血の呪い
書き溜めを切り張りしているため、前回の区切りがおかしなところになってしまいました。
今回はごく短くなるため、23時投稿として、閑話を5日0時に投稿させていただきます。
目のはしに光るステータスを見ると、今回の件でまたレベルが上がっていた。
勇者:Level:22
力:2936(4404)
速さ:433
器用:216
知力:97
魅力:111
魔力:473(709.5)
HP:1206/1235
MP:600/642
保有スキル
頑健(神):Level:MAX
頑健(波):Level:7(417/640)
棍棒術:Level:8(135/1280)
投擲(石・棒・ボーラ・ナイフ):Level:8(420/1280)
格闘技:Level:7 (24/640)
装備
力の杖
補強されたボーラ
魔力糸の服
聖別の実の護符
主な持ち物
魔法の袋(黒鋼塊×9、黒鋼塊×10、水筒×10、携行食×10、鋼のナイフ×10、魔石×10)
金袋(25金13銀15銅)
2レベルも上がったのは、それだけ呪いが強力だったからだろうか? いったい誰がそんな事をしたのか? 考えている内に別館に連れて行かれた。
全く窓の無い館は、朝にもかかわらず、光が全く入らない。ロウソクの灯りに照らされた室内には煙が充満して、独特なお香がかえって気持ち悪さを引き立たせている。
「ご主人、こんな早朝に御用とは、ずいぶん熱心ですな」
闇に紛れて見えなかった所から声が上がる。ねちっこい声色にビクッと振り向くと、闇に浮き上がるように小柄な男が一人立っていた。
「闇よ、悪いが急ぎの仕事だ。この女性二人をこちらのカミーノさんの奴隷として呪契約しておくれ」
闇と呼ばれた男は、ニタリといやらしい笑みを浮かべると、嬉しそうに先に立って歩いて行く。仕方なくついて行きながらそのオーラを見ようとするが、なぜかもやがかかったように見えなかった。
「人をそんなに見るもんじゃない」
振り向かずに言われてまたゾクッとする。その声には地の底から聞こえる様な不気味さがあった。
屋敷の奥のさらに地下、何とも言えない不気味な祭壇に連れてこられた俺たちは、そこで血を出すように言われる。
「契約の呪術には血の盟約が必要です」
というオルファンさんの言葉に従って指先を噛むと、小さな皿に一滴の血を落とす。もう一つの皿にエナの血を、さらにもう一つにサエの血を、指先を切って垂らすと、祭壇に描かれた魔法陣が真っ赤な光を放った。
生暖かい風が全身を包み、フッと力が抜ける気がする。ステータスを見るとMPが、
540/642
と少し減っていた。二人が力を失い、地面に倒れるのをすれすれで抱きとめる。
「ほう、中々の精神力をお持ちのようだ」
またもやニタリと笑った闇が、俺をほめる。だが何だか居心地がわるい。それはオルファンさんも一緒らしく、
「闇よご苦労だった。カミーノさん、これで呪契約は結ばれました。これで二人はあなたに逆らえない奴隷です」
と早口で教えてくれた。
「逆らえない? もしそれを破ったらどうなるんですか?」
と聞くと、
「血の契約は絶対、もしも主人に逆らったら、血が沸騰して、内側から焼け死ぬ事になりまする」
と闇が恐ろしい事を言った。内側から焼け死ぬって、どんな状態だよ? 今さらながら事の重大さに気付いた俺と違って、委細を承知していたらしい二人は、黙ってうなずく。え? これって常識なの? この世界の恐ろしさを改めて感じながら、とっとと離れの館を後にした。
こんな所にいたらいつ自分が奴隷にされるか分からない。陰気な闇と呼ばれた男の奴隷になる所を想像するだけで身震いする。
さて、勝手に奴隷を二人従える事になったが、ティルンに説明するのが面倒だな……だけど考えるのもめんどうくさい。
考えれば寝ていなかった俺は、ディアを引き連れてあてがわれた部屋に向かうと、フカフカのベッドに横になった。
*****
とある場所のとある火の側で、独り言のようにブツブツと喋る男が一人。だがその声音には明らかに別人のものが返答している。
〝彼を試すぞ、憎き病魔と対抗できる存在か? 何かほどよい相手はおらぬか?〟
〝それでしたら、近くの村にまんえんしている病魔に、直接ぶつければよろしいかと〟
〝うむ、詳細は任せたゆえ、よきにはからえ〟
〝病魔の手の者がバラまいた毒虫には対抗できましたが、病魔本体に近しいものにも負けぬ力を持つか? 私は怪しいと踏んでおります〟
〝まあよい、奴の血も手に入れたゆえ、呪い殺すのはいつでもできる。使えるかどうか? 存分に見せてもらおうぞ〟
低い笑い声が響くのは、どこかの洞窟なのか? 火に照らされた男の影は、いびつな壁に長く伸びていた。