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【普通の一般的とはちょっと違う村だった所に住むただの村人】

ぽっと沸いて出た村人視点

 ここはグロシの村。

 村を収める長の名前がグロシだからそんな名前。

 教会の定める【マグナス】に登録された村の一つ。

 人口は200名程度の、どこにでもある村の一つ。


 ただ普通に生活し。生きる為に農作物を育て、簡単な狩りをする。

 変わり映えのしない毎日を過ごし、変わらぬ作業を繰り返すだけの村。

 ただ普通の村と違う所は、この村が魔物が犇めく森の中。


 大地の半分を占めるといわれる樹海の中に、この村がある。

 正確な場所で言えばアリアと分類される領域で、

 中々に深いと思われる場所へ村を構えています。


 それ故にトラブルも他の普通の村と比べて多く発生するのも止む無し。

 それでもこの村は、村という形を残し50年は続いているとか。


 しかしそんな村も一夜の内に突如現れた…

 天を貫く程の巨大な大樹の存在に不安を募らせる毎日を過ごしています。

 今までにない大事件と呼ぶべきなのだろうけれども変わらぬ日常は続く。


 異常である現象には間違いないのだろうけれども

 現れるだけで特に変わり映えのない日常へ戻りました。

 出来る事と言えば今以上に気を張り警戒する程度。

 一介の村人達に何が出来るというのか。


 …私の年齢ですか?

 ご想像にお任せします。

 この村に生まれてから今までの誕生日を祝ってくれた両親は既にいませんから。

 唯一親しかった幼馴染も、教会の神殿騎士になると言って出て行ったっきり音沙汰無し。


 私に残されたのは広大な畑と、家が2件に倉庫が5つ。

 人間一人が管理するには多すぎる。広すぎる。大きすぎると揃っていました。


 しかし今の今まで。どうにかなっている事もまた事実。

 この日の作業を終えて空を見上げれば日はまだ落ちてはいません。


 心に余裕のある日は同じ村の仲間の場所へ顔を出し、近況の報告。

 生活必需品とその他の酒屋等への買い出し。


 そして酒屋では丁度、教会の方が徴税へやってきていた所のようです。

 自身の分は既に預けてあるので問題はありません。

 酒場ではこうして、徴税に来る以外にも村で起きた事件等が、

 いち早く伝わる場所ですので用が無くても、立ち寄るぐらいする場所になり、

 交流を深めたり、相談事等を持ち込まれたりと何かと便利な場所になっています。


 今回の用件はとりあえず今は一つだけ。




「オッサン、いつものお酒お願い」


 予め準備しておいた空っぽの酒樽を一つカウンターへ置く。


「あいよー。今日も仕事を終えた後かい?」


 徴税人が視線を向けてくるが珍しい事なのだろうか?

 作業の手が止まって後がつかえてしまいますよ?

