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2人の距離

毎日のように乗馬や、武術で体を動かし、一緒に料理をし、ご飯をお腹いっぱい食べ、そして温かい飲み物を飲んでゆっくり眠りにつく。


レイは失われていた普通の生活をするようになり、顔色も良く本来の明るさを取り戻してきた。もともと能力が高い事もあり、何をさせてもすぐに上達してリオンは驚いていた。


「凄いですね…。さすがの僕も一回でここまで上手く捌けませんでしたよ。」


レイの手際の良さに惚れ惚れしながらリオンは感心していた。


「リィの教え方が上手いからね。」


レイはリオンの事をリィと呼ぶようになっていた。……そう、あの日から……。




…………………………


 

数日前、いつものように2人で乗馬をしようとしていた。

とっくに1人で乗れるようになっていたレイは、この日なぜか馬小屋の前にリオンを待機させ、馬小屋から1頭の馬しか連れてこなかった。

不思議がるリオンにレイは、


「この前のお返し。今度は僕が後ろね。」


と言って戸惑うリオンを乗せてレイもすぐ後ろにぴったりと引っ付いて乗った。


「あ、あのぉ。もしかして、まだ怒ってます?」


後ろから包み込まれ、顔のすぐ近くでレイの息が聞こえてくる。リオンはなぜか胸が高鳴り、心臓が苦しくなった。


「なんで?別に怒ってないけど。」


馬を走らせながらレイは耳元で答える。


「っつ!も、もう!ほら!怒ってるじゃないですか!僕に何したんですか?心臓が苦しいですからっ!ごめんなさいって!」


「……ふぅん。苦しい?ふっ。そう、じゃあ、これはどう?」


レイはニヤリと笑ってリオンの耳元にふっと息をかける。


「ひゃあっ!!!!」


驚き体勢を崩すリオンをレイはぐっと後ろから抱きしめた。

「危ないよ。」

「だ、誰のせいですか!」

「仕方ないな。じゃあ、これで最後ね。」


そう言ってレイはリオンの耳にちゅっと唇を当てた。そして囁く。

「ねぇ。リィって呼んで良い?」

「んわぁっ!」

急に耳にキスされ、耳元で甘く囁かれてリオンはゾクっとし、涙目になってしまった。


「も、もう!分かりましたからっ!!!それ、やめてぇっ!」


「ふふっ。リィ。他の人にはそう呼ばせないでね。そしたら許してあげる。」


さらに耳元で囁かれ、くすぐったさや、心臓を鷲掴みにされたような気持ちで何が何だか分からず、リオンはレイの言葉に頷くだけだった。



「リィ、逃さないよ。」

レイの最後の呟きは、頭がパニック状態のリオンには聞こえなかった。



……………………



2人で捌き終わり、クラウスを呼んで3人で調理を始めた。


「だんだん寒くなってきましたからね。今日は煮込み料理にしましょう。」


そう言ってクラウスはテキパキとレイとリオンに指示を出し、調理を終えた3人はグツグツと煮えるのを待っていた。


「……ねぇ、レイ、近いんだけど。」


片付けの洗い物をしているリオンを後ろから包み込み、リオンの肩に顎を乗せて、リオンが洗っているのをずっと見ているレイに、とうとう痺れを切らしたリオンが指摘した。


「そうかな?」

「そうでしょ。何?レイも洗いたいの?」

「んー、見てたい。」

「じゃあ隣で見てよ!なんか恥ずかしいから。」

「え?恥ずかしい?なんで?」

「だって!……。」


リオンはちらりとクラウスを見る。

クラウスは何とも言えない表情で2人を見ていた。


「……。レイ様、あまりぐいぐい行くのは良くないですよ。いくら初恋」

「だまれ!!」


パッとリオンから離れたレイは頭をくしゃっと掻いて、クラウスに「邪魔するな」と睨みつけた。そんなレイの様子にクラウスは苦笑いした。

(2人が仲良くなるのは良い事だが…24歳にして初恋とは…。しかもリオン様を男と思ったままだ。)


「え?レイ様の初恋って何ですか?僕、初恋とかよく分からないから。ね!レイ様、教えてくださいよ!!」


(うわぁ。こっちもかよ!)とこんな2人がすでに婚約者同士という事にクラウスは頭を抱えた。


「リィ。まだなんだね。そっか。」

なぜかご機嫌になったレイに、リオンはレイの初恋を思い少しだけ胸がチクリとしたが、長年気になっていた事を尋ねた。


「ねぇ、初恋ってどんな味ですか?よく甘いとか酸っぱいとか聞いた事ありますけど。というか味するんですか!?」

「……味?どこを味わうの?」

「え?……さ、さぁ?」


そんな2人のやりとりを、(こりゃ先が思いやられるな。)と呆れながらクラウスは見ていた。


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