蛇の魔物は肉体派魔法使い
この世界に生れ落ちて一月が経過した。
日課となったステータスの確認。
ただ、狩りをし相手を食らい眠ってを繰り返すだけの生活の中での日課の一つ
何より機械的な抑揚の無い声ではあるが言葉が返ってくるというのにはなんとも癒される。
今日は一つの区切りとして詳しく。じっくりと嘗め回すようにステータスを見てみるとしよう。
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ランクF 種族名『リトルスネーク』 Lv:29 HP101/101 MP210/210
攻撃:35
防御:30
魔法:96
速度:66
特性
『熱源感知』
『不死の肉体』
『ユニーク:蛇王の呪い』
『ユニーク:守護者 - Lv1』
通常スキル
『ユニーク:セーブ&ロード - Lv1』
『危険感知 - Lv3』『追跡能力 - Lv3』
『隠密 - Lv2』『解析 - Lv2』
『鑑定 - Lv2』『受身 - Lv3』
攻撃スキル
『まきつき - Lv3』
『かみつき - Lv2』
『テールスピア - Lv1』
『捕食 - Lv3』
耐性スキル
『冷気耐性 - Lv2』
『毒耐性 - Lv1』
『麻痺耐性 - Lv1』
称号
『フェチズム:被食者』
『決意を得た者』
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こうして数値だけで見れば、大分強くなった気がする。
確認していて思ったがやはり、魔法とやらの伸びが半端無い事が伺える。
何気に冷気耐性が上がっている点も見逃せない。
寒さを感じ辛くなったのはこのせいだろう。
耐性スキルとやらは、自身を解析してみた所発覚したスキルだ。
称号については『決意を得た者』なんて何時の間にやら追加されている物の一つであるが。
どれ、確認してみよう。守護者よ説明を求む。
―――確認
『決意を得た者』
強い意思を込め、目標を定めた者へ与えられる称号
進化を果たす者への条件の一つ
………毎回思うが心の中でなんとも言えぬ歓喜の感情で満たされる。
ねぇねぇ、褒めて褒めて守護者さん?
―――確認 その称号は27日前に獲得済みです
………さいですか。
毎回レベルと基本的な能力値しか確認していなかったので気付かなかった。
とはいえ、目に見える形で能力が上がっていくのは気分が良いものである。
最近では正面切っての戦いですら多少の余裕を見せて勝利する事が出来るようになっていた。
体も一回り大きくなり、少々隠れるのに不便になったが何の問題も無い。
それよりもステータスを確認して改めて思う。
自分は魔法的な何かを使用した事がないという点である。
言うなれば肉体派な戦いをする魔法使い。
必殺技は間接を決めてベキベキにへし折る荒業である。
動けなくなった獲物を丸ごと呑み込んでしまう事が出来るのも、
自分が魔物であると認識し馴染んでしまったからなのもあるのだが。
自分が食べられても別に生きてたし、なんか実感が無いんだよねっていうのもある。
ともあれ、戦い方がそれしか分からないというのもあり、
お陰で攻撃スキルとやらが全て、物理的な物ばかりだ。
そのスキルとやらもレベルが2までならすぐに上がり、使い勝手も大分良くなるコトが分かった。
レベル1がいわゆる、ひらめきで。
レベル2がそのひらめきが形になったという認識をしている。
であるのならだ、魔法の一端でも感じとり、
それをひらめく事さえ出来れば自分も魔法が使えるのではないか?
ステータスを見る限りでは才能はあると確信している。
という事で、まず思いついたのが守護者だ。
そういう訳でヨロシク守護者さん。魔法ってどうやって使うの?
―――確認 現時点で使える魔法は存在しません
嗚呼、無情。無機質な答え、しかし簡単には諦めない。
魔法を使えるようになる方法はあるのかい?
