蛇と女神の戯れ
最近PCが良く電源落ちます。
熱暴走か。はたまた別の要因か。
(ヨルンはノンアクティブモンスターです。)
ノンアクティブモンスター。
攻撃されない限りは襲ってこない魔物という意味で使いました。
魔法に耐性のあるヨルンは魔法的なスキルにターゲットされても怒りません。
そんな内容を目の前の女神へ説明致します。
「手を出さなければ何もしないっていうの?」
勿論です。ノンアクティブモンスターですから。
ちょっと前のお戯れでも自分から手を出したことなど一度もございません。
過剰な反撃をしてしまったりもしましたが此方も驚いてしまったもので。
言い訳も程ほどに様子を伺うも、女神とやらの顔色は未だに優れない。
その他諸々、十分な説明を加え、最後にこの一言を強調です。
(ヨルンは温厚な個体なので殺害や封印等はおやめください。)
「聖都を破壊し尽くした魔物を温厚とは認めない。」
一瞬言葉に詰まるこの発言。
普段であればセーブ&ロードを挟み、
じっくりと思考をする選択肢があるというのに…
スキルを察知されるのだから使用不可能だ。
それにしても、自らの被害よりも聖都破壊の方を先に出してくるとは。
一応、女神と呼ばれてるだけの事はある…のか?
考えは依然と一貫してませんが、話は続けねばなりません。
(不可抗力です。捕らわれたのでアクティブモンスターとなったのです。)
認めるしかあるまい。自らの引き起こしたこの惨状を。
とはいっても、やはりなんの感慨も沸かないが故に。
相手が怒り狂うというのも分からないでもないのだが。
直接見たり、自分が意図して引き起こした訳でもなく。
危機感もなく、背徳感もなく。何より…
「で、これで何度目?」
(覚えてません。守護者知ってる?)
―――確認
776回のロードを使用
女神側の記憶の有無を確認
他、女神を空中へ停滞させる為の連続使用等
一時停止代わりに使った回数も含みます
(776回だそうです。まだやる?)
…全てを戻せるのよね。ロードを発動すれば全てが元通り。
守護者も言っておる。データ3はヨルンの生れ落ちた日。
それは強固に守られ残ってますと。
ついでにデータ2には女神との対話成功記念にセーブしてある。
残りのデータ1だが、とりあえずはフリーにしてありますよ。
「だるい。こっちは千回はコンティニューしたし。気が抜けた。」
(そう言ってくれるのを待ってたよ。)
長い戦いの末、ついに女神さんの気力が無くなったことを確認しました。
暫くは安泰ですな。再度火を付けないように注意せねばなりません。
それにしてもお茶菓子美味ぇ…何コレ。守護者の手作り?
―――確認 いいえ リムちゃんに貰ってきました
なんと…近くにいるん?
―――確認 その辺を観光してました 主の無事も伝えてあります
なんなら一緒に話し合えば良いのに。
―――確認 大所帯になるようなので情報収集してるみたいです
ふーん。というか記憶には無いだろうけど、今までの戦闘中とか何してたんだろ。
―――確認 臆病なので観察しながら逃げ回ってたようです
想像すると意外と可愛いもんじゃない。
―――確認 本人の前でどうぞ
怒られそう。勘弁願う!
―――確認 とりあえずクレリアが復活です
おう。というか守護者が突然現れても全然驚かんよね。この子。
―――確認 面識ありますから
ふむ。後で詳しく。
―――確認 では後程
守護者との対話も程ほどに。
女神もお茶菓子を堪能し多少は気力を取り戻した模様。
自分が言うのもなんだけど。相当タフだねぇ。この女神さん。
自信が打ち砕かれて憔悴してるけれどもなんとかなるでしょう。
なんとも食欲旺盛な女神さん。大皿5つ分完食です。
追加でお茶菓子要請し、ホットな紅茶をカップに注ぎ目の前へ出しました。
「時間も進まない。ダメージも無し。一切の進展なし。
アスピクの記録を更新する相手だとは思わなかったし」
そしてクレリアは語りだす。
元冒険者だった事。過去のアスピクの事。
他の魔王として現れた者達も踏み付け一本で倒してきた事。
その他、昔に何度も何度も死んだ事。
自分も数え切れないぐらいに死んだと話のタネに。
共感できる部分はあるねと何度も相槌を打ち。
隙をみて会話を切り出した。
(お互いにトンデモスキル持ってたみたいだね)
「お互い…? 本気で言ってるの?」
女神は納得がいっていないないようだが。
何度もやり直せるようなスキルを互いに持っているという事は。
先に女神が言っていたように時間が進まない。
永遠とループする可能性だってあるのだ。
実際は今の状況みたいに、どっちかが折れて休戦状態となった訳で。
永遠なんてなかった訳だけれども。
(平和的な解決。聞く耳持った?)
