自由な蛇と魔王な蜂
上上下下左右左右~自爆コマンド認証!?
十文字型に爆裂する攻撃がヨルンの鱗を弾き飛ばす。
そこそこな痛みを覚えるこの感覚。
女神の打撃とはまた違った質の攻撃の類。
鱗を貫通し体の内部より爆発するこの衝撃。
通常であれば甚大なダメージを受けるだろう攻撃も自分にとってはマッサージ。
そう思っていた時期がありました。
こりゃあ…マズイ。
全力で行くつもりだった。
今も全力のつもりである。
それがどうした事だろう。
一切の攻撃が命中しないのだ。
一切の攻撃を避ける事が出来ないのだ。
相手の命中率が100%
対する此方の側の攻撃は0%の命中率。
波動砲を打ち放つ!
単発はひらりと身をかわされ、複数同時の発射を空間歪曲により、
ランダムな軌道を描いても一切が当たらない。
合間を縫って飛来する針は正確無比に、このヨルンの胴体を針ネズミ状態としていく。
この針一本一本がネーサンの意思により、いつでも爆破が可能なのだ。
それを防ぐために魔力の結界を張ろうものなら射出される針を超える速度での密着。
直接触れる事により起爆し。
爆風よりも素早く被害の県内より離脱してしまうのだ。
全ての行動が予見できない。
残像が見える程の速さ。
それが空中で展開されるというのだから恐ろしい。
此方も空を飛ぼうものならばカトンボの如しに撃ち落される。
大地に根を張り防御行動を徹底するものならば
ドリルのような形状の針がヨルンの鱗を掘削する事になる。
魔法による防壁もなんのその。
女神もそうだったがどうにも魔法関連の影響が薄いと感じざるを得ない。
目の前の魔王級なネーサンも自分の知識の及ばぬ攻撃手段を持っているようで、
自分が自信を持って展開した防壁をいとも簡単に粉砕してくれる。
振るう触手は一切の手応えは無し。
回避が困難な面攻撃を意識した元素魔法も全てを見切られる。
蛇眼。威圧。呪術による状態異常も一切通用しない。
液化したとしても特に意味は無い。
脱皮の皮で惑わされる相手でも無い。
スケイルシューターで放った鱗はもれなく回収された。
毒の息は平然と払いのけられる。
防御や攻撃にも使える龍の象徴もただの飾りですな。
考えうる行動を全て試したが全てを対応された。
組み合わせて隙を作ろうにもネーサンの反撃がソレ等を上回る。
―――(HP32767/65535)
まさか…ココまで一方的だとは思わなかった。
何もできずにHPが半分まで削られてしまうとは…
能力的に勝っている筈。
女神との戦いで調子付いていた自分を一括するが改善する訳でも無し。
対するネーサンは無駄のない洗練された無駄な動きを戦闘の合間に見せつけてくる。
密着してのキス攻撃までされたらもう唖然とする以外にあるものか。
…なんでココまで強いのに聖都制圧に消極的だったのか。
配下である魔物の数も相当な物だったし出来ない事は無い筈だった。
まあ簡単な話だ。
やる気がなかった。
それだけの事なんだろう。
…
……
………
ココまでされたら。
ユニークスキルを解放する時だ。
『クイックセーブ&ロード』
『カット&ペースト』
そして『星食い』だ。
世界蛇の呪いも考えたがソレだと食べてしまう事が不可能に。
食べてしまいたいが故に戦っている訳なのだから…
ネーサンが必死になるというのも分かるというものだ。
一度は死んでしまう訳なのだから。
復活出来るだなんて確証も無し。
一体何をしているのだろうか。
ロード時に引き込むなんて真似は厄介事を招きかねない行為なのに。
こうして戦いを交えながら苦労している訳だ。
特に深い理由などはない。
ちょっとばかり楽しむ為にユニークスキルを封印して戦っていたのだが。
結果は見ての通りよ。能力でごり押し出来る相手ではなかった。
認識を改め直し、気合を入れ直し、再度仕切り直し。
ここからが本番だ!
