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クロムウェル公爵家別邸

別邸は本邸に比べてかなり小さく、家具や調度品も本邸ほど高級なものではなさそうであった。


(よ、良かった。下手に壊したらとんでもない額の借金作るハメになるからね。)


「こんにちは。リオン様。私は執事のクラウスと申します。今日からは私がリオン様のお食事や身の回りのお世話をさせていただきますので、何なりとお申し付けください。」


グスタフにどことなく似ている整った顔立ちのクラウスに挨拶をされ、そこからはグスタフにお礼を言って、クラウスに屋敷を案内してもらった。


「こちらは元々使用人用の屋敷だった物なので小さい作りとなっております。事件後レイ様が本邸を嫌がられるようになったので、改装してレイ様のお屋敷として使われるようになりました。……こちらが食堂とキッチンで、こちらは浴室です。…こちらは私の部屋ですので、何かあればお呼びください。では2階へ。………こちらが今日からリオン様のお部屋です。荷物は運び込んでおりますので。そして隣の……こちらがレイ様のお部屋です。」


クラウスは一通りの説明を終え、最後に案内した部屋をノックする。


コンコン。……コンコン!……コンコンコンコン!!


「うるっさいな!いつもノックは一回で良いって言ってるだろ!」


扉を勢いよく開けて、金髪のボサボサ頭がひょこっと出てきた。


「だったら一回で返事するんですね!」

「はぁ?なんでお前はいつも僕に偉そうなんだよ!」

「そりゃ坊ちゃんのオムツとか俺が変えてあげてましたし?」

「だまれ!!いつの話だ!!!」


気心知れた仲らしく、2人はいつもの事というように言い合っておりリオンは呆然と2人のやりとりを聞いていた。


「そんな事より、今日から別邸に住まれる方をお連れしましたよ。」


急にクラウスに紹介され、金髪頭がリオンの方をバッと向き、リオンと目が合った。


色白で金髪碧眼の青年は髪のボサボサなど気にならない程に整った顔をしていた。……が、リオンは今それどころではなかった。


(ど、どうしよう。僕、何役で来た事にすれば良いのか聞くの忘れちゃった!!)


婚約者だけれど、女とはまだバレてはいけない。


じゃあ何しにここに来たって説明すれば良いのか?


(友達になりに来ました?……いや、いきなり怖すぎる。)


「あ、あの、えぇっと。」


(ええいっ!!)


「僕、リオン・フェルスターです!今後は色々とお願いします!!!」


「……。フェルスター?……彼の弟…?いたっけな?………………。フェルスター家は武術に長けていたな。あぁ、そういう事か。あの女が出てくるからわざわざ雇ったのか。ふんっ!僕はもう大人だ!あの頃とは違う!余計なお世話だ!!」


怒っているが何やら勝手に都合よく解釈してくれて、リオンは胸を撫で下ろした。

もちろん、女とはバレなかった。


「まぁまぁ。レイ様。リオン様にはレイ様の隣の部屋で過ごしてもらいますので。仲良くしてくださいよ!!」


「ふんっ!勝手にしろ!」


レイはそう言ってバタンとまた扉を閉めてしまった。


「はぁ。レイ様、本来は優しくて優秀な方なんですけどね……。最近はあのメイドが釈放されるせいでイライラしてしまっていて。……さっ!とりあえずリオン様はそのまま女とバレないように気をつけてくださいね!それにしても本当、ぺしゃんこ」


「なっ!!!これは布を巻いてるんです!!!」


いきなりクラウスに胸を見られて失礼な事を言われ、さすがにリオンは怒りを露わにした。


「はははっ!その勢いですよ!ここでは遠慮など不要です!俺にはもちろん、レイ様にもね!ささっ!俺はそろそろ夕飯の支度をしますから、リオン様は荷解きでもしててください!」


そう言ってクラウスは下へと降りて行った。



……………………


「どうしたものか……。」


部屋の中でリオンは呟く。

大した荷物もなく手際の良いリオンはさっさと荷解きを終わらせ考えていた。


どうやってレイと仲良くなるべきなのか。結婚しても男装のまま自由に過ごせると思って引き受けた縁談だった。しかし今は、要は試用期間である。しっかりレイと仲良くなって、最終的には女のリオンを受け入れてもらえなければ結婚する事はできず、婚約解消されて、行き遅れ令嬢に出戻り令嬢がプラスされてしまう。


「いやだいやだ!僕だって傷つくんだぞ。」


「男装なんかしちゃって!だから行き遅れるのよ!」「誰からも求婚されないなんて可哀想よねぇ!」かつて自分に笑顔で声をかけてきた令嬢達がこちらを睨みながらコソコソと話す様子をリオンは思い出した。


(僕は僕がしたいように生きてるだけなのに。)


そもそも恋すらした事のないリオンにとって、女性らしくしないとできない結婚などは拷問でしかないため、男装はやめる事なく自分のスタイルを貫いてきた。しかし周りはそんな自分を放っておいてはくれず、睨みつけられクスクス笑われる。


(せっかくこのままの僕で結婚できるチャンスなんだ。相手も生理的に受け付けない訳じゃない。というか、むしろレイ様綺麗な顔だったな。逆に僕で大丈夫なのかな……。)



コンコン。


急に扉をノックされ、クラウスから食事ができたと呼ばれたリオンは、そのまま食堂へと向かった。


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