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始祖竜vs世界蛇

 私は始祖竜。

 世界の意思により【ユミル】という名を授かっている。

 私の役目は世界を破壊するような脅威を排除する為に

 作り出された竜種の一つであり。


 あらゆる生物の頂点であるように作られた存在。

 最初に作られた竜種として我が一つ。

 我を元に作られた竜種が他に三つ。

 これ等四つの竜が主に始祖竜と呼ばれ。それぞれに名が付けられている。



 世界はその竜種に自我と呼ばれるモノを授けた。

 己で考え。役目を全うさせる為に。



 しかしその自我とやらが邪魔とされ。

 さらに竜種が一つ。自我の無いモノが作り上げられたが。

 我等始祖竜には今まで通りの役割が与えられ続けた。


 その自我のない竜種が世界に放たれたのが今より何千年以上も前の事だ。

 世界に魔物が生まれ始めたのもそれと同時期であり。


 その自我の無い竜種により世界が崩壊の危機に瀕したのも想像に難くない。

 その後。世界に自我の無い竜種の討伐を命じられたのが我等四つの始祖竜。


 世界が何を考え我等を作り出したかは理解は及ばなかったが。

 自我無き竜を我等4つの竜が倒した事により。

 結果的には世界の望む通りの世界が作り上げられたようだった。


 それ以来。我等が動く事は数百年に1度。

 規格外な魔物が誕生した場合に干渉するだけになった。


 だが我々もこの世界に存在するモノだ。

 自らが表に出ずとも干渉を試みる存在も現れる。

 我の前には人間と呼ばれる者が会いに来た事も1度だけあったと記憶している。

 他には小さき悪魔と呼ばれる者も1度。我が前に姿を現した事があったな。



 あーだ


 こーだ


 うーだ


 そーだ



 ………はい。蛇です。今は『ヨルムンガンド』へと進化しています。

 ……始祖竜様のお話が長いです。

 …でもそのお陰で大分、体の使い勝手が理解する事ができました。


 世界を取り囲むぐらいにデカイのですが、普通に空飛べます。

 体が長すぎますが、まあなんとかなるでしょう。

 触手には重量感が溢れすぎて一振りするたびに

 爆音と衝撃波が発生するようで始祖竜に睨み付けられました。

 色々と暴れた所為で、辺りの地形が変わるぐらいに動き回ってましたが。

 後でロードするから許してね!


 ともあれ、始祖竜の話を聞くには1000年以上は生きてると。

 その始祖竜と同じような竜があと3体はいる。

 さらにもう一匹いたようだが、どうやら既にこの世にはいないようだ。

 そして今、自分の目の前にいるのは彼だけである。

 名前はユミルとか言っていたな。


 しかし…1体だけで良かった。

 4体で襲われたら詰みです。

 全部纏めてかかってこいやぁ!

 と言うには目の前のこの御方の存在感を察するに…少なくても今は無理です。

 単体を相手にするだけでも、骨が折れそうだ。むしろ砕かれる。粉砕される。


 だが…逃げる訳にもいかんよな。

 ドラゴンなんて、魔物として憧れの存在だ。

 その胸を借りてどーんと全力でぶつかってみよう。



 話の区切りであろう所を見計らい念を送る。



(始祖竜よ 此方の準備は完了した)

(話を続けたいのであれば 私も聞いていたい所だが)



