第二話 のっけから最難関
クイが己の目を疑ったのはこれが初めての経験だった。
見渡す限り——車なし、ビルなし、自販機なし、歩きスマホなし、だが一面麦畑なド田舎でもない。
様々な屋台が街路に沿って連なっており、切り盛りする人や食べ歩く人で活気づいていた。
人……と呼んでいいのか。
クイは半信半疑——自分の頭頂部や尻を触って確認する。が、彼らのように生えてはいなかった。
猫のような耳も、犬のような尻尾も、蛇のような頭も、鳥のような翼も生えてはいなかった。
見慣れない派手な服装も全員が全員していれば、逆にワイシャツと学生服のズボンの方が目立ってしまう。ただでさえ先ほどの咆哮で、くぎいるような視線を頂戴していたのに。
ともあれ今は冷静さを取り戻し、クイは壁際、日陰の中に立っている。その中で、腕を組みながら周囲を見渡していた。
その虚ろな目では、自分が現実を見ているのかどうかさえあやふやのようだが。
「漫画の見過ぎか。妄想癖か。二次元に毒されてる俺にはいくらでも心当たりはあるけど……現実だよなぁこれは」
文化祭準備をサボった時と構図が同じ。楽しそうな人々を前にし、つまらなそうに目を細めていた。
日差しが暑くて脱いだ学ランを左肩にかけ、活気あふれる街に対しクイは、
「もしかしなくても異世界だな。死んで転生してきたか、はたまた召喚の失敗で闇の中に置き去りにされてたかは知らんが。まさか俺が当事者になるとは思わんかったな——当事者が存在すること自体思わんかったけどな!」
そう断定するほかなかった。
**************************************************************
十人十色な髪と目。
そこから推測するに——クイは最初、外国にワープしたかと思っていた。
だがことここに至ってはその線も消えた。蛇のような舌を口からはみ出す隻眼男が決定的だった。どんな国だろうと現代にここまでファンタジーな世界観は残ってない。
だから外国ではなく、異世界だと把握したのだが——
「でもおかしいよな。外国なら納得だけど異世界ってんならおかしい……暗黙のルールなんじゃないのか? おい」
クイは呆れ気味に笑う。それすら強がりだ。ジメりと、冷や汗で手は湿りきっていた。
物申さずにはいられない点——それこそ、クイが最初、外国にワープしたと思った理由だった。
——とその時、クイに対面するように誰かが立っていた。
食い気味に顔をあげるとそこには犬と人間の中間——犬の亜人がふたりいた。小さな亜人を抱きかかえる大きな亜人。小さな亜人は純粋無垢な顔立ちで、大きな亜人は落ち着き払った穏やかな顔立ち。
恐らく親子関係なのだろう。
そしてクイと種は違えど、性別は見て取れた。男の子とその母だ。
男の子は汚れのない瞳でクイを見つめる。微動だにせず、クイも見つめ返していた。
子供をかかえたまま、母の亜人は口を開いた。外見にあった落ち着きのある声は、優しくクイに問いかけているようだ。
「——いや、だからさ……」
クイが口を開くと、母の亜人は言葉に出さず、静かに驚いたようだ。
だが再びクイに語りかける。
大丈夫? あなたは人間なの? どこから来たの?
