第13話 ノンデリ
「実は、ブレア村長も、なにも聞いていないとのことです」
「そうなの?」
「はい。国王直々のお召しとなると、なにかお叱りでもあるのかとブレア村長もご不安に思っております」
ありゃー。
村長までもそんな感じなのかー。
イセウスは続けて言う。
「ここから王都まで馬車で二日ほどかかります。ブレア村長とルパート様、それにミント様。お付きとして私と姉のマチルダがご一緒することになりました」
それを聞いて、マチルダがぱぁっと顔を明るくした。
「ほんと? 私も王都に行けるの? ほんとに」
「ああ、姉さんがいないとミント様の周りの世話をする者がいないだろ?」
「やったー! お買い物に行けるー!!!!」
大喜びするマチルダ。
ぴょんぴょん飛び跳ねている。
一緒になってふわふわの赤い髪の毛も揺れている。
姉弟らしく同じ髪色をしたイセウスは、はぁっとため息をついて、
「姉さん。遊びに行くわけじゃないんだよ? 王都まで行く道のりは危険な山道もあるし……」
「でもさー、こんな田舎じゃ、欲しいもの、なんにも買えないんだもの! 見てよ、私の着ているこの服! こういうのは今王都じゃ流行っていないんだって! でもこの辺には流行の服を売っているところなんてないしさー」
「行商人が来るじゃないか」
「あのおばあさん、古い服ばっか持ってきて! 下着もばばくさいのばっかり! 下着の山の中から、少しでもましなのを選ぶのも大変なのよ! 今履いている下着も、まだましだけどかわいくはないしさ。いっつもこんな下着だから旦那にも悪くて……」
イセウスははぁっ、ともう一度ため息をつく。
「姉さん、はしたないよ。下着なんてどうでもいいじゃないか。義兄さんも気にしないよ」
「わかってないわね、イセウスはいつまでも子どもね! これは旦那のためもあるけど、それだけじゃなくて、若人妻の……プライドの問題なの! ね、ミント様! ミント様もそう思われますよね? ルパート様にかわいい下着見せたいですわよね!」
「え、いや、う、うん、そ、そうね? ごめん、よくわからないけど……」
いや、妻といえど、ルパートに下着を見せる機会なんてないんですけど。
……今のところは、ね。
「あと数年はそういうこともないような……」
「だめですよ、いつなんどき〝そのとき〟が来るかわからないんですから! 女はいつでも常在戦場ですわよ!」
「あのー思ったんだけどさ」
「はい、ミント様、なんです?」
「もしかして、マチルダってノンデリ?」
そう、デリカシーがなさすぎるでしょー!
まだ、まだね、女性しかいない場ならともかく!
弟とはいえ男がいる場所でそういう話は絶対にやめてほしいと思うんだけど。
「へ? いや、イセウスなんて男に入らないですわよ」
「マチルダにとってはそうかもしれないけど! 私にとっては普通に男性なの! これからは男性がいるとこでそういう話はマジでやめてちょうだいね」
ほら、イセウスも軽口叩けるタイプじゃないっぽいから、いきなり女同士の赤裸々な話題についていけなくてなんだか居心地悪そうにしてるじゃないの!
まあ、マチルダのそういう遠慮のないところは、逆にわりと私好きなんだけどね。
こっちも気を使わないですむというか。
ま。それはともかく。
そっかー。
王都かー。
私も数えるくらいにしか行ったことないなー。
たしかに、流行の服にはあこがれる。
嫁いだばかりの新妻だし、旦那様もまだ十歳。
まさか服をねだるなんてはしたないことはできないけれど、ウインドウショッピングくらいは楽しめるかな?
そう思うと、私も少しウキウキしてきた。
それはそれとして国王陛下に謁見するなんて、緊張するしそれはやだなーって思うけどさ。
そんなわけで数日後、私たちは王都へ向けての小旅行を始めることになったのだった。
★途中でもどうかお願い致します!★
お読みいただきありがとうございます!!!!!
少しでも面白かったとか続きが気になるとかと思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックすればできます!
今後とも皆様に楽しんでいただけるような作品にしていきたいと思ってます!!
どうかどうかよろしくお願いします!!!!!




