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蛇の魔物と世界樹と

- NowLoading -



 この世に…世界に!

 自由奔放。不死身のリトルスネーク誕生!


 …と恰好つけたものの、やっぱりただの蛇である。


 変わった所といえば。

 やはり、妙に光る模様が浮き上がったり消えたりするぐらいか。

 意識を集中すれば消える模様なので

 潜伏中には意識しなければならないのがなんとも不便。

 スキルが増えるごとに光る色や形の種類が変わっているような気がするが。

 初期の頃と今の状態とで確認する術はない。

 良くて他のリトルスネーク種と並んで比べるぐらいか。



 さて…、守護者よ。取得スキルがどうとか、そんな事よりもだ。

 悪い夢を見ていたと思いたい所なのだが。

 これはなんの冗談だ?



 こんなの…、いつものデータ3をロード直後の景色ではない。

 ついロード前にも似たようなモノがあったのだが。

 ソレに瓜二つのような気がするのですが。


 ………デカイ。


 何これ。おっきい…、木?

 不格好な大樹?


 なんて壮大な。それでいて、なんて…、蛇のような。

 …という訳で守護者君? 説明を求む。



―――確認

 ロードは成功

 その大樹は『アスピク』と守護者からのプレゼントです



 へい、意味が分かりませんよ。

 とりあえず、ロードは成功したのね?

 みーんな元通りになってくれたのね?

 人類壊滅エンドからの…、実は戻ってませんでした。

 なんてオチではないですよね?



―――確認

 滞りなく戻りました

 前世の主の功績を忘れぬ為

 スキルにより持ち込んだのがその木です

 主が前世に変化した姿であり

 その世界に生きるモノより世界樹と呼ばれるようになった姿です。



 おい、さらっと持ち込んだとか言いましたが。

 この巨大なモノを持ち込むとは、にわかに信じがたい。



―――確認

 強制的にデータ3へセーブをしましたので今後も存在し続ける事でしょう

 


 訳が分からない。なんなんだコレは。

 自分…、悪い事したか? いや、悪い事しかしてない。

 これは戒めか? 忘れてはならんという戒め…、なら納得しよう。


 だが、実害を被るであろう想像ばかりが駆り立てられる。

 こんなもの、世界に唐突に現れたら知恵あるモノはなんと思うのだろう。

 守護者にはセーブされてしまったようだし。

 後には退けぬ。何が起こっても後には退かせぬ、という事か。


 だが守護者の考える事。何か…、何か考えがある筈だ!



―――確認 『アスピク』の提案によりその場のノリと勢いで決めました



 アスピクさん、何しでかしてくれるんですか。

 これでどうしようもない自体に陥ったらどうするんですか?



―m(`<~ 気にするな。我が憑いてる



 我が憑いてるって~、何もしてくれないじゃない?

