじ様の服を借りてきてあげるから、ちょっと待ってて」


 と言うと、綺麗な布地で出来た服を貸してくれた。ステータスで確認すると、


 装備

 魔力糸の服


 とある。ティルンによると、着る者の魔力に影響されて、強度を上げる布地らしい。つまりは魔法の装備だ!


 人生初! の出来事にテンションを上げる俺を見て、ため息をついたティルンに、


「キメラは相当手強い敵だからね、遊び感覚はやめてちょうだい」


 とお叱りを受けつつ、西の森へと急いだ。


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