と意気込むも、ココまでの流れはネーサンの計画通り。
そう考えて間違いないだろう。
依然として後の先を取るようなスタイルを貫き続けるネーサンは、
此方の一挙一動を見逃さずに観察を続けている。
セーブ&ロードが発動する際の影響を見逃すまいという事だろう。
ネーサンの思惑通りに使ってやっても良いのだが、気分が乗らぬ。
せめて一矢報いねば。
何か一つだけでも驚かせてやらねば。
お目当てのスキルを使ってあげるのは最後だ!
となれば。選択するスキルはコイツで決定。
『カット&ペースト』
触手を使いの、範囲を調整して~の。
とりあえず大雑把にカット!
正方形に抉れる大地。
カット成功。検証通りに問題無く望んだ効果が得られた。
続けてカット。さらにカット。もう一つカット。
おまけにカット。ついでにカット。まだまだカット。
これでもかという程カット。大地を平らにするぐらいにカット。
ネーサンの飛ばした針も何の気なしにカット。ネーサンはまごまごしている。
こういう時の台詞は?
カットカットカットカット~。
なんて続けるのも良いけれど。
そもそも声に出すと綺麗な音色が出る程度の声帯よ。
声が出せるように作り変えても良いが、
いずれやろう。明日やろうと先延ばしにし続けた結果。
まだやってないという良くある体たらく。
そして思い描く構想の第一段階を完成。
やる気のある行為を優先すれば声帯作りよりも、
困難であろう難易度の行為をいとも簡単にあっさりと。
観戦者達を巻き込まない程度にまっ平で凹んだ大地を作りましたよ。
広さ的にトラック何台分必要なのか。
見積ろうと試案した所、目の前のネーサンの顔色を伺った所でそんな思考はぶっ飛んだ。
明らかに動揺しているが戦闘フォルムであるネーサンは喋る事は出来ないらしい。
念話でも良いが魔法的な行為をシャットアウトする機能もあるらしく、
対話をするなら元の姿に戻るか、一息ついて会話の為の隙間を作る必要がある模様。
それは自身も同じようで通常時と比べ、イマイチ魔力の感じ方が小さくなるのだ。
ふむ、ともあれ第2段階へ続けよう。
ペースト発動~、気分は何とかクラフト。
抉り取った大地を貼り付け壁を作成。
世界樹干渉の根と組み合わせドーム状の囲いでペーストを続ける。
カットにて収めた大地の圧倒的な質量の塊がネーサンと自分をとり囲む。
逃げようと思えば逃げられた筈のネーサンも大人しく佇んでいた。
僅かな時間で作り上げられた閉鎖空間の中。
覗き窓程度の隙間から覗くアスピク達がなんとなくシュールだ。
暫くの静寂。
自分とネーサンは見つめ合う。
胸がドキドキ締め付けられるようなこの思いは。
まさしく愛だ。一つの愛だ。恋焦がれた感情もあるだろうが。
一番に感じるこの感覚は。
本当に食べてしまいたい。
食べてしまって一つになりたい。
丸ごと呑み込んで余す所なく取り込んでしまいたい。
むしろ逆に呑み込まれた事もあったような気がするが。
あの時はえもいえぬ感情に身を包まれたものだ。
それは歪んだ愛の形だった。
自分でもおかしいと思うがそう思ってしまうのだから仕方ない。
ネーサンもそんな自分の意思を感じ取ってしまったのか、
今まで以上のやる気を出して対峙していた。
だが…この状況になった時点でネーサンの詰みは確定なのだよ?
閉鎖空間で逃げ道も無くなったこの状態であるのならば。
穴を掘って逃げる力もネーサンにはないだろう。
速度自慢のネーサンも閉鎖空間全てを覆う範囲スキルの発動は避けられまい?