 でもスキルは貰えてるんだったっけな。

 というか、本当フレンドリーね、今後も良い友達関係を続けたい。

 さてそういう訳で守護者よ、ステータスの確認をしたい。



―――確認 では新スキルも纏めて表示します




――――――――――――――――――――――――



ランク* 種族名『ヨルムンガンド』

Lv:1 HP65535/65535 MP99732/99732


攻撃:4209

防御:2930

魔法:9803

速度:2530



特性

『不死の肉体』『混沌の心臓』『世界の心臓』『蛇王の象徴』

『蛇王の権威』

   『世界樹干渉』『生命の源』『精霊干渉』

   『硬質化』『精霊化』『液化』『隠蔽』『内臓操作』

   『抗体作成』『体格変化』『熱源感知』『土竜遊泳』

『ユニーク:蛇王の呪い』『ユニーク:触手 - Lv9』

『ユニーク:守護者 - Lv5』『ユニーク:ラプラス感応 - Lv2』


通常スキル

『蛇王の嗜み』

   『危険感知 - Lv7』『追跡能力 - Lv5』『暗殺者 - Lv5』

   『悪魔の牙 - Lv5』『受身 - Lv6』『脱皮 - Lv3』

   『錬金術 - Lv2』『眷属化 - Lv5』『再生能力 - Lv5』

   『植物操作 - Lv6』『液体操作 - Lv5』

『蛇王の英知』

   『脳内地図作成 - Lv5』『急所狙い - Lv3』『体質変化 - Lv3』

   『精神分離 - Lv3』『毒生成 - Lv*』『解析 - Lv5』

   『鑑定 - Lv5』『魔城作成 - Lv1』

『ソウルイーター』

   『魂魄内包』『魂魄改変』『魂食い』

『ユニーク:セーブ&ロード』


攻撃スキル

『ユニーク:星食い』

『蛇王流剣術』

   『触手剣技 - Lv6』『見切り - Lv4』『ガード - Lv2』

   『抜刀 - Lv2』『魔法付与 - Lv5』『触手マスタリー Lv9』

『蛇王の戦技』

   『まきつき - Lv9』『かみつき - Lv4』『テールスピア - Lv4』

   『回転乱舞 - Lv5』『捕食 - Lv*』

『蛇王の暗技』

   『スケイルシューター - Lv5』『体液注入 - Lv4』

   『蛇眼 - Lv*』『蛇王の魔眼 - Lv2』『毒霧散布 - Lv4』

   『威圧 - Lv*』『蛇王の威光 - Lv3』

『蛇王流魔術』

   『生命吸収 - Lv5』『魔法障壁 - Lv5』

   『波動砲 - Lv*』『魔法弾 - Lv9』

   『元素魔法 - Lv6』『呪術 - Lv*』


EXスキル

『視覚的呪術』『色彩魔法飴』『破滅の虹』『空間支配』『世界蛇の鉄槌』


耐性スキル

『世界樹の加護』

   『状態異常無効』『魔法吸収』

   『完全なる精神』『呪術無効』

   『腐食無効』『封印耐性』

『属性耐性 - Lv3』


称号

『フェチズム関連』

   『vore - Lv9』『触手 - Lv9』『マゾヒスト - Lv6』

『決意を得た者』『魔物の探究心』『魔物の吟遊詩人』

『森の主』『蛇の王』『悪食』『うわばみ』『世界樹マスコット』



【隠蔽済み】

『世界樹の魔物』『世界を食らうモノ』『魔王の種子』



――――――――――――――――――――――――



―――確認

 ロード前のデータを表示

 現在はリトルスネークにて能力の差異のみ注意



 レベル1とはなんだったのか。

 確かにドラゴンは食べずにのデータだったが、レベルが上がらずしてコレか。

 能力は確かに高いが、HPとMPの桁が間違ってらっしゃる。

 デカイだけはあったな。基礎能力の魔力とやらも、なんじゃいこりゃあ?


 考えるのが面倒になったので、心の片隅にしまいこんでおこう。そうしよう。

 このステータスを基準にしたら感覚がおかしくなる。


 でもこの目の前に作り出された世界樹を見る度に思い出しそうだ。

 まあ、悪い気はしないね。


 この木が影響して開幕で詰んだーとかなけりゃ問題無いのさ。何も問題も。




 ピュウゴォオォウ!!!




 ほへ…?

 天地がひっくり返る。

 聞き覚えのある、感じた事のある中でも最大級の恐ろしさを刻み込まれた音。


 吹き飛ばされる、自分の体。

 世界樹に叩き付けられるも風圧のみだったので受け身だけはしっかりと取れた。


 現実逃避をしたくなる。

 何もなかったかのように振る舞いたい。


 しかし、理解してしまった。

 手遅れだった。

 恐怖で身が凍り付く。

 その姿を確認したくない。

 確認せずとも本能でその存在が目の前にいるというのを分からされる。


 なんで、なんで居るの?




 始祖竜さん?




「オハヨウ ワタシは始祖竜であるユミル ヨロシクね」 



(おはようございます 私は…私は)



 マジっすか?

 わたしはわたしはわたしは私私私………… 

 だめだめだめ。食われる…食われる…ヤバイヤバイ。

 落ち着けぇーーーー自分!!!



(ユグドラシル・ティア! よろしくね☆)

 は…ハハハ~、ハハッ! なんでこの姿に!

 どっちにしても勝てん。

 かといって『ヨルムンガンド』にもなれん!

 これが一瞬で何も考えずに導き出した答えだ。

 だめならロードする。そうだ自分にはロードがある。ナニヲイマサラ~。



「コタエテモラウ ナニヲシタ? ナニガオコッタ?」

 そもそもなんで始祖竜がここにやってきた?

 一体自分は何を答えればいい?

 しかし~、ンンッー! やっぱりデカイ!

