異世界に行こう
少し編集し直しました。
内容は変わってません。
やって来ました―――!!
異世界(ウィスパニアinセンスタリア王国)です!!
私は意識の覚醒とともに目を開けると歓声(雄叫び)を上げた。
ちなみにここは人っこ一人いない平野なので赤っ恥をかくことはもう無いのである。ヒャッヒャッヒャッ〜♪
『おお!いつもより視線が高い!!なんか手足も長いしお腹とかくびれができちゃってますよ!?ウフフ♪憧れだった胸もDカップくらいある。服装は茶色で地味だけど動き安いし、この腰に刺さってる剣とか本物だよね?めっちゃ剣士っぽくてカッコいいんですけど!よーしどれどれ。まずはそこの川でこの私の素晴らしい容貌拝見しようではないか!ハハハハ』
端から見れば明らかに変人であるが少し先に流れている川まで全力疾走で走っていくと川辺に膝をつき、下を覗き込んでみた。
『おおおおお―――!!』
またもや歓声―もとい雄叫びが上がる。
ヤバい!ヤバすぎるんですけど!!
さっすが神ッ!人生初めて神に感謝するよ!!
私は天に向かってお祈りポーズをした後、もう一度じっくり顔を見るため川面を覗きこんだ。
穏やかな流れの川にはこの世界を基準とした容貌なのか彫りが深くも浅くもなくヨーロッパとアジアを足して2で割ったような容貌の美少女が此方を見て微笑んで(にやついて)いる。水面に映る真珠のような肌は透き通るように白く染み一つない。鼻筋もすっと通っていて、少しつり上がったアーモンド型の目元はきりりと凛々しさを醸し出している。さらにコバルトブルーの海のような色をした瞳は長い睫毛で縁取られていてくるんと程よくカールされていた。そして形のよい唇は薔薇色に染まり凛々しさに麗しさを添えている。 まさに、化粧要らずな美貌である。
『うわーオ○カルも地でいく美女っぷりだよ。いや、あれは金髪か。唯一この黒髪だけが転生前を思い出させてくれるよね』
私は自慢だったキューティクル抜群の艶やかな黒髪をさらりと耳にかける。
腰まであるこの髪は友達にとても羨ましがられていたのだ。
今後も髪色を変えたり短くすることは絶対ないだろう。
『それより、ここの美人度基準が高いでしょ。こんなのが前の世界にいたら確実に絶世の美女だから。それとも神様誤って基準値上げちゃったのかな?まぁ、そんなのどうでもいっか。確か能力では魔法と剣術が使えるはずだけど、試しに何かやってみるかな?』
川辺から平野へ戻ると人が誰もいないことを確認し目をつぶる。
まずは火の魔法でも使ってみよう。
えーと…
火、火、火といえば……
『ファイヤ―?』
ふっと頭の中に浮かんできた文字を言葉に出す。
すると――
ボンッ!!
という音とともに目の前の草地が燃えた。
『や、ヤバい!火事、火事、火事になる!えーとえーと、水、水っ―ウォ、ウォーター!!』
今度はこれでもかっていうほどの大量の水が空中に現れ、ザバァーー!!という音とともに炎の上へと降り注いだ。
『ふー…、何とか山火事になるのは防げた。それにしても威力強いなぁ、確か知識では初級魔法のはずなのに…。てかこっちの魔術って英語だったんだね、知らなかったよ。こりゃ少し魔法の練習が必要だね〜』
とりあえず魔力をコントロールできればいいのだが、何回か同じ魔法を繰り返しているとだんだんコツがつかめてきた。
練習する事約30分かなり魔法を使った気がするのだが、一向に魔力が途絶える気配がない。
どんだけあるんだよと思いながらもさらに30分練習していると知識の中にある基礎魔法をほとんど習得する事ができた。
まず魔法にはエレメントと呼ばれる火・水・風・地の4つの四大魔法があり、火は主に攻撃専門、水は攻撃+回復(癒し)、風・地は攻撃+防御の役割があることがわかった。
そして、さらに光、闇といった二大魔法もあり、光は主に回復(癒し)専門、闇は攻撃の他に姿を隠すなど実に便利な役割がある。
てか、四大魔法のほかに知識ではレアである二大魔法を使えるとかチートじゃね?
あの神様確実チート能力つけたよ。まぁ魔法もある程度できたから後々色々試してみるとして、今度は剣術でもやってみますか!
剣なんて今まで一度もやったことないし、格闘技とは無縁の生活だったから本当にできるか不安なんだよね。
まあ、剣をもってみないことにはわからないんだけど……。
腰のベルトに刺さっている何の飾りもないシンプルな長剣を鞘から抜き出し平行に構える。
お?なんかこの剣軽くない?
ぶっちゃけ片手でも余裕に持ち上げられるんですけど。
とりあえずゆっくり深呼吸すると剣の柄を両手で持ち斜めに剣を降ってみる。
剣は空気を切り裂くようにヒュンと音をたてると少しだけ切れた葉先が空に散った。
――あ…、何だろうこの感覚。
私、初めてのはずなのに、剣の使い方や身体の動かし方を知っている。
今度はもう一度精神を研ぎ澄ますと息もつかずに剣を右左と振り切っていく。
右、左、回転して凪ぎ払う……
イメージでは最近見た外国映画の騎士が戦うシーンを思い浮かべる。
するとそれと同じように身体や剣を動かすことができ、実に熟達した老戦士のようにしなやかな動きを見せることができた。
やばっ!!超楽しい!!
