日常2
「あーもう疲れた」
この男は本当に何を考えているのか。
いや、考えてることはわかるよ?
分かるから嫌なんだよ!
「どうしたの?」
男の肩の上で地団駄を踏むが、当然踏めないわけでそれがさらにイライラを募らせた。
「こいつ今日だけで何人にとりつかれそうになったと思う?!八人だよ?!」
「また多いわね」
ああいう悪霊と呼ばれている霊は寂しがり屋なのだ。
この男のように不穏なことばかり考えていると気持ちを近しいものを感じてやってくる。
悪霊になりきっている霊なら簡単な話でぶっちゃけ勝つか負けるかで話は決まる。
この男が引き寄せるのは、話せば分かる霊で道に迷っているようなものだから大変なのだ。
「もう何人説得したかわからないくらいだよ」
あらあら、と霊子さんは苦笑いを浮かべる。
霊子さんは言わばここで順番を待っているようなのである意味あの世公認。
普通にいても問題はない。
道に迷った霊にとりつかれると多かれ少なかれ気分や体調に異変を感じるもので、守護するほうとしては放って置くわけにはいかないのだ。
それをこの男はちょっととりつかれても、肩が重いくらいしか感じないし、それすら忘れてしまうからこっちとしては報われない。
少しは霊の存在を認めればいいのにそれもしない。
「ああ、いっそポルターガイストでもおこしてやろうか」