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ほんとありがとうございます\(^^)/
それにしても、あのオオカミもどきがCランクのモンスターだったなんてね。 簡単に倒しちゃったけど大丈夫なんだろうか?
でも、まぁ本来であればSSランクのドラゴンを倒せるほどの実力があるから、Cランクなんて造作もないんだろうけどね。
そんなことを悶々と考えながらお姉さんの帰りを待っていると、カウンターの奥からお姉さん…ではなく、背の高い厳つい身体をしたワイルドなおじさんが現れた。
白髪の混じった赤い髪は短く立たせており、ヒゲは綺麗に整えられている。
10年若ければさぞかしモテただろう大人の色気を漂わせたおじさんはあごヒゲを擦りながらゆっくり此方へやってきた。
『…ほう、こりゃまたえらいベッピンさんだなぁ。お前、俺の女にならねぇか?』
ニヤリと口角をあげ宣うおじさんに私は思わず『はぁ?』と声をあげる。
何言ってんだこのオッサン。いくら二枚目でも、そりゃないでしょ。
私のアホ面がそうとう面白かったのかおじ…もとい、オッサンはガハハハと上を向いて豪快に笑い出した。
『いや〜すまんすまん、冗談だ。それにしてもこの俺様の口説き文句が通じんとはそろそろ年かなぁ』
『当たり前です、マスター。それよりまた口説いてたんですか!?マスターの冗談(口説き)が通用するのは奥様方だけです。自重してください』
『相変わらずリーシャは辛辣だな〜。まぁあんな思いは二度とごめんだしな。お前さんの忠告を聞いておくよ』
マスターと呼ばれたオッサンは後からやってきたお姉さんを振り向くと苦笑しながら肩をすくめた。
その後、私のほうを振り向くと今度は人好きのする笑みで片手を差し出した。
『俺はここのギルドマスター、ジャック=ライターだ。マスターって呼んでくれ。そんで、隣にいる先ほどお前さんの対応をした女はリーシャ=ケルト。ここの受付を担当している者だ。よろしくな』
『私はルイ=キタモトです。よろしくお願いします』
差し出された手を握手しながらお互い自己紹介をする。
リーシャさんとも握手をした後、改めて目の前に立つマスターに向き直った。
『ところで本題だが、このホーンウルフを倒したのはお前さんでいいんだよな?』
『はい、そうです』
『それでだな、本来ホーンウルフはイーストウッドの森に生息しているモンスターなんだが、ここ最近平野を歩く行商人や旅人を襲うようになってな。あまりにも数が多いからCランクの定期討伐として自治体から依頼されてんだ。報酬は角一本につき一千ルスト、合計三本だから三千ルストだな』
そう言うとマスターは手に持っていた革袋から銀貨を三枚取りだし、私の手のひらにそれを乗せる。
チャリンと重みのある銀貨は500円玉くらいの大きさで、神様から授かった通貨の知識では銀貨一枚で庶民が半月暮らすことができるはずである。
えーと…たしか1ルストが赤銅貨一枚で10ルストが青銅貨一枚、100ルストが黒銅貨一枚で、1000ルストが銀貨一枚、10万ルストが金貨一枚だよね。
この世界では全国通貨が統一されているためとても楽である。
しかも、物価が安いのか一般庶民は赤〜黒銅貨、銀貨しか使わないため、金貨は中流階級か上流階級の貴族さらには王族しか扱うことがない代物だ。
ここの物価は実際目で見てみないと知識だけではわからないので市場があったら一度見て回ろうと心に決めた。
『それは今回の討伐の報酬だ。それでだな、本来だったらEランクの者はCランクの依頼を受けることは出来ないんだが今回は特別にお前さんの腕を見込んで、イーストウッドの森に住むホーンウルフの討伐をしてきてほしい。最近、奴等の被害が多くて、行商人どもが護衛をつけても安心して平野を通れなくなっちまったんだ。そうだな、大体10体倒してくれりゃあ俺からも報酬を上乗せするし、ランクをEからCにあげてやるぜ?Cランクになれば一気に討伐依頼や採取依頼も増えるし護衛依頼も出来るぞ?どうだ、この話乗ってみねぇか?』
マスターは顎を手で擦りながらニヤリと此方を見て笑う。
私もその挑戦的な眼差しに答えるようににやっと口角を上げた。
『もちろん、その依頼引き受けましょう。私ももっとたくさん依頼を受けれるようになりたいんで…』
『よし!そうとなれば決まりだな。討伐は今日でもいいし明日からでもいいぞ。ただし無理はすんなよ。あそこの森はCランク以上のモンスターはいないが奴等は数で迫ってくるからな。危ないと思ったら即刻逃げるんだぞ』
『わかりました。それで、マスター。今日この村に来たばかりでまだ宿を取っていないのですが、比較的安くて良い宿ってご存知ですか?』
