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魔王の種子

 …

 ………

 ……

 …………


 静かに、実に静かに事は運んだ。

 あっさりと、何の障害も無く。

 スラム街のような地区に住む人影は一部を除いて、全てが蛇となる。


 ランクにしてDが最高であったが。

 元の素体が悪かったのか、ランクFの個体が多い。

 だが作戦にはなんの支障もない、この場はただの実験場なのだから。

 どの程度の効果が現れるかを確認しただけであるからに。


 合図を送った。

 『視覚的呪術』により森に待機させていた5000の兵を一斉に城下町へ進軍させたのだ。

 それを確認した兵がやってくるまで今しばしの時間が掛かる。


 魔物の大移動を確認した城側がどう出るか。

 情報が伝わる前に事を運べるか。

 …自分ならやれる、やれなかった場合は自分の意思でやらなかっただけの事。


 それだけの力は備わっているのだ。

 運が無かったとこの世界に生きる者には諦めて貰うとするよ。

 尤も、これが自分にとっての最後の世界になるかもしれないから

 巻き戻る事すら無いのかもしれないけど。



 さあ、自分の命を賭けて、宣戦布告をいこうか。

 もう、後戻りは出来ない。逃げ道もない。使うつもりもない。



 ただ自分の好奇心と楽しみの為だけに、この国が滅亡する。

 準備は整った。この城下町に住む大半の生物は。


 この瞬間、自分の意のままに動く、眷属と化す。



―――確認 住民の6割の眷属化に成功 3割が失敗 残りは対象外となりました



 そうして守護者による報告でこの作戦の一つが成功したのを確認した。

 失敗とは報告があったものの、その失敗部分も眷属としてなりそこなっただけであり。

 城下町の9割、人数にして約10万の民をこの国は失ったという事になる。

 よし、残りの『アサシンヴァイパー』は自分に続け~い!


 城を制圧するぞ。

 兵数は8千を超えるようだが、全員が全員同時に襲ってくる訳でもなし。なんとかなるだろう。

 お前達は目立たず戦闘はなるべく避けて付いてこい。

 流石に頭がふらついて思うように体が動かせない状態となってしまったのでな。


 どうやらMPが現在の値として(18/1590)まで減ってしまっていた事による弊害か?

 ステータス表示のウインドウが警告を示す色にでもなっていそうな感じである。

 MPが0となったら意識が飛んだり等あるのかもしれないので注意が必要だな。


 とはいえ注意すべきは兵士達ぐらいなもの。

 生き残りの住民に見つかったところでどうする事もできまい。 

 念のため『アサシンヴァイパー』を先導させ、道を切り開く。

 自分は『植物操作』と『液化』にて街中を擬態しながら潜入だ。


 折角なので道中目に入るった街人は『星食い』『生命吸収』にていただいてしまった。

 せめて苦しませずに我が糧にしてやろうぞーという悪党台詞を吐いておく。


 でもどうやら『生命吸収』のスキルは相当な苦しみを与えてしまうのかもしれない。

 『液化』にて纏わりつき『生命吸収』にてHPとMPを吸い尽くした所。

 長らく苦み続ける所為か、ある種の快楽すらも与えてしまったりもするようだ。

 丸呑みと違い、眼下で事切れる様を目の当たりにしてしまい。

 我ながら人間性が失われてきたなと実感してしまう。



 隣でアサシンヴァイパーがうらやましそうに此方を見つめているのがなんとも。

 今の自分にとっては、そんな魔物の仕草もある種の癒しだったが。

 何だい? やってもらいたいのかい?…そうかそうか。後でな?



 そんなこんなで、色々ありつつも、何の苦も無く城内へ潜入した時だった。

 魔法のトラップであろう、奇妙な臭気を放つ地雷のような物を踏んだ。

 『アサシンヴァイパー』が嫌がる素振りを見せたので、魔物避けの類だろう。


 自分にはなんの効果も無く。

 殺傷能力のある系のトラップも見当たらなかった。

 そりゃあ、城の中に設置して兵士が巻き込まれて犠牲になったら元も子もないものな。

 そういった罠を感知するスキル等があればこういった物も見つけやすくなるのだろうか。



 そんなトラップに引っかかった事で兵士達がわらわらとやってくる。

 どいつもこいつも、驚いた顔をしおってからに。

 しかしまあ、流石に兵士だけあってお強い事。

 あの『アサシンヴァイパー』ですら正面切って相手にするのであればそれなりに善戦しておる。

 もっとも、自分の『呪術』によって常に回復効果を持つようになると一切の勝ち筋が無くなるようだが

 流石にちょっとした災害クラスとも扱われているランクC+の護衛が

 3体も付いているだけあって自分が直接手を下すまでもなく事が進んでしまう。



 …うーむ、蛇の王様+精鋭騎士っぽい蛇が×3でこうもあっさり進んでしまうのか。

 人間側と魔物側でこうも力の差があるとはねえ。

 魔人が兵数1000人程度で攻めてきた例しか知らんが。

 あの程度でも、一国を攻め落とすには妥当な配分だったのかもしれん。



 とはいえ、長引けばそれなりに自分が不利になる可能性もある。

 余裕をかましてロードして、やり直すなんてのは格好悪いし敗北感を味わう事になる。


 休憩もそこそこに。魔力の回復も終えた事で、『呪術』以外にも余裕があるのでさらに『眷属化』

 蛇には変えずにそのままの姿にて洗脳、その後に同士討ちをして貰います。

 使って間もなく恐怖に歪む声と怒声で城内は騒然とした。


 この『眷属化』というスキルはアレですよ。

 アイツはもう俺達の知ってる***じゃない!