ともあれ、頃合いだろう。
交渉のお時間に入れればしめたもの。
不毛な戦いを永遠続けるつもりは毛頭ないし。
どうにか進展は欲しいもの。
「認めるしかないか…」
(大樹を作ったあの日にロード可能。聖都は元通り)
(例外という可能性は常にあるけどね)
例外という存在の一つに記憶の引き継ぎ。
それに伴うバタフライ効果。
簡単に説明するなら、僅かな変化でそれが無かった時と比べて。
大きな変化となって、全く違った世界が展開される…といった効果の事だ。
常に成長を続けるヨルンが世界に生れ落ちる度に
毎回違う世界となるという事象もバタフライ効果と呼べるのかもしれない。
ともあれ、一介の魔物一つの視点なんて毎回変わって当然。
世界全体で見れば些細な事だった。なんていうのも当然。
…というには収まらない事例も多々あったような気もするが。
あれこれほじくり返して、考えても仕方あるまい。
今は目の前の難しい顔をして考える女神様の相手をせねばならん。
「時が戻る現象。全て…アンタが元凶だったと」
(つまり。ボクがロードする度。キミは感じてた訳だ)
「魔人の襲来。巨大なワールドイーターの出現。
世界がヤバイ時に巻き戻されてたから結果的にプラスだった事もあったけど」
(今回は聖都が崩壊したからロードとなるか。それとも)
情報を引き出し合い。互いに理解を深め合う。
時を戻した経過を自分は女神に。
女神は時が戻るまでの様子を。
ワールドイーターについてもヨルムンガンドを見られたが為に。
知らぬ存ぜぬを通せず話す事となってしまった。
そして、何事も無かったかのように元通り。時が戻ったという話も済ませた。
女神は自分の能力の幅を知ってしまった訳です。
そこまで話すと女神に活力が戻ったのか
敵意に満ちた波動がヨルンを刺激する。
野放しにしておけば今の自分のこの基礎能力と合わせて
世の中全てを好き放題されるのは想像に難くないものね。
となればだ…何か一つ。交渉材料が欲しい所よ。
「分かったわ。私は何をすれば良い?」
何をすれば良い。と来たか。
何をすれば良い。となればアレだろう。
何をすれば良い。つまり。折れかかってる。
何かさせてやれば良いというのなら…
(思いっきり踏んでください!)
直後。遠慮なしに踏み付けられた。
ズドガーン!
何の防御行為もせずに甘んじて踏み付けられる。
(心が籠っておらん!)
威力は程ほど。地面が抉れたので補強を試みる。
ドズガーッン!
世界樹干渉にて大地に根を張り巡らせ保護した。
強度と弾力を兼ね備えた地形を作り上げ。
女神が踏んでも壊れないを実現する。
ドッグァーン!
(このボクがいない場所で地団太を踏むんじゃない!)
効いた素振りを見せない所か喜ぶ、自分を見て女神は狂乱する。
その場で地団太を始める女神の足元にヘッドスライディング。
無駄に大地は踏ませない。
ズゴォーーン!!!
(雑念を捨てて無心で踏め!)
そうしてヨルンはアドバイスを試みる。
無駄な事は必要ない。踏みつけだけに専念せよ…と。
(その後に罵倒だ! 本能の赴くままに言葉を投げかけろ!)
ふざけんな!
なんなのよ!
訳が分かんない!
なんで…効かないの!?
畜生が!
泣き顔見せろ!
この! この! このぉ!
なんで…平気なの…。。。
魔王だって。
神だって…
さっさと死ねぇ!
くたばれ! 潰れろ!
ハァ…ハァ……
笑うな…
可愛い癖に…
ココなの?
それともココ?
どっ…せいぁ。。。
ひっ…ひっ…ふいあー!
(最初の頃のやる気はどうした! ボクはまだ満足してないぞ!)
(心に響く罵声なんて何一つとして無かった! やり直し!)