『比較的安くて良い宿ね〜。それならちょうど良い宿があるぞ。この表通りを真っ直ぐいって一番初めの十字路を左に曲がると突き当たりに《フェアリー》という宿屋があるんだ。そこの女将さんがこれまたベッピンなおか『マスター』…まぁ、その話は置いといて宿代は朝と夕食をつけて一泊50ルストだ。今はホーンウルフのせいで行商人や旅人も少ないから空き部屋はあると思うぜ』
『ありがとうございます。それじゃあ早速に行ってみますね』
まるで漫才のような二人のやり取りに苦笑した後、ブローチに依頼登録をしてもらい(水晶にかざすと依頼を受けた内容がカードに書かれていた)、左胸につけてからギルドを後にする。
そのまま表通りを歩き、マスターに言われた通り道を進むと目先に《フェアリー》と書かれたお洒落な看板を掲げた2階建ての宿屋が見えてきた。
『こんにちわー』
幾分か錆びた金の取手を引きながら店の中に声をかける。どうやら一階は食堂になっており今はお昼時なのか何人かの旅客が昼食をとっていた。
私が店の中に入るとカランカランとベルが鳴る音を聞いて『はーい』という声とともに30代くらいの上品な金髪の女性がカウンターの奥から出てくる。
『いらっしゃいませ。私は宿屋を経営しておりますアンナ=ジェラベルです。お客様はこちらにお泊まりになられる方ですか?』
『はい。ギルドのマスターに紹介されて来ました。部屋は空いてますか?』
『まあ、ジャックの紹介で?はい、部屋は2部屋空いてますので大丈夫ですよ。何日お泊まりになられますか?』
ふふ…と柔らかい笑みを浮かべながらアンナさんは答える。薄い緑色の瞳に柔らかい金髪の髪をまとめた彼女は確かにかなりの別嬪さんだ。今でもその美しさが衰えていないが、若い頃はさぞ美しかったに違いない。
あの手の早そうなイケメンマスターとどんな関係なのだろうか?
目の前の優しそうなアンナさんを口説くマスターの姿を想像しながらルイはバックから巾着を取りだすと、報酬として貰った銀貨を一枚カウンターの上に出した。
『取り敢えず5日間宿泊します。ギルドでお金を稼がなきゃならないんで』
少し悪戯っぽくウインクをするとアンナさんはくすっと微笑みながら銀貨を受け取る。
『わかりました、五日間ですね。少々お待ちください、お釣りを持って来ます』
そう言って奥に消えていく彼女は、少したってから木の器にお釣りを乗せて戻ってきた。
『五日間で250ルストになりますので、こちらがお釣りの750ルストです。お確かめください』
器には黒銅貨が7枚と青銅貨が5枚乗っていたが、それらはまるでオモチャのようなコインの色だった。
青銅貨は聞いたことはあったがこんな真っ青な色をしてただろうか?
黒銅貨なんて真っ黒だし……。
取り敢えず青いコインと黒いコインを巾着に入れるとアンナさんに連れられて2階の部屋に案内してもらった。
階段を上がると2階には4部屋あり右端の部屋の扉を開ける。
部屋の中は4畳半くらいの大きさで簡素なシングルベッドが置いてあり、側にはサイドテーブルが一つ、その上には水差しとコップ、可愛らしいピンクの花が生けられた花瓶が置いてあった。
『ここがルイさんのお部屋です。こちらがトイレ、お風呂になっています。お食事は下で食べれるようになっておりますので、朝食は6時、夕食は18時になったらいつでも声をかけてください。すぐに暖かいお食事をご用意いたします。また、昼食に関しては基本ご用意しておりませんが、希望があれば追加料金として一食6ルストでご用意いたしますので、そちらも機会があればご利用ください』
『ありがとうございます。あの、こちらは自由に外出してもいいんですか?』
よかった。どうやらお風呂はあるようだ。
それにトイレもあるようだし、見た感じ水洗トイレのようである。
この世界は中世ヨーロッパに似た世界だから清潔面に対して少し不安があったが魔法があるため生活水準も前の世界と同じくらい発達しているのだろう。
内心ほっと息をついた後、少し疑問に思ったことをアンナさんに質問してみた。
『はい、大丈夫です。ただ24時には扉を閉めてしまいますので、それ前に帰ってきてくださいね』
それからアンナさんにお風呂やトイレの使い方、冒険道具を一式扱っている雑貨屋さんの場所、イーストウッドについて聞いた後、ちょうどお腹も空いたので、ここで昼食を頂くことにした。
昼食はミネストローネに似たトマトスープにベーコンやポテトみたいな芋が挟まったマヨネーズ味のパイ、レタスに似たサラダを食べる。出されたジュースはイチゴ色なのにマンゴーのような味とトロミがありとても後味爽やかで美味しかった。
どうやら、カヤという果実を絞って作ったらしい。セレストリアで栽培されている最もポピュラーな果実らしく、一般庶民は常に口にしてるようだ。
よし、果物屋に寄ったら是非買ってみよう。
そう心に決めるルイだった。