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ゴブリンの洞窟

 山道はいつもと変わらないはずなのに、なぜかおどろおどろしく感じる。皆も不安なのだろう、頼みのつなは魔法に集中するティルンと、山に詳しい村長だ。


「とにかく力の木の安全地帯まで行ってみるべ、途中で気になる所があれば、そこを探るって事で」


 村長の提案に、一同うなずくと、黙々と歩き出す。途中でガサッと物音がする度に、弓矢や槍を構える一同、しかし力の木に辿りつくまで何事も無く、ティルンの魔法にも引っかかるものはなかった。


 力の木の根元で、小休止をする。相変わらず木は黄金に輝き、もう少し採取しても平気そうだった。

 三本中一本が枯れているのを見つけた村人が、


「あっ! こんな所にも異変が」


 と動揺したが、俺は華麗にスルーすると、木の上から見張りをするという名目で、スルスルと左の木に登った。


 ササッと七個の木の実を取ると、周囲を見張りながら食べる。これで、


 力:696

 頑健(神):Level:8(849/1280)


 ウム、700まで後少し。別に700という数字に思い入れは無いが、まあそこらへんは気持ちの問題だ。


 木の上から見える風景に異常はなく、小休止を終えた俺たちは、次の目標地点をこの辺で一番高い山の山頂と決めて、歩き出す。


 それは山頂まで後少し、という時だった。


「止まって下さい」


 と言うティルンの声に、緊張が走る。ゆっくり指差す先には、山肌にむき出しになった岩場があった。


「周囲の気配を絞り込んでみたところ、あそこだけ異様な気配に満ちています。どうやらゴブリンはまだいそうですね」


 やっぱり残りのゴブリン達が居たんだ。その岩肌をよく見ると、裂け目のような穴があり、奥は洞窟になっているらしかった。


「雨除けの洞窟だなや、ここいらの猟師にとっては休憩場みたいなもんだが、まさかここに住み着いてたとはな」


 村長がアゴをしごきながらつぶやく。


「で、どうすっぺ?」


 と皆に相談すると、


「洞窟の入り口は一箇所ですか?」


 とティルンが聞く。それに答えて、


「ああ、入り口以外は完全に閉じてんだ。だけんども案外中は広いんだべ」


 村長が答えると、猟師達が「んだ、んだ」と同意した。


「それでは……いぶし出す、ってのはどうですか?」


 ティルンの提案に、


「だけんど煙っちゅうのは風が通ってないと流れていかんべな」


 村長が博識を披露した。確かに、ただいぶしただけでは、煙は奥に入っていかないだろう。それを聞いたティルンは、


「任せて下さい、何せ私は大魔女様の弟子ですから」


 無い胸をはると、生木を集めさせた。そこに苦労して火をつけると、真っ白な煙がもうもうと上がる。そこにさらに香草を加えると、目に染みる成分が混ざった。


 ブツブツと呪文を詠唱していたティルンが、手を大きく上げると、風が洞窟に流れ込んでいく。

 それによって大量の煙が充満すると、奥の方から、


「ギャアッ! ギャアッ!」


 と騒がしい声と、慌てふためく足音が迫ってきた。


 涙を流し、目をつぶって飛び出すゴブリンを、狙いすました村長達の矢が射止めていく。


 その撃ち漏らしを、木こりや俺がぶん殴って仕留めた。


 その数が20を超えたあたりで、矢の数が足りなくなる。


「ティルンさん、まだまだ居るんかいの? もうワシらの矢も尽きそうじゃ」


 村長の問いに、


「探知にかかるのは後わずかなんですが……何かの手を使っているのか、しぶとく中に残っています。三〜四匹だと思われるのですが」


 と答えた。後三〜四匹ならいったんいぶすのをやめて、討ち入っても良いのではないか? という事になり、生木の焚き火を消すと、ティルンが風を操作して、洞窟内の煙をかき出す。


 いよいよ潜入だ。と緊張していると、


「あっ、来ます!」


 ティルンが声を上げた。目の前に現れたのは、二匹のでかぶつと、真っ黒な肌に派手な羽飾りを被ったゴブリン。


 いかにも特別感がただようそれを見て、


「うそ! ゴブリン・シャーマンが居るなんて!」


 ティルンの声がうわずった。何か分からないが、相当てごわそうだ。

 村長がすかさず矢を放つが、前に立つでかぶつがそれを受けると、


「ゴアアァッ!」


 と咆哮ほうこうを放つ。それだけで若手はビビって固まってしまうが、頑健の効果か俺は動ける!


