- スライムの蛇探し -
割り込み投稿なお話
後に矛盾等が湧いて出てきたらその都度修正します
自分はスライムだ。
吾輩はスライムである。
我はスライムであるからして。
ボクはスライムなんでーす。
ぷるんっ…、と体を動かしながらに練習するのがこの私、名前はサプと呼ばれている。
練習している理由は、人間の集まる場所に行き、紛れ込む必要があるから。
私の練習の様子を見ていたリム様は、鬼の様な形相をしながら、ふざけてるのかと一括。
スライムじゃなくて、人間を演じなければならないらしいです。
という訳で、ボクは人間です宜しくねと始めれば、
リム様がこれを見ながら覚えろと、本を数十冊と用意してくれました。
全て見るのに相当な時間がかかりましたよ。丸一日潰れましたね。
さらには演技の練習に3日程。上手く出来るかどうか不安です。
人間を演じるのであれば、交渉に慣れているリフの方が適任なんだけどなあ?
妥協点として、人間が無理なら魔人を演じる事も視野に入れ、覚える事はまだまだ山程に。
思えば人間界隈の情報収集、その他のアレコレはリフが全て受け持っていた。
なので、実際にそういう役割を持たされて気が付きました。
私自身がやるとなった時、何をすれば良いのか全く分からなかったという事に。
そう思いながら、ヨルン様を探せるのが自分だけという事もあって頑張って演技を覚えたのです。
とりあえず見つければ良い。持ち帰って来れるならそれでも良い。
手に負えないようなら助けを出すが、人手も足りないから、先ずは私だけで行ってこい。
解決までの時間が伸びても問題なし。ヨルン様には時間が必要なのだから。
それならそれでマイペースにやるだけです。
こうしてヨルン様が居なくなってから、ひと月以上が経過。
足取りを追って、徒歩で向かう事の、着実に距離は縮まっている。
この調子で歩いて行けば、今年中には接触できる事でしょう。
そう定時連絡で、おおまかな居場所と進捗具合を詳しく説明したら、
即座に現れたリム様に、近場まで送ってやると運ばれました。
大幅な時短となり、後は詳しい場所を絞り込んで、ヨルン様を見つけるだけとなったこの状況。
ソロでの活動は慣れていないので、全てが新鮮なこの感覚。
とりあえずの所で、方向としては…、あの一際目立つのが所謂お城、なのでしょうか?
他を見渡し比べてみれば、正面のアレよりさらに大きい、国旗であろうものが風に靡いている、一番目立つ建造物がありました。
となるとこっちが城で、アレが…何でしょう?
だけどその、何か分からない建物に向かえばヨルン様らしき反応があるようです。
それにしても人間界だけあって、あっちを見ても人間。こっちを見ても人間。
地面は舗装されて、石畳に模様もついて、街路樹と呼べる物が等間隔で並んでいたりもしますね。
とはいえ観察した所で道が分かる訳でもなく、進んでいけども目的の場所までは辿り着けず。
真っ直ぐ進めば良いという訳でもなく、道なりに進んでいったのに壁があり、
建物はあれど、背を向けて反対方向に進まなくてはならないとは、どういう作りなのか?
目立つ行動は控える様に。
なるべく地味に、騒ぎを起こさず事を進めなさい。
そう言われているので、私はゆっくりと2本の足で歩いて行きます。
堂々としていれば、背の低い私の姿なんて誰も気に留めたりしません。
左に向かって、右に曲がって、道を間違えたっぽいので戻ってみたり。
中々どうして、目的の場所まで辿り着きません。
同じ場所をぐるぐる回っているような気がしてきた頃。
それは変な奴がいるなとか思われ始めて来る頃。
少しばかりの焦りを感じましたが、まだまだ時間は大丈夫。
リフが言っていました。人間世界にはダンジョンとも似た作りの建物群があると。
行けども行けども進んでいる気がしませんし、もしやこの場所がそのダンジョンなのでは?
となると階段を見つけて下に降りねば先に進めないとか?