 気になってしまうものの、この徴税人も決まって同じ人ではない。

 思えば初めは革袋を数個程度の買い物だったが今では樽が一つ。

 往復が面倒だったので樽ごと持ち運ぶ事にしたのだけれども、

 初めて樽ごと見せた時には、酒屋のオッサンにも驚かれた事を思い出しました。

 やはり、面倒だからと言って横着すると目立つようです。

 でもこのやり方は誰にも迷惑をかけている訳でも無し続ける事でしょう。


「うん、一通り終えたからね。今日は何かおもしろい事あった?」


 そして普段と変わらぬ切り出しで会話を始める。

 徴税人も周囲に促され自身の仕事を再開する。


「そうさな、あと30秒早けりゃ~そこの役人さんがすっ転んだとこ見れたぐらいさ」


「へぇ、そいつは残念。後でお酒取りに来るから置いといて」


 特に興味も沸かない情報を得られた後は時間つぶしに辺りを散策。

 これがお酒を買いに来た時の行動。

 変わらぬ日常。そして安心できる日常。

 そんな日常の中、良い事であれ悪い事であれ全く同じ日常が繰り返される訳ではない。


「おう、今日は気を付けな。アンタを待ちかねてる奴がいるからな」


 その一つに酒屋のオッサンの忠告通り。

 目の前に立ち塞がる偉丈夫。

 偉丈夫と例えたからには、大柄で筋骨逞しく決して悪い奴でもなく…そして。


「ラノア! 今日こそ良い返事を貰うぞ?」


「何の話?」


「何度も話しているだろう。オレのモノになれって事だよ」


「あ~、それなら断る。他に用がないならこっちも買い出しあるから済ませてくるよ」


 特に興味も沸かない、いつもの口説きをスルーして買い出しを行う。

 大して欲しい物は無かったが、男は金魚のフンの如くにひっついてくる。

 お陰様で買い出しを済ませると言った以上は何かを買わなくてはならなくなった。

 全くもって面倒だが言ってしまったからには仕方ない。


 余計な出費になったがお酒のおつまみの豆を袋に詰めてパンも補充。

 その他、蝋燭に油も必要な事を思い出しそれもまた購入。

 ついでに目に入った毛布も今使っている物が破れてしまっていたなと思い出して即購入。

 さらにアレも。コレも。そうそう、アレも忘れていた。

 徴税人がやってきたので、ついでに都会の珍しい物がオマケについてくるのですよ。

 お陰様で財布の紐が緩んでしまいました。



 そうこうするうちに時は流れ、楽しい買い物のお時間も終わってしまう。

 日は傾き酒場へ戻る頃には大荷物となり相変わらずに偉丈夫は後をついてくる。

 ストーカーとも表現出来る行為ではあるが咎めるモノは誰もいない。

 それも一つの日常となっていると、この世界ではごく普通に行われている行為。



「で、いつまで付いてくるのかな?」


「当たり前だろう。いい加減に話しぐらいしようぜ? なあ?」



 いい加減にそんなストーカーにも嫌気がさしてくる。

 悪い気はしない筈なのだけれども、湧き上がる感情がこの男を私は避けている理由の一つ。

 その理由は分からない。やっぱり多分。ウザったく思ってるからなのだろう。

 しかし何を言おうが、無視をしようが迫ってくるストーカーを止める事は出来ない。

 半ば諦め気味に今夜、家に迎え入れてしまう事になるなんて誰が思ったか。


 理由は荷物が多すぎたが故に、手を貸して貰う事になった訳で。

 良くもまあ素直に言う事を聞いてくれたものだ。



 …

 ……

 ………


「おーい。ココに置いておけばいいのかー?」


「ああ~、地下室があるからこっちだよ。そこの板の上に置いて頂戴」


 同じ村とはいえ、そこそこの距離を休み無しに

 中身の入った酒樽を運ぶのは疲れただろうからお茶の一つでも出してやろうと招き入れたのが発端だ。


 意外と弾む会話。

 溜まりに溜まった口説き文句を交えて歯の浮くような告白を恥ずかし気もなく、

 偉丈夫、件ストーカー。だった男は次から次へと口に出して私を攻め立てた。


 会話の大半は頭に入らず右から左へ抜けていったが、

 幼馴染の事を気にしてるならそろそろ忘れたらどうだ?

