消せない想い
摘み食い読みして貰えると嬉しいです
《月曜日・昼~夕》(結子視点)
男の子が出ていった扉は開いたままでそこから出た彼の背中はとても悲しそうだった。
でも私は彼に何をしてしまったのか分かりません。
「結子お姉ちゃんは本当に海斗さんの事覚えてないの?」
未寄子ちゃんがそう聞いてきた。
「覚えて無い…そもそもあった事ある?」
その台詞を聞いた未寄子ちゃんの目から初めて私に向けられた気がした怒りを感じました。
「……」
未寄子ちゃんも覚えてないのを無理に責めることが出来ないのか表情を曇らせます。
「さっきの海斗さんは私よりも結子お姉ちゃんと長い間一緒にいた人だよ」
私は孤児院で働いて居ます。
その時間があるのにあの男性の方が多い時間?
どういう事でしょうか?
「海斗さんも孤児院の出身だから…」
「え?」
その時私は自分以外の人が居たか考えました。
「結子お姉ちゃん?」
心配そうに未寄子ちゃんが聞いてきます。
「あれ?何で……」
それもそのはずです。何が悲しいのか、何が辛いのか分からないのに目からは止めどない涙が零れ落ちて居たからです。
「何でだろう?」
「どうしたの?」
私の呟きに未寄子ちゃんは私が泣き出した理由を聞いてきた。
その答えに私は答えられなかった。
「分からないの…孤児院の記憶を思い出すと面白いと思ってた事があったはずなのに面白いと思えないよ……何でなの?」
「それって」
何で孤児院にはいつも通り私と美彩ちゃんと未寄子ちゃんが居てそれが日常の筈なのに何か足りない。
「何でこんなに楽しいと思える事だけ思い出せないの?……面白いと思えない何て思えないよ」
当たり前の楽しい孤児院の毎日の記憶の筈なのにどうして面白く無いの?
「本当にあの男の子は孤児院の出身だったよね?何処の?」
「うちだよ……私と美彩が来る前から結子お姉ちゃんと海斗さんは一緒に居たの」
その台詞を否定出来なかった。
「そうなんだ」
「結子お姉ちゃんが高校入学したんだよ。そして海斗さんも同じ高校」
「何で?」
疑問を未寄子ちゃんに聞く。
「結子お姉ちゃんが原因なんだよ?」
「そうなの?」
「結子お姉ちゃんが一緒に通学したいってお勉強教えて海斗さんを入学出来るレベルまで教えたんだよ……」
「そうなんだ」
私がそんな事してたんだ。
「海斗さんは結子お姉ちゃんと通学する時に待ち合わせをしてて気が付いたら病院から連絡が来たから結局通学を一緒には出来てないんだよ……一緒に早く居てあげて欲しいな」
「どうゆう事?」
「最近の海斗さんはさっきもそうだけどきっと精神的に無理をし過ぎてると思うから…もしかしたら壊れちゃうかもしれないので」
私は1つの可能性を告げる。
この可能性を告げる事で海斗の事を思い出すかもしれないからこそ不安に思う様に誘導したのだ。
「そう…ぐっ!」
「痛い、痛い、何か思い出しそうなのに、助けてよ
うみ君……」
結子の心は海斗を覚えていた。
しかし…痛みで自分の声を結子自身は聞き取れていなかった。