 今の自分から見ればとにかくデカイ! 



(えーと、この木の事?)

 始祖竜がやってくる理由。

 真っ先に思いつく限りでは、やはりこの存在感溢れすぎな大樹の存在だ。

 もちろん原因は自分…、自分しかいない。

 様子見に来ただけ。それで済んで下さいな。お願いしますよ始祖竜さん?



「チガウ、私ニモワカラン。ナンダ? 時ガ…、時ガ、モドッテイル?」

 違うといわれた。しかも時がモドッテイルとか言っている。

 脳裏に詰みです。という単語がポンポン沸いてきています。



―m(`<~ 詰んだなスマン



(………え? マジ? なにそれ? 本当?)

 まさか、まさかの、ロードに巻き込まれた系?

 いや、まだだ。確定ではない。

 そしてさり気にアスピクさんも追い打ちかけないでくださいな!



「オマエガ…オマエガ……ヤッタノデハナイノカ?」

 考えれば考えるほど、状況が悪い方向に向かっているようです。

 嘘は言えない。何を答えればいい? どうすれば?



(ちょっと待って。この木が生えたから来た訳じゃなくて)

(その…なんだろう?)

 最終確認。この木の所為という事ではなく。

 自分の使ったロードにより自分と同じく記憶が前の世界そのままだったとしたら…



「トボケルナ、ヨルムンガンド。オマエナンダロウ?」

 確定である、目の前の始祖竜は、ロードをする前に現れた記憶を持っている。

 それ故に自分を認識している。とぼけた瞬間に敵視される。

 ロードをしても記憶がそのまま。さらには居場所もバレている。

 改めて詰んだと認識したので開き直る以外に道は無い。



(そ…その通り! 嘘は付けないし。ボクがヨルムンガンドだった蛇だよ)

 正直に言おう。隠してもしょうがない。

 もしもダメなら。戦うしかあるまい。

 いや、むしろロードを連続使用。諦めるまで繰り返す!

 最後の手段だな。ゾンビ特攻は多分封殺されるだろうし。



「ヤハリ…、トイウコトハ、コノ現象。オマエガヤッタノダナ?」

 確信は持てていなかったようだが、どうせすぐにバレる事だ。

 必要なのは…、この後に続くやりとりの、最善の方法は一体なんなのかだ。



(察しの通り、ボクがやった…んだけど。なんで記憶があるのさ?)

 純粋な疑問だ。セーブ&ロードは自身の中で絶対のスキルであったが故にだ。

 人間相手にも魔物相手にもロードを試して記憶があるかを確認した事はある。

 何度も。何度も。繰り返してみたりした。

 怪我をさせ、四肢を奪い。命を奪い…ロードを試した事もある。

 だが何をしようとも、記憶が引き継がれる事はなかった。

 細かい差異はあれどこんな事、今の今まで無かったというのに。



「ドウイウコトダ?」

 どういう事もなにも初めての経験だ。

 精神的にダメージを受けている自分の思考では返事をするのが精一杯である。

 やり直しも効かないとなると、流石に今回はおしまいかもしれん、覚悟を決めるか。



(だって今までも、何度か戻ってるんだよ?)

(初めてだ…ボクを覚えてる奴なんて)

 もしも、これまで自分がロードをしていた回数その全てを。

 この始祖竜が感じていたのだとしたら。

 ぞっとする。全身の鱗が逆立つ感覚を覚える。



「何度モ、ダト? 感ジタノハ、コレデ二度目ダ」



(2度目? じゃあやっぱり、最近?)

 お、そうなのか。でも2度目という事は。

 もしかして…もしかしてあの時の?



「一度はオマエニ食ワレタ、二度目ハ。今コノ時ダ」

 やっぱりだ、一度衝動的に食っていた。

 自分は一度、始祖竜を食ったのだ。

 ユニークスキルである『星食い』にて、であるが。



(あ~、あの時…、妙な感じがしたのも、記憶があったのか)

 確かに、何かがおかしかった。

 ロード直後の反応が明らかに変わっていたのだ。

 今に思えば…だが。それでも、分かっていた所で既にどうにもならない。



「随分ト、幸セソウダッタナ。ソンナニ私ガ美味カッタノカ…?」

 そう、あの味は二度と味わえない。何度も味わってしまえば、

 他のモノを食えないカラダになってしまう。

 食欲が勝れば、襲い掛かって食らいつくぐらいは可能なのだが、

 そんな選択はまあ、ありえない。

 だけど思い出してしまえば涎に続けて言葉も溢れてしまい。


(そりゃあもう、今まで食べた中でも最高に~、他の物が食べられれなくなるぐらいの)

(えーと、謝って許して貰える?)

