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03 クサビラ界

 俺はクサビラ界についての説明をヴェルナから受けた。

 まとめるとだいたいこんな感じだ。


 まず、クサビラ界って言うのはかなりカオスな世界らしい。

 ヴェルナの住む辺りは良くある中世ファンタジーっぽい世界のようなのだが、場所によっては和風な国やかなり文明の発達している国もあるのだとか。


 そしてヴェルナ自身はクサビラ界の人間ではないらしい。

 というか人間ですらなくキノコなのだとか。



 ……いや、これ聞いたとき俺はちゃんとつっこんだよ。

 魔王じゃねえのかよってとこも含めて全力でつっこんださ。


 そしたら上の口に「細けぇこと気にすんじゃねぇよ。喰うぞ!」って言われた。


 ヴェルナちゃんマジ凶暴。

 そしてコートに隠れて見えない下の口では「つまり……キノコの魔王なのです」とか言っていた。


 俺は色々つっこみたかったが長くなりそうだったのでとりあえず続きを聞く。



 クサビラ界ってとこはとにかくカオスな世界らしいのだが、そこに百年ほど前に現われたのがヴェルナ達『キノコの』とのことだ。


 そしてヴェルナ達がやって来た時のクサビラ界はひどい有様で、いかにもファンタジーな魔王が世界を支配していたらしい。

 だがキノコの娘達の手により魔王及び魔王軍はわずか七日で滅びる。

 ヴェルナが言うには「全員毒殺で余裕でした」とのこと。


 後に『毒の七日間』と呼ばれる地獄が顕現したかのようなその期間を経てクサビラ界には平和が訪れたという事だ。



 それから百年。


 今ではキノコの娘達は神様みたいに各地で崇められているということだ。


 そういうわけでクサビラ界は現在平和らしいのだが、ヴェルナは現状にご不満のようだ。

 そもそも現地の人間と関わる機会が少ないのでつまらないのだとか。


 これは現地の人間たちがヴェルナ達を神様扱いしているのも理由の一つだが、ヴェルナ達の方にも気軽に人とは交われない理由がある。


 それは毒だ。


 キノコの娘達は、大抵の娘が毒を持っている。

 それも七日間で世界を征服出来るような超強力なやつだ。


 もちろん中には毒のないキノ娘もいるそうだし、気を付ければ毒を出さないように出来るキノ娘もいるそうだ。


 なのだが、人間の方がどうしてもキノコの娘達を畏怖いふしてしまうのだとか。

 ……まあ世界を七日で征服してりゃそうもなるわな。


 そういうわけで、現在キノコの娘達は腫れ物にさわるかのように人間達から恐れ敬わられているそうなのだが、この現状をヴェルナは変えたいらしい。


 百年も経ったのだから少しは現地の人間達とも仲良くしたいと言うわけだ。


 ちなみにそういう考えを持つキノ娘は他にもいるそうで、毒のないキノ娘なんかは既になじむことに成功して人里に住んでる者もいるとのこと。


 だが人との接し方が分からずに失敗してしまうケースが多いのだとか。


 特に毒のあるタイプの娘が何度か失敗を繰り返しており、今では毒のあるキノコの娘は人里に住もうとすること自体を禁止されているとのことだ。


 しかし人と接触しなければ、いつまでたっても人との接し方が分からない。


 そこでキノ娘が人里に出るのではなく人の方を呼んでしまおうと考えたわけだ。

 そうして人里に定着していたキノ娘をつてに人間を呼ぼうと思ったそうだが、そこで一つの問題が持ち上がる。


 普通の人間では、キノコの娘達の生息圏にすら入れないと言う問題だ。



 キノコの娘達は世界を七日で滅ぼ……もとい平和にするほどのとてつもない毒殺能力を持っている。


 もちろん本人達の意志で毒性を弱めたりも出来るということだが、普通に暮らしているだけでも周りに常時毒をばら撒いている状態なのだ。

 そのため普通の人間では、彼女たちの住処には近づくことさえ出来ない。


 この問題は実に深刻で、クサビラ界全土を探しても彼女たちの生活圏で共に暮らせるような人間は皆無だったのだそうだ。


 そうして皆があきらめかけていた頃に俺が発見されたというわけだ。



 異世界から俺を発見した方法については、そういう能力を持つキノコの娘がいるらしい。

 その子があきらめずに色々電波的なものを受信してたら俺がひっかかったと言うことだ。


 そして異世界間を移動できる能力を持つ別のキノ娘の力で、ヴェルナがここへとやって来た。


 来たのがヴェルナだった理由については、転移の方法がキノコを媒体にするためだとか。

 なんでも波長が合う、というか自分と同じ種類のキノコを媒体として異世界に実体化するというのが彼女達の世界の越え方らしい。


 ちなみにヴェルナと波長が合うのは俺が昨日食べた白キノコちゃん。

 一本だけ残していたキノコちゃんを媒体にヴェルナはこの世界に実体化したという話だった。



「説明はこれで以上です。……では行きますよ変態さん」


「いや待て、話は分かったが俺はまだ行くとは言ってないぞ」


 そう言うと、ヴェルナは驚いたような顔で俺を見た。

 ヴェルナは表情が乏しいので感情を読みづらいが多分本気で驚いている。


 ……そして彼女はこう言った。


「まさか……この世に未練があるのですか変態さん」


 いや、うん。

 さすがに今のはひどいぜヴェルナちゃん。

 確かに正直言うとこの世界に未練はなかったりもするし、俺は行かないとも言ってはいない。


 だが未練のあるなし以前に、まだ足りていない情報がある。

 だから俺はヴェルナに聞いた。


「ヴェルナちゃんの事情についてはだいたい分かった。だが一つだけ気になる点がある。それは俺自身のことについてだ。君の煙が効かなかったんだから今の俺は毒に耐性があるんだろう。だがそれはなぜだ? ヴェルナちゃん、俺が寝てる間に何かした?」


「……え?」


 尋ねると、ヴェルナは今までで一番驚いたような顔をしていた。


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