中々に蛇~な世界です
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ランクF 種族名『リトルスネーク』 Lv:8 HP34/34 MP50/50
攻撃:8
防御:5
魔法:20
速度:12
特性
『熱源感知』
『不死の肉体』
『ユニーク蛇王の呪い』
『ユニーク守護者 - Lv1』
通常スキル
『ユニーク セーブ&ロード - Lv1』
『危険感知 - Lv2』
『追跡能力 - Lv1』
『解析 - Lv1』
『鑑定 - Lv1』
称号
『フェチズム:被食者』
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ほうほう、このようなステータスになっておりますと。
ぱっと見、基準が分からないが、魔法のステータスが高めである。
他と比べようがないので、なんとなく弱そうに見えるのだが。
既に実質2回も死んでいるし。
しかもリトルスネークだなんて。
名前だけで見たら普通の蛇みたいなものではないか。
そうでなくてもRPG界隈に置ける蛇の扱いは悪い気もするのに。
試しに種族リトルスネークの説明を求めたところ。
・種族名『リトルスネーク』
とても珍しい魔物の一種。
数自