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動き出す

フェルスター侯爵家ではシオンが自室で考え込んでいた。


「おかしい。なぜ彼があそこに?……もう少し調べてみるか。」


そして羽織を被り、屋敷を出て行った。



下町のある宿の前に、人混みに紛れてシオンは宿の前をじっと見つめていた。シオンの少し前に同じく宿を見つめている人物がいた。

(おそらく公爵家から雇われた偵察人だろう。…………!!)


宿からダボダボの服を着た男性がマントを被りサッと出て行った。前にいる偵察人は気が付かなかったが、シオンはすぐに怪しいと分かった。


(肩が華奢すぎる。あまりにも体型に合わないし、着慣れてない。)

いつも本格的に男装している妹を見てきたシオンには、下手な男装は一発で見破れた。


(この宿から変装してまで出かけたい奴なんて、あいつぐらいだろう。)


男装している人物はどんどん歩いて闇へと消えた。その後をシオンは気付かれないようについて行き、シオンもまた闇へと消えていった。




…………………………



その日もいつも通りの朝であった。

冷え込む朝に温かい飲み物を飲んで体を温めたリオンとレイは、今日も乗馬でもしようと話していた。

ちょうどその日は用事でいないクラウスの代わりにグスタフが別邸にて仕事をしていた。


「グスタフさん、すみません。僕とレイ様でまた乗馬してきますので、屋敷の事よろしくお願いします。」

「乗馬ですか。それなら、今日はミレイワの森へ行かれたらどうですか?ここからもすぐ近くですし、あちらも公爵家の所有する場所ですので整備もしておりますよ。」


急なグスタフの提案に、リオンは目を輝かせた。


「ミレイワの森!行ってみたかったんです!そこで野営もいつかしてみたくて!」

「野営!?それは良いですね。また近々その段取りでもしましょうか。」


グスタフはにこりと笑って、野営に必要な物をまた用意しておきますね、とリオンに伝え、レイの方を見た。


「……レイ様。どうされますか?公爵家の土地とはいえ、あちらは警備も薄いですし。まだお外が辛いようでしたらご無理はされない方が良いと思いますが……。」


心配そうに聞くグスタフに、レイはリオンを見て頷いた。


「いや、もう僕は大丈夫だ。ミレイワの森へ行こう。」


「……。分かりました。」


リオンとレイは準備をし、グスタフに見送られて屋敷を後にした。





ミレイワの森は公爵家から割とすぐ近くであった。

馬に乗り、公爵家の裏庭からそのまま人通りの少ない道を走らせ、10分もしないうちに森の入り口へと到着した。




「うわぁ。凄いね!」


緑豊かな森の中に整備されている道が続いており、リオンは心が踊った。


「あぁ。ずっとグスタフが整備してくれていたんだな。いつか僕がまたここに来ると思って。」

「そうなんですね。公爵家の方たちはみんな良い人たちばかりですね。みんな、レイ様を大切に思われてますよ。あ!もちろん僕もですけどね!」


しっかり自分もアピールするリオンだったが、レイが顔を赤らめて俯き手で顔を隠したのを見て、なぜかリオンは胸がドキドキしてしまった。


「……さ、もう行こう。」


顔色の戻ったレイに促され、2人は森の中へと進んで行った。


ミレイワの森はとても美しく神秘的であった。

綺麗な泉で休憩し、馬に水を飲ませ、2人もグスタフが用意してくれていた軽食をとった。


「わっ!このパン美味しいですね!」


リオンは中に卵やハムが挟まれたパンを一口食べて驚いた。


「あぁ。グスタフの料理は一流だからな。そのパンも自家製だ。昔はグスタフの料理しか食べられなくて、夜中とかにも軽食を用意してくれたり……。あの才能がクラウスにもあれば良かったんだけどな。」

「クラウスさんも料理上手ですよ!」

「リィもね。」

「レ、レイ様だって。」


レイに見つめられ、またも胸が締め付けられるリオンであった。


(はぁ。僕の心臓どうしちゃったの……?)


「少し風が吹いてきたな。そろそろ帰るか。」


2人は軽食を片付けて、また来た道を戻って行った。




最初の入り口に戻ってきて、そのまま人通りの少ない道を走らせ始めた時、道影からいかつい男達が急に出てきた。


「うわぁっ!」


いきなり出てきた男たちに馬は驚き暴れ、リオンはドンと落ちてしまった。


「リィ!!」


レイもまた馬から降り、リオンの元へと駆けつけようとし、男に邪魔される。


「っ!邪魔だ!どけ!!」


「それは無理ですよ。お坊ちゃん。」


レイの前に立ちはだかる男の後ろで、リオンは他の男に捕まえられた。


「なっ!リィ!おいっ!」


落馬の衝撃で意識を失っているリオンはぐったりとしていた。


「早く!どけろ!」


焦るレイを立ちはだかる男が笑い、「おい!もう良いか?」

と道影に声をかけた。


レイがそちらを見ると、道影から、女が出てきた。


レイは心臓が早鐘を打ち、耳鳴りがした。


「あ、あ、……お、お前……。」


ドクドクドクドク


身体中の血が流れていく。心臓は破裂しそうな程早く大きな音がして、耳はキーンと痛い。


どんどん顔色が悪くなるレイに、女は高笑いした。


「キャハハッ!レイ様!私、やっと出てこれました!!やっとあなたの物になれますよ!!」


一歩一歩レイに女は近づく。


「ねぇ?レイ様、私、驚いちゃいましたぁ。私がいない間に婚約しちゃってんですもん。でもぉ、何かの間違いですよね?だって、レイ様も私の事好きですよね??初めて挨拶したあの時、目が合って、笑ってくれたでしょお?」


「こ、婚約??何の事だ?それに、ちがう!ただっ、挨拶、しただけだろっ!はっはぁっ。ち、近づくなっ!!」


「はぁ?しらばっくれんなよ!何言ってんだよ!あんたは私の夫になるんだよ!それともぉ、また鞭、打たれたいんですかぁ?」


女はニヤリと笑って腰から鞭を取り出した。


「や、やめろっ!」


レイはあの時の痛みを鮮明に思い出し、身体中がズキズキと痛み始めた。


「それとも、こっちの彼を痛めつけましょうか?」


女はくるりと向きを変え、ぐったりしているリオンへと近づいていく。


「だ、ダメだ!リィは!ダメだ!!」


「……なんか嫉妬しちゃいますねぇ。まぁ、そこまでいうなら、レイ様にしてあげますねっ。」


気持ち悪い笑顔を向け、女は再度レイに近づく。レイは男に後ろから拘束され、身動きが取れない。


「くっ、くそ!!!」


女が鞭を上に上げた時。



ドドドドドドド


一頭の馬がかけてきた。


「レイ!!!」


それはシオンであった。


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