 袋から持てる限りの石を取り出すと、狙いもつけずに全力で投げた。

 この距離なら目隠しをしても当たる!


 弾かれたでかぶつに、トドメとばかりに牛殺しを喰らわそうとすると、


「あぶない!」


 後ろのティルンから火の玉が放たれた。それは派手なゴブリンに向かうと、途中で何かとぶつかったかの様にはじける。


「風の魔法よ、見えない刃が飛んでるわ」


 危なかった、気配も感じないとは、恐ろしい魔法だ。


 右手のでかぶつは、当たりどころが悪かったのか、ドーン! と倒れると動かなくなる。だが左のでかぶつは、血を流しながらも大きな丸太を振り下ろしてきた。


 その左目に、村長の放った矢が突き立つ。村長ナイス! その死角に潜り込んだ俺は、力いっぱいでかぶつを押した。派手なゴブリンの方へ!


 突き飛ばされたでかぶつが派手なゴブリンを巻き込んで倒れる。

 そこへティルンの火の玉が炸裂して、ゴブリンの羽飾りに燃え移った。


 斧をもった若い衆が、でかぶつを仕留める。俺はその横を通りすぎると、火を消すのに転げ回る派手なゴブリンを掴んで、岩かべに叩きつけた。


 手の中にぐしゃりと骨の折れる衝撃が伝わってくる。それにかまわず首に手をかけると、思い切りひねってくびり殺した。


「やったな」


 ホッと胸をなでおろす村長と村の衆、ティルンは探知魔法で周囲を探ると、


「これで最後みたいですね、多分この一帯は安全だと思います。念のため数日間滞在して、山の精霊と同期してみますけど」


 という言葉に「わっ!」「やった!」と喜び合う。


 ゴブリンの耳を集めて、洞窟内も漁ったがめぼしいものは何もなかった。

 ただ、ゴブリン・シャーマンと呼ばれた派手なやつの首飾りには大きな緑色の石がついている。


 俺がそれを見ていると、


「それは……何らかの魔力が宿る石ね。売ったら結構な価値があるかも?」


 ティルンが教えてくれた。俺は早速村長に持って行くと、


「今回の功労者はお前さんじゃから、そいつはもらっとくとええ」


 と言ってくれた。村の損害は、村人皆で働いてうめるから、お金は要らない。

 今後もし冒険者になるとしたら……多少のお金はいるだろう。

 そう思って、ありがたく頂戴すると、石の無くなった袋に入れた。


 ステータスが光っている。恒例のレベルアップだ。


 勇者:Level:7


 力:703

 速さ:40

 器用:20

 知力:15

 魅力:14

 魔力:29

 HP:72

 MP:40


 保有スキル

 頑健(神):Level:8(800/1280)

 棍棒術:Level:4(5/80)

 投擲(石・棒):Level:4(10/80)

 格闘:Level:1(5/10)


 装備

 牛殺しの棍棒

 丈夫な服

 聖別の実の護符


 主な持ち物

 魔力の緑石


 おお! またもや2レベルアップ! ここだけは数値が分からないが、強敵を倒せば倒すほど、やはり経験値的においしいらしい。

 更に各数値も、使った能力ほど伸びが良い。速さと器用の伸びが良いし、今回大活躍の投擲は二つもレベルが上がっている。逆に棍棒術は使わなかったせいか、一つしかレベルが上がっていない。


 そしてタックルや掴み投げでゴブリン・シャーマンを倒したせいか、格闘なる技能が発生している。


 器用が低く、頑健で力が強かったら、近づいての格闘の方が当たるかも知れない。


 あと地味に主な持ち物(らん)というのが増えている。

 何がおもで何が主じゃないのか? 石は記載されてなかったし……このステータス、結構てきとうだなぁ……そんな事を考えながら帰路についた。

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