 流石に嘘を言えばよかったと後悔も溢れ出してしまいました。

 でも不味いとは絶対にいえない。かといってキノセイダヨーともいえない。

 美味いで正解のハズだ! ソレ以外の回答は無い!



「許サン、私ヲ食ッタダケジャナク、時ヲサカノボルナドト…」

 デスヨネー。

 こりゃダメだ。

 おとなしく食われよう。

 切り札の『蛇王の呪い』これが通じねばもうおしまいだ。

 セーブ&ロードも切り札だし、星食いも残ってるけど、気分的に…おしまいだぁ?



(せ、せめて痛くしないでネ)

 最期に戦っても良いのだけど既に精神が屈してしまってる。

 戦う前から負けた気分になっている状態では善戦も出来まい。

 それ程に、強大な相手なのだ。大きさ的な意味でも。

 『ヨルムンガンド』のあの時だったら、

 自分より小さい相手、だったのでなんとかなったのだが。

 『ユグドラシル・ティア』の視点であるならば、その逆なのである。

 大きさが違うだけで、こうまで威圧感が変わるとは。

 我ながらに情けない。



「イイダロウ。前向キニケントウスル」

 前向きにのお言葉を得た。

 妙に口元が歪んでいるように思えるのは。

 やはり、感情豊かでこの状況を楽しんでいるように見える。

 そんな相手を前に下手な行動は出来ない。



(ご要望があれば…)

 抵抗の意思はないです。

 抵抗しろというのならしますけど。

 気持ちの切り替えだけは早いものでしてね。



「フンッ、ナサケナイ。アノ姿ハドウシタ?」

 あの姿ときたか。

 ヨルムンガンドの姿の事だろう。

 もう一度アレでやりあえってのかい?

 ドラゴン側としても気になる所ではあるよな。

 そりゃあ、前の姿と今の姿。全然違うんだもの。



(だって、また世界があんな事になるのは見たくはないし)

 どちらにしろヨルムンガンドになる気はない。

 命続く限り延々と甚振られ続けるなら、その時は考えないでもないけれど。



「ソウカ、ナラ覚悟スルガイイ。私ノ気ガスムマデ。好キニサセテモラウゾ」

 そんな話を続けていた所でふと気になった。

 なんだかこの始祖竜さん。私情関連で動いてないかい?



(えっと、という事は。単純な憂さ晴らし、なの?)

 確実に世界の敵なのでオマエを消しに来ましたなら諦めるが。

 個人的に気に入らんのでぶっつぶしに来ました、なら希望は見える。

 単純に残り3匹の始祖竜相手にしなくて良いんだもん。

 目の前のコイツ一匹どうにかすりゃ良いんでしょ?

 何も必ず戦いを選ぶ必要はない。

 もしかすると…



「ソウイウコトニナッタ。正直ニナ。オマエノアノ行動ニハ心ガウゴイタ」

 見当もつかないが、今すぐにどうのこうのするつもりは無いようだ。

 あの行動? 心が動くような事って?なんて気になるも聞くのが早い。



(…なんのこと?)



「何ガドウナッタカワカランガ。ソノ世界樹ダ。ソレのオカゲデ

 世界ハ形を取リモドス事がデキタノダカラナ」


 ああ、そういえばロードをする前に一つ実験したんだったか。

 その結果出来たのがこの大樹。

 始祖竜に守護者もコレを世界樹なんて呼んでしまわれている。

 しかもロード前の遺物でしょうに。むしろ前世の自分自身の姿がコレ。

 今に見てもこの姿、確かに木に見えない事もない。

 樹齢にして何年モノだろうか。そもそもどのぐらいの時をこの姿で過ごした?



―――確認 20年程 なんの呼びかけにも答えてくれませんでした



 あれ、そうなの?

 という事は樹齢20年。なんともまあ、若い世界樹だこと。

 蛇として生きていた年数を合わせれば、いくつだ?