私について来て。人の住む場所まで案内するわ。
そんなことを言ってるように思える。ただ、これはクイの妄想だ。
「——だからっっ! ——あんたらの言ってること‥‥なにひっとつわかんねぇから!!」
腹の中から思っていたことをぶちまけた。異世界最初のイベント対象だったかもしれない親子に対し、八つ当たりに近い内容を。
母の亜人も今度ばかりは身を震わせて驚くと、男の子を連れて人混みの中へと退散していった。だがイベントを逃した……なんて後悔してる場合でもない。
「なーーーんでこいつらの声が聞き取れねぇんだ! 異世界なんだろ⁉︎ 通じるもんなんじゃねえのかよ!」
罪のない母子に対し怒鳴りつけたクイは、今度は蔑まれるような視線を集めてしまっていた。
クイはいわゆる——異世界モノのジャンルに精通してるわけじゃない。小説より漫画が好きなのだ。
だがそんな浅い知識でも、異世界ではなぜか言語が通じるというお約束は知っていた。
このクイの焦りはそこだ。日本語さえも通じない——言語の壁が立ちはだかる難易度鬼の異世界に、説明もなにもなしにぶち込まれた点にあった。
「日本語が使えない外国人は日本に来るなとか思ってた俺に対する当てつけか——でも俺は来たくて異世界に来たんじゃねえけどな! 無理やりなんだがな! あーーーー見知らぬ土地で言葉が通じないってこんな怖いんだ⁉︎ 思い知った思い知った! よし、現実に戻ったら困ってそうな外国人は積極的に助けてあげるぞ! ——これで満足ですか⁉︎」
キレにキレて抑えることすらできなくなったクイは、自分を客観視することもできなくなり、息遣いが荒くなる。見せ物と化したこの状態も慣れてしまった。
好奇な眼差しも、ゴミを見るような眼差しも気にならない。
「——行くか。本来見せ物小屋にいるような奴らに見られ続けるのは不快だ不快」
訂正。気になってはいた。
そしてクイは、人通りの流れに乗って探索をする決断を下す。闇の中と同じ展開を求めて——、
「てか日本語喋れないくせに話しかけて来たあいつらは思わず追い返しちゃったけど、もしかしてずっと黙ってイベントが起こるのを待ってた方が良かったのか。俺自身、誰からの説明もなしに異世界だなんだと納得してたけどさ。異世界に来たらまずは受け身の体勢でいいと思ってたんだが——俺の行動ターン継続中なわけ?」
チュートリアルが充実してないゲームはダメだ。チュートリアルで専門用語を並べ立ててくるのもダメだが。
「異世界モノお馴染みのチートはどうしたんだ? 今のところマイナスからのスタートすぎてそのままリタイア間近なんだが。俺だって誇れるような特技だってないし……ヤッベこれ、どうやったら野垂れ死から逃れられるかレベルの詰みなんだが。——いやそのためのチートだろ。それ頼りだ」
なければ——問答無用で詰みだ。
与えてもらう側歴——十六年。生き抜く力が極端にない男がまたも浅い異世界モノ知識『チートがもらえる』を取り出してくる。
クイは健全な高校生だ。
冒頭にもあったが、妄想癖が人一倍強い彼は学校にテロリストやデスゲームの司会者が乗り込んでくる妄想はもちろんのこと、異世界生活の妄想もバッチリしていた。
しかし当たり前だが妄想はするだけでおしまいだ。
もし本当に異世界に行ってもいいように——なんて準備や対策をする方が異常だ。クイはその点においては異常ではなかった。結果、悪い方に転がっているのだが。
クイは異世界で役立ちそうな知識をなにひとつ用意していない。
農業、経済、料理、工業、武器、武術、エトセトラ。
興味のない——苦手な——ものは人生から徹底的に排除し、見えないところに置いておく。そんな逃げ癖がこびりついた生き方のせいで、ひとり暮らしをしても一週間で音を上げるほど生き抜く力がない。
ひとりが好きなくせにひとりじゃなにもできない矛盾にクイは今も気付いていない。
せいぜい、他人に自慢できるのは漫画で得た知識、それとピカソのフルネームを言えるくらいなもの。