そして女神はついに逃げた。
自らが死ぬまで踏んでこない所を察するに相当な心的ダメージを受けたようだ。
想定内ではあったのであっさりと楽勝気味に回り込む。
そして空間歪曲の発動を確認。
それを魔力によって支配し捻じ曲げる。
女神が踏み付け以外をしてこなかった理由。
それは自分が妨害していからに他ならない。
空間系スキルはヨルンの前では全てが無意味となるのだ。
攻撃にも逃げにも転移スキルの使用が不可能となるというこの空間支配。
こんなスキルを授けてくれたアスピクには感謝せねばなるまい。
お陰で気分は大魔王。少々調子に乗っているかもしれないが、
致し方あるまい。勝利条件は決まってる。
2度と戦いたくないと思わせる事。
それが自分が定めし勝利条件だ。
どんな物事においても
この2度と戦いたくないと思わせるというのが完全勝利の一つ。
賛否はあるだろうが自身はこの言葉を気に入り実践する事もあったりする。
ゲームという枠内のルールにおいて繰り広げられる勝負事。
所謂、対戦型のゲームに置いて様々な戦術を実践し
数多くの対戦相手となった者達の気力を削いで来たものよ。
メッセージもネットワークを介して送れる近年のゲームでは
対戦後に罵倒メッセージが届くのも良くある事であった。
しかし逆に称賛のメッセージも計上するとその批判も、
全体の評価でみれば1割以下でした。というのもご愛敬。
というのは蛇足の話か。
そんな考えが沸いてくるというのも。
余裕がありすぎるが故、舐めた行動が出来てしまう現状に問題有りな訳だ。
やはりというか。簡単に死なず。やり直しも可な故に。
ゲーム感覚は抜けきらぬ。
考えるも修正は困難な故、今は今で出来る事をするべし。
捕らえた女神を弄り倒すのが今やるべき事なのだ。
考えうる全ての逃走経路を断ち、宣言しよう。
(逃げる事は許さん! 空間支配と空間歪曲がある限り)
(このヨルンからは逃げられん!)
そうして考える。何が可能だ?
考えれば、とあるフェチに今の状況と良く似た
面白そうな趣向がある事を思い出す。
(まだまだぁ! ガンガン踏め! 今からボクは小さくなるが)
(遠慮なく踏め! 手加減は不要だ!)
それは巨大な女性から自らが弄ばれる系のなんとやら。
虫のように踏み潰される。叩き潰される。食べられてしまう等。
実際では絶対あり得ない的な願望の類だ。
確かGTSとかいう略語だったらしいが。
そんなもん探した所で即座に出てこないだろう。
ともあれ、今の自分はスキルにて小さくなれる。
出来るのであれば試してみよう。何かに目覚めるかもしれん。
メメタァ!!!
(どうした。ボクはまだまだまだまだ満足していないぞ!)
(なんだその顔は? 踏み殺したいんじゃなかったのか!?)
こうしてスキルにより虫のようなサイズにまで体格変化した自分を
女神が踏み付ける。何度も。何度も。一心不乱に踏み付ける。
地面が遠ざかり何事かと思ったら女神の足の裏にへばりついてしまったようだ。
しかし生命活動に問題無し。本当この体は不死身であった。
シャーッハッヒャッヒャーッ!
なんだか楽しくなり叫んでみたものの。
女神の力加減も明らかに落ちてきておる。
相当に参ってしまったようだ。
キラリと光る滴が目の前に滴った。
ふむ、流石に涙まで流されてしまうとヨルンさんの心が動きます。
この辺でお声をかけましょう。
(さてと、飽きた。続ける?)
「………………」
(無視すんなら暇潰しにまた踏んでもらおうかな)
心配してその表情を見上げると。
実は涙ではなく。涎だったというその事実。
優しくするのは無しと心に決めてもう一押しを敢行する。
「ヤダ…もうヤダ。勘弁。無理…。ゴメンナサイ」
(では復唱の後に心からの謝罪と対応を願う)
この謝り方は心からの声であると思われる。
ついに心を圧し折る事に成功?
ヨルンがただの変態で終わらずに済みましたな。
という訳で仕上げに入りましょう。
追撃の教育タイムでダメージを加速させねばなりません。
この手のタイプにつけ入る隙を与えてはならんのだ。
強引にゴリ押し続けて修復不能にまで持っていく。
復帰した世界の中で思い通りに動ける敵対者が増えるのは望ましくない。
我が儘をまかり通さねばヨルンの自由が大きく制限されるのです。
このファンタジーな世界で、このヨルンは鎖で繋がれてはならんのです。
体の大きさそこそこに元の体格がどの辺だったか忘れてしまったが。
人間程度のサイズにまで大きくなれば問題あるまい。
可愛さは半減してしまったかもしれないが
どちらかというと威圧感が欲しいので目線の下へ来るよう調節。
かと思えば、体の立地面が少なくなったので下を見ると貧相に見えました。
どうやら意図せずともに元の大きさぐらいに戻ってしまったようだ。
無意識レベルでのスキルの使用を行っていましたが
相手より小さいぐらいが丁度良いと体が覚えているみたいです。
ともあれ準備は完了、教育のお時間が始ます。
(ヨルンは平和的な魔物です)
「ヨルンは…平和的なまもの…です」
(声が小さい。あと千回ぐらい踏んでもらおうかな?)
