15 見れば見るほどタケリタケ
俺と一夜さん、かほりさん、あみちゃんの四人は温泉の前に来ていた。
瑠璃小路嬢の屋敷は旅館みたいな広さがあり、温泉の前には小さな脱衣所もついている。
そして一夜さん達は特に気にする様子もなく俺のすぐ隣で服を脱ぎ始めていた。
だが俺の方は大変だ。
意識しすぎないようにしようと頭では思うがどうしてもつい横を向いてしまう。
そうしてチラ見する俺に気付いて一夜さんが話しかけてきた。
「ヒアリヌスさん。先程から私の体を見ているようですが、何かおかしな所があるでしょうか? 私の体、やはり人間とはどこか違いますか?」
どこか違うかなどと聞かれてはもう見ざるをえない。
改めて俺は、一夜さんの体を上から下までじっくりと眺める。
俺の見る限り、一夜さんの体は完璧だった。
というか女性の体を見る機会など俺には生前にもなかったので、もし人と違っていても気付けない可能性はあるのだが。
だが知識としては女性の体がどういう物かもある程度は知っている。
その観点から見て一夜さんはやはりとても素晴らしかった。
ただ完璧すぎるのが逆に気になり俺は一夜さんに尋ねる。
「そういえば一夜さん、髪の毛の先は溶けてるのに体は綺麗なままなんだな。いやその、綺麗ですごくいいとは思うんだけど」
「ええはい……綺麗と言ってもらえて嬉しいです。あ、でも体はこれで普通なんですよ。子実体的に傘の部分はすぐ溶けちゃいますけど柄の部分は比較的最後まで残りますから」
そんな風に説明してくれた。
人型の子実体のどこが傘でどこが柄なのか謎だったが。
とりあえず一夜さんの場合、髪の毛が傘、残りが柄などに対応すると考えて良さそうだ。
傘に対応する髪の毛は溶け始めていても他の部分は最後まで残るというわけだ。
とりあえず体まで溶けてるようなことがなくて俺は安心する。
そして俺の右手側ではかほりさんも服を脱ぎ始めていた。
かほりさんが服を脱ぐとマツタケのいい香りが脱衣所の中いっぱいに広がる。
食欲をそそられる香りだ。
あみちゃんの体がアミタケ味なのはすでに確認済みだが、かほりさんの体もやはりマツタケの味がするのだろうか。
頼めば舐めさせてくれるだろうかと考えつつ俺はかほりさんの体も正面からじっくりと眺める。
そうして眼福に浸っていると、俺のお尻に突如衝撃が走った。
「えへへー」
あみちゃんが裸になって俺のお尻に体当たりしている。
そのまま俺のお尻に顔をうずめてぐりぐりしていた。
男の尻に顔をうずめて楽しいのかすごく疑問である。
だがあみちゃんが幸せそうなので放置していると、俺はさらなる不意打ちを食らってしまった。
「えーい」
そう言ってあみちゃんが俺のズボンを勢いよく下ろす。
予想外に上手な動きで中のパンツごと一気に下げてきた。
不意打ち気味に俺のキノコ君があらわになってしまう。
だがここは隠すべき場面ではない。
一夜さんもかほりさんもすでに服は脱ぎ終えている。
その姿を俺はガン見しているわけで、俺だけが体を隠すことなど元より許されるわけがないだろう。
みんなの体をガン見していたせいで俺のキノコ君が大変なことになっていたりもするのだが。
そうしてあらわになったキノコ君を一夜さんとかほりさんが興味深そうにじっと見つめる。
二人して近くに寄った後、しゃがんで俺のキノコ君をじっくりと観察していた。
「本当に……見れば見るほどタケリタケですね」
俺のキノコ君を眺めつつ一夜さんが感想を述べる。
「人間の中に時々の、この部分を指して俺のマツタケがどうこう言う輩がおるのじゃが、ワシはそういう輩に本当に言いたい。それはマツタケではなくタケリタケじゃと!」
俺のキノコ君を眺めながらかほりさんも熱く語っていた。
どうやら俺のキノコ君はタケリタケのキノコ君だったようだ。
確かに俺の今の名前、ヒポミケス・ヒアリヌスという名もヴィロサ嬢がタケリタケから取ってつけたものだ。
俺はそのタケリタケがどんな形のキノコなのか全く詳細を知らないのだが。
そのことについて俺はこれまで気にもしていなかったが、一夜さんもかほりさんも俺のキノコ君をタケリタケだと言っている。
もしかしてタケリタケって……本当に猛り茸だとでも言うのか。
一夜さんとかほりさんに熱心に見つめられて、正に俺のキノコが猛り茸! 状態ではあるのだが、この状態の俺のキノコ君にタケリタケはそっくりだとでも言うのだろうか。
ものすごく気になる。
この世界にネットがあればすぐにでも『タケリタケ』で画像検索をかけてる所だ。
だがこの世界にそんな物はない。
俺は悶々とした気持ちを抱えつつ、俺のキノコ君みたいなキノコがタケリタケなのかとなんとなく想像するしかないのであった。
「大変興味深い物を見られました。ありがとうございますヒアリヌスさん」
そう言って一夜さんとかほりさんは立ち上がった。
二人とも満足してくれたようなのでいいだろう。
「では今から目隠しをかけさせてもらいます。宜しいですねヒアリヌスさん」
「ああ頼む」
一夜さんが俺の後ろに回って手ぬぐいで目隠しをかけてくる。
「温泉に入ってもあみがすぐ変色するわけではないのじゃが、一応念のためにの」
そうして俺は目隠しをかけてもらい、左手を一夜さん、右手をかほりさんに引いてもらって脱衣所から温泉のある外へと出た。
目隠しされたまま歩くというのは緊張するが、それと同時になぜか少し興奮する気もする。
ちなみにあみちゃんは再び俺のお尻にダイブしていた。
こんな感じでドキドキの温泉タイムは始まるのである。