探索範囲を広げてみると、確かに地下の方にヨルン様の反応がある。
気が付かなければ、私はずーっと地上を彷徨っていた事でしょう。
やはり、人間世界についての勉強は成果があった。
そういえば、人間の集まる所には立て札という物があり、
初めて町にやってきた者に対しても、文字として分かり易く、案内があるとかも聞いています。
宿屋、武具店、酒場に、露天やら、ソレ等に固有名詞を付けての立て札は山程に。
これ等の情報は全て廃して、必要なのは、この矢印付きの大きな看板と呼べる物かもしれません。
一際大きなソレに書かれている内容は、至って単純。
闘技場 此方側からは入れません
丸い絵が描かれており、”C”のような形で、空いている部分に入口と矢印が付いています。
現在地の点は、入り口の丁度反対側であり、さらに徒歩で5分とも書かれていた。
そして建物の並びであろう、簡易な地図も表記されており、この位置からなら右を向いて大通りを道なりに。
それでこの闘技場とやらの入口に辿り着けるようです。
情報を得た所で、気になる情報がもう一つ。
剣闘士の部、魔物の部と、時間によって分かれているようで、出場名簿のような張り紙が乱雑に張られています。
人間はどうでも良いとして、魔物の一覧の中には、目当ての蛇の姿が描かれている。
実に狂暴そうな蛇の絵の横には、ゴブリン、オーク、狼、その他様々な魔物が張り出されている。
それにしても、蛇の絵を目立つ所に張り出しているとは、実に見所のあるセンスをしていますね。
この蛇がヨルン様かもしれないので、確証を得る為にもやっぱり、この闘技場とやらへ向かうとしましょう。
ペタンペタンと心地良い音を響かせながら、何となく歩いて行けば、30分が経過。
未だに辿り着く気配も無く、あの徒歩で5分の案内とは何だったのか?
ともあれ進まなければ辿り着かないのだし、進み続ける事の、同じ看板が目に入る。
成程、私は無限ループに迷い込んでしまったようです。
前へ前へと進んでいるだけでしたのに、この状況。
首を傾げて打開策を考えていた所、見知らぬ者より声が掛かる。
「何かお困りですか?」
その者は、一言で言えば変な奴。
何が変かと言えば、マスクを被っていた。
鳥の様な嘴のある、ペストマスクとか呼ばれる類の奇抜なマスクをだ。
妙な奴に絡まれたか?
そう思うも声をかけられた程度で、それ以外に何がある訳でも無し。
ここは私めの鍛え上げられた演技力が試される時。
ゆっくりと振り向いて、正面を向き、相手の目を見て話そうとした所で。
「見た所、この闘技場に用があるので?」
私より先に言葉を繋げながら、被り物の嘴を片手で撫で回しつつ、
変な奴は此方を見ずに、建物の方向を眺めていた。
釣られるように、同じくその方向を見るも、入り口はこの方向からは見つからず。
とりあえず何かを喋らねば不審がられるだろうと、無難な言葉を口に出す。
「ええ、中に入りたいのですが、道に迷ってしまい」
リム様より与えられた本の内容を思い出しつつ、
お約束の一つ、声を掛けられたら道に迷ってしまったと切り出しましょう。
「成程、此方に来られるのは初めてで?」
とりあえず同意すれば悪い事にはならない。
相手の表情を良く見て、でしたがマスク姿の下は良く分からない。
「はい、その通りです」
慌てず騒がず、時間を掛けずに答えれば自然に見える。
この場はそう切り抜ける事にして、相手の言葉を待てば、
相手側を待っている間がなんとも、不自然に感じてしまう。
どうしたものかと、悩んでしまうも、慌ててはならない。
間もなく後ろを振り向いた鳥頭は、頷いた後に再び此方に向き直る。
「ふむ、ある程度の事情は察しましたが、少し問題が発生しそうですね」
問題の発生はお断りなので、聞いてみるべきだろうか?
成り行きに任せて話せば良いという、ヨルン様の言葉も思い出しつつ、
結局聞いてみるとするが、想像しても何も思いつかないこの状況がどう流れるか?
「ええっと、それはどういう?
問題があるのなら、教えて貰えると嬉しいのですが」
必要なのは演技力。多少の身振りを交えて、この場合は首でも傾げれば良い?
「本日は特別なイベントがありまして、一般の方の観戦が難しいのですよ」
イベント、お祭り事? 一般は難しい。さらに逆側に首を傾げる事となる。
「難しい、ので?」
そんな首を傾げる姿を見続ける、ペストマスクの者は顎を上げて嘴を施設に向けつつ話す。
「理由は、貴族の方々が多く集まる事で、入場に制限が掛けられているのです」
帰って来る言葉に、貴族が絡むと色々と面倒になるとの厳重注意を思い出す。
となると一旦引くべきか。背を向けるタイミングを計る頃合いだろうか?
「成程、つまりは客層を分ける為とか、安全性を高めるだとか、そのような理由なのですね」
本に記載されていた、思いつく言葉を選んで話を繋げるが、
迫り寄るペストマスクの顔が近くなり、どうやら私の姿を観察しているらしい。
「その通りでございます。そしてお聞きしますが、貴方様はもしや…」
何かあれば記憶の操作も…、と考えた所で、様付けをされました。
ココは選択肢を間違えなければ様のままで凌げる可能性が高い?
