ザ・レッドコーツ
英国擲弾兵行進曲を聞きながら読むとよいかもしれません。
またはユー〇ャンのCMの音楽で。
私は赤いコートに身を包み、僚友たちと足を揃えて、密集隊形のまま前進していた。
ピッピピッピピピィ、ピピッピピッピピピィ!
ファイフ(リコーダーの一種)が鳴り響いている。
シンプルであるが、軽やかで鮮やかな心躍らせるメロディーだ。
ダンドン、ダダドン! ダンドン、ダダドン!
ドラムが打ち鳴らされている。
腹に染みわたる勇壮な響きだ。
前進、前進、前進。
私たちは、音楽に合わせて前進を続けることを求められていた。
強いられているのではない、そうあり続けるように訓練されているのだ。
とはいえ――
足を揃える僚友たちの顔は強張っていることだろう。
私の顔もご同様である。
それもそのはず。
眼前では、敵兵たちが厚みのある横陣を形作って、待ち構えていたからだ。
銃、銃、銃、無数の銃。
弾丸を装填した銃が、筒先を揃えてこちらを狙っているのだ。
そうそう当たるものではないと知っていても、やはり気分の良いものではない。
敵の指揮官がサーベルを振り下ろす。
そぉらきた。
白煙が連続的に巻き起こる。
パタ、パタと何かが倒れる音。
私たちは、それを甘受して前進を続けるのだ。
最初の斉射によって作られた戦列の穴は、後列によってすぐさま埋めらる。
ははっ、まだまだ序の口――敵陣まではまだ遠い。
続く第二射を受けても、私たちは何事もなかったように前進するのだ。
行進曲に合わせて足並みを揃え、ただ前進するのであった。
続く第三射、第四射は、距離が近づいたために、命中率が上がる。
倒れ伏す僚友たちの数が増えた。
ズガン! とした音が聞こえると、ヒュオン! と、大きな砲弾が飛んでもくる。
おや、ファイフの音が小さくなったな。
笛手の一人が吹っ飛んだらしい。
だが、それでも前進は止まることはない。
連隊旗を持っていた旗手が倒れれば、すぐさま代りの者が高らかに掲げる。
敵兵の姿が明らかなものになってくる。
敵陣から50ヤード(約50メートル)の位置――対手の黒目が見えるほどの近距離。
そこで、止まれの合図。
我が隊の士官がサーベルを振り上げた。
射撃準備を整えよとの命令が下る。
私はすでに”引き延ばされていた”弾丸を確認した。
十分に撓められたそれは、敵兵を打倒すのに十分な威力を発揮するだろう。
私は、次の指示を待った。
今だ――発射! という号令に、私は引き金を引くのだった。
ぱっちん!
"輪ゴムの弾丸"が、敵兵目掛けて飛んでゆく。
そう、我らはブリキの兵隊、|赤服の擲弾兵《The Redcoats》。
世界に冠たる”おもちゃの兵隊”なのだ。
倒れたブリキの兵隊たちは、またもとに戻されて、隊列を組み直します。
ブリキじゃなくて、レ〇ブロックの兵隊でも良かったかなぁ。
なお、筆者は戦列歩兵が出てくる映画を見ると、胸熱になる生き物です。