「ナラバ コノ辺にシテオコウ。悔いの残ラヌように全力でクルガイイ」



 ああ…始まってしまうのか。

 ちょっぴりこの先の話も気になるところだが。

 この瞬間の感情は…歓喜すれば興奮もするし…

 何より…ドラゴンって…ウマイノカ?なんて思う辺り。やはり魔物なんだなと。

 簡単な話だ…死への恐怖が無ければこうなるわ。


 未だに自分の感性はゲーム感覚といった所だ。

 それもこれも自分が所持する桁外れなスキルの数々。

 守護者が表示する必要な情報がソレ等。

 コンピューターなゲームの数々を彷彿とさせる印象が強いからである。


 視覚化された能力値。

 視界に映る問題のない部分に表示されるミニマップ。

 簡単な作りの見下ろし表記だが、意識をすれば拡大表示。非表示も自由。

 さらにはそのマップに生命の波動まで感じられるというチートっぷり。

 おまけに空間収納という、なんでも持ち運べる便利機能も最近ゲットした。

 挙句の果てにはセーブ&ロード等という。

 現実では考えられない程の非常識極まりないスキルまで自分は持っている。


 しかし、その他全ての感覚は現実味溢れる痛みに。

 何かを食べればたとえ、丸呑みでも味を感じられ。

 触れる感覚。視覚の情報。全てが…そこそこに備わっているので。

 度々そのギャップに困惑し、覚えていた事の一切を忘れる事も未だに多く。

 数十年と生きたであろう現在でも、慣れない部分は数え切れずに残っている。


 思えば手も無ければ足もなく。

 周りに存在する魔物の強大さに怯えていた頃はなんだったのか。

 今では世界を崩壊させるぐらいの魔物になってしまったではないか。

 


 もしも、ドラゴンが自分を殺せる存在であるならば

 …それを知らないまま今この場で討たれたいとまで思う始末。



 まあ、それはそれ。これはこれ。今は今で愉しむべきだろう。

 それでは魔物式挨拶。恒例の開戦の合図はコレだ!



 ルゥゥゥゥウウウウグゥゥゥゥァァァアアアアーーーー!!!

 


 咆哮に続きの先制攻撃! 

 初手でどうにかせねば勝ち筋は限りなく薄くなる。

 幸いにも相手は様子見だ。先手は打たせてくれるようなので遠慮なく。



 エクストラスキル…即興作成『世界蛇の鉄槌』と名付け。いざ発動!



 いつぞやの魔人が使っていた魔剣を見て思いついたスキルである。

 『触手』に魔剣のような魔法を込められるのであれば。

 魔力の塊のような魔物である自分にとって最大の武器となるのではないか?

 『魔法障壁』のようなただの防御する為だけの魔法ではない。

 『触手』に込められた魔力は自分の体躯に見合う大きさの電光を纏う槌となった。


 記憶によれば、神話の世界で槌で頭を砕かれるのが『ヨルムンガンド』

 だった覚えがある。その名を冠する蛇であるならば。

 使う側になってしまえば、その心配もあるまい。

 そんな思いがこのスキルを即席で作り出せた理由の一つ。


 もう一つは、最大火力を出せるイメージが近接攻撃しか無かった事だ。

 だらだらと長期戦ではどこまで自分の体が持つかは分からない。

 一撃必殺。とまでは行かないまでも突破口を切り開く一撃が無ければ勝てぬ。


 予想通りに扱いやすそうな武器が出来た事でドラゴン側が身構えたように思えた。

 胸を借りる勢いで初手から全力全開!

 魔物は度胸。なんだってやってみる…()()さ!



 ズッゴォォォォォオオン!ゴォォォォォオオ!!ゴォォォオ!ゴォォォォォォォォォォ.....



 凄まじい音がした。世界が割れるかと思った。

 むしろ大地が見える範囲で現在進行形に割れている。

 亀裂はどこまで? とんでもない衝撃と煙が巻き起こり通常の視野は使い物にならなくなる。

 熱源探知も見渡す限りに赤。レッド。RED!

 体で感じられる温度もほんのりヤバ気な雰囲気。

 なんてスキル作ったんだというか自分という奴は。



 だが肝心のドラゴンには命中する事が無かった。

 一瞬早くどこかへ避けた? その瞬間を視認するコトは叶わず。

 知覚の外へ、気配もせず、ただ胴体に穴を開けられた事だけを感じる事が出来た。



 2度3度と続く苦痛。

 穿たれた大穴は触手で無理やりにでも塞ぐ。

 自分で抑えている分には強靭な、今までにないぐらいの屈強な肉体であると自覚出来る。

 しかし…『ユグドラシル・ティア』と比べるのであればどうだろう。

 …やはり『ヨルムンガンド』の方が凄い。比べるまでもないと感じる。


 だがそれでも、ドラゴン相手には豆腐のように削られていく…この肉体。

 なんとか形を保てているのは『再生能力』によるお陰だ。

 肉体の再生の手を緩めればその瞬間、胴体が切断され。

 その隙を畳み掛けられ、その瞬間手詰まりだ。


 そうでなくても現状が現状で、反撃の糸口等は存在しない。

 守るべき場所が大きすぎる。尤も守った所でその必要があるかすらも危うい。

 何せ相手の速度。攻撃力。何一つ封じる手立てが見つからない。


 …相手が隙を見せるまで耐え忍ぶしかあるまい。

 こうなる事は想像していた。想定の範疇である。


 防戦一方となるのは予想通りだが。

 何度もロードしなおし攻略の糸口を探るだと?