実践で使うのは久しぶりだが、本能の赴くままに発動するスキルの対象はネーサン一人。
初動を伺うネーサンも、今の自分の決意を歪ませる程の対処が出来るとは思わない。
防がれたら…自分の負けを認めてロードを発動となるが。
そんな事を考えてどうする?
自身の負けなど有り得ぬ!
ネーサンも己が負ける等とは一切思ってないのだろう。
であるならば。
どちらが正しいのか。
魔物として対峙する自分達のどちらが強いのか。
この瞬間分かる事。
…
……
………
『星食い』発動!
小さめだが柔軟に伸縮する便利な口をめいいっぱいに大きく開き、魔力を収束。
外界全てのモノを全方位より魔力ごと吸引。
発動に合わせて動く素振りを見せたネーサンの行動は耐え抜く事だった。
避けるのは不可能。範囲外へ逃げようにも壁がある。
閉鎖空間の採掘も、時間は足りぬ。
スキルに捕らえられ、体の動きを阻害されたネーサンは動く事も適わず。
一度捕らえられてしまえば離すことはない。
抵抗できなければ我が身の内へ。
それは始祖竜でさえも例外ではなかった。
尤も、あの始祖竜の姿は…食ってみてわかったが、
別に食べられてもどうという事のない体であるとの推測だ。
分体…なのだろう。本体はアレのさらに上の強さと考えるのならば、
まだまだこの世界における強者というのは底が知れない。
…星食いの発動中。集中力が途切れない程度に思考が逸れたが。
今、目の前のネーサンは耐え抜いている。
だが、このスキルの恐ろしい所は自分の魔力に屈したモノは、もれなく全てを吸収。
ある程度耐え抜けるにしても、対象のHPも絶え間なく吸収。
それだけでなく、口内より放出する側の魔力に、
自身のスキルを乗せて相手の気力体力を奪える能力も備わっている訳で、
いかにネーサンが魔王的な能力を持っていようとも、倒せてしまう自信が今の自分には備わっていた。
苦し紛れに飛ばすネーサンの針攻撃も全てが口内へ。
ネーサン自身も槍のような長い針を大地へ突き刺し抵抗中。
どれだけの時間をそうして耐え抜いていたのか。
均衡が崩れるのも当然の結果だった。
ついにネーサンの外皮が剥がれ落ちる。
戦闘フォルム用に纏っていた甲殻すらも自分の体内へと吸い込まれた。
なんとも言えぬ甘い香りな感覚が身を包む。
甲殻でこれならば…ネーサン自身は一体どんな味がするのだろう?
ネーサンの表情を見れば明らかなる恐怖に彩られ加虐心に駆られる良い表情をしていた。
これは…この顔はずーっと見ていたい。
今発動中の星食いの力を緩めたい気持ちに駆られるが、
ココで止めてしまえば再び捕らえてしまうのが不可能になる。
あのネーサンの速度と判断力なら2度とこんな機会が訪れる事はあるまい。
今…この場で最期まで。
手など無いが、手を抜かずに力の限りに行為を行う事は決定事項。
守護者よ。星食いで収めた魔物の扱いをそっちで決めることが出来るのならば。
ネーサンは特別扱いな?
―――確認 仰せのままに
では…気持ち的に100%中の~100%!
気合を必要以上に込め、なんとなくのパワーアップ!
