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1.葬送の儀

この物語はフィクションです。

(葬儀については地域によって風習が異なるらしいので、皆さんの知ってる知識と違うところがあったら、どっかの変な風習だと思ってください)

令和7年8月8日。


 今日は、母の葬儀の日だ。

 読経が響いている。和尚の唱える言葉は、今の僕には意味を持たない記号の羅列にしか聞こえない。



 母は、長い入院生活の末に亡くなった。

 薬を投与しないと痛みに耐えられないのか、自分の死期を悟ったのか、母はいつも静かに泣いていた。


 僕は、何もできなかった。


 苦しむ母と、それを見て悲嘆に暮れる父。その傍らで、僕はいつもただ立ち尽くしていた。


 訃報は、突然だった。


「23時46分頃、息を引き取られました」


 父に入った一本の電話。僕たちは夜の闇を裂くようにして病院へ向かった。


 父は、愛する母が亡くなったことに動揺したのか、なぜ既に亡くなった後に連絡をしてきたのかと、看護師や警備員に怒鳴り散らしていた。


 その時も僕は、やはりただ立ち尽くしていただけだった。


 それからの父は落ち着き、いつの間にか事前相談をしていた葬儀社へ連絡を入れた。


 そこからは、トントン拍子で事が進んでいった。

 緑ナンバーの搬送車が母を運び、夜が明ければ担当者が来て打ち合わせが始まり、和尚にお布施を渡し、通夜をして、そして今日。葬儀が始まった。


「導師入場。皆様、ご起立いただき合唱にてお迎えください……」


 綺麗な女性司会者の宣言で式が始まる。

 初めて会った親戚から「最後のお別れの挨拶をしたらどうだ」と言われたが、僕は断った。まだ頭の中がぼんやりとしていて、母がいなくなったことが実感できないからだ。


 弔辞、弔電が終わり、また訳の分からない読経を聞き、喪主の挨拶が始まった。


 何を言っているのか分からなかったが、ただ父の横に立っていた。まるで水中にいるかのような感覚に襲われながら、この人は何を言っているのかと考えていた。


 葬儀が終わり、お別れの儀、出棺、そして火葬。

 納骨をするまで、記憶が無いくらいあっという間に終わった。



 あっという間だった……。







――その、虚脱の淵で。

ちゃーんと異世界ものですよ

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