 そんな甘えで勝てるような相手ではない。

 この戦いで何かを見出せなければ100度挑んでも勝てることは無いだろう。

 ここ一番の集中力を持って戦える今しかチャンスは無いと心得よ。

 考えろ?今しかない?自我が残っている今しか出来ない事だ。


 この馬鹿げた威力。異常な速度を出せるには何かの理由がある筈だ。

 スキルか? それとも魔法力か?

 単純に純粋な能力値の差なのか?


 難しい事を考える必要はない。

 あのリトルスネーク時代、格上の相手に自分はどうしていた?

 体格を上回る相手には、ヒット&アウェイの戦法をしていたっけな。

 視覚の外より一撃離脱、もしくは常に間合いの外からの飛び道具。


 それと似たような戦術をされている側が今の自分だとすれば。

 もしかすると…この体躯だ。力だけはあるのかも?

 そうだとすれば、ただの一撃。


 弱めの攻撃を一発だけでも当てるだけで。

 戦況は逆転する筈だ。

 希望的観測だが、そんな考えは切り捨てる。


 自分の体力は無尽蔵。痛み等そんな些細な問題は噛み殺せ。

 どうせ楽に自分は死なんのだ。骨を断たせて肉を切れ!

 面攻撃だ。相手が攻撃に集中したその瞬間。


 本来であれば『ヨルムンガンド』

 いや、『ワールドイーター』が持ち得なかった攻撃をすれば良い。

 このドラゴンが『ワールドイーター』を知っているかどうかは分からないが

 意識の外からの攻撃を命中させれば…まだチャンスはある。


 今の自分は通常ではありえないスキルが揃っている。

 よりどりみどり、スキルのデパート。

 選択を間違えなければなんだって出来るハズさ。

 その中から相手さんの想定の範疇外。

 そして尚且つ自分が覚えているスキルにて使い慣れた

 信頼できる攻撃方法を選び抜く。


 

『スケイルシュート』

 連結『回転乱舞』

  付与『魔力障壁』

   追加『色彩魔法飴』

    自動『ラプラス感応』


 鱗が光る。

 ドラゴンの攻撃がこの一瞬で止んだ?

 身の危険を感じる能力はやはり年の功?


 『魔力障壁』は余計だったか。

 『色彩魔法飴』も欲張りすぎたか?


 1秒にも満たぬ一瞬の行動の筈だったのだが。


 ともあれ手遅れだ。発動準備は整い。

 万を超えるであろう鱗を上体の回転運動を交え。射出する。



―――確認 命名『大災害の鱗雨』スケイルレインディザスター



 一枚一枚が『魔力障壁』を纏い。

 着弾すれば『色彩魔法飴』の効果を加えた威力で爆発する。

 鱗同士の着弾においては乱反射するだけであり、さらなる困難な回避が期待出来る。

 超範囲。高威力。そして『ラプラス』感応のお陰か追尾能力まで付与された。


 ………予想外の追尾効果。


 対象を意識してしまったが故の弊害。

 プラス修正に働く事を願う。


 一発一発が複雑に反射し、その度に聴覚、視覚を惑わす音と光の不協和音。

 やはり、即興スキルというのはどうにも使い勝手が悪くなる。

 スキルとして昇華するにはまだまだ練度が足りない。


 自身の胴体にさらなる異常。

 鱗を射出し、防御が薄くなる事で体に穿たれる穴の範囲が明らかに大きくなっている

 自業自得だ。苦痛は甘んじて受け入れよう。


 奥の手を封じられた。

 そんな思いを込め大地へ倒れ付す。



 ………あと何度、行動可能なのか。

 ……これ以上、体躯を支える事は不可能だ。

 …状況は悪い方向へと向いている。

 だが…まだこの程度で諦める訳にはいかない。



 ズズウゥゥゥゥーーーン。。。



 巨体が倒れ込む事により。

 大地の形がまた変わる。今更それがなんだ。

 やるからには…大地所ではなく環境まで変えてしまえ…



 今まで敬遠していたスキルですら解放する時だ。

 タイミングはもはや勘である。

 ピンポイントで狙う事等諦めた。

 先程のスケイルシュートも命中はしたであろうが効果は薄かった。


 信頼のおける攻撃手段には頼れなかった。

 奥の手は残っているものの、今はその時ではない。

 それが通じねば敗北だ。


 なら今すべき事は。

 己の能力で封じられてもどうという事はない。

 通用したらしめたもの。

 そうでなくても次の手段を探せば良い程度のスキルで構わない。


 土煙と魔法の硝煙で視界が閉ざされた今。

 感覚だけで…自分が選んだスキルは。



『毒霧散布』



 相手が生物であるならば。

 守護者が説明していたように。神殺しの毒を持っているのであれば。

 一瞬でも動きが止まれば…動きが………止まれば?