―――確認 約30年となりますね


 あ、サンキューな。

 といっても今この状況でそんな考えしても意味ないか。

 今はただ、この世界樹とやらが自分とは別に目の前にあると。

 何かに使えないかなコイツ~って今考える事じゃないなこりゃ。



(これは、あのまま時を戻るには)

(気が進まなかったから、ただの気まぐれだよ)

(なんでコイツまでこっちの世界についてきたかは分からないけど)

 本当自分でも分からない。

 守護者はスキルにより持ち込んだとは言ってるが。

 どうやって持ち込んだというんだコレを、コノ巨大なモノを。

 もしかするとさらにとんでもないスキルを

 自分は身に着けてしまったのかもしれない。



「ドチラニシロ、オマエハ私ガミトメタ魔物ダ

 ソレニ、オマエノ、ソノ姿ヲナ、ミタ時カラ…、私ハ」

 お、認められている。悪い事ではない筈だ。

 やっぱり対話はするものだ。無駄な争いを回避できる。



(ボクを? 見た時から?)

 そうそう、自分から見てもドラゴンっていうのは。憧れなのよ。

 愛でたい撫でたい抱きつきたいってね。



「我ガ子を孕マセタクナッタ」

 そうそう、子供だって作れたらって…、あれ!?



(…はい?)

 なに? なになに? なんなの?

 今なんていったの? 聞き間違いじゃなければ、その~、つまりは?



「好キニサセテモラウト、言ッタハズダガ?」

 やだー、やけにじーっと見られてると思ったら。

 実は肉食系ドラゴンだった。


 というか、何なの?

 このユグドラシル・ティアの姿でいるとそういう目で見られるの?

 小さめで、可愛いのと、強さを兼ね備えた

 使い勝手の良い体って思っていたのだけど。

 魔物側からすると、ドラゴンでさえも…、そういう事なの?



(じゃあそういう訳で)

 よし、逃げよう。身の危険を感じた。

 コマンド選択。逃げる。ピポッってね。ガサガサガサとセルフ効果音。



「逃ガサン、始祖竜カラハ、逃ゲラレンゾ」

 しかし回り込まれてしまった。

 ボスモンスターからは逃げられない。

 逃走確率0%でしたね。分かります。

 でも全力で文字通り回り込まなくても良いじゃないですか。

 なんでしょう、この瞬間移動的速さは?

 効果音すら聞こえてきませんでしたよ?


 もう少し、ゆったり追ってきてくれても良いじゃない?

 森の中をアハハハウフフフぐらいのノリで良いからさ?

 せめて逃走パートぐらい用意してくれても良いじゃない、とは思うものの。

 そんな望みも断たれてしまったので詰みです。



(分かってました、本気デスカ? 本気ナンダネ?)

 前にも似たような、抗えない状態があったような覚えがある。

 だけど、その状況よりもさらに、危ない雰囲気が。

 なんというか、体格差が現実的でない気がしてなりません。 

 分かりやすいかもしれない例であげるのであれば。

 クジラとネズミぐらいに体格差がありますよ。勿論自分側がネズミです。

 まあ、蛇なんだけどね。そして相手はドラゴンであり。



「本気ダ。オマエニ、コノ竜石ヲ埋メ込ンデヤロウ」

 そう言ったドラゴンの体から取り出されるは唾液塗れのモノ

 宝石のような原石のような磨けば光りそうなモノである。

 

 そして口の中から取り出したであろうソレはベトベトである。

 粘液の糸を引いていてなんともヌルヌルとしていそうなソレが竜石って奴?



(んんっ、どういう事?)

 さっぱり分からん。埋め込むだって?

 妄想が吹っ飛び、ちょっぴり心を動かされた竜石に意識が向いて。

 宝石なの? なんかとんでもない魔力を感じるよ?

 我ながらに現金な蛇だとは思いつつ、その竜石に目が釘付けである。



「ソウダ、ソノ姿ナラ、コイツデ作レル筈」

 むむ…つまり。ソレで子供を作れるって事?

 なんだか想像と全然違う展開になっておる。

 確かに魔物って、魔力が高い場所から勝手に産まれたりするけども。

 そういえば自分のスキルにアレがあった。となると。



―――確認

 『生命の源』を所持する『ユグドラシル・ティア』は

 対象の一部を取り込む事により子を成す事が可能

 竜石と呼ばれるモノも始祖竜である彼の一部と推測

 主が期待していたような展開は起こりませんでした。残念ですね



 だ…誰が期待していただって?