 っていうのが睨み付けるだけで出来るスキルなのですよ。

 まあノーリスクって訳でもなく相応のMPを消費する訳なのだけど。

 『世界樹干渉』との合わせ技で幾らでも眷属化の範囲を広げられるというのは

 なんとも恐ろしい。MP消費も比例して増加するので、

 面と向かって馬鹿げた範囲に使うのだけはやめておこう。

 国中の人間達を眷属化しておいて、今更って感じはしますけどね。



 依然と場を離れても喧騒はやむことは無く、悠々と前進を続ける蛇の一向。

 目指すは王座の間。状況を把握する事が第一な王様であるならば、そこに鎮座している事だろう。



 目に入る兵士は我らを構う暇等無い。

 理由は自分が『眷属化』で人の姿をした魔物を増やしているからに他ならない。

 出来上がった死体は丸ごと、いただきますしてしまい。回復に役立てる。


 ふと見知った顔が奮闘しているのが目に入る、確か団長であったか。

 『眷属化』した兵士を一蹴しながら王の下へと駆け寄っていった。

 頃合だろう。互いに同士討ちをさせているのを眺めているだけというのにも飽きた。

 お国の兵士にも、効果有りと最終確認も出来た訳だし。

 残りは全て『星食い』にてなんの抵抗もなく体内へ収まった。

 我ながらに作業感しか感じなくなってしまった行動である。



 そして城攻めにおいて予想外に苦労した場面があった。

 王座の間へと続く階段である。

 入り口からは然程に遠くはない位置にあるのだが。

 なんとも上り辛い。

 階段に対して自分の体がデカすぎるのだ。

 ゆっくり上る。バランスがとり辛い。

 立て直そうと端に寄りかかってしまった所で。

 階段が崩れ落ちた。欠陥城?

 巻き込まれた『アサシンヴァイパー』が下敷きになり至福の表情を浮かべていたのが見て取れる。


 うーむ、仕方ない空を飛ぶか。

 『蛇王の象徴』をその背に広げ、階段を飛び越える。

 おっとアサシンヴァイパーは?

 そうと思えばただの一度のジャンプ力で跳んでやってきた。

 やはり…こいつ等、ニンジャだ。

 この動きなら対象となる相手をワザマエ!

 華麗に対象を必殺してくれそうだね。



 ここ一番の難関だった階段を苦労して攻略し。

 そろそろ王様とご対面。

 会うのは2度目だが、相手にとっては初対面。


 

 そしてやってきました王座の間~

 厳しい顔をした王様と騎士団長に、その他精鋭と見られる豪華な装備の面々がお出迎え。


 うわぁ…今までの相手よりも随分と強そうな。

 魔法使いっぽい兵種もいらっしゃる。

 折角なので『解析』にて能力値を拝見。



――――――――――――――――――――――――


 ランクC 種族名『エビルパイソン』

 Lv:65 HP729/729 MP1029/1590


 攻撃:585

 防御:422

 魔法:797

 速度:330


――――――――――――――――――――――――


 騎士A 騎士B 騎士C 騎士D 魔a 魔b 魔c 魔d


 攻撃:A.95 B.85 C.79 D.88 a.51 b.59 c.32 d.46

 防御:A.72 B.80 C.75 D.90 a.55 b.30 c.41 d.40

 魔法:A.66 B.62 C.30 D.51 a.98 b.87 c.81 d.95

 速度:A.61 B.85 C.94 D.77 a.62 b.82 c.70 d.78


――――――――――――――――――――――――


 ふむ、能力的にはこんなものか。

 数値的には圧倒しているように思えるが、装備品。

 その他、戦術の錬度やらなにやらもあるし油断は出来ないレベルだとは思う。


 ついでに王様はといえば。


――――――――――――――――――――――――


 Lv:97 HP(180/180)MP(65/65)


 攻撃:110

 防御:125

 魔法:90

 速度:107


――――――――――――――――――――――――


 ほっほぅ、人間のレベルは大体こんな所なのか。

 実力派な王様っぽいし、周りの人間と比べても豪華な装備もしておる。

 高いレベルである人間でステータスは100ぐらいで高いと評価して良いのだな。

 どこぞの王様みたいに、裏ボス扱い的な。

 絶対勝てないステータスを持っているとかが無くてよかったわー。

 心配は杞憂に終わった。あとは目の前の彼等をどう扱うか。



 自分の配下は『アサシンヴァイパー』×3

 一応能力の確認だけはしておくか。


――――――――――――――――――――――――


 蛇A HP(692/692)MP(323/323)

 蛇B HP(613/613)MP(465/465)

 蛇C HP(599/599)MP(462/462)


 攻撃:A.782 B.672 C.522

 防御:A.860 B.620 C.790

 魔法:A.399 B.465 C.520

 速度:A.460 B.530 C.531


――――――――――――――――――――――――


 ………本当に配下なんでしょうかコイツ等?

