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『ぴかぴかきらきらお星さま、夜空にぽつんと浮かんでる』


 最初の「ぺーじ」は一面の真っ黒い絵と、真ん中に一つだけ描かれた丸い星。


『ぴかぴかきらきら瞬いて、お空に一人、浮かんでる。とっても綺麗なその光、友達たくさん引き寄せた』


 「ぺーじ」の真ん中に描かれた星へと、六つの小さな光が集まっていく。


『友達たくさん集まって、一人ぼっちのお星さま、一人ぼっちじゃなくなった。ぴかぴかきらきら嬉しくて、たくさんたくさん光ったよ』


 さっきよりももっとたくさんの光に囲まれて、真ん中のお星さまが一際大きく輝いてる絵だ。


『わぁ、なんて綺麗なお星さま! お星さま見つけた女の子、お空を指差し叫んだよ』


 次の絵では地上で夜空を見上げてる女の子が一際大きく輝く星を指差してる。

 ぺらり、と次のページをめくる。


『私、あのお星さまが欲しい! その声聞いた女の子のお父さん、よしよし分かった待っててね。頭を撫でて笑ったよ』


 そこに載ってたのは女の子と、その子に手をひかれた男の人の絵。女の子はさっきの星を指差してる。


『お空に上がったお父さん。こらこら、邪魔だ。どきなさい。お星さまのお友達、おっきなおててで追い払う』


 たくさん集まった光を追い散らしながら、さっきの男の人がお星さまに近付いていく。


『お空に上がったお父さん、お星さまを捕まえて、女の子のところに戻ったよ』


 ページをめくった先にあったのは右手に光り輝くお星さまを握った男の人が、地上で待つ女の子のとこへ降りていく絵だ。


『おいでよ私の可愛い娘。お前の好きなお星さまだよ。わぁい、ありがとうお父さん! お父さんと女の子、お星さまを捕まえていつまでも仲良く幸せに暮らしたよ』


 左手にお星さまを持って、右手をお父さんとつないだ女の子の絵が最後にあって、この本の物語は終わりだった。


 なんだろ、この話? なんか良く分かんない物語だったな……。上手く言葉に出来ないもやもやを感じつつ顔を本から上げると、そこにはさっき出てったはずのセインがいた。


「うわっ!? お、お前いつの間に……!?」

「さっきからいましたよ。ただ、リーオはその本に物凄く集中してたみたいで、全然気付いてなかったみたいですけど。一応ここに戻って来た時に声をかけたんですよ?」


 がたん、とイスが揺れるくらいの勢いで身じろぎした僕を見て、セインが苦笑を浮かべながら肩をすくめた。


「ぜ、全然分かんなかった」

「熱心に読み耽ってましたからね、仕方ないですよ。それで、どうでしたその本? 面白かったですか?」

「え……っと、うーん、なんだろなぁ」


 どうって言われても、なんて言ったら良いのか分かんなくて言葉に詰まっちまう。うーん、なんかこう、言いたい事はあんだけどそれがはっきりと形になんなくて、喉元まで来てんだけどそっから上にやってこない。なんつーか、すっごくもどかしい気分。


「ごめん、上手く言えないや」


 しばらく胸の中のもやもやと格闘してみたけど、結局考えをまとめる事は出来なかった。


「いえ、何かを感じてくれたのは分かりましたから、今はそれで充分です」


 がっくりと肩を落とした僕をセインが励ましてくれる。でも、こいつはなんでこんな変な話を僕に読ませたんだろ? やっぱ簡単だからかな?


 訊いてみようかと思ったけど、やっぱりやめといた。今訊いてもどうせ良く分かんないだろうし、もっと色んな話を読んでからで良いや。


「さて、それじゃあ夕飯にしましょう」

「え、もうそんな時間!?」


 慌てて後ろを振り返れば、窓の外は真っ暗。うっわ、いつの間に。

 窓を背にして座ってたから全然気付かなかった。昼間っから明かりついてたからってのもあるかもだけど、それでも本一冊読むのに時間かかり過ぎ。これじゃ、怪我治るまでにここにある本全部読めないじゃん。


「夕飯食べ終わったらまたここにいて良いですから、そんな顔しないで下さいよ」


 ぶすーっとむくれた顔でもしてたんだろ。僕の顔を見たセインが困ったように笑いながらそんな風な事を言ってきた。


「むー……よし! さっさと食べてさっさと読む! それでいく!」


 ばん、とテーブルに勢い良く両手をついて立ち上がったのは良いものの、ついでに両足もおんなじような事しちゃったからほぼ一日ぶりくらいに足の痛みで悶える事になった。

 今日一日ほとんど動いてなかったから忘れてたけど、足折れてんだった僕。


「ここをそんなにも気に入ってくれたのは嬉しいですけど、無理はしちゃ駄目ですよ」


 そう言うと、「はい」とそれまでイスの背に立て掛けてあったらしいなんか細長いものを僕に差し出してきた。


「リーオの身長に合わせて作った杖です。そのままだと移動に不便だろうと思って、今日の昼に作っておきました」


 差し出されたのは木製の松葉杖だった。ためしに脇に挟んで立ってみると、確かに僕の背丈にぴったりだった。うん、これなら壁に手ぇついて移動しなくて済むから、かなり移動が楽になる。


「おぉ、ありがとな。でも、いつの間に僕の身長なんて測ったんだ?」

「俺の目は高性能ですから、一目見ればだいたいの大きさは見当がつきます。それに、抱っこしたりおんぶしたり、リーオの身体には何度も触れてますからね」


 にこっと爽やかな笑みを浮かべてんだけど、なんとなく変態っぽいように聞こえたのは僕の気のせいだろうか。


「まぁ、良いや。何度も言うけどありがとな、セイン」


 こつ、こつ、と木の床に小気味良い音を響かせながら僕達は夕飯を食べに居間へと移動した。

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