―――確認 魔法の習得方法はアナタ自身で見つける他はありません
……使えねぇ、なんて悪態を垂れるつもりは無かったので。
うーむ、スマナイなんて念じながら。
そもそも魔法ってなんなんだ?と聞いてみる。
―――確認
魔法とはこの世界を構成する様々な元素の総称
火や水。風に土。光。闇と様々な属性が存在します
これ等は基本的な属性。
既にアナタは特殊な属性として呪いを得意としています
へぇへぇ、さいですか。
自分が思い描くファンタジーとは大体似通っているようだ。
そうして、ちゃっかりヒントを用意してくれる守護者ちゃんには大感謝。
つまり、可能性としてはその呪いとやらでMPを消費した行動が出来そうだ。
勿論、基本的な属性とやらも後で試してみよう。
という訳でやってきました、見通しの良い草原へ。
腕に自慢のある魔物達が闊歩するこの草原へ。
勿論、無闇に中へ突っ込んでいくなんて無謀な真似はしない。
検証用に丁度良い獲物の選定にやってきたのだ。
この『解析』と『追跡能力』のスキルを使い、
目を付けた相手とじっくり検証のお時間を取れる時が来るまでストーカーするのだよ。
実際問題、便利なのだこのスキルは。
警戒をしていない相手を追跡するのがとにかく楽になる。
蛇の体の所為か、物音を立てる事も無く、
追跡を繰り返していたら何時の間にやら『スニーク』スキルまで手に入れていた。
スネークなだけ『スニーク』とな?
まあスキルの表記は『隠密』となってるのだけど。
なんてしていて別に『冷気耐性』を得たわけではない。
本当何故か、一月の時を過ごしたのだが、とにかく急に寒くなる事があるのだ。
一つ推測を立てるなら、魔物の所為なのだろうとは思うのだが。
肝心のその魔物の姿が見当たらないのでなんともいえない。
が、その結果『冷気耐性』を得たのだから儲けものだ。
普通、RPGでのお約束といえば
ヘビやトカゲ等の爬虫類系の魔物は、冷気で攻めろが上等手段なのだが。
冷気に耐性がある魔物といえば、思い当たる節はアンデッドである。
…うーむ。アンデッド系の魔物だとしても一体なんなんだという所もあるが。
どうせなら生物としての生を得ていたい気持ちもある。
聖なる魔法のようなモノで浄化されて消滅したくはありませんし。
そう考えると、警戒事項がまた一つ増えてしまうので思考から外すのだ。
そうこう考えながら追跡をする内に、丁度良い頃合だ。
獲物のお食事タイムである。
追跡中の獲物は、自分と同じ種族であるだろう。
『リトルスネーク』を見つけ尻尾を咥えた所。
不意打ちの絶好のチャンスである。
相手の怒りを買えての一石二鳥。
さて、魔法の実験台。と、もう一つ。
出来れば『蛇王の呪い』のエフェクトを確認したい所よ。
何事も自分を知り、効率を考え、何が出来るか出来ないかを知っておく必要がある。
ネットワークなんていう便利な物も無ければ、
守護者も自分の分身らしいし、そこまで万能の存在ではないらしい。
それに、こうして検証をして発見を得る事が楽しみなので、
別に苦にはならないんだなコレが。
心に余裕がある事がある事を感じながら、
食べる為だけで獲物を狙う狩人ではない、ちょっと実験に付き合って貰うよん。
ちょっと苦しめちゃうかもしれないけれど、ゴメンネー。ボク、魔物なんだ♪
今日も今日とで、そんな魔物達が争う声が聞こえる。
日常的な森の喧騒は止むことはない。
もはや自分も立派な魔物の一員であると自負出来るぐらいには強くなれたのかもしれない。
眼下に転がる2つの食料を見下ろしながら実感していた。
ついでに、意識したことも無かったけど。
一応この蛇の魔物『リトルスネーク』とか同族なんだったね。ふむむ。
人間としての理性が残っている分、変に考え込む所があるのだが。
こんなゴツイ角の生えた芋虫食べてる時点で何を今更なのよね。
はぁ…料理とか出来ればなぁ。
手も足も無ければ火も使えない。
もうちょっと、ファンタジーな事がしたいのだが
この姿では諦めるしかあるまい。
魔法。念力。魔物的な特殊能力!
何かが欲しいと、強く自分は願っていた。
* * *
こうして見返すと序盤は色々困ってしまいました。
交流が全然無い。戦闘もあっさり結果報告のみ。
まだまだ、のんびり続いてしまうようです。