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【書籍化・コミカライズ】二度目の人生では、お飾り王妃になりません!  作者: 清川和泉
第10章 真実

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第80話 真実 (後編)

ご覧いただき、ありがとうございます。

 ルチアの逆境魔術と魔宝具の使用により、再び目前に光景が浮かび上がったのでよく確認すると、それはカーラと陛下の姿だった。


 ここはどうやら先程と同じく、陛下の執務室のようだわ。

 カーラは執務椅子に腰掛けた陛下に対して、不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。


『陛下。王妃殿下……、いえ、元王妃殿下の身を未だに案じていらっしゃるのですか? 元王妃殿下が助かる見込みはありませんのに』


 陛下は眼光を鋭くし、無表情で淡々とした口調で言った。


『……彼女は虚弱体質だ。留置所の中でどのような暮らしをしているか、常に案じている』

『……左様ですか。では陛下、わたくしと取引をなさいませんか』

『取引……?』

『はい』


 カーラは口角を突き上げると、手持ちの小物入れから何か円盤状の物を取り出した。

 見たところ大人の手のひら程の大きさのようだけれど、あれは確か……。


『これは、元王妃殿下の不貞を記録してある魔宝録です。陛下がもし、わたくしの伴侶となってくださるのであれば、これを後ほど陛下にお渡し致しましょう』

『……それは貴族派全体の総意なのか?』

『いいえ、違います。これはわたくしの独断によるものです。陛下……、いいえ、アルベルト様』


 名前を呼ばれた瞬間、陛下の眼光が一気に鋭く光り眉も吊り上がった。

 とてもお怒りになられているわ……。


『今から十年以上も昔のことですが、その頃我が領に視察に訪れたアルベルト様は、刺客が放った猛獣に襲われていた無力な幼き日のわたくしをお助けくださりました。ですから、そのご恩を今ここで果たしたい所存でございます』

『そうか……、あの時のことを恩に感じていたのか』

『勿論でございます。わたくしの手を取っていただければ、アルベルト様のために全身全霊を掛けて動くと誓います。けれど、もし反する場合は、こちらは直に王室裁判所へと提出いたしますわ。ふふ、如何でしょうか?』


 ……これは……まさか……。


『無論断る』

『何故ですか? わたくしを選べば、元王妃殿下は極刑には処されずに済むのですよ』

『どのような理由があっても、私は断じてそなたと手を組むことはせぬ。……用件が済んだのならお引き取りを願いたい』

 

 カーラはピタリと動きを止めて、しばらく無言で力なく陛下を見ていたけれど、少し間を置くと綺麗な姿勢で辞儀(カーテシー)をして扉へと向った。

 けれど何かに思い当たったのか、再び動きをピタリと止めて振り返った。


『ですが陛下。きっと陛下は、最終的にはわたくしを選ぶこになると思いますわ』


 そう言ってカーラは退室して行った。

 ……良かった。陛下はハッキリとカーラの申し出を断ってくださったし、これで陛下とカーラが繋がることは無いのね。


 瞬間、目前に法廷でカーラが陛下の腕に自身のか細い腕を絡ませている光景が浮かんだ。


 ……そうだわ。

 あの時確かに陛下はカーラを連れていた。ということは、先程のカーラの言葉通り、最終的に陛下はカーラを選んでしまったのかしら……。


 そう思った瞬間、目前には見慣れない室内が現れた。本棚には魔術書がギッシリと並べられていて、壁には魔宝具のネックレス等が掛けられている。


 ──そうだ、ここは魔術師棟の一室だわ。


『……我が国はもうお終いですね、陛下』


 ……誰? とても力が無く(かす)れたような声だけれど、……この声には何処か聞き覚えがあるような気がするわ。

 そうだわ、この声は。


『魔術師長。そなたがそのように弱気でいてもらっては困る』

『ですが、実際のところそうではありませんか。ドーカル王国と我が国の貴族派共の暗躍で、我が国のドーカル王国への輸入分の魔石に大量の偽物の魔石が混入され、ドーカル王国には多額の賠償を要求されました』

『……ああ』


 バルケリー卿は変わらぬ調子で続けた。


『それだけではなく、何故かドーカル王国側に「我が国の魔宝具の祖であられるテオ・スナイデル氏の原書の魔宝具の設計図」が流出し、あちらに魔宝具の()()を知られ、事もあろうに大陸中に公開されてしまった。更にあちらはその弱点を改善した魔宝具を開発し先日発表したので、直にそれも大量生産されて大陸中に行き渡って行くのでしょう。……つまり、我が国は魔宝具開発の第一線の座を奪われたのです』


