神様、登場
あーあ
最悪だ……。
もう、これ完璧に死んだわ。
人生これからだ!!って時に何トラックに轢かれてんだよ私。バカじゃん。
てかここどこだ?
意識あるってことは死後の世界にでも来たのかなぁ?
『ピンポーン!そぉの通り!!』
ん?誰だこいつ?
どこから聞こえるんだ?
見えない視界をキョロキョロとさせながらふいに脳裏に響いた声の主を探す。
『あー、それじゃ僕の姿見れないよねー。よし!これならどうだ!』
今度はえいっ!という掛け声とともに私の視界?は一度暗転する。すると次には目映い光に包まれ、ゆっくり瞼を開けて見ればそこには白髪に虹色の瞳をしたとんでもない美青年がにこやかな表情でこちらを見て立っていた。
な、なにこの人!?
神様ですか!!?
今まで見たことない人間離れした美貌に思わずあんぐりと口を開ける。
『アッタリー!いやー今回の《流離い人》は理解が早くて助かるね〜』
『……さ、さすらいびと?てか本当に神様だったんだ。あれ?私、言葉話せてる…?』
『そうそう、さっきまで霊魂だけの存在だったからね。ちょっとそれじゃ話しずらいから僕の力で君の霊魂を媒体に前の姿を具現化してみたんだよ』
へぇ〜、そうなんだ。
流石、神様。何でもアリなんだね。
『いやいや、こんなのお安いご用さ。僕も実態があった方が話しやすいからね』
『はぁ、そうですか。つかさっきから思考読むの辞めてくれません?』
『アハ、ごめんね。職業柄でついつい〜』
なんだ職業柄って。神様って職業だったのか?
つか神様ってもっと神々しいイメージがあったんだけど、なんかイメージ崩れるなぁ……
『君今ものすごい失礼なこと考えてるでしょ。まあ、いいや。それより君は実に物わかりがいいからね、特別に《流離い人》とは何か説明してあげよう。流離い人とは本来死ぬ予定が無かった者のこと示した呼称なんだ』
『え?じゃあ私は本来死ぬ予定じゃなかったってことですか?』
『そうゆうこと。北本瑠衣…君は本来だったら第一志望だった国立某大学を卒業した後、某大手企業に就職し、そこのエリート上司と25歳で結婚して3人の子宝に恵まれ優しい旦那と幸せな老後生活を営み100歳には子どもや孫に見送られ床の上で心穏やかにこの世を去るといった順風満帆な人生を送る予定だったんだよ』
『うわっなにそれ!超理想的な人生じゃん!それなのに何でトラックに轢かれて死んだの!?』
『問題はそこなんだよ。人にはそれぞれ決まった運命があって、君はその中でも誰もが羨むような人生を歩む予定だったけど、10億分の1の確率でその決められた運命が台無しになってしまうことがあるんだ。つまり何かしらの原因で死んでしまうことになるんだけど、決められた運命を全うできなかった者たち、通称《流離い人》は生まれ育った世界の輪廻から外されてしまってそのまま転生することも叶わず消滅してしまうんだ』
『え!?じゃあ私はこのまま消滅しちゃうんですか!?』
いやいや、いくら事故で死んでしまったとしても魂事態が消滅って可哀想過ぎるだろ!?
ここはやっぱ異世界トリップとかそういった落ちにならないんですかねー!?
私は内心焦りながら、心底動揺した目で目の前の神様を見つめる。
すると、神様はこちらが安心できるような微笑みを浮かべると背の低い私の頭を繊細な指先でゆっくり撫でた。
『大丈夫…。さすがにそれではあまりにも可哀想だからね。とくに君は恵まれた人生を送るはずだったんだ。僕がそうはさせないよ……』
……うわっ!何だこの殺し文句!!
超絶美形の必殺スマイルな上にそんなセリフはくとか惚れてまうやろーーー!!