「ヨルンは平和的な!魔物です!」
(ご褒美に1回好きに踏んで良いよ)
ドンッ…と踏み付け。ぐりぐりのオマケ付き。
良いマッサージです。
思えば踏み付けた後にグリグリ押し付ける行為は一度も無かった。
…気持ちよさそうな顔を見せると、すぐさま足を離された。
むむっ…その見下したような目はポイント高いですぞ。
しかし、一度屈服してしまった結果だろうか。
歯を食いしばり奇妙な顔つきとなってしまった。
まあ続けよう。2度と戦う気を起させないように。
(ヨルンは温厚な魔物です)
「ヨルンは! 温厚な魔物です!」
よしよし、今度は最初から大きい声じゃないか。
良い生徒を持ったものだ。
これで女神だというのだから。
普通の人間となんら変わりないじゃないか。
普通の人間は大地を踏みつけて地形を変えたりしないけど。
魔物だってそういないぞ?
穴ぼこ開けるぐらいだったら良くいるけど。
とりあえず、女神には色々と言いたいことがあるので先を勧めるのです。
(魔物なので絶対に怒らせてはなりません)
「…これも復唱?」
そして聞き返された。
確かにずーっと復唱させるのもなんだよね。
自分だってそんなの嫌だ。
自分がされたら嫌なのでと気が付かされたので。
ここから先は普通に対話しましょう。
(別にいいや。ともかく、変に手を出すとこんな惨状になる訳です)
「何が言いたい?」
それにしてもこの女神さん。気がお強い。
ちょっと休めばすぐに復活してきますな。
既に何度か発狂を経験してきてるのでしょう。
何度も死んでればこうにもなります。自分だってそうだ。
故に妙な親近感があるのもまた事実。
対処を考えるも互いに滅する事が不可能ならば主従関係になるなり
友好的に続けるなり持ち込みたい所。
完全なる敵となり永遠と戦い続けるだけは避けたいものだが。
女神の様子を見る限り対応を間違えなければ
どうにかなりそうな雰囲気ではある。
(女神的な力で来世の扱いどうにかなんない?)
「どうにかって…何させる気?」
女神側も話しぐらいは聞く気は満々。
それどころか手の届く範囲にいる所為か撫で始めてくる始末。
何? さっきあんなに引いてたのに…どういうことなの?
確かに、自分がいうのも何だけどもセルフで可愛がれる容貌です。
対する女神さんも姿だけは確かに美人さんなのよね。
なんなら首に巻き付けても良いのよ?
そんな心情露知らず。
女神は自分の顎の下ら辺を猫の様にゴロゴロ弄りまわす。
喋り辛いです。喋り辛いですが。念話なので問題ありません。
(身の危険を感じたら即ロード事案発生)
(むしろその身の危険的な状況を作り出す事すら困難)
(争い事に発展してもロードがある。それで逃げれば良い)
(っていう最終選択肢があったんだけど。今回は例外があるって知ったし)
「それって…私の事?」
この話には女神も耳を大きく傾ける。
ついでにヨルンの耳も大きく弄られる。
閉じて開いて繰り返し。終いには指を突っ込まれ。かっぽじられてます。
一応…それほど汚くはないと思うのですが。
どうにも女性のやる行動とは思えません。
まあ個人的には問題の無い行動なので話を続けます。
(勿論。それもあるけど。ユミルもアスピクも一緒に記憶引き継ぐみたいだし)
(それにね。一つだけ純粋に怒りを覚えた事があってね)
依然として弄り女神は話を聞いてるのか聞いてないのか謎ですが。
感じうる敵意はどんどん薄れている気がするのでプラスに考えましょう。
鱗やら毛を毟ろうと力が籠ってる女神を横目に本命を伝えます。
(どうやって守護者の事。奪ったの?)
今回の件で一番気になった部分である。
付け加えて守護者自身がどうやって戻ってきたのかも気になる所。
この行為がいともたやすく行われるというのならば。
可能であればその方法を滅する必要がある訳ですよ。
強固な意志を感じ取った女神の撫でる手は止まりゴソゴソと懐を漁りだす。
「これよ。神から奪った遺物。所謂アーティファクト級なアイテム」
(ふーん。なんとか級って言われてもピーンと来ないけど)
(比べるモノが無いから凄さが分かんないからね。それで…効果は?)
