50/53
水月50 詩:梅雨空の下
~ 梅雨空の下 ~
ぽつぽつと 雨が当たる
湿気をはらんだ風が さあさあと 雨を運ぶ
色んな粒子がぶつかり合って 押したり押しのけられたりして ついには感覚器官に捉えられる 即座に知覚される
さあさあと 雨が通り過ぎる
湿気をはらんだ風が ひらひらと 雨を抜けてゆく
浮遊したままの粒子がぶつかり合うこともなく 空をさまよい 感覚器官にも察知されず 未完の雨としてその可能性を保有している
見ることも触れることもできないそれは 雨の幽霊であり 干渉のない存在である
梅雨空の下には 暖かい雨と 冷たい雨とが 重なり合っている