 …毒に紛れてドラゴンの姿が見えた気がした。



『蛇王の威光』



 なんとなくだった『蛇王の象徴』その背に広げ。

 一瞬でも威圧する事が出来れば。

 そう思い、行動に移していたのは自分の意思だったのだろうか?

 大地を吹き飛ばし、『蛇王の象徴』が輝いた。

 瞬間…ドラゴンの動きが………止まった?



『毒の息』



 思いっきり吹きかけてやった。

 守護者からの情報など聞いていなかったが。

 本能的にそれが出来ると理解していたから選べた行動。

 始祖竜の話が長いのがしめたものと思い、予め『毒生成』をしていて尚。

 その毒を溜め込んでいた部位が無事だったのは僥倖だった。 



 やったか?



 つい…心の中で思ってしまった。

 やってないフラグを立ててしまったか?

 そう思い青ざめるも、今までにやってきていた反撃が即座に来ない。

 毒の霧は晴れること無く。この地を埋めつくしている。

 何もかもが溶けていく。大地すらも流体となり何処へなりとも流れていっている。



 もしや、本当にやってしまったのか?



 そんな希望も次の瞬間には無くなった。

 ついでに…自分の頭が吹き飛ばされ。無くなった。

 骨の欠片一つ残さず消滅したのだ。


 一切の思考がそれに合わせ無くなり…

 予見しておいた通りに自身の頭部の再生が行われる。

 だが戦闘中において、無防備な姿をどれぐらい晒す事になるのか。

 そもそもナゼ、こんな状態になっても自分は生きているのか。


 魔物ってスゲェ…と思うも。

 相手が動けるのであれば自分の敗北は確定であった。


 結果で言えば自分はまだ負けていない。

 頭部の再生を終え、眼前には息も絶え絶えなドラゴンがいた。


 

 無論、神をも殺すと伝えられた毒の効果。

 それ以外には考えられず。


  

 脳裏には。

 この好機を逃せば。

 自分に一切の勝ち筋は残らなくなる。

 今のようなチャンスは二度とやってこない。

 今なら、今のこの瞬間なら何かが出来る。 


 行動に移すまでの時間が早いか遅いかは分からなかった。

 ただの本能であろう。


 蛇の体を持つ者として。

 絶対の信頼をおける攻撃手段の一つ。

 ただ単純に『まきつく』だけの行動。




 締め上げる。


 

  噛み砕かれる。



 再生する。



  引きちぎられる。



 触手で補え。



  抜けられる?



 牙と体で蓋をしてしまえ。



  再び頭が飛ばされた。



 なあに。直に戻る。



  胴体に大穴?



 液化し纏わり付けば良い。



  食われている…



 どうせ毒で弱る



  その気配は感じられず…



 最後に食い返せば良い。


 

  いつまで続く?



 抵抗が無くなるまで



  まだ続く 痛みが続く



 故にまだ自分は生きている



  勝てるのか?



 勝たねば食い尽くされる



  ………



 ………



  ………1日



 ………『生命吸収』



  ………抵抗される



 ………仕方ない



  ………自らの体を削り



 ………生き永らえる



  ………そうしてひと月



 ………



  ………



 ………『魂食い』



  ………効果は無い



 ………何度も何度も繰り返す



  ………何度やっても同じ結果



 ………



  ………大地に深く根を張る事を覚え



 ………



  ………いちねん?



 ………



  ………毒素に塗れた大地が広がり続けるのを感じている



 ………



  ………



 ………



  ………いつまでそうしてる?



 ………この命が尽きるまでやってやる



「ナラバ………ワタシの負ケダ」



 聞き覚えのある声を聞き。

 薄れかけていた意識が一気に覚醒する。



―――確認 あっ ~>°)m――



 その瞬間、天地が引っくり返り。

 毒素の渦が大地を包み込んだ。



   *   *   *

まきつき どくどく

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