予め用意してあった、リム様印のテンプレ回答欄を引用するタイミングはココですね。
「見ての通りに、魔人ですよ。目的としては…、
魔物を扱う施設があると、とある方より聞いて、こうして直接見に来た次第」
少しばかり言葉に詰まったが、こんな所でしょう。
「そのとある方と言うのは、お聞きしても?」
話に食いついて来たので、続きとしては言葉を濁して含みを込める、でしたね。
「ええ、私は特に、お話しても構いませんが、其方の事情は宜しいので?」
魔人が関わる事例は、なるべくコッソリと。
人気の無い場所に誘い込めれば、あとはどうとでもなる作戦。
失敗しても、会話が続けば別の答えも用意されている。
リム様直筆の、私専用に用意されたマニュアルを、頭の中で復唱しながら相手側の様子を伺えば。
「そうですね、それでは此方にどうぞ」
流れは上手く行ったらしく、看板の後ろに誘われる事の、何とそこには隠し扉がありました。
やはり、人間の集まる町はダンジョンのような作りとなになっている。
知識を固めた所で、素直に驚いておきましょう。
「ほほぅ…、このような道が」
その隠し通路の先に進めば、一般の者とやらは居ないのでしょう。
互いに歩を進めて行けば、誰も居ない通路が続くばかり。
「職員用の通路ですよ。鍵でしか開かないようになっているのですが、貴方様には特別に、ですよ」
ダンジョンもそうだが、こういった通路には意味がある。
職員用の通路とは伝えられたものの、こうまで一本道が続くとなれば用途は分かり易い。
誰かが侵入すれば直に分かるし、何かがあった時の非常用の通路にもなる。
出入口が隠されているのだから、こうして人気の無い場所に連れ込む等と、何とでも使える訳だ。
そして私の方はと言えば、何をされても別に問題はなく、むしろ目立たないのであれば好都合。
ペストマスクの職員とやらも、施設についての説明をしながら進むのみ。
「ほっほ~、魔物同士をこのような形で」
そうして少しばかりの時を過ごした所で、目当てのモノに近い場所へ到達したようだ。
「施設が育成したモノが大半ですが、来賓者が各々で使役しているモノも参加していますね」
複数の、一般に生息する低位の魔物達が戦わされている様子。
ソレを見て楽しむ観戦者達をも一望できる、現在地は情報を集めるのに丁度良い場所なのではないか?
そう思い立ち、足を止めれば、先導する職員も同じく立ち止まる。
「そういった類のモノの方が、当たり外れと大きいのですよね?」
「そうですね、あっさりと退場するモノもあれば…」
周りには誰も居ない事を確認しながら、試合に興味がある事を示せば、
応対する相手側も渋々と言った所か。
同じく試合を眺めながら説明を始めるが、間もなくというべきか。
辺りが少し騒がしくなり、目立つ位置に立つ者が、魔物の紹介を始めたではないか?
檻の中より這い出して、長い胴体と不格好に大きな卵付きの尻尾を露にした蛇を見て、
観客達は上品な拍手を送り続けている。
紹介は尚も続き、飼い主の名前や魔物戦績、聞けば優秀ではあるような紹介だが、
目当ての蛇としては、こうして遠目で見る分には確証が持てない。
やはり、直接見て触ってとしなければ、近くに存在しているという所までしか分からない。
「ほら、あの子を見てください。本日最後の試合ですが、
この試合を見る為に態々、この施設の客層を制限した貴族がいたんです」
大人しく黙って紹介を聞いていた所、隣のペストマスクが説明を追加した。
話を聞くに、お金と見栄張りたい貴族的な力で、イベントを操作した個人がいるらしい。
そんな中に自分が潜り込んでしまったとは、面倒事に巻き込まれなければ良いが?
どうやら特別扱いされているらしいが、考えていても仕方がない。
なるようになる精神で、難易度の低い目的を達成してしまえばそれで良いのだ。
とりあえずの所で違う話を聞けないか?
そう思った所で区切り良く、その最後の試合で戦うであろう魔物が檻の外へ這い出てきた。
気だるそうに大欠伸。だがその意識は既に対戦相手の、未だ開かぬ檻に向けられ油断は見られない。
「あの蛇は…、それは何とも、見どころのある、いえ、奇特な方?
一体どのような人物なのでしょうか?