 そんな話題を切り出す偉丈夫はバツの悪そうな声色で切り出していた。


「別に。そんなの言われるまで忘れてたわよ」


「それなら、良いだろう? オレは頼りになるぜ?」


 偉丈夫は胸を張り、自信をアピールする。

 頼りにはなる。その通りだとは思う。

 だけど。説明の出来ない不安だけが湧き上がる。

 この予感が何か分からないままに、夜が明ける事になった。



 そしてこの日、大樹の向こう側で空が爆ぜた。

 それが何なのか。雷にしては異常だった。空が焼けている。

 何か大変な事が起きているとだけしか分からず、不安がさらに上乗せされた。


 一介の村人には知る由も無かったが、

 どこかの馬鹿がストレス発散の為に核爆発のようなものを引き起こしたと例えられ、

 その後に極大魔法の爆発だと言い直されたあのやり取りは、やはり一介の村人には分かりませんでした。

 そんな話をしてくれた相手は、人間ではなかったとだけ。


 少なくても、その極大魔法とやらの光に森が包まれた後の生活は大きく変わりました。

 そう、大きく変わってしまったのです。



 数日の時が経った後…



 薄気味悪いアンデッド系と分類される魔物が数多く発生し続け、村が危険に晒された。


 村を護衛していた数名の神殿騎士達は聖都に何かがあったらしく、確認の為に帰っていった。


 代わりに傭兵を数名雇っていたものの、数ヵ月と持たずに消えた。


 昼夜も問わず現れる異常な魔物達により、まともな生活がままならなくなった頃。


 村人の死者も出始める。10名を超える死者が出た辺りで村の中で離脱者が現れた。


 アンデッドと化した村人が現れてしまったのも要因の一つだろう。


 荷物を纏め、聖都へ向かった村人がどうなったかは知る由も無かった。


 この時、知る由も無かったが聖都が崩壊したという情報が後に入る事になる。


 結果的に村に残り防衛に徹した村人達の多くは生き延びる事が出来た。


 アンデッドの襲撃も長くは続かなかったのだから。粘って耐え抜く事が正解だったのだ。


 極大魔法とやらの影響によって変貌してしまった魔物が村へやって来ていただけの事。


 その極大魔法の余波を直接受けてしまった事が村人がアンデッドと化した要因だったらしい。


 別にアンデッドに殺されたからといってアンデッドと化す訳では無かったのです。


 アンデッドの襲来が落ち着いた後は少し変わってしまった毎日を穏やかに過ごしている。




 そして私を好いていた偉丈夫はきっちりと生き残り相も変わらず家にやってきていた。

 今や一緒に酒を飲み共同作業をこなす程度の間柄となったが違和感の元となる何が引っかかる。

 結局の所、その所為で私の心を大きく動かすような出来事は特には無かった。

 なぜ、こんなにも私の心は動かないのだろう。

 何か。心の片隅に残る気持ちが他の何者をも好く事を拒んでるような気がするのです。



 そんな私の心を大きく動かすような出来事。

 今、私の目の前で現れる事になる。


 それが一体何なのか。

 なんでこうなってしまったのか。


 一人の男が私を庇い、血に塗れて大地へ倒れ伏した。

 四足の見慣れぬ獣がその異様な形の爪を用いて引き裂いたのだ。


 明らかなる魔物であろうその風貌は狐とも似ていた。

 この辺りに出る魔物としては記憶に無く。

 ある程度の魔物であれば片手間に対処する事も可能であった筈の男も一撃の元に動かなくなった。


 逃げる事適わず。

 狙われてしまえばお終いな状況であると私は知っていた。

 男は逃げろと言ったが、逃げた所でどうなるというのか。


 此方を見据えたままの魔物に背を向けた時点で飛び掛かられる。

 面と向かった所で勝てる見込み等無い。

 助けなど来るはずもない。


 せめて村の者達へ危険な魔物が現れた…と伝える事ぐらいが出来る事。

 本来の用途とは違うが、気まぐれに購入しておいたこの『花火』と呼ばれる道具を使用した。


 使い方は地面に置いて火をつけるだけ。

 向けた方向に綺麗な爆発が起きると聞いて少しは楽しめるかもしれないと思い…持ってきていた物。

 魔物に向けて放つことも考えたが驚かせる程度の効果しかないと予め聞かされていた。


 そもそもにこんな不安定なモノで狙いを付けるのは難しい。

 使う暇があるかどうかも分からない。

 使った所で誰かに知らせる程の効果があるのかも、逃げる暇が出来るかどうかも分からないが。



 幸いにも魔物は直に襲い掛かってはこなかった。

 目の前で行われる不自然な行為に警戒しているようだ。


 そんな不自然な行為も火を付けて数秒待つだけで終わり。

 どの程度の効果かは不明だった。逃げる事は叶うか?

 それとも…何も出来ずに殺されるだけなのか。



   ピュ~~--...ン…………

 


 気の抜けるような音が鳴り、光の弾がゆっくりと宙へ浮いていく。

 なに? 失敗作? 不発? 広い場所でお使い下さいなんて書いてあったのに…高かったのにこれだけ?


 目の前の魔物の事すら一瞬忘れるぐらいの奇怪な音に心を奪われる。

 魔物ですらも頭上に浮かぶ光の球を注視していた。


 そして次の瞬間。子気味良い音を立てて、球は破裂を繰り返す。



   ポコン ポコン 

 ペコン  トコン

   ポコ   ポコポコポコポコ



   ドコーッン!



 なにこれ? すっごい派手。 所謂、魔法のアイテムだった?

 あまりの派手さに我を忘れ、爆発の時を過ごしてしまったのは。

 その光が美しい文様を描き長らく爆発を続けていたからです。


 それは魔物も同じく見入っていたいたようで何の動きもなかったのは幸いというか。

 一緒に見る筈だった男は血塗れで倒れていての、生きているかも分からない状態だった。


 やがて綺麗な光の爆発もやがて消えてしまい、奇妙な静寂に辺りは包まれる。

 魔物と再び目が合う。見つめ合い。いくばくかの時が経つ。


 行動を得る機会はあったものの、結局何も出来ずに振り出しに戻ったのだが。

 急に体を震わせた魔物はまるで犬が怯えたような声をあげ、逃げ帰るかのように走り去っていく。


 …

 ……

 ………


 もしかして、助かった?

 そう現状を理解し、安堵の息をつく間もなく声が聞こえる。


(ねえ、今のは何?)


 そんな私の目の前に現れたのは蛇の様な魔物の姿だった。 

 可愛げのある姿ではあったが、私は直に理解した。


 この蛇の様な魔物が先程の獣を追い払ったのだと。

 滴る汗の滴は恐怖から生まれたものだったのか。

 異様な感覚に身を包まれながらに湧き上がる不自然な安心感。


 一介の村人でありながら、危険と隣り合わせに生きてきた本能が告げていた。

 アレは係わってはいけないモノだと。

 係わってはいけないと分かっていながらも、手遅れだという事も理解してしまった。


 感情が既に自分のモノでは無くなってしまったのだと気付く事すら適わず。

 ソレが何か分からぬままに、私はその魔物へ親しみを込めて話し始めるのでした。



    *   *   *

ヨルン「この世界の村の様子を見てみた~い」

ネーサン「確かこっちに村があった筈」

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