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御対面と再会

 俺が1人誰の答えも無いのに呟いた時外からノックがなる。


「応接室に来てくれるかい?海斗」


「今行きます」


「娘さんは別室に待機して貰ってる」


「そう…何ですか?今はまず親に会ってみて欲しい」


 そう言うと応接室に着いた院長は中の人に向かってノックをしてから中に入る。


「この子が海斗です。出来れば娘さんとこの子で手伝いをして貰いたいんですが…」


「院長…少し良いでしょうか?」


 俺が素直に受けると思って無かったのか想定内無のだろう驚きの表情は無く言ってみる様にと言われる。


「俺を寮からここに済ませて貰えませんか?住み込みの職員と同じ扱いで構いません」


「何故その答えに」


「俺がここで働ける時間さえあれば結子の分も時間さえあれば可能です!」


「二人いた方が早いですよね?」


「そうですね…」


「もっと何か有るのだろう?何年お前を見てきてると思ってるんだ海斗」


 院長先生に隠せるとは思わないし隠そうと考えもしなかったけど相手の親御さんに失礼になるかも知れないと言わなかった。


「この場の口の悪さに関しては院長の権限で不問にします。言いたい事を言いなさい」


「俺は今回の話には納得出来ません」


「…」


「理由は?」


 俺の出した答えの理由を聞く院長と静かに話を聞く親。

 ただ1つ俺は誤算がある事は知らないままに想いを声に乗せた。


「ここは俺の居場所です…居ていい場所なんだ。そして結子の居るべき場所なんだ!俺と一緒にここでお手伝いしてたのは結子だ!結子の居場所を奪う様な気がして俺はこの提案に納得する事は出来ません。なので俺に2人分働かせてもらえれば」


「結子がいなくなって1人で生活出来るのかい?料理は出来ないだろ?洗濯は出来るだろうけどね。勉強は?元々結子が今の高校に一緒に通いたいって願いの為に勉強教えて貰ってたんだろ?それに分からないと思うのかい…海斗は今日も結子の元に行ったんだろ。お前の事だから行ける日は毎日通おうとしてるんじゃないかな?そんな生活続くはずが無い。院長としてお前の親として断じてそんな事は認められない」


 真っ向から意見を跳ね除けられたのは初めてだった。

 そしてもう1つの理由を院長から告げられる。


「海斗…もし結子が目覚めたら確実にリハビリは必須だ。そしたらきっとお前はそっちに行くだろう。その時ここの手伝いの枠が減る…それなら予め言い方は悪いけど予備戦力を作るべきだと私は思うね」


「結子が…リハビリ…そうか」


 確かに俺はきっと結子の元に向かう…そうすると院長の懸念は確実に訪れる。

 結果的に今回の話は皆に迷惑をかけないために必要だ。


「俺自身が結子の快復を視野に入れてなかったのか」


「仕方ないよ…海斗が処理するには今回の事は重過ぎた」


「今回の提案…受けさせて頂いても良いでしょうか?」


「えぇ」


 院長の励ましと俺の心変わりその様を見て見守る女性。

 すると女性が一言告げる。


「こっちの部屋に戻って来て良いわよ」


「?」


 誰に?

 するとノックされて扉が開く。


「え…何でここにえっと?」


「立河です」


「立河さんだねって何でここに!!」


「言っただろう?ここ出身の娘さんって…海斗と知り合いだったみたいだけどね」


「知り合いで間違いは無いけど…」


 立河さんの自己紹介と院長の話を聞いた後に立河さんのお母さんから話が飛んでくる。


「何つんつんしてるのよ楓…貴方がどんな人か気になるって言うから通話で声を聞かせてあげてたんでしょうが…」


「ちょっと!!それは言わな」


「声を…………聞いてたんですか?それだからこの部屋に入って来たんだね」


 理解が出来ると納得出来た。

 そして理解出来てしまった事で俺の中でこの流れ…院長も喜んでやったな。

 俺が結子への想いを思ってる事を言うきっかけを作ったのは何を隠そう院長だ。


「…嵌められた」


 後悔する俺に立河さんが話しかけて来る。


「宜しくお願いします。五十嵐君」


「こちらこそ宜しく立河さん」


 予想外の再会は幕を閉じた。

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