 そんな訳…がふっ

 守護者とやりとりしていたらお口に突っ込まれましたよ。

 器用ですよね、そんなデカイ体で正確無比に、行動も素早すぎです。



「ホラ…サッサトシロ。呑ミ込メ。私ニモヤッタダロウ。エンリョスルナ」

 そんな急がなくても。無理やりはイカンです!


(うがー。マテー。そんなおっきいの入らないです!)

 力任せに押し込まないで!

 明らかに口のサイズより大きいモノをねじ込まないで!?


「ナラ…下カラカ? 確カ無理ヤリ、抗体ヲブチコマレタンダッタナ私ハ」

 さらっと恐ろしい事を言わないように!

 根にもってますね!絶対にソレはイケナイ事です!

 口を塞がれても念じれば通じる故に必死で抵抗しますとも!


(マッテー! 上からが良イデス!)

 下からはダメ! 絶対!

 それになんだかんだで蛇なんだから。

 もうちょっと口を広げれば入るかもしれないんです!


「オオ、入ルデハナイカ。ウム、後ハ早速作ルガイイ」

 おお、全部が口に収まった後はするする入っていきおる。

 そもそも、普通に胃袋に収まって、その後どうするのコレ?

 個人的に磨いて光らせて、手の届く範囲で飾って置きたかったんだけど。


(えっと、それは構わないけど。どうやって作れと?)

 此処までやっておいて何も出来ませんでしたでは、流石に嫌だ。

 スキルとしてもある程度使い方を理解していなければどうにもこうにも。

 普通に消化してしまうだけでした、なんて事態は避けたい。


「簡単ダ。私ノ作ッタ竜石ダカラナ。勝手ニデキル」

 さいですか。そもそも竜石ってなんなのかは後に聞くとして。

 何もしなくても、体が勝手に何かしてくれて、子供が出来てしまうものなのか。

 魔物って不思議! いや、むしろ竜石が凄いのか?

 何はともあれ、子供が出来るという事は。


(そうなんだ、ついに、子供を授かる時が)

 ついに自分が魔物として一児の母になる時が来るのですね。

 とはいっても、実感が無いです。

 むしろ雌側だったのですか自分は。

 性別なんて無いって聞いてましたけども。


 いっそ、どんどん子供を作り進め。

 世界を自分の子孫だけで埋め尽くすルートを開拓してみるか。

 なんかこの『ユグドラシル・ティア』なら出来そうな気がしてきたぞ…

 ランクAは伊達ではない。なんだか本能的にそれが可能だと感じている。

 感じているだけなので、やるかどうかはまた別のお話だ。

 今は目の前のこのドラゴンが問題であり。

 最大の壁であるという事を理解しておいて。

 無理と結論付けた。ドラゴン怖いです。

 これが抑止力というものか。自分に必要なのはこういう存在だと思う。


「オマエナラ直ニデモ出来ル筈ダ」

 変な考えをしていると、直にでも出来るとの言葉を頂きました。

 言われてみれば妙な感覚がする。体の中で何かが形作られている。

 ごつごつした竜石が分解された感覚があり。

 さらにソレを元として魔力が再構成されている。

 お腹の中をぐるんぐるんと暴れていて尚、不快ではないこの感覚。

 癖になりそう。また一つ妙な性癖が増えそうです。


 なんて平常運転な思考をしていた時だった。

 体の中でタマゴが出来上がった。

 紛うことなきタマゴである。

 それにこれ以上体の中で何かが起きているという感覚はない。

 初めての事なので説明がつかないが、ともかく出来た。


(こんなに早く? むむむ。産まれる気がしてきたよ)

 産まれそう。でも難産の予感。どうする? 産んじゃうの?

 暖かいお湯とか必要? なんの準備も無し?


「イクラナンデモ早スギル?」

 ユミルもなんか驚かれてる。

 自分でも驚いているのだけど、なんとも不思議な感覚だ。

 魔物って、こんなんで良いの?


(き、貴重な蛇の産卵シーン!?)

 こうなってしまったら、成り行きに身を任せるスキルを発動。

 そもそも逆らってドラゴンの反感買っても対処出来ん。

 それに、なんだかんだで、ドラゴンの子供って気になるじゃない?


