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01 アマニタ一族

 二つの御三家による壮絶な戦いから一夜が明けた。

 俺は疲れからくるまどろみを感じつつ目を覚ます。


 すると……目の前には可愛いヴェルナの顔があった。

 ヴェルナはまだぐっすり寝ている。


 俺はこの世界に来た二日目の朝に、帽子の口に噛まれて目覚めるという苦い経験をしている。

 だがヴェルナは寝起きが凶暴という事はなかった。


 俺が押しつぶしたりとかしなければ、基本的に朝は俺の方が早いのだ。

 ちなみに今朝の体勢としては、ヴェルナの方が俺の上に乗っかってきていた。


 俺はヴェルナに乗られても痛くもかゆくもないので何も問題はない。

 むしろヴェルナがすごく可愛かったので軽めに抱きしめたりしてみたりする。


「……ん? ……朝なのですか?」


 抱きしめた拍子に目が覚めてしまったようだ。


「ああ朝だぜ。おはようヴェルナ」


 そう言って、俺は改めてヴェルナを優しく抱きしめた。


「……寝起きからぎゅっとかされたら恥ずかしいのです」


 などと可愛いことを言ってくる。


 ちなみにヴェルナは朝に弱い。

 だから目が覚めた言っても完全に頭が回っているわけではないのだ。


 そのため寝起きには、俺が多少セクハラめいたことをしてもするどいツッコミは返ってこないのだった。



 そうして幸せな朝の目覚めを味わった後、ヴェルナと一緒に食事を取る広間へと向かう。

 その頃にはヴェルナの頭も覚めてきて、ヴェルナは朝から抱きしめられたことを思い出して顔を真っ赤にさせたりしている。


 もちろんヴェルナは性格の悪い娘などではないので時間差で反撃してきたりすることはない。

 だから目覚めの恥ずかしい出来事を思い出しても文句を言ってくることはないのであった。


 真っ赤な顔でこっちをちらちら見つつ何か言いかけそうにはしているが。


 ヴェルナの部屋で寝起きさせてもらってた一週間も文句は言われなかったしな。

 今日は久しぶりだったからヴェルナの顔がより真っ赤になってる感じはするが、やはり何も言ってはこなかった。


 帽子についてる上の口の方はぶつぶつ言ってる気もするが。


「……一緒に寝るたびいつも抱きしめやがって。誘ってんのか? ……誘ってんのか?」


 …………。

 多分俺の聞き間違いだろう。


 本当に俺が誘ってたらどうするつもりなのかとすごくツッコミたかったが。

 もし下の方の口で同じセリフを言って来たならその時つっこむということにして深くは考えないことにしておく。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 そんなことを考えている間に広間へついた。



 今日はこの城にいるアマニタ一族が勢ぞろいしているな。


 俺がこの世界に来た初日はファルがいなかったし、翌日からはヴィロサ嬢が城を空けていた。

 そのため、アマニタ一族が全員揃うのを見るのは今日が初めてだったりする。


 アマニタ一族は全部で十人がこの城に住んでいる。

 ただし猛毒御三家と呼ばれる姉妹はヴィロサ嬢、ファル、ヴェルナの三人で、後は親戚のようなものだと言っていた。


 ただまあ、この辺りについてはかなりいい加減な所もある。

 猛毒御三家の三姉妹自体も血がつながってたりするわけじゃないからな。


 そもそもがキノ娘は生態からして人とはまったく違う。

 だから彼女らが親戚だの姉妹だの言っているのは……ぶっちゃけ本人達がそう言っているだけだろう。


 言うなれば義兄弟みたいなものだろうか。

 まあ……彼女らはそれくらいに仲がいいという事だ。



 ちなみに食卓には残り七人のアマニタ一族も座っているわけだが、猛毒御三家の三姉妹以外とは俺はそこまで仲良くなってなかったりする。


 俺が一週間足らずで城を出たのも理由の一つだが、彼女ら自身がそこまで人と関わることにメリットを感じていないと言うのも理由の一つだ。


 特に俺から一番離れて座っているムスカリア嬢などはあきらかに俺を嫌っているようにすら感じられる。


 俺のオレンジ色の髪色が嫌いだとかなんとか。

 というか、後から聞いた話だと彼女はタケリタケが凄く嫌いらしい。


 この世界に来る前にタケリタケの被害をもっとも受けてたのが彼女だそうで、俺がタケリタケを意味する名前、ヒポミケス・ヒアリヌスを名乗るようになってからは近づくことすら完全に忌避されてしまっている。


 ……ムスカリアさん、たまにハエでも見るかのような目で俺を見るんだよな。


 ヘタに近づくと笑顔のまま容赦なく傘でめった刺しにされそうだ。

 そのため俺は、ムスカリアさんにはあまり近づかないようにしていたりもする。


 まあそんな感じでアマニタ一族にも色々なキノ娘がいるのだが、俺は彼女らともきちんと問題を起こすことなくやっていた。


 こうして一緒にご飯も食べてるしな。



 そうして朝食タイムを楽しんでいると、真面目な顔でヴィロサ嬢が話を始めた。


「さて……皆も揃っているところで、今後の予定を話しておくわね。実は私、しばらく東の国に行こうと思うわ」


 ヴィロサ嬢の言葉に、食事をしていた全員が驚く。



 アマニタ一族だけではなく、当然のように一緒に食事していた月夜嬢達、キノコ食中毒の御三家の三人も驚いていた。


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