だからクイには絶対的な確信があった。
——チートがなけりゃ間違いなく、異世界で生き抜くことは不可能だと。
絶対的な不甲斐ない確信が。
「あとは諦めの悪さ……かな。死ぬことに比べたらなんでもできそうな気がするわ」
失うものがない分、ある意味——無敵の人になりつつある。
しかし現状を鑑みると、とても異世界モノとはかけ離れてるように思えた。
転生でも召喚でもない。ただただ異世界に迷い込んだだけ。
クイは最悪の事態を勘案する。
現実の異世界モノは——薄情だ。
「——おい顔は見えないけど多分アホ面、邪魔だぁそこどけ」
歩く最中、目の前で静止していた大きな背中に対して——唐突に暴言を吐く。
困惑した表情で振り向いたのは牛のようなツノがついている男の亜人だ。その様子を見てクイの言語もまた通じてないことを理解する。
——通じていたらどうしていたのか疑問は残る確かめ方だが。
ささっと牛の亜人を追い越した。
「よしわかった。とりあえず人間を探さなきゃだ」
目的を定め、クイは人混みをかき分けるように進んだ。尻尾も獣耳もない純度一〇〇%の人間を探し求るべく。
だが時間はそんなにかからなかった。多分五分もかかってない。
出店が少なくなった通り——その地にどっしりと建つ酒場らしき雰囲気の店。窓を隔てて目撃したのはその店員だ。
「——いた。間違いない。同族さんだ」
青みがかったグレーの髪と金瞳だが、人間とそれ以外を見間違えることはない。顔面偏差値高めな男の人だ。歳はおおよそ二十代前半に見える。
彼なら——人間なら、同じ言語かもしれない。
この世界は、亜人と人間が違う言語を使っている設定の線は十分にある。
考える間もなく店の扉の前に立つ。そして右頬を二度叩き、気合を込めてドアノブを握る。
「頼むぜ異世界。チュートリアルを始めてくれ」
意を決して扉を開く。
これが異世界の攻略に繋がってくれと天に頼み、もとい要求しながら——
************************************************
「……………………」
テーブルに突っ伏したまま、恨み言も出やしない。この有様が物語っているが——
「………………ああ」
クイの目論見は失敗に終わった。
酒場に入って「どうもー」と声をかける間もなく金瞳の店員から一言一句、理解できない言語で応対されたのだ。恐らく「いらっしゃいませ」の意だろうが。
周りのいかつい格好のお客らもまた、人間と判断できた。だがその話し声もチンプンカンプン。
ガクッと肩を落としたクイを不審がりながらも金瞳の店員は奥の方の席に誘導してくれた。クイはもはやされるがままに腰を落ち着けるほかなかった。
「割と早めに終わったな。俺の異世界」
諦めが早いわけじゃない……この異世界は初っ端から難易度が高すぎた。
やる気が削がれるのもまあ無理はない。
「——が、まぁ結構疲れてたしな。座って落ち着ける場にいるのはうまいこと転がった方だ。あとはゆっくりと、異世界で足掻けるだけ足掻く算段でもつけるか」
肩にかけていた学ランを背もたれにかけ、リュックサックをテーブルに乗せた。
自分の生死がかかってる。そう考えると簡単には諦められない。一分一秒でも長く生きてみせる。
そんな気概で、クイは今あるものをいかにうまく使っていくかがカギと踏み、所持品を確認する。
「異世界側を当てにできない以上、もう俺にはこいつらしかない。だがかなり有能だぞ俺の所持品はよ。なんてったってこん中には……スタンガンがあるからな」
普通の高校生ならここで詰みだ。だがクイは違った。
異世界に飛ばされることを仮定して準備をするほど、クイは心配症でも妄想癖でもない。
だがそれは超レアケースと勘案していたからだ。日常生活に起こりうる事態、レアケースには病的なほど怯えていた。
だから違法だと知ってなお、護身用としてスタンガンを常備していた。なにが『だから』なんだ、などとツッコミは不要。
