日常5
「るーるる、るるる、るーるる」
「あら、ゴキゲンね」
れいこさんは、鼻歌を歌う僕を見ると少し驚いたように声をかけてくる。
いやー清々しい。
「今日はこいつ、なんだか明るくてさ!」
「あら、珍しい」
明るい気持ちになると、さまよう霊も
陰険な雰囲気だってどこかへ吹っ飛ばす。
普段の苦労がまるで嘘のようで
全く聞こえないけど、褒めくり倒したくらいだ。
「たまにはいいことがあるもんだ」
「あら、あのー、言いづらいんだけど」
ちょちょい、とれいこさんが手招きする。
なんだなんだ、この素晴らしい気持ちの時に少し震える指先が指すのは男が捨てたゴミ箱。
「え…」
「ああ…」
なんてことだ。
大量に薬を飲んだ空箱がそこには捨ててあった。
「こんちくしょー」
ぐったりと倒れた男を
透けるのを分かっていながら飛び蹴りをしたのは仕方ないことだと思う。
「あなたのご主人、ある意味すごいわね」
守護霊の目を掻い潜って
短い時間でいつの間にか大量の薬を飲んだことか
それとも買い込むのを見せなかったことか
「しかも、お前これサプリじゃん…」
なにより、焦って箱を確認するとお食事後のサポートに!なんて文字がカラフルに踊る。
こいつは何がしたいのか。心なしかぐったり倒れてると思った男はスピー、と寝息までたててやがる。
寝てるだけかよ!!
「決めた。俺いつか受肉してこいつを殴るんだ…」