「オイ…本当に出来タノカ?」

 うんうん、出来たって、多分ね?

 感じる限りに、これ以上自分の中に置いておいてもダメっぽい。

 ならば産むしかあるまい。世界に産み落とすしかあるまい。


(出来たっぽい。けど、そのタマゴが大きくて。だから。そのー)

 しかし実際問題、大問題が発生している。

 タマゴがデカすぎる所為か、出ないのだ。

 なのでどうすれば良いのか分からない。

 そりゃそうだ、魔物がタマゴ作って産み落とす所なんて。

 一切の知識なし! 分かる訳ないじゃない? 見た事ないもん。


「オオ、確カに感ジルガ…、何カガオカシイナ」

 とりあえずドラゴン側も納得したらしい。

 でも何かおかしいといわれている。

 自分にとってはおかしい事だらけなのだが。

 出来る事なら、成功させたい。けど自分に何ができる?


(そうなん? でも自分の体の割に出来てるタマゴが大きい?

(仕方ない。なんだか、変な感じするし)

 出来る事といえば、一刻も早く外に出してやる事だけど。

 体の中で暫く保管しておく、というのも選択肢に入らない訳でもない。

 分岐点な気もするが、どちらにしても結果が同じ、そう感じてしまった。

 嫌な予感がするし、直にでも調べたい。


「ドウスルツモリダ?」

 ドラゴン側も気になるようだ。

 自分と同じことを感じているのかもしれない。

 セーブをした所で、この気持ちを2度味わうだけ。

 さっさとやってしまおう。それが良い。


(お腹切って出してあげるよ。どうせ体は再生するし。タマゴも確認出来たから)

 という訳で帝王切開のお時間です。

 やるしかあるまい。再生するのだから一切の抵抗は無し。

 自分の皮膚を割けるか? と言われればちょっと苦労するかもしれないが。

 まあなんとかなるだろう。

 絵面的に不味いモノがあるかもしれないのが難である。


「アア、問題ナイダロウ。気ニナル」

 ドラゴン側もなんだかウズウズしている。

 どちらかというと。自分と同じ不安を感じているからだろう。


(後ろ向いててよ。なんか恥ずかしいじゃない?)

 恥ずかしがる理由があるのかは知らないけれども。

 見られるのには抵抗があるので致し方なし。

 ドラゴン側も言われるがままに渋々後ろを向く姿はなんとも哀愁が漂う。

 素直に言う事を聞く子はゴツくても可愛いものがあるね。

 そんな姿を確認してからの、いざ実行に移す時。

 

 意を決して切り裂くも皮膚が頑丈すぎて切れぬ。

 覚悟が足りない訳でもなくとんでもなく弾力があり

 ムニッと触手を包み込んでしまうのだ。


 どのぐらいかと例えれば、

 切れ味抜群の重量感たっぷりの斧をフルスイングしても切れんなコレは。

 流石はランクAの魔物だ。可愛い姿をして桁が違う。

 そう考えれば目の前にいるこの始祖竜はさらにその上を行く存在。

 推測が正しければこの始祖竜は…

 なんて考えていても仕方がない。とりあえずタマゴだタマゴ。

 どうやって出す? こりゃあ正攻法では切れぬ。


 となると『体質変化』を駆使して、あれ?

 これって『体格変化』で自分の体を大きくすれば良かっただけでは?

 しかしそうなると今までの自分が馬鹿らしく思える。

 やめておこう、幸いドラゴンはそれを知らない訳で。

 覚悟を決めて、切り裂こう。そうしよう。



 …ゴリゴリ プシー と目の前が血で染まるも身体に重大な影響はなし。



 タマゴを取り出した後に再生開始。

 やっぱり、魔物の体って便利。

 変な雑菌入って病気にはならんよね。

 別に今までの平気だったし、苦しんだ覚えもない。

 という訳で血糊を洗い流しましょう。

 元素魔法と『液体操作』で綺麗にしましょうね~。



 ゴシゴシつるんっと、蛇さんただいま洗濯中



 洗い終わったタマゴは見れば見る程、やはりタマゴだ。

 そして蛇から出るタマゴじゃない。

 どうみても竜のタマゴだわコレ…

 いや、実際竜のタマゴなんて見た事ないんだけどさ。

 ゲームで良くあるあの重量感たっぷりの。

 落とすと割れたり、前転してみたら引っかかって壊れたりする系の。

 いやいや、それだと脆そうな例えになってしまうな。

 とにかく、このタマゴはちょっとやそっとじゃ壊れそうもない。

 単純に凄いタマゴだ! としておく。


(ハイ、タマゴダヨ。オトウサ~ン)

 この場合どっちがパパでどっちがママになるんだろう?

