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13 素通 あみ(網茸の少女)

「ではおたっしゃで。またいつでも村に遊びに来てくださいね」


 ふもとの村で少しの休憩を挟んだ後、俺達はすぐに瑠璃小路るりこうじ嬢の屋敷へと出発した。


 ちなみにかほりさんも一緒である。


「ワシもしばらく屋敷に顔を出してなかったからの。たまには顔を出しておかんと、生きておるのかどうかも向こうじゃ分からなくなってしまうじゃろうからの」


「本当にそうですよまったく。紫蜘といいかほりさんといい、東の国は自由すぎるキノ娘が多くて困ります。少しはルリルリ……瑠璃小路のことも考えてあげて下さい」


「分かっとるって。じゃからこうして顔を見せに行くと言っておるじゃろうに。確かに瑠璃小路は、本来引っ込み思案なのに長の仕事を良く頑張っておる。それに甘えてしまっておる面があるのも確かじゃからの。ワシも東の国に住むキノ娘の一人として、彼女の負担を減らしてやりたい気持ちもあるわけじゃしな」


 そんなことを話しつつ、俺達は瑠璃小路嬢の屋敷へと到着した。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 瑠璃小路嬢の屋敷は小高い丘の上に立っている。

 屋敷の入り口となる門の下などは石畳で覆われていたが、門をくぐった先にも緑が多いのが特徴の屋敷だった。


 一言で言うなら豪華な日本庭園と言った感じだ。


 色とりどりの草木や花が咲き誇り、幻想的な雰囲気を形作っていた。

 その先にある家屋も純和風で、全体的に華やかな京都っぽい印象を受ける屋敷だ。


 その瑠璃小路嬢の屋敷には小さな女の子が数人住んでいた。

 キツネみたいな尻尾を持つ双子っぽい娘達に、頭にツバキやホオノキの髪飾りを付けた娘達など。


 みんな小中学生くらいに見える。


 だが見た目では人間と区別のつかない娘もいるが、彼女らは全員がキノコの娘だという話だった。


 そしてその娘達の一人、素通すどおし あみというキノ娘が広い屋敷の中を案内してくれている。



 素通 あみは全体的に黄色っぽい感じの和服娘だ。

 黄色い着物に、赤紫色の帯と襦袢じゅばんを着けている。


 襦袢は着物の下に着る肌着のようなものだが、東の国のキノ娘はその襦袢の上から着物を着ている娘が多い。

 襦袢がワイシャツで、その上からスーツのように着物を着てると言えば分りやすいか。


 その襦袢が襟元や袖先、膝下などで着物の中から覗いているのが色的なアクセントとなっているわけだ。


 この構造は一夜さんやかほりさんも同じなのだが、黄色の着物から紫色の襦袢を覗かせているあみちゃんはアクセントとしてよりよい感じに効いている気がする。

 中学生くらいに見えるあみちゃんの可愛らしさをより引き立てていると言えるだろう。


挿絵(By みてみん)


 そのあみちゃんの髪は金髪のおかっぱ頭で、少し光沢があるように感じられる。

 その金色の髪に松ぼっくりの飾りがついたかんざしを刺しているのだが、おかっぱ頭にどうやってかんざしを留めているのかは少し気になるな。


 普通なら髪を巻いてもいないとかんざしが留まる場所がなく地面に落ちそうなものなのだが、彼女の髪は人間のとは構造的に違うのかも知れない。

 その証拠に、あみちゃんの髪の内側は不規則に穴が開いていた。

 というか髪の裏側が網目状になってるというのが正解か。


 キノコの娘の体は人の形をしているだけであくまで子実体であるという。

 やはりあみちゃんも人の形をしたキノコということなのか。


 あみちゃんはアミタケのキノ娘でかなりおいしいという話も聞く。

 食べるのはなしにしても舐めるくらいはしてみてもいいかも知れない。



 ちなみに俺は今、そのあみちゃんを背中におぶっていたりする。

 これはあみちゃんの方からねだってきたもので他意はない。


 あみちゃんは笑顔の可愛い柔らかい印象のキノ娘なのだが、人懐っこい娘でもあるようだ。


 ただしあみちゃんは無乳なので背中に胸の膨らみを感じられないのだけは少しだけ残念だった。


 のだがこのあみちゃん、全体的に少しベトベトしている気がする。

 ベトベトというかぬめぬめ?


 あみちゃんの全身が全体的にヌメリを帯びているのかも知れない。

 俺の首を通って前に出ている指先も同様にぬめっているように思われた。


 やはり人間とは体の構造が違う。

 俺はもう知的好奇心を抑えることが出来ずあみちゃんにお願いをしてみた。


「あみちゃんの指、ちょっとだけ舐めさせてもらってもいいかな?」


「うんいいよー。はい。舐めて舐めてー」


 自分で言ってひどいセクハラだと思ったがあみちゃんは笑顔で指を俺の口の前に持ってくる。

 あみちゃん、本当にすごくいい娘である。


 そして本人の了承も得て俺はあみちゃんの指を舐めさせてもらった。

 あみちゃんの指を舌の上で転がすとアミタケの温和な味をハッキリと感じ取ることが出来る。


 やっぱりキノコだ。


 あみちゃんの指はヌメリといい味といいキノコ的にすごくおいしかった。

 思わず食べてしまいたくなるほどだ。


 だが俺はキノコの娘を傷つけるつもりはない。

 だから食べたくなる気持ちを抑え、俺は舐めるだけに留めてあみちゃんの指を舌でじっくりと味わうのだった。


「えへへ。あみの指ぬめぬめしておいしいでしょー」


「ああ最高だよあみちゃん。思わず食べちゃいたくなるくらいだ」


「えっへん。あ、でも噛んだりしちゃ駄目だよー。どうしても食べたかったら普通のキノコ出してあげるから。だから指は食べちゃ駄目ー」


 そういえばキノコの娘は人間状の子実体から普通のキノコを生やすことも出来るのだった。

 そこから考えれば、舐めるまでもなく彼女達の体がキノコであるのは明白だ。


 しかし実際に体験しなければ分からないことも存在する。

 彼女達の体がキノコだと頭では分かっていても、実際に舐めてみなければこんなにおいしいとは分からなかっただろう。



 俺はあみちゃんの指を舌でじっくりと味わいながら、キノ娘の体が本当においしいキノコなのだという事を頭ではなく五感で理解するのであった。


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