それこそクイは帰宅部。他生徒よりも早く明るい時間に帰宅できる身分にあり、なにより性別が男だ。
襲われる心配など度外視してしかるべきだが本人曰く——俺の生き死にを通り魔に出会う確率に決められるなんて嫌だ——とのことらしい。
しかしその過剰とも異常とも言える心配症が功を奏す。
クイは威勢よくリュックを開け、その中の物を取り出す。
「——なんだぁこれ」
ここまでなに一つ希望のないクイに更なる絶望情報——なぜ今まで気づかなかったんだと自己嫌悪に陥るような事象が舞い降りていた。
なんか——軽いとは思っていたが。
リュックの中には、筆箱やら財布やらの普通の高校生でも持ってるようなものから——頼みの綱のスタンガンまで——
すべてがない
——にもかかわらず自ずと口から出たのは落胆でも怒号でもない。
挙げられたのは疑問の声だ。
クイがリュックの中を探った——右手は、高価そうに見える透明な液体の入った瓶——左手は、手紙を掴んでいた。
「これはもしかすると——こいつだよ進展フラグは」
声にも弾みが増す。
それもそのはず、クイの頭には一つの可能性が浮かんでいた。それは、
「見捨てちゃいないかもってことだな。神よ」
言うなればこれは、神からの贈り物だ。普通、直接会ってわけを話すのがスジだと思うが——なにか退っ引きならぬ事情があるのだろう、と勝手に納得。
「————ん? ああぁ⁉︎ んだこれ⁉︎」
だが許容できない箇所が発見された。
手紙の文字だ。手紙に書かれてるものは文字と相場が決まってる。恐らく文字なのだろう。
つくづく意地の悪い世界なものだ。手紙に書かれていたそれはクイには解読不可能なのだから。
「弄ばれてやがる……読めない文字で書かれてるってことは俺宛てじゃないのか? 店の壁に書いてある文字と同じ形のが何個かあるし、この世界の言語なんだろうがよ」
一応、店の照明にかざしてみたり爪で擦ってみたり模索してみた。が、健闘虚しくその手紙からは落書き以外の情報現れず。
とにかく、こうなれば手紙は後回し。所詮は説明書き、一番の論点は別のものだ。
「主役は間違いなくこの瓶だからな。手紙も多分これについて書いてあるんだろうし。液体をどうするかが問題だ」
その瓶の形は自分自身を両手で抱きしめた女神を象っており、HPやMPを回復させるだけのアイテムの見た目じゃない。捨てようとすれば天の声に引き止められるような超重要アイテムの見た目だ。
そして真に着目すべきは瓶の八分目まで入った透明の液体。
「重要なのは効果じゃない……取り扱い方だ」
選択肢コマンドが「使う」か「捨てる」の二択なら、間違いなく使うを選択する。
だが現実はゲームよりも自由で、故に選択肢は二択に留まらない。
「飲んで永続的なチートを手にする。それなら楽だが手紙が添えられてるくらいだ。特殊な扱い、説明が必須な使い方なのかもしれねえな」
パッと思いつくだけでも——
植物にかける、土にまくことで効果を発揮する農業ルート。
食べ物の調味料として使うと効果を発揮する料理人ルート。
武器に付与して効果を発揮する鍛冶屋ルート。
モンスターに飲ませて使役する桃太郎——獣使いルート。
あるいは人に飲ませて操る——これは確実に悪用する未来しか見えないルートだ。
こんなに考えつく。
クイは飲み口に刺さっていたコルクを抜く。そしてゆっくりと瓶を揺らして波打つ水面を眺めた。
液体に反射して映ったのは——口角の上がった自分の顔だ。
「可能性を絞る方法見っけー……さーてここらで巻き返しを図るとしますか」
敢然と——クイは右手を高らかにあげると大きく「すみません!」と店員を呼びつける。
視線の先にいた金瞳の店員は目を丸くしていた。よく見てみると金瞳の店員だけではなく、あんなに賑わっていた店内が途端に静まりクイの方を物珍しそうに見ていた。
——ったくお前らと同じ言葉が使えねえってことがそんなに珍しいのか?
