第13話 国家転覆レベル
「王宮に行かれるんですか?」
私の髪の毛をブラシでとかしながら、マチルダが言った。
「うん、そうなの。なんか、今年のドラゴンの生産について国王陛下が直々に聞きたいらしいの」
「へー! そんなこと、今までなかったですけど、国王陛下に謁見できるなんて、光栄なことですね!」
嬉しそうな声を出すマチルダ。
うーん、まあそれはそうなんだけどさー。
国王陛下ともなると、ドラゴンナイトの娘にすぎない私ごとき、もちろんお会いしたことはない。
「でもさ、おかしくない? それならブレア村長が一人で行くべきところでしょう? なんてルパートと私まで……?」
「それは、そうですねえ……」
「なんかね、必ずルパートと私も連れてきなさい、っていう命令だったらしいの」
「うーん……ミント様、なにか国王陛下に叱られるような悪いこと、しました?」
「してないよ! 国王陛下に直々に叱られるような悪事って、もはやそれ国家転覆レベルじゃん……」
「あははっ! 冗談です、すみません」
そこに、部屋のドアがノックされる。
ルパートかな?
そう思ったらちょっとドキドキした。
十歳の男の子に会うのにこんなワクワクしてる私って……。
でもほら、そうは言ってもさ、私の初カレだし……。
たぶん、最後の彼氏でもあるしなー。
しょうがないじゃない?
ちょうど着替えも終わったし、髪の毛も整えてもらったし、うん、旦那さまに見せられる程度には見た目ちゃんとしているよね、うん。
「はい、どうぞ」
自分でもびっくりするほどウキウキした声が出た。
だけど。
部屋に入ってきたのは、ルパートではなかった。
マチルダと同じ、赤い髪の毛の青年だ。
「失礼します。よろしいですか、ミント様?」
「あ、はい、どうぞ……って、どなた?」
私が聞くと、マチルダが笑って言った。
「あはは、ミント様、これ、私の弟のイセウスですよ」
へー。
わりとかっこいいじゃん、ウェーブのかかった赤髪がすごく似合ってるし。
ちょっとぶっきらぼうな感じを受けるけど……。
「私はイセウス・ミラルカと申します。ここにいる、マチルダ・タリウスの実の弟です」
あ、そっか、マチルダは既婚者だし、そりゃ名字は違うよね。
「ミント・ウィンスロップです。以後よろしくね」
私も自己紹介する。
「こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。……とは申しましても、結婚式のときにもご挨拶しましたが」
あれ、そうだっけ?
そうだよね。
結婚式のときは次から次へと村人が挨拶しに来るもんだから、正直、覚えていなかった。
あのときは緊張していたし、一気に何十人と挨拶したもんね。
「あら、ごめんなさい。ええと……」
「お気になさらず。姉のマチルダともども、なにか御用があったらお申し付けください」
「うん、ありがとね。ぜひいろいろお願いするよ」
「ではさっそくですがミント様。今度、国王陛下と謁見なさるとか」
「ええ。ブレア村長だけ行くのかなって思ってたんだけど、ルパートと私もセットで来いって言われてるんだって。なんか、怖いよね……。イセウス、あなたはなにか聞いていない?」
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