女神から見せびらかされたソレは透明度が高い四角な物体。
例えるのであればルービックキューブのような形だった。
中心部がやけに高密度な光を放っていて不思議な感じがした。
アーティファクト級。名前だけで聞けば相当凄そうな気がするが。
どの程度の物だろうね? と思っていると女神が説明してくれた。
「まあ言うなれば、レア度的に最高ランクの物をアーティファクトと呼ぶ。
これ一個売れば国が建てられるわ。効果が桁外れなんだもん。
とりあえずコレは、ちょっと特殊な分類。
対象が最も依存するスキルを納めて自身の物として扱う。
アンタにユニークスキルの反応があったから念の為に使っておいた訳。
このアイテム自体、世界に二つとない強力な品。
何せ不完全な品な上、作った神様自身も私が踏み殺した事だし。
鑑定でじっくり調べれば分かる情報。嘘は言ってない。本当です」
(つまり、レアなアイテムで尚且つ乱用も出来ないと)
(それで守護者を収めた訳だ)
(尤も依存するスキルとなると確かになという顔になる)
(でも、よく触手が奪われなかったもんだよ)
色々と有益な情報が得られた。
流石は女神様。分かりやすく単純に教えて頂けた。
しかし尤も依存するスキルか。確かに守護者には依存している。
触手にも大分依存しているが故に、2番目に依存スキルとして例に上がった。
だが…セーブ&ロードについては…この二つに及ばなかったと思われる。
しかしセーブ&ロードが奪われていたとなったら。
詰んでいたのは此方側だったかもしれないな。
セーブ&ロードの身代わりになってくれた守護者には…
心からの感謝を送らねばなるまい。
―――確認 心の底からの喜びを感じました
久しぶりに癒された。もっと早く感謝するタイミングはあったのだが。
女神に全てを横取りされた。許すまじ女神。
しかし女神の口からも触手という言葉が出てしまったので
そんな怒りはすぐに消化する事になった。
「そういえば…触手もスキルだったか。
危うく触手女神になるところだった」
(それはそれでアリなんじゃない?)
(魔物道に堕ちた女神。良い響きじゃない? 神さま殺したんでしょ?)
予想だにしなかった触手女神という単語…見てみたいかもしれない。
むしろ触手が生えただけで魔物っぽくなるだろうし。
女神としての威厳はそれだけで地に堕ちそうだ。
しかし思えばこの女神。神殺しを行ったらしい。
神様見てないのに。知らなかったのに…
元から会うつもりなんて無かったけども、話題にでると気になるモノだ。
「聖都が無くなった今なら…それも魅力的かもしれないけど。
触手はイヤ。蛇もヤダ。足が無いし」
(魅力的なんかい。いっそ聖都潰し記念に最終セーブを更新しちゃおうかな)
その言葉を聞いた女神にはセーブ&ロードの意味を理解しているらしく。
必死の形相となりてヨルンの首を絞めて参りました。
どうやら力があるのは足だけでなく手の方も相当な力がある模様。
強さという感覚が欠如していましたがこの女神さん。
実際の所、どのぐらい能力的にお強いのでしょうか。
今の自分はバグってるので良く分かりませんでした。
とはいえ、そんな締め付けは効いてないものの流れには従いましょう。
ヨルンは空気の読める子なのです。
(落ち着きなさい! 絞まってます! 最終セーブは冗談です!)
「止めてください。お願いします」
そして全力で締め上げつつ下手に出る女神がいた。
絶対この子。物理的対話思考の持ち主だ。
こんな武力が物を言う世界だし…まあ仕方ないといえば仕方ないか。
そんな女神はお願いしますと言いつつ耳を齧ってきました。
なんなの? どういう事なの? 理解しかねますが。
気持ちが良いので許します。
別にヨルンさんが変なのではありません。
(というか、どうなのよ)
(こんな簡単に全てが戻るとか。どうなってんのこの世界)
当たり前のようにセーブとロードを繰り返していましたが
本当に影響がないのでしょうか。今更ですけども。
その点は始祖竜であるユミルが調査中らしいのですが。
自分だけが使えるスキルなので今の所は何も問題は無いのですけどね。
一応、魔物だけとはいえ生命を作れる。
選択に失敗したらやり直しが可能。
そして不死。さらには女神とやらを圧倒出来た。
今の自分はこの世界の神的な領域に足を踏み入れてしまったのかもしれない。
そんな思考も一瞬で済ませ、女神の指が自分の尻尾に伸びる。
案の定引っ張られ、ビッタンビッタンと弄ばれる。
「そう思えるのは私達だけ。
だから…それを出来るアンタにお願いするしかないの。
やんなきゃアンタ、世界の人間全部を敵に回すよ?」
そんな相手の尻尾をアナタは引っ張ってる訳ですが。
別に構いやしませんけど、スキンシップの一環ですかな?
ですが、その指を所謂…陰部に持っていく女神様は何なのでしょう。
そろそろ跳ね除けるべきでしょうか?