ところで成り行きで入って来てしまいましたが、私は此処で見ていて宜しいので?」
直接あの蛇と触れ合う機会は作れないものか。
飼い主の名前と、関係のある貴族の名は頭に刻み込んだ。
あとは、体よくこの職員を引き離して仕込みを済ませたい所だが、
アレの試合も見たいというのが本音である。
他愛のない、情報が得られても得られなくてもどちらでも良い会話を繋げながら行動を考える。
「ええ、この場は職員用の通路ですので、ご心配なく。
魔人の方とは、良い関係を…とのお達しでして、
質問にもお答えしたいのですが、私では詳しい事情を話せるほど情報が無く、すいません。
それにしてもこういう時に限って他の者が居ないなんて…」
辺りを見渡し、ソワソワし始める職員は、所謂下っ端だったらしい。
どうやら魔人として行動するのであれば、自身がこの場に居ても問題の無い事は分かった。
嘘をついている訳でも無く、これ以上に得られる情報が無い事も。
「どうかしましたか?」
となれば後は、なんとなく邪魔になってしまったこのモノをどうしたものか。
「いえ、上の者を呼びたいのですが、どうにも他の者と会えずでして」
どうしたものかと考えれば、別にモノを呼びに行かせれば良いだけの話だった。
「それならば、私はあの試合を見ていたいので、少し離れても構いませんよ?
この場ならば全体も見えますし、何より、迷う事もない一本道ですし。
試合が終わるまでに戻ってきて貰えれば、退屈はしませんから」
という訳で、呼びに行っても良いよと伝える。
「それは、その、しかしお一人にしてしまう訳には」
引き下がるペストマスクの様子を見るに、説得には時間が掛かりそうだ。
「何も問題はありません、よ?」
面倒なので、呪術による催眠を掛ける事で問題なく事は進む。
ヨルン様より教え込まれたこの呪術は、なんとも便利で使い勝手の良い魔法であり、
私なりに改良も加えた催眠効果は、人間相手であるならば…、ちょっと効果が強すぎましたかな?
「そう、ですね、いって、きます」
催眠の影響で、フラフラと揺れながら去っていく職員を見送りつつ、
コレでは少し不信がられる可能性はあるかもしれないなとは思うものの、何とかごまかせるレベルだろうとも思い、
自身の周りに誰も居なくなった事も確認し。
「さて、これでゆっくりと試合を見れますね」
誰も居ないと分かっていも、わざとらしく誰が聞いても分かるように一声上げる。
スライムである自身の身を分けた分体を、施設の中に張り巡らせる作業を始める前にのこの発言。
こういった意味の無い行為でも、隠ぺいの効果があるかもしれないという、
一つのジンクスであるらしいので、大して手間も掛からないからやっておいたのです。
後は、リム様から預かったこの本の内容で忘れている事は無かっただろうか?
そう思った所で響く金属音に、意識は目当ての蛇達の試合に向けられる。
一際大きな大歓声が沸き踊るが、一瞬後には静まり返る。
どうやら試合が始まった様で、蛇と狼がぶつかり合った際に起きた騒ぎのようですね。
「へぇ…、やっぱりアレは…、っと、見事ですね。うんうん、良い動きです」
試合の内容は、一匹の蛇と二匹の狼が戦う、実にシンプルな内容だった。
分かり易く、魔物同士がぶつかり合う様は、見ているだけでも暫く楽しめる。
その筈だったのですが、今目の前で行われている試合は、
何ともピリピリとした雰囲気漂う、一手一手に意味があり、
蛇が構えて狼達は攻め込めず、互いに様子を見てからの行動が多い。
この流れは、その辺に生息する一般な魔物達では、まず有り得ない試合の展開だった。
つまりは普通ではない魔物であり、そうであるからにはアレが目当ての蛇である可能性は高い。
任務完了の時は近いと、期待に身を震わせつつ、ある程度の分体を施設内に散りばめ、一通りの作業を終えた時だった。
最後の狼相手に、巻き付き終えた蛇が、勝利を確定させたその時。
蛇の体に、何の前触れも無く、短刀が突き刺さる。
狼の魔物が武器を扱える等とは聞いた事がない。
出来たとして、口に咥える、尻尾の先に取り付ける等があるが、
武器を扱う系のスキルを持っていたとしても、あの体勢から反撃に転じる事は不可能だ。
そもそもに、狼側は始めから武器は持たず、
武器を取り出す等の、特殊なスキルの発動も確認していない。
念力のような力があったとしても、発動すれば感じられますし、となるとつまりは外部からの干渉ですね。
施設の各所に設置し終えた分体からの情報によれば、状況に適合するスキルの発動が感知された訳で。
やっぱりこれは、魔物達以外の、外部からの干渉が働いたという事で間違い無いですね。
となれば、どうしたものでしょう。
外部から干渉が有りとなれば、私の側からも干渉して良いという事でしょうか?
