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第18話 ペンダントの謎

ご覧いただき、ありがとうございます。

「妃殿下。今朝は陛下から薔薇の花束が届きましたよ」


 オリビアが意気揚々と目を輝かせ白い薔薇が十数輪束ねられている花束を両腕に抱え、寝台(ベッド)で朝食を摂っているわたくしの傍まで駆け寄った。


 婚儀の日からすでに四日が過ぎ、周囲の献身的な看護もあって、わたくしの体調は少しずつ回復をしてきている。

 昨日からは、人の手を借りずに寝台から降りることができるようになり、湯浴みも行えるようになったわ。


「昨日はガーベラの花束で、一昨日は薄紅色の薔薇の花束でしたね。陛下の温かいお心遣いが感じられます」


 オリビアは、嬉しそうに微笑んでアルベルト陛下からの言伝だと書簡を手渡してくれたけれど、わたくしは今ひとつ心遣いを受け入れ、ましてや喜ぶことなどできそうにない。


 何しろ、以前の陛下はわたくしに結婚後贈り物をなされることはなかったのだ。

 わたくしからは、それこそ庭園の花を毎日陛下の私室に飾るようにオリビアに伝えていたし、わたくしが刺した刺繍のハンカチを贈るなどしたけれど、思えば何か反応を返してくれたことはなかった。


 これは、本当に陛下からのものなのかと毎回疑問に思いながら封筒を開けるのだけれど、やはり筆跡が陛下の物なのよね。

 今日は『快癒に向かっているようで、好ましく思う』と書いてあったけれど……。


 陛下のお心遣いの真意を図りかね、どう受け取るものかと思慮しつつ、久方ぶりにゆったりと安心した時間を過ごすことができているとも思う。

 だからか、オリビアが退室し静寂が訪れた室内を改めて見回してみた。


 わたくしの私室は、ブラウンで統一された家具が置かれ、前回の生のときにはどれも気に入り大切に使用していた物だった。

 窓から入る風はとても心地がよいし、陛下が贈ってくださった花々は美しくよい香りがする。

 なんて、安心ができて豊かな暮らしなのかしら。


 しかし、目前にあの牢獄の一室が広がり密室で毒薬を飲んだことが過ると、わたくしの心はたちまち凍りついていく。

 勘違いしてはいけない。

 この幸せは、仮初のものなのかもしれないのだ。

 そもそもわたくしはこのような豊かな暮らしを享受する資格があるのかしら……。


 ──そうだわ。なぜ、あの時わたくしのペンダントは眩く光ったのかしら……。


 刑の執行時のことを思い出した途端、同時に今更ながら疑問も浮かんだ。

 ペンダントが眩く光ってから、わたくしのみ時を遡った……?


 あのペンダントは、今は亡きお祖母様から贈っていただいた物で、なぜか肌身離さず身につけるように強く言い含められた他には何の変哲もないペンダントだと思っていたけれど、……ペンダント自体に時を遡る力があるのかしら……。

 幼き頃から、病弱だったわたくしを見かねてお祖母様が「お守り」と言って肌身離さず身につけているようにと贈ってくださったのだけれど……。


 今も身につけているそのペンダントを、服の上に取り出しかけたまま観察してみる。

 それは、円形で無色の石がはめ込まれている小ぶりのシンプルな物で、わたくしの目には特に変哲もないただのペンダントに見えるわ。


 子供の頃から、お父様からは魔術に触れないようにと強く言い含められていたこともあり、残念ながらわたくしは魔術に関してはほとんど見識がないから、どなたかにご助力を願いたいわね。


 ただ、ことがことだけに誰にも迂闊に相談をするわけにもいかないし、……誰か信用のおける「王宮魔術師」に依頼をしたいのだけれど……。

 そうだわ。確か先の「王宮魔術師長の任命式」で、新王宮魔術師長の任命が行われるはずだわ。


 前王宮魔術師長が急遽更迭されることが決定し、代わりに「カイン・バルケリー」という現副王宮魔術師長が昇格して就任するはずなのだけれど、……正直に言ってどの派閥にも所属していないことや、他の僅かなことしか彼のことは知らないのよね。


 そう、確か彼は幼き頃にバルケリー男爵家に養子に入り直に爵位を継ぐことになっているので、周囲からはバルケリー卿と呼ばれていたと記憶をしているわ。


 トントン トントン


 思案をしていると突然扉からノックの音が鳴り響いたので、わたくしは思案を一旦やめて背筋を伸ばし応答をすることにした。

お読みいただき、ありがとうございました。

次話もお読みいただけると幸いです。


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― 新着の感想 ―
1話から読んでますが毎回…でもないけど結構な頻度で『勘違いしてはいけない』とか『思い違いしてはいけない』とか出てきて おんなじ事繰り返して思っているヒロイン像にイライラってかこんな愚かなヒロインに共感…
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