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第50話 ノアとの出会い

ご覧いただき、ありがとうございます。


「陛下、妃殿下。本日は誠におめでとうございます」


 殿下を見送った後、宰相であるわたくしの父バレ公爵と丞相(じょうそう)であるエトムント侯爵がこちらに移動をして来た。

 陛下は途端に眼光を鋭くし、周囲に凍りついたような雰囲気を醸し出す。


「本日は大義である」

「勿体ないお言葉でございます、陛下」


 お父様は背筋を伸ばし、穏和な表情で続けた。


「ときに陛下。先日の件ですが」

「ああ、……把握している。詳細はそなたから王妃に告げるとのことだったな」

「はい、左様でございます。意を汲んでいただきまして、誠にありがとうございます」

「妃殿下。ですので、その件に関しては後日にご説明をさせていただきます」

「……承知しました」


 お父様と会話をするのも婚儀後初めてなので、とても緊張するわ。それにしても先程の件とは何のことなのかしら。

 ……もしかすると、わたくしが魔術から引き離されていたあの件かもしれないわ。陛下からお父様に話を通しておくと言っていたし、きっとそうね。


「宰相、それではその日取は……」

「妃殿下。また追ってご連絡を致しますゆえ。して陛下、本日は誠にめでたいですな。何しろ我が国の主要産業は魔宝具でありますから、バルケリー魔術師長には是非とも牽引をして行って欲しいものです」

「ああ、そうだな」


 陛下が無表情で頷くと、今度は丞相のエトムント侯爵が口を開いた。


「陛下、つきましては魔石鉱山に関しての協議ですが」

「ああ。後ほど席を設けた。そなたも同席するように」

「かしこまりました」


 丞相は穏やかな表情で綺麗な立ち姿で一礼をすると、お父様と共に「失礼致します」と言ってからその場を立ち去って行った。

 

 それから入れ替わるように、バルケリー卿が初老の男性を連れてわたくしたちの元へと移動して来た。


「陛下、妃殿下。本日は誠にありがとうございます。加えて先日は大変お世話をかけました」

「バルケリー魔術師長。本日は誠におめでとう」

「ありがとうございます、陛下」


 二人とも無表情で挨拶をし合っているけれど、目元は緩んでいて気を許しているように感じる。


「妃殿下。こちらは魔術学園の学園長、ノア・クラークです」


 魔術学園の学園長と紹介されたのは、白髪混じりの長身の男性だった。目視では初老の男性の印象を持つけれど、背筋はピンと伸ばされていて立ち姿に好感をもった。


「妃殿下、お初にお目にかかります。以後お見知りおきくださいませ」

「クラーク学園長。こちらこそ、これからどうぞよろしくお願い致します」


 クラーク卿は朗らかな表情で頷くと、わたくしの瞳にそっと視線を合わせた。


「……ようやく念願叶って貴方様にお会いすることができました。私共は貴方様が学園にお越しくださる日を心からお待ちしておりますので」

「お心遣いをありがとうございます。魔術学園に赴く日を楽しみにしております」


 クラーク卿は再び朗らかな表情で深く一礼すると、綺麗な立ち姿のまま「失礼致します」と言って立ち去って行った。


「妃殿下。先日は誠にありがとうございました」

「いいえ、こちらこそ、バルケリー魔術師長の尽力のお陰でわたくしの大切な侍女が傷つかずに済みました。心からお礼を申し上げます」


 ここは公の場所なので、オリビアの名前を出さないように言葉に気をつけながら発言をした。

 それにしても、バルケリー卿とオリビアは、あの後何か進展はあったのかしら。

 今すぐ訊いてみたい衝動に駆られるけれど、流石に場違いな話題なので抑えなければね。

 

「……それでは陛下、また明日にお会いしましょう」

「ああ、よろしく頼む」

「はい。失礼致します」


 一礼し立ち去って行かれたけれど、先程の言葉が気にかかった。


「あの、陛下。明日バルケリー魔術師長とお約束があるのでしょうか」


 確か明日は、わたくしとティーサロンでお茶をする約束があるのだけれど、その前後で何かご予定があるのかしら。


「いや、……そうだな」


 何かを言いたそうだったけれど、陛下はその後の言葉は紡がずに、代わりにそっと優しげな眼差しを向けたのだった。

お読みいただき、ありがとうございました。

次話もお読みいただけると幸いです。


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