そんな気を込めた結果か。
ネーサンを支える針も折れ。
四つん這いのネーサンがズリズリとお尻を向けつつ迫ってくる。
意図はしていないのだろうけれども。
蜂特有のあの針がじりじりと眼前に向けて迫ってきている訳だ。
なりふり構わず逃げ延びようと大地に鉤爪を突き刺すネーサン。
本来であれば大本命な体の部位である針がギラリと光る。
先端恐怖症ではないのだが。
何あれ、怖い。
今まで何千と針を受けて。さらには爆破までされていたのだが。
あれ等の針には攻撃の意図がありありと込められてたが故に、
覚悟を持って受け止められていた針だ。
しかし今眼前に迫るこの針は、ネーサンの意識の外の針なのだろう。
対する自身も実際問題無いとは分かっていても、意識してしまうのだ。
そんな存在感がたっぷりの迫りくるお尻の針。
それ以外何にも考えられなくなったその時だった。
「チェーストォ!!!」
突如飛来した物体と、とんでもない大音量の叫び声に引き戻される。
女神級の衝撃が自分を叩き潰した。
完全に意識の外からだった。
一体どこから湧いて出てきたのか。
自分の頭上から見下ろす見覚えのある顔。
やはりというか、女神であるクレリアの姿だった。
な…なんでー。女神ナンデー!
流石のヨルンも防御行為の一切をせずに
全力女神の一撃をノーダメージでやり過ごす事は出来ませんでした。
痛みに悶え、動かぬ体をのたうち回らせ逃げ延びる。
しかし女神はその一瞬の隙を見逃さず。
「リムちゃんを泣かせるんじゃあない!」
続け様にストンプされ、逃げる事適わず。
大地と一体化したヨルンが出来上がりました。
―――(HP18/65535)
死んではいませんが、瀕死です。万単位でダメージを受けたようです。
何これ…不意打ちで受けてたとはいえ、異常すぎやしませんか…?
呪い…出ちゃいそう。
しかし今に考えて見てみれば、このHPの18という数字。
生れ落ちてすぐな自分の元気なHPではないか。
そう考えれば…多少は元気が沸いてくるというもの。
気力を振り絞り地面から頭を生やして体勢を立て直そうと踏ん張るが、
大地に埋め込まれた体は言う事を効かない。
生まれたてなリトルスネークの元気なHPでも、
今の自分の活力を維持する為のHPとしては足りない数値なのでした。
呪いの力…今の状態なら発動可能。
お楽しみ前に不意打ちとは…一体どういうつもりなのか?
本来であれば、仏の顔を持つ自分でさえ怒り狂うであろうこの行為も何故だか喜びの感情が湧き上がる。
いいや…仏の顔を持つヨルンだからこそ。一度は許すのだ。
でもネーサン…食べそこなった。
見ればネーサンは女神に抱き起されその胸の内へ。
拒否する事なく豊満な胸に埋もれるネーサン。
ちなみにあの胸のサイズは平均より上であるな。
割れた腹筋と筋肉質な生足。
顔立ちも美人さんで纏まり上がった一種の芸術品である女神様。
それに抱かれる可愛げのある魔物。
ちなみにその可愛い魔物は女神よりも年上であった。
そんな観察をしている時だった。
自分の頭部に一本の針が突き刺さっている事に気が付いた。
良い物が見れたし、余は満足じゃあ…
がっくーん………はぁと………
というにはまだ早い。
女神さんが堪能している所で悪いがまだ決着は着いておらんのだ。
体躯を起こし、思考の芸術品を睨みつけ対話を開始する。
自分もネーサンも戦闘フォルムは既に解除されているので対話可能となった事だものね。
(ボクも。混ぜろぉー!)
しかし出た言葉は対話でもなんでもなく。
願望の一つを前面に押し出した叫びだった。
大地を破砕。跳躍し体に残る甲殻を脱ぎ捨てルパンダイヴを試みた所で、
ネーサンの尻尾の針がヨルンを貫いた。
―――(HP1/65535)
叫び声も出せずに体が固定され、時だけが過ぎていく。
これ以上HPは減る事も無く。増える事も無く維持され続けて…
こうして愛を伴った戦いは終わりを告げる。
興は削がれたのだ。
* * *
作中キャラが自由に動く瞬間。プロットは破壊し尽くされる。
だからといってPCのデータごと破壊し尽くす必要はあったのだろうか。
モチベは回復気味ですが過去を見返しスローペースに更新中。




