ねこがいる
最近、わが家に…ねこがいる
気まぐれに、そっけなく
さり気なく、大胆に
ねこは、私に…存在をアピールする
足元を、そっとくすぐる…しっぽの気配
肌を、ピリッとさせる…静電気
小鼻を、スンスンしたくなる…ケモノの匂い
胸を、そこそこ不安にする…鋭い視線
姿を見たことはないが…確かに、ねこがいる
少し毛足の長い、ねこだと、思う
穏やかで大人しい、ねこだと、思う
やや神経質な、ねこだと、思う
姿は見えないが…確かに、ねこがいる
色はわからない
年はわからない
声はわからない
大きさはよく分からない
…もしかしたら、迷い込んでしまったのかもしれない
かつて共に暮らした家族を探して…この家にたどり着いた?
……ここには、孤独な人しかいないというのに
人恋しくなって…この家にたどり着いた?
……ここには、あたたかい心を持つ人はいないというのに
……かわいそうな、ねこ
こんなつまらない場所に
こんな面白くない場所に
こんな冷え切った場所に
……出ていかないところを見ると、気に入っているのかもしれない
もしかしたら、この家に…安息を見出している?
もしかしたら、この私に…ふれあいを見出している?
どうしようもない存在だと塞ぎ込んでいた気持ちが、少しだけ…上を向く
ただの気配でしかないねこに…私は、癒されている
姿も形もないのに、ねこはこんなにも…私を癒してくれる
明日は、少しだけ手を伸ばして…そっと、撫でてみよう
驚かせてしまわないように
恐怖を与えないように
私は怖くないよと知らせるために
私はそう心に決めて…ふわりと顔を、ほころばせた