とはいえ、あの状況になっても、蛇側が負けるビジョンは浮かばず、
しかしながら、ヨルン様の邪魔をしたと思われる者を放っておくのも、不快である。
直ちに分体を短刀を放った者に張り付かせ、報いは受けさせる事とする。
即座にではなく、関係する全ての者にお仕置きを。
そしてヨルン様であろう蛇には、確認の為に一つだけ。
「ヨルン様、ガンバレー」
そう応援の言葉だけが届くように、蛇に分体の一つを取り付ける。
何の問題も無く、誰にも気づかれずに事は済んだが、肝心の蛇の様子はあまり変わらない。
本物であるならば、返事をくれても良い筈なのだが、それが無いのであれば、
前情報通りに記憶が中途半端である可能性が高い。
とりあえず、予想通りというべきか、あの蛇はヨルン様っぽく変な行動をしていましたが、
無事に試合には勝利したので、狼を絞めつつ眠りについたようです。
他者に巻き付きながら眠る事が大好きなのがヨルン様。
色んなヨルン様っぽい様子を多く見られた事ですし、
あの蛇が1番のヨルン様候補だとして、ゆっくりと外堀を埋めていく事にしましょう。
先ずは試合の邪魔をした者を罰し、休暇を楽しんだ後にリム様への報告を。
そうして方針を決めた所で施設全体が、ざわめき出した。
勝者が蛇側だと報じられた事を感じながら、蛇の妨害をしたであろう者の前に向かおうとしたのだが、
都合悪くに、ペストマスクの職員が、もう一人と増えてやってきたではないか。
どうやら、その連れて来たもう一人が、上の者といった所らしい。
面倒事にならない為にも、手を振って体をくねらせ自己をアピールをした所。
「闘技場にご来訪、感謝します。しかし…」
私は元来た道を辿り、施設の外に案内されて、また後日と追い出されてしまった。
話に聞けば、試合に問題が発生した為に、巻き込む訳にはいかないという理由だったが、それならそれでまあ良いか。
分体は送り込んだし、これ以上に面倒な事をしないで済む。
彼等の配慮に感謝をしつつ、私は暫くの間、休暇を楽しむのだった。
ああ、ついでに試合を妨害したと思われる者達の報告はしておきましょう。
自分で制裁を加えるには機会を逃してしまいましたし、
事実だけをリム様に伝えておけば…、おお、怖い。
監視だけは続けて、私自身への飛び火を防げれば良いのですが。
不安を膨れ上がらせても、悪い方向へ向かうだけ。
こういう時は何も考えずに、やるべき事をしっかり済ませて休暇を楽しむ事にします。
ヨルン様が関わる事ですし、その辺はしっかりと。
報告するべき内容を、都合良く纏め上げて後は観光か、
それともだらだらと、何も考えずに蕩けて過ごすか。
そういえば、あの施設のペストマスクな人間が言っていた。また後日と。
もう少しだけお仕事をすれば、満足の行く結果になりそうですから、
この闘技場とやらには明日も通う事にしましょうか。
情報は多い方が良いですものね。分体の回収もありますし、今日の騒動の結果も気になります。
あわよくばであの蛇を、リム様より預かった…この白金貨10枚以内で買う事が出来れば、
それだけで今回のお仕事は完了。失敗しても余裕はたっぷり、気楽に行くとします。
こうして計画を立て終えた私は気が付いた。
夜の世界の街並みは昼間と違って見えて、さらに迷いやすくなっている事に。
そしてどうやら私は良く分からない、人間の集団に囲まれていた。
これは話に聞いていた、夜の路地裏イベント発生。
対処法は幾つもあるので臨機応変に、この場合は観光案内でもして貰いましょうか。
ちょっとばかり、単体では寂しかったんですよね。
逃がさず全部を生け捕るか、面倒ならば一つだけ残せば良いんでしたっけ。
一番遠くで様子を伺っている奴がいたのなら、ソレから無力化とか、
遊びたいならば、弱者の振りをして、何をしたいのかを知るのも良し。
リム様直筆のマニュアル通りな展開に、何を選択したものかと悩む私は考え抜いた末。
とりあえず、全てをこのスライムな体に襲って来た人間達を取り込んだ後に、さらに考える事にした。
騒ぎにならないように、なるべく目立たず、穏便に事を済ませる方法は何だろうなと。
* * *
スライムがんばる