 戦ったらまず間違いなく殺される。

 あの森、本当にどうなってんの?

 しかし、個体差結構凄いね。生き方で差ができるのだろうか。

 ともあれ、強力な仲間である。有効活用しない手はない。



 状況的にはシミュレーションなRPGをイメージしてしまう。

 相手側には増援もあるだろうが、出入口をアサシンヴァイパーにて封鎖。


 目の前の王達を眷属化するか、それとも頂いてしまおうか。

 今の自分は人間ではなく、魔物であり、強さを求めるだけの存在である。

 生かしておいて益があれば良し、そうでなければ我が身に捧げよう。


 対話をすべきか、否か。


 数秒の思考の後に答えは否と結論付ける。

 元よりそのつもりだった。

 何を考える必要がある。


 何かを喋っているようだが、我が耳には届かない。

 明確に宣戦布告するにはこれが一番手っ取り早く、簡単だ。

 『色彩魔法飴』(カラフルドロップ)を改変『破滅の虹』(ルインズレインボウ)と名付け。


 ・『破滅の虹』発動


 元素魔法の光線を現在の『エビルパイソン』の背に広がる

 禍々さを感じる円形の器官『蛇王の象徴』より打ち放つ魔法である。

 視認出来る色の数は7つではなくそれよりも多いが。些細な問題だ。

 それっぽければ良いのだ。どうせ相手は見ている余裕等ない。


 一つ一つの元素魔法を取り込んだ光が交じり合い、様々な状態異常効果を発揮するこの魔法。

 正直燃費は悪く、威力も然程に無いが、兎にも角にも派手なのだ。


 人間相手に恐怖と地力の差を思い知らせるには派手に。

 とにかく目立つように。と考えた結果の魔法である。

 ともあれ、数と速度が凄まじいので、避ける事は不可能であろう。

 魔法による壁を作るのであれば受け止める事は可能だとは思う。

 尤も、それだけの力が相手側にあればの話なのだが。



 一面に破滅を招く光が…敵とみなしたモノを包み込む。



 こけおどしのつもりだった。

 ほぼ全壊してしまわれたようです。

 『魔法障壁』が間に合わなかった故の結果である。

 某ダンジョンを潜るRPGでも魔法の対抗が出来ねば全滅というのは良くある事。

 そこまで強力な魔法を放った覚えはないが、消費魔力もMPにして200を超えていたのだし。

 実際使われる側からしてみればとんでもない魔法だったのかもしれない。


 …王と団長であろう者だけが後方で身を挺して他の者が守っていたが為に生き延びていた。


 我ながらに精神的に堪えるものが残っている。

 自分は一体何をしているんだろうと思う所もある。


 しかし。生き方としてこうあるべしと望んだのは自分であり。

 許しは請わぬ。恨みはすべて受け止めるとさらなる決意を固める事にする。

 それが…『エビルパイソン』の力となるのは本能的に理解していた。


 自身が無くなりつつある感覚を覚える。

 自我とは一体なんなのかと、思いに耽る。

 自分の中の何かと混ざり合う。

 心臓の鼓動が聞こえる。

 感覚も無く。自然と行動に移す自分がそこにあった。


 ・『星食い』発動


 目の前の生ける者も死んだ者も全てを食らい尽くした。

 体が一回り大きくなるのを感じた。

 眷属である『アサシンヴァイパー』が小さく感じる。

 玉座がまるで玩具であるかのように小さい。


 乗ってみたが、それはあっさりと砕け散った。

 振り向けば兵士が次々と湧いて出てくる。

 今は別に空腹ではない。


 ・『眷属化』発動


 蛇となったモノは駒としよう。

 それ以外のモノは餌にでもしてやろう。

 目標は達成した。最早国としての機能は何一つとして残っていない。

 王も騎士も民も。全てなくなった。残るは彼らの残した建造物のみ。

 それも含め全てのモノは、我がスキルにて全てを別の物としてくれよう。



 そうして、その日の夜が明けるまで無駄な事をしてるな~と思いつつ。

 ひっそりと城下町の改変に明け暮れたのだった。



   *   *   *

自らが液化しドロドロになり敵対するものを取り込む。

相手の意識を共有しあい食べられるのを心待ちにさせてしまう系の行いも平然と行う系主人公。

状態変化に奴隷化に物理的に拘束したりと好き放題に陰ながらにやりたい放題しておるようです。


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