既に原因が分かりきっているクイは物怖じず——今度は手招きしながら再度、金瞳の店員を呼びつけた。
「俺の流儀その一をお披露目といくか。困ったときこそ人を巻き込め、だ」
防犯ブザーのデザインと同じ道理だ。
鳴らすことで身の危険を周りに誇示し、多数の味方を強制的に作る。極力他人とは関わり合いになりたくないが利用という面では存分に使っていく。
テーブルの前にメモを持って現れた金瞳の店員に対し、クイは手紙を差し向けて見せつける。
店員が目を手紙に向けて十数秒——その次にクイは人差し指で瓶の存在を誇示する。
「伝わってくれたか? それじゃ始めるぞ」
クイの言葉に無言で返す店員。その顔は少し斜めっていた。
それもそうだろう。店員からしてみれば何を求められているのか分からないのだ。
伝わらない言語で話しかけられ、注文もせず手紙や瓶を見せつけられ、そして今——またも自分に見せつけるかのように瓶を傾けて液体を飲もうとしているのだから。
これが液体の用途を絞る策だ。
手紙に液体関係のことが記されてないなら特別な使い方をせず、飲んでいいということだ。
だが記されているなら注意事項があるはずだ。毒性があり飲むことを禁ずる内容や他の用途が記載されていれば、クイが飲むふりを見せつければ止めてくれるだろうと。店の中で厄介ごとを起こされたくない気持ちは多分異世界も同じだ。
ゆっくりとゆっくりと瓶を傾け続ける。もう少しで、クイの口に液体が注がれる傾斜になる。
いいのか? いいのか? このままいって大丈夫なのか⁉︎
——というところで、
金瞳の店員は笑顔で発話した。
「——はっ!!」
瓶の傾斜はすんでのところで持ち直した。やはり特殊な使い方だったか、と冷や汗をかいて安心する。
店員は軽くお辞儀をするとカウンターに踵を返す。
「危なかった……飲んでたら今頃どうなってたことやら」
そう考えると口ではなく手で止めて欲しかったと思う。
「だがこれからが面倒になるな。できれば俺も液体は飲み物って可能性を信じたかったんだが。——でもゼロじゃないか。例えばあのイケメン気取りの店員には実は学がなくて読めなかったとかぁぁぁぁあああうおおぉっ⁉︎」
突如視界の端から現れた手に驚いて反射的に声を荒げた。
その手を辿っていくと先ほどの店員がまたもいい笑顔を向けてくる。
そしてまたも軽くお辞儀をするとカウンターに踵を返していった。
「え……え? ——あ、そゆこと……ね」
机には大きめのガラスコップが一つ用意されていた——
空っぽの状態で。
なにを入れるか——なんて分かりきっている。
「オッケーオッケー……ってすごいな。水面がほぼぴったしだ。こんな特殊な形の瓶の容量を正確に測るとか要領良す……あの店員実はかなりのやりてか」
別に誰も気づけはしないが意図しないダジャレに恥ずかしがる。
恥ずかしがりながら——瓶の液体をすべてコップに注ぎ切ると、荒い呼吸と震える手を隠し抑えてコップをわし掴む。
「そんなやりてで笑顔が素敵なあんただからこそ信じるぜ。死んだら毎晩枕元に現れてやるがな!」
店員の方に向けて叫ぶ。そして勢いよくコップに口をつけ、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み続ける。
店内全員ではないが、クイの一気飲みを見物する者は多かった。
金瞳の店員も、あと数秒で飲みきれそうなクイを静観していた。
空のコップを渡すというのはすなわち、注いで飲めということだ。手紙には飲むことを禁止する注意書きはなかった捉えるべき。
——この液体は安全だ!
必死の形相で、かじりつく想いで液体を飲み干さんとするクイに——徐々に日本語に近づいていく周囲の声が届くことはなかった。