私はボッと耳まで赤くなった顔を気づかれないように俯く。
すると神様は実に爽やかな笑顔で耳元の髪をするりとといた。
『アハハハ、君は中々面白い性格をしているね。今回は同じ世界に転生することができないから異世界に転生する事になるけど、今回は特別に君の要望をできる限り叶えてから異世界にトリップしてあげるよ』
『まじっすか!?もしやとは思っていたけどやっぱ異世界トリップってできるんすか!?』
『もちろんできるよ。世界は一つだけじゃなくて幾万と存在しているからね。それじゃあ今から君のセカンドライフについて決めようか。容姿はどうする?もちろんそのままでも大丈夫だけど君の好きなように変えることができるよ。あと能力に関してはこれから行く世界によって魔力なりなんなりつけられるけど、不老不死や世界を滅ぼすほどのチート的はつけられないからね?君の行きたい世界も自由に決めていいよ』
『本当に何でもアリですね。それじゃあ遠慮なく、容姿は絶世の美女とかじゃなくていいんで凛々しさと麗しさを持ったその世界の容貌の美人さんにしてもらって背の高さはこの際168cmがいいかな?身体は色白で手足の長いバランスのとれたモデル体型でお願いします。あと胸はまな板とおさらばしたいんで平均より大きめがいいです。髪に関しては今の髪型気にいってるから変えないで、瞳の色は外人みたいなコバルトブルーにしてください。能力に関してはやっぱ魔法とか剣を使ってみたいんで今から行く世界の最強魔術士より強めの魔力と猛者と渡り合えるくらいの剣才と身体能力をください。モンスターとかいたらギルドなんかで討伐とかしたりして生計建てたいんで。あと、魔法に関しての知識はわざわざ覚えるの面倒だからある程度知識があると嬉しいです。そんで旅ができるように言語翻訳機能と読み書きの知識、野宿の知識、通貨や薬草なんかの一般的な知識もつけてほしいです。あと世界に関してはやっぱ剣や魔法がある中世ヨーロッパのような世界で生活水準は元の世界と同じくらいあるところがいいかな?あと身分差別や男女差別もあまりあると嫌かも。そんでモンスターとかはいるけど出来れば平和な生活を送りたいんで戦争や貧困、飢餓といったものがない世界にしてくれると嬉しいです。最後に年齢は今と同じでいいんで今の記憶がそのまま転生しても残るようにしてください』
『ハハハ!やっぱ君は面白いね。ここまで事細かに要望を言った者は君が初めてだよ。大概は絶世の美貌をー!とか世界最強の力をー!とかなのにね。いいよ、君の要望叶えてあげる。とりあえず容姿や能力は何とかなるとして、君の要望に沿った世界があるかなー?ちょっと探すから待っててね』
白髪の青年はふっと微笑みながらそう言うと、手を広げ無数の珠を空中に出す。幾千、幾万となる色とりどりの珠は空中にふわりと浮かびながら青年の周りをぐるぐると回った。
その幻想的な光景に瑠衣は思わず感嘆のため息をつく。
『うん、見つけた。この星が君のいう世界に一番近いかな』
青年は穏やかに微笑むと手のひらに乗った青色の球をすっと瑠衣の目の前に差し出した。
『綺麗…、まるで地球みたい』
『そうだね、どちらかと言えば君のいた世界に似た星だね。名前はウィスパニアって言ってとても美しい星だよ。ここ数十年大きな戦争もなく比較的穏やかな世界だけど、全ての国が身分差別、男女差別、飢餓、貧困が無いとは限らないかな。だから、君を転生させる時はこの世界で一番平和な国…センスタリア王国に降ろすからそのつもりでいてね。モンスターは比較的色んな場所にいるけど君の戦闘能力があればぶっちゃけSSレベルのモンスターも一人で倒すことができるから安心して旅ができると思うよ』
『それってもう大分チートじゃないですか、本当にもう何から何までありがとうございます』
『ふふ、流石にお金は用意できないけど、旅用の剣と服、非常食は用意するから近くの村のギルドで依頼でも受けてお金稼いでね。君ならちゃちゃっと稼げると思うから。それじゃ準備はいいかな?』
神様は私を見てニコッと微笑む。
私はそれに応えるように力強く頷いた。
大丈夫――
不安はない――
何故ならこれ(異世界トリップ)は、
私自身が長年憧れたことなのだから……
『はい!いつでもOKです!』
『よし!それじゃあ第2の人生が瑠衣にとって幸多いものであるように。異世界―ウィスパニアへ行ってらっしゃい』
キュイーーーンという音と共に足元にブラックホールのような穴があき竜巻のように風が沸き上がる。
微笑みながら手をふる神様の姿を最後に私は人生で一番の笑顔を浮かべながらその穴へと吸い込まれていった。
これから私の第2の人生がゆっくりと幕を上げる……。
これから彼女の物語が始まりますVV
どうなることやら…