まあ元より何にもないんですけど、こそばゆい感じがしますよ。
(んー。そうは言っても)
(ロードした後に復活した聖都がボクを討伐しに来たらどうすんのさ)
(正直、あんなアーティファクトだかのアイテムとかの存在知った後だし)
(それを大量に持ってる可能性知ったら戻す気無くなったんだよね)
とりあえず女神の行動は無視し、懸念事項を話します。
どうやらアーティファクト系のアイテムとやらは相当に強力な品の模様。
封印したりスキルを奪ったりと、ユニークスキルは干渉されないと聞いた覚えがあるんだけれど、
結局奪われたじゃないですか守護者よ?
―――確認 守護者は悪くねぇ
はい分かってます、説明書が間違ってたんですね。
対処法…あればヨロシク!
―――確認 善処します 守護者についてはもう問題ありません
おっけい、なら良かった。
セーブ&ロード奪われたらヤバイんで守護者の次に最重要事項!
そして新たな目標が出来た所で女神さんがおかしくなっとります。
猫撫で声となりて尻尾をふにふにしながら迫ってます。
―――確認
対処として前々よりセキュリティ強化を構想
セーブ&ロード時に32桁のパスワードを実装済み
しかし主の魔力以外では、そもそも使用出来ない可能性も大
主自身が話術や誘導で操られない限り問題は無いと思われます
ふむふむほむほむ。なら大丈夫そうだね。
とりあえず他人に勝手に使われるようになるのだけは避けます。
知られるだけでも大分ヤバイスキルだと自覚してますし。
女神さんはどうにかして対処しないとなりません。
当の女神は尻尾を揉み解しマッサージでもしてるのでしょうか。
良い力加減で気持ちよくなって参りました。
ふぅむ…しかしこうして見れば普通の人間として見れば顔立ちも良く。
プロポーションも中々。何より露出する生足がちょっぴり筋肉質。
とりあえず服装を整えれば女神を演じるには問題は無いといった所か。
そんな女神さんも今や魔物の傍で何をしているのやら。
猫撫で声は続き、ご機嫌伺うかのように言葉は続く。
「私がさせないから。ね?
女神の名にかけて約束する。絶対よ。
第一、聖都の奴等なんて私がいなけりゃ何にも出来ないぐらいに堕落してるし。
過保護すぎたから多分アンタ一人でも聖都ぐらい余裕。恐れる必要なし」
そう言いながら、ついにまさぐってきましたね。
うむ、そろそろ静止しよう。そうと思った所で杞憂だと判断。
尻尾をぐるぐる巻きにし始めて渦巻き状に丸め込んで来ましたよ。
この女神さん、おとなしくなった自分の事を
ぬいぐるみとして扱っております。
折角なので、どのぐらい丸まれるか試してみました。
そして少し後にオリジナルコースターが出来上がり。
一体何をしているのだ自分達は。
何故かお互い喜んで、出来上がったコースターの上に守護者を封じたという、
例のキューブ型のアーティファクトが置かれました。
使用する訳でもなく、単に装飾用に無造作に置かれただけです。
その瞬間、全てが馬鹿らしくなり
再度ロードを試み聖都は戻してあげようと決意する。
(ふーん。まあいっか。こっちでも対処法考えとくし)
(でも、なるべく友好的にはいきたいかな)
(ところで。女神様のコンティニューって死ななきゃ発動しないんでしょ?)
決意した所で、何の気無しに女神のスキルについて聞いてみた。
ある意味不死とも似た能力ですな。
時も戻るらしいけれどもどのぐらい戻るのか気になる所。
答えてくれるか否か、欲しい情報ではありますよ。
コースター状態から、キューブを頂点に蛇の体を持ち上げ調整し、
多少の丸みを帯びたピラミッドを作りながら問う。
アーティファクト。ヨルンピラミッドの完成である。
効能はなんとなく癒されるパワースポット的な何か。
程よく癒された女神はピラミッドにご執心だ。
指を這わせながら友好的になりそうな雰囲気となってくる。
「…そうよ。アンタと違ってね」
(自由に死ねないん? 自殺なんて簡単に出来ると思うんだけど)
ヨルンピラミッドの頂上で輝くキューブは何か神々しい。
流石はレア度が最高クラスと言われるアーティファクト級アイテムである。
しかし過程を吹っ飛ばして最高クラスのアイテムとやらが出張ってくるとは。
なんとも価値観が壊れそうな出会いでしたな。
とはいうものの、ソレらしい物の数々は冒険者達も大なり小なり持ってましたし。
名前を知らないだけで結構な数は目にしてる筈なのよね。
同じ魔物であるネーサンもそれなりに収集してたらしいですが。
確認する前に囚われの身となっちゃいましたし。
この女神さんも、どのぐらいの物を持ってるのか気になりますよ。
悩んだ素振りを見せた女神さんは、ちゃんと答えてくれました。
「その場合、どのぐらい戻るか分かんないの。年単位で戻る事もあったし。
神さまが調整してたみたいだったから正確なトコが分かんなかったし。
3つぐらいのチェックポイント用意してたって事だけは聞いた。
その神様をやっちゃった訳で、下手に私が死んでアレが復活しちゃっても困るし。
今まで通りスキル使えるか不安だったから死ぬような真似は避けてたの。
だからアンタに殺されるまでこのスキルを一切使ってなかった訳」
(ふーん。神様ねぇ。見てみたかったけどもういないと)
(しかし…死んで戻って、どこまで戻るか分からないってなると不便…です?)
