【我はアスピク】-1-
アスピク視点
基本の動向は魔物側にて注意
我はアスピク唯一無二の蛇王である!
悠久の時を得て今ここに我は存在している!
能力的にも全盛期のあの頃と比べても遜色無く。
むしろ、あ奴の中にいた事で得る事が出来たスキルの数々。
以前とは比べ物にならぬほどに…我は強大な力を得る事が出来た!
我は…実感している!
この世に。現世に。復活を果たせた事を!
復活したからにはやるべき事をやらねばならぬ。
我を倒し、復活を阻止し続けた…
あの人間共に永遠の苦しみを与えてやらねばな。
目指すはあの聖都に居座る教会とやらの面々だ。
…だが単身で攻めた所で逃げられる恐れがある。
前世の我であれば何も考えず突き進み
都市を破壊しつくす事ぐらいは可能。
だが目当ての人間に逃げられては意味がない。
あ奴と行動を共にした時のあの感覚から推測するならば。
聖都の女神とやらも健在の筈。
負ける気は一切ないが、逃げられては面倒な事になる。
どう追い詰めるか。
盤上の駒は我のみ。
そう比喩するのであれば。
駒を増やせばよいではないのか?
そうだ、味方を増やせば良いのだ。
それも短期間で、尚且つ管理が面倒なのでそれなりの強者を集める方向で進めよう。
10年もすれば時が戻ってしまうようなのでな。
その期間内であの女神とやらに真の『蛇王の呪い』をぶち込んでくれる!
殺すだけでは生ぬるい。
魂に刻み込んでくれよう。
永遠に続く呪いの苦しみを。
例えロードとやらを挟んでも消える事のない呪いをな。
それが我の、今回の世界での目的だ。
失敗したらその時はその時よ。
そうと決まれば仲間探しだ。
充てもなく彷徨う訳ではない。
ある程度のあたりは付けてある。
そう…今目の前にいるこのスライムだ!
あ奴が目を付けていながら、その後一切係わりを持たなかったこの。
ピンク色のスライムだ!
我になら分かる。
我なら分かるぞ。
こ奴も…いわゆる転生者という奴であろう!?
我が生きてきた中で友好的で蛇と戯れるような個体等、何一つとして聞いたことがない!
どれ…今回は我が姿を見て怯えているようだが先ずは挨拶だ!
「コンニチハ!我は蛇王アスピクである!ヨロシクネ!」
…ぷるぷる
…ぷるぷる
…プルプルプルプルプル
ンン?そうか言葉が分からぬか。
どれ、確か日本語であったか。試しにもう一度話してみよう。
「コンニチハ!我は蛇王アスピクである!ヨロシクネ!」
………?
………??
………!!?
おお、目に見えて反応が変わったぞ?
だが喋れぬようだ。
それもそうだ。スライムに言葉を喋る為の器官など無い。
ふむ、そうだ。ステータスとやらを覗いてやれば良い。
何かとっかかりが掴めるやもしれん。
――――――――――――――――――――――――
ランクD- 種族名『スライム』
Lv:1 HP50/50 MP142/142
攻撃:15
防御:630
魔法:300
速度:39
特性
『癒しのグミ体』『魔力奉仕』
『ユニーク:世界の意思』
通常スキル
『再生能力』
攻撃スキル
『捕食』
耐性スキル
『物理耐性』『魔法耐性』
――――――――――――――――――――――――
むむむ…?
これは本当に転生者やもしれんな。
正直ノリと勢いだけで丁度良く覚えのあるこ奴と出会ったが故に
それっぽくアクションをかけてしまったが。
ふむう、だが正直に強いとは言えんな。
一見すればこの世に生れ落ちてすぐといった所か。
防御力が異常に高く、この辺りの魔物ならば意に介さず行動は出来るようだが。
しかし防御力だけ高くとも、役の役立つかもわからん。
だがこれも何かの縁だ。なりゆきに任せ、付いてくるなら良しとしよう。
「スライムよ! この言葉が通じるのであれば我に体当たりしてみよ!
分からぬのであればこの場で食ろうてくれるわ!」
ふむむ? 凄く…ぷるぷるしはじめおった?
流石に驚かせすぎたか。我が怖くてぶつかってこれんのだろう。
「安心するが良い。我からは逃げられん!
生き延びたければ我が言う事を大人しく聞く事を勧めるぞ?」
ぬぬぬ? さらに速度を増しプルプルしておるな。
遂には体が弛緩しとろけおった…
折角の転生者やもしれんのに致し方あるまい。
呑み込んでしまうやもしれんが口の中で暫く運んでやるとしよう。
流石に死んではおらぬようだし。
目を覚ましたら吐き出してやるとしよう。
幸先は良いようだ。
このまま勢いにノって先を急ごうぞ。
次なる仲間を探すべく我は行く!
それにしてもこのスライム。
なんとなく甘い味がしおる…
早く目を覚まさんと本当に食べてしまうぞ?
仕方あるまい。
暫くは我が舌で弄んでくれよう。
ふぅむ…なんとも心地良い感触が癒しを与えてくれる。
…これが『癒しのグミ体』の特性か。
呑み込むには勿体ないスライムよ。
これは良い拾いモノをしたかもしれん。
早く目を覚ましてくれんかのぅ。
守護者がおらんので、ちょいと寂しい思いをしているのだ。
上手く行けばコミュニケーションの相手となってくれるかもしれんのに。
まあ、急いでいても仕方あるまい。
時間はまだまだ残っておるのだ。
気長に待つとしよう。
それにしてもこのスライム。
甘くてついつい呑み込んでしまいそ………んぐっ
あっ…
喉を通り過ぎ………
スマン、許せ!
せめて我に食べられた事を幸運と思い…
ザッ―――
おおっ…?
ザッ―――
これは…?
ザッ―――
…いつもの。奴か。
ザッ―――
…ヨルンめ。丁度良いタイミングで。
ザッ―――
復元が収まるのを待つしかないが。
…折角だ。意識から切り離す術を覚えるとしよう。
ザッ―――
ザッ―――
ザッ―――
そうそう、ヨルンと言えばユグドラシル種だったか。
まさかあ奴が進化出来るとは思わなかったが。
そうだった、手っ取り早く戦力を得るのならそれもまた一つの手か。
方針は決まった。このスライムが使えるかどうかは分からんが。
無駄に弱い戦力を確保し続けても仕方あるまい。
ヨルンの使う時が戻るスキルも収まった所だからスライムも口の中に戻ってきておる。
必要なのは聖都を滅ぼす為に必要な能力を持つ魔物。
滅ぼすだけなら我だけでも事足りるが。
呪いの力を最大限に発揮する為には準備が必要だ。
逃げ道を塞ぐ程度の最低限の戦力が欲しい。
このスライムも磨けば光るやもしれんし。
何より口の中で広がるこの触感。
良い拾いモノをしたかもしれん。
甘くてついつい呑み込んでしまいそうな………うぐっ
おっと危ない。2度目をする所だった。
それほどまでに…このスライムは癒されるのだ。
我はこのスライムを気に入った。
少なくても他の魔物に食わせることはないように。
このままずっと口の中で保管しておいても良いぐらいだ。
だが…それはこのスライムも望むまい。
少しぐらいは言う事を聞いてやろう。
我を見て怯えぬぐらいにはしてやらねばな。
さて…いつ頃目を覚ますのやら。
我は楽しみだ。
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