 でもまあ、魔物だし。関係ないか。親ってだけだろう。

 共食いも魔物の世界だと良くある事。

 自我のある魔物であればちゃんと育てたりするのかな。



「速イナ。オトウサンカ。私モ初メテナンデナ。ミセテクレ」

 初めてね。まあ竜だし。

 種を残さなくても存続できるから残す必要ないのだろう。

 寿命も無いようなものみたいだし。

 自分のように不死の体でも持っていそうだ。


(ほい。どうみてもボクから出てくるような大きさじゃないよねこりゃ)

 という訳でお披露目です。

 とにかく大きい。硬い。重い。地面にめり込んだのが何よりも恐ろしい。

 鈍器になり得る重量だ。外敵からは十分守れる殻ですね。

 中から出てくるであろう子供は、割って出られるのか?

 心配になる程に堅牢なタマゴだが、中身は自分達の子だ。



「タマゴがデカイダケダ。中身ハ、オマエノヨウナ蛇ガ生マレルヨウダガ」

 へぇ…、そんな事まで分かるのね。

 透視能力的なモノでも持ってるのかしら。

 千里眼とかありそうじゃない?


(なんだ。ユミルみたいな竜種じゃないのか。ちょっと残念)

 素直に残念がってしまったが。

 生まれてくるであろう子には失礼か。

 我ながら感覚がおかしい。

 むしろこんな事になるなんて一切思ってなかった訳でして。

 頭の整理が追い付かないのですよ。


「竜デナクトモ良イ。シカシ、コレハ、失敗ダナ」

 そうして無慈悲に言い渡されるドラゴンさんの失敗宣告。

 うすうす感じていたんですよ。自分も。

 認めたくはなかったような。安心したような。


(失敗なの? なんで? どうして?)

 でも…。やっぱり認めたくなかったような思いが強く残ったようです。

 感情が込みあげ抑えられそうもない衝動が身を駆け巡るのです。

 なんとかなりませんか、ユミルさん?


「体ハ出来上ガッテイル。ダガ器ダケダ。

 ヤハリ、竜種ノ子ヲ成スノニハ無理ガアッタカ」


 ああ実は、やる前から分かっていたような。

 自分を落ち着かせるかのように撫でてくれる優しさをユミルは見せてくれた。

 味方に付くならこれほど頼もしい存在は他にはないのだが。


(ボクの、ボクのせい? ちょっと、何が何だか分からないけど。泣きそう)

 この結果は。なんともやるせない気持ちになる。

 何度セーブとロードを繰り返しても同じ事になるだろう。


「キニスルナ、竜石がヒトツ無駄ニナッタダケダ」

 ユミルがそう言うのであればこれにて打ち切りだ。

 竜石とやらがどんなものか知りたい所だが。

 兎にも角にもこれで終わる! これ以上はなんとも続けたくはない。

 そうして何も考えず。少しの時が経った時だった。



―――確認 『アスピク』がタマゴを見てみたいだそうです



 ん? 構わないけど。

 見るにしたって。ちょっと大きめの変なタマゴなだけだよ。



―m(`<~ 良いからさっさと触ってみせろ



 ああ、分かったよ。

 それにしても。なんでこんなにタマゴに未練があるんだ。

 まだ割れてなくて中身も確認出来てないタマゴなのに。


 まきついてみればほんのり暖かい。

 さっきまで自分の中にあったモノなんだもん。

 そりゃあ暖かいわ。始祖竜の顔色も心なしか優れないように思える。


 何をしてるんだろうか自分は。

 この身は魔物。心も魔物なのだろう。

 意識が何者かに引っ張られる感覚を覚え。

 『アスピク』の声が聞こえた。



―m(`<~ 我。ここに復活!



 その瞬間。自分の意識が体を離れたようだった。


 暫く外が騒がしくなったようだが。

 相変わらずに意識が不安定。

 ついには何も聞こえなくなったので。

 大人しく眠りにつくことにした。



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