(てか自分のスキルとリンクしてないかいそれ? あとで検証しない?)
(とりあえず、自分も自殺なら守護者がいれば、一瞬でボンッと出来るけど)
(女神さんは何か方法あるん?)
「セーブ&ロードねえ。どうせならそっちのが欲しかったけど。
知っておきたい所だから。とりあえず自殺なんてスキルで一発よ。
指先一つ動けば自分の命絶てるぐらいにね」
お互いのスキルで気になる所は腹を割ってお話ししましたが。
女神を含め、自分も死への価値観が欠如してしまっているようです。
聖都が滅んで大勢の犠牲が出たというのにこの程度の争いでで済んでいるのは、
自分達の能力や感性が異常であるが故に大きな争いに発展せず収まった訳だ。
そして能力の差異はあれど、死んでも互いに復活可能。
伴う痛みも死なぬと分かれば快楽になりえる物すら存在した。
もしかするとこの女神も何かしらのMな属性を持っているのかもしれない。
ともあれ今はスキルへ思考を向けねばならぬ。
コンティニュー時に戻る時間は本人は正確に把握は出来ぬと。
とりあえず、時間まで遡れるというのなら。
ある程度の未来を知っていても不思議ではない。
そんな未来を知るために自殺を繰り返す女神を想像すると…
常人と感覚がズレていくのは仕方のない事かと思われる。
今も女神はヨルンピラミッドの上に、
自分を閉じ込めていた物を追加で乗せる作業を慎重に行っていた。
そして神々の箱庭とやらがヨルンピラミッドの頂点に追加されました。
レアなだけあって、煌びやかに大仰とした装飾が施されているから真球という訳ではありませんが、
意外とバランスを取るのが難しいですな。
全てのアイテムが安定して上に乗ったところで拍手が行われました。
つい先ほどまで一方的な殺し合いをしていた仲だとは思えません。
というか、この箱庭の中にはまだ生き残りの皆さんが収納されている訳ですが。
今の今まで忘れていました。
一応外から中身は覗けるようです。
そして、その覗き口を今まさに女神が覗き込んでいます。
気になりますが、出てくる話の流れは変わらず守護者の話が続きましたよ。
「それでその守護者に何度殺されかけたか。
返そうと思ってもアンタを箱庭の中に仕舞った後だったし」
何? 女神と対話してたの?
というか返そうと思ったって…何したの?
―――確認 女神は土下座し 守護者に負けを認めました
(マジ? 守護者最強じゃん)
「おい。そういうのは黙っておくべきなの。分かる?」
女神が土下座? 目の前のこの女神が?
想像がつかん…予想だにしない答えが返ってきて驚くばかり。
焦る女神の様子から、それが真実であると
とっても分かりやすい反応も見せてくれましたし。
というか、守護者のこの声、女神にも聞こえるのね。
―――確認
女神にも聞こえるようにしてました
殺傷行為だけでは中々折れなかったので
延々と罵倒し体内を擽り続け 勝ちました
その後に主の作り出した大樹を憑代に外の状況を確認
がんばった結果レベルが上がり救出へ向かえるようになりました
(つまり女神は既に敗北者だったと)
「くっ…言いたい放題言ってくれて!」
敗北者として扱われ、女神は怒り心頭。プンスコ状態。
両腕を振り上げ怒りの矛先をヨルンへ向ける事の出来ない女神の出来上がり。
激怒プンプン女神でございます。
何コレ、怒りの質が萌えレベルにまで昇華しとる。
最初のあの狂戦士っぷりはどうなったのさ。
これが癒しを与え続けた効果なのか…
ヨルンピラミッドが一層輝きを増しましたぞ。
折角なので爆発しない色彩魔法飴を作り出し。
さらにアーティファクトなアイテムの上で回転させます。
綺麗に彩られはしたものの、カオスな状況が増したりと今更です。
ねえ守護者、続きの情報ある?