その他にも剣舞に回し蹴りや跳び蹴り、はたまたバック転なんてアクロバティックなものを加えてみる。
フフ…フフフフフ……。
故郷にいる兄さん。あなたの妹は、事故死を境に超スーパー身体能力を手に入れました。
将来サ○ケに出るために日々身体を鍛えていたあなたがこの姿を見ればさぞかし悔しがることでしょう。
私は剣を降りながら転生前にいた2つ年上の兄の表情を思い浮かべた。
日々鍛錬のためだとか言って妹にまでプロテクトを飲ませようとした兄との思い出は今となっては良き思い出と言えるだろう。
『でも、実際モンスターと戦ってみないとどこまでこの能力が通用するのかわかんないんだよなぁ〜』
まあ、ここは森の中じゃないし、見たところモンスターらしきものがいないからどうしようもないんだけどね〜。
平野でもモンスターとかいないのかなぁ。
よくよく目を凝らしながら緑豊かな平野を眺める。 すると右側に広がる森の手前の草の中からカサリという小さな音が聞こえた。 キラリとひかる金色の眼が草の合間から6つ此方の様子を伺っている。
およよ?あれはもしやモンスターかな?
と好奇心に満ち溢れた眼差しで見ていると、案の定それらはモンスターで、こちらが動かないのが解ったのかグルルッという唸り声をあげるとともに草の影から飛び出した。
『おお!オオカミ型モンスター発見!しかも三体とかついてるね〜♪』
私はにやりと不敵に笑うと長剣の柄を握りしめる。
目の前には鋭い角を生やしたグレーと紫の斑色のモンスターが鋭い牙を向け、此方にじりじりとにじり寄ってきた。
初めの2頭は剣で切って残りは魔法で倒そうかな。
頭の中で戦闘のイメージを整えると、足に力を入れ思い切り前に踏み出す。
それと同時にモンスターたちも牙を剥きながら跳躍してきた。
まずは一頭……
斜めに踏み込むと鋭い爪を避けるように上体を反らし剣を下から切り上げる。 シュバッという肉が切れる感覚とともに腹を斬られたモンスターは塵となって消えていった。
次は2頭目……
今度は一頭目を切った反動を使い、流れるように背後から剣を突き立てる。
グサリッと剣は心臓を貫くと、瞬く間に2頭目も塵となって消えてった。
残るは一頭……
最後は魔法を使うため反転しながらモンスターの攻撃を避けると左手をつきだし獲物に焦点を当てる。
『フレイム!!』
ファイヤ(火)よりも強いフレイム(炎)を唱える。
すると、ボンッ!!という音とともに一瞬でモンスターは赤い炎に包まれたかと思うと塵となって消え去った。
うん。大分魔力のコントロールが上手くなってきたかな。
もし、練習しないで初めっから中級魔法を唱えていたら半径6メートルの焼け地が出来ていただろう。
それよりも凄いね〜ここのモンスターは……。
てっきり死体は残るものかと思っていたけど跡形もなく消え去ってくれました。動物の死体とかグロいものを見慣れていない私にとっては実に嬉しい限りですな。
どうやら剣についた血?もモンスターが消滅すると同時に蒸発してくれるため、剣を拭う必要もない。
私はすっと剣を鞘に入れると、先ほど消滅したモンスターがいた場所に膝をつき草をかき分けた。
『さて、大体ゲームではモンスターを倒した後、何かしら倒された証拠を残していくんだけど……、お?…あったあった!!これたしかさっきのモンスターの額から生えてた角だよね?何で出来てんだろ?鉛みたいな色してる』
草地から3つ角を見つけると斜めがけの皮のショルダーバッグに入っていた柔らかい皮の巾着に入れそのままバックに入れる。
このバックには他にも戦争の時に使われていたような水筒と干し肉や乾パン、乾燥果実といった非常食、折り畳み式果物ナイフが入っていて、一日くらい野宿が出来そうである。
旅をするには他にも色々と要りようになってくるがバックはA4サイズの大きさなので、色々と物は入るだろう。
とにかく戦闘の手慣らしもできたことだし今は神様が言っていたように近くの村を探してギルドの依頼を受けたい。
ちょうど神様が村の近くに下ろしてくれたのか、平野には車一台ぶんくらいの道があり、少し先を見ると道が2つに別れていて、その間には木でできた道標が立っている。
そこまで歩いていくと、道標には《右に行けばイーストウッドの森、左に行けばウェストバリーの村》と書かれていた。
『おおー!さすが自動日本語翻訳機能!何だか知らないけど、ミミズののたくったような文字が簡単に読める。うーんと、左に行けば村に着くのか。よし!そうとなれば善は急げだ!』
道標から5分くらい歩き丘を登ると丘を下った先に赤い屋根が建ち並ぶ集落のようなものが見えてきた。 まるでヨーロッパの農村地帯のような村を見つけたら何だか一人海外旅行をしている気分になり嬉しくなって、鼻歌を歌いながらスキップを始める。
選曲はもちろん《ア○プスの少女ハ○ジ》。
ここはア○プスじゃないけどハ○ジである。
ラ〜リラ〜リ♪と歌いながら美女がスキップする様子は実に滑稽だろう。
いや…、滑稽を通りこして変人なのだが本人は気づく様子もなくピクニック気分を味わうのだった。