 そこまでを流れるように吐き出すと、バルケリー卿は深く椅子に腰掛けた。


『ああ、その通りだ』

『……それで、相手の要求は何なのですか』

『賠償金を払えないのであれば、即刻、開戦宣言を行うとのことだ』

『……もうこれは、事実上の乗っ取りではありませんか。今の我が国に、大国ドーカル王国と戦争をし勝利する戦力など持ち合わせてなどいないのですから』


 あまりの遠慮のない言葉に、内心背筋が凍ったけれど、陛下は表情を変えずに小さく頷いた。


『その場合は王族は皆……』

『ああ。……当然殺されるだろうな』


 ────‼︎


 ああ、そういうことだったのだわ。


 わたくしは今まで、目前の出来事をただ追うことばかりに気を取られていたけれど、これらの出来事が指し示していたことは、つまるところそういうことだったのね……。

 わたくしが留置所の中で暮らしていたその裏では、こんなにも大変なことが起きていたなんて……。


『……それで、私に相談とは何だ』


 バルケリー卿の口調が、普段のわたくしがよく知っている自然に砕けたものに変わった。


『王妃のことだ』

『妃殿下? 妃殿下は今でも留置所に入れられてしまっているが、何が言いたいのだ』

『王妃を助け出したい』


 瞬間、バルケリー卿の目が大きく見開いた。


『どういうことだ。そもそも陛下から率先して離婚し、除籍をしたのではなかったのか』

『それについては非常に心苦しかったが、やむを得なかった。何故なら罪状が出ている王妃と繋がりを保ったままであれば、ドーカル王国から突かれる可能性が高かったからな。……だが、以前にそなたが王妃に対して、昔から何度も面会を申し入れて来たことが脳裏に浮かんでな。そなたなら何か、王妃に対して知っているのではないかと考えたのだ』

『そうか、それなら……』


 バルケリー卿が何かを言いかけたところで、突然目前の光景が真っ暗に変わった。

 ……もしかして、これで終わりなのかしら……。


「まだよ。まだ肝心なことが分かっていない……‼︎」


 そうハッキリと声に出すと、目前に突然視界が開けて来た──


 ◇◇


 ここは何処なのかしら……。

 見たことがない個室のようだけれど、壁際に本棚が置かれていて中に茶色の背表紙の本がビッシリと隙間無く並んでいる。ここはとても格式が高い場所なのかもしれない。


『妃殿下の刑の執行まで、後十分程ですね』


 …………刑の執行……。

 そう言って目前にいるのは、フリト卿とリーゼ卿のようだわ。


『ああ。だが、我が同志の刑務官の手で妃殿下が飲む予定の毒薬を無事にすり替えることができたので、ひとまずは安心だな』

『ええ、上手くことが運びましたね。ですが、すり変えた薬とは一体何なのですか?』

『ああ、どうやら妃殿下の魔力を一時的に解放する秘薬らしい。我が国の王宮魔術師長が一ヶ月間、ほぼ研究室に籠って作り上げたと聞いた』

『なるほど。それでは、妃殿下がその薬を飲み魔力を解放して何らかの魔術を使用している際に、隙を突いて我々が突入する算段なのですね』

『ああ、そうだ』


 ……毒薬を……すり変えた? それではわたくしがあの時に飲んだのは、毒では無かったの……?


 駄目だわ、先程から様々な真実が明るみになっているのもあって、理解が追いつきそうにないわ……。


『ですが、その魔術とは如何なるものなのでしょうか。聞いたところ、妃殿下は魔術の心得は無いようですが』

『魔術師長の話によれば、その秘薬を飲んだ直後に「強く望んだこと」が実現するそうだ。おそらく妃殿下はその際に「死にたくない」「逃げ出したい」といったようなことを思い浮かべるだろうから、それに準じた魔術が発動するだろうとのことだ』

『なるほど、よく考えられていますね。……加えて陛下は敵にわざと取り込まれるように見せてその実、妃殿下の罪を偽証された証拠を手に入れたと聞いたのですが、あれは本当ですか?』

『ああ、ビュッフェ侯爵家のカーラ嬢とのことか。陛下は今は王太后様付きの侍女となったカーラ嬢と、食事に出掛ける等懇意にしているように見せて、その実決して懐には踏み込ませないように細心の注意を払っていたそうだ。そこまでやらねば、決してあの物証は手に入らなかっただろうな。それにどうやらあれは、カーラ嬢から直接手に入れた訳ではないようだぞ』

『陛下はカーラ嬢と近づくことで、周囲の者たちを懐柔していたと聞いています。あの証拠はあちら側が完全に偽装した物とも聞いていますしね。……フリト団長、そろそろお時間です』

『ああ、それでは参ろう』


 そうして二人が椅子から立ち上がったところで、目前の景色が消えて行った。


 陛下がわざとカーラに近づいて、わたくしを陥れることとなった証拠品を回収していた……。

 それでは、あの法廷での陛下はカーラを好んで傍に置いていた訳では……なかった……?


 それに、あの時飲んだ薬が、まさか毒薬ではなかったなんて…………。

 何ということなの……。わたくしは薬を飲んだ時、少なくとも、死にたくないや逃げだしたいなどとは思い浮かべなかったはずよ。……確か……。


 ──もし、もう一度人生をやり直せるとしても、二度と陛下を愛さない。愛してやるものですか!


 そうだわ。確かこのように考えていたのだわ。……ということは……。


『もし、もう一度人生をやり直せるとしても』


 きっと、この部分に魔術薬は反応したのね……。

 わたくしは無意識に過去に遡りたいと願ってしまっていたのだわ……。


 そう思うと、ふと視界の先が開けたように感じた。

お読みいただき、ありがとうございました。

次話もお読みいただけると幸いです。


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