―――確認
女神の動向の続きとなれば
アスピクとは五分の勝負を繰り広げました
その後に始祖竜に蹂躙される
女神は主と戦う前からの敗北者
伝えて良いものかどうかと複雑な心境でした
(別にネタバレ気にしない主義だから構わんよ)
(その辺は守護者だし分かってたとは思うけど)
(というかアスピクにユミルまでとか中々にヘビィな状況だったのね)
「あーもう…負けました! 逆らいませんから…」
そして土下座女神が出来上がった。
完全勝利したヨルンさん。
聖都編…完!
敗北フラグではない筈です、多分。
急展開的なピンチの要素は間に合ってますから警戒は解きません。
警戒しつつヨルンピラミッドも次なる段階を模索します。
そして思い立ったので土下座女神の背の上に移動し
ピラミッドの高度を高く致しました。
そして突っ込まれぬように言葉を進める。
(聖都は元に戻る。これは確定でいいよ)
(ついでにアスピク達と他の魔物勢もなんか来たっぽいし、頃合いかね)
女神の上を取り続ける訳にもいかず
あっさりと全ての謎要素を解除した。
女神も上に乗った事は怒ってはいなかった。
むしろ次はどうすれば! 的なノリで訳が分かりません。
これが最終段階! って事で全てを終えましたが。
折角なので記念撮影でもすれば良かった。
―――確認 撮影済みです 心のスクリーンショットに納めました
うほっ…後で見せてね。
そんで、気配が結構近くに感じるんですが、あいつ等ですかい?
―――確認
始祖竜ユミルが蛇王アスピクを引き連れやってきました。
リムちゃんは聖都観光を終え途中から様子を伺っていた模様。
残りのユグドラシルの魔物2匹もアスピクに追従。配下となっています。
その他、ハイエルフも何故かアスピクの傍に寄り添ってます。
(…どういう事なの)
「…知らん。なんだか大所帯だったけど。
結局なんか喋れるようになってた何か変なアスピクと戯れただけだし。
どう対応したら良いか分かんなかった」
そうか、女神は直接全員と相対していたのか。
それでも訳が分からなかったようだし。
まあ…魔物側の集まりに直接聞くか、悪いようにはなるまい。
そこまで考えた所で廃墟を揺るがす程のデカイ声がこの場に轟いた。
「ようやく収まったかぁー!!!」
覚えのある奇声とも似たその声はアスピクだろう。
勢いを付けて走り込んでくるその姿は威圧感が凄まじい。
あの巨体であそこまで動き回れるのだから相当なものだな。
「ヨルンよー!!!」
そんな考えをしているとアスピクの影はどんどん大きくなり
此方へ猛スピードでやってくる。
嫌な予感が脳で警報を鳴らす。
「貴様が時を戻しすぎるが故に…辿り着けなかったではないか!!!」
おい、そんな馬鹿でかい声でスキルをバラすな馬鹿!
そう心の中だけで叫びつつ。この後の展開を考える。
目の前にはアスピクが迫っている。止まる気配がない。
これは…もしや。
「我は…貴様等の戦いを全部見たかったぞぉ!!!」
ドッシャーン!
アスピクの体当たりを受け、ヨルンは宙を舞う。
何故か女神もご一緒に空の旅。
避ける間は十分にあったが。
受け止めなくてはならないという予感が働いてしまったのだ。
結果は見ての通り、女神と一緒に空の旅ですよ。
うむ、凡人なら死んでいるレベルの衝撃だ。
漫画やアニメのキャラってスゲーや。
宙へ飛ばされる力と、落下時の衝撃の両方を耐え抜けるんだもの。
というか空を吹き飛ばされてるこの間も相当な負荷がかかっとるよね。
そういえば、高い場所から飛び降り自殺する人って。
途中で意識無くなってるんだっけ。
ああ、でもそれだとバンジージャンプとかどうなんだろ。
気絶する人とかいるんかな。
スカイダイビングとかで気絶しても仕方ないし。
そーいうのは心構えの問題よね。
絶叫マシンで似たようなの体験した覚えがあるけど
別に~全然なんだけど? って感じだった覚えもあるし。
まあどうでもいいか、今の自分は死なない。
それが当たり前となってしまったし。
それにしても綺麗に真上まで飛んだな~
女神さんも腕組み足組み達観しておる。
自然とお互いに、どうしようの目で見つめ合う。
そして、大人しく立地しよう。互いに頷いた。
そして数秒の後に大地へ帰還。
補強された大地は砂埃すら舞い上がらずに自分達を受け止めてくれた。
相当な衝撃だったが致命的なダメージを受けるには至らない。
さてと、この馬鹿をどうしてくれようか。
続々と追従する大所帯に収拾が付くかと不安になるも治めねばなるまい。
自分がやらねば誰がやるのか。
誰にとも言われた訳ではないが使命感に駆られるままに
自分は行動に移るのであった。
* * *
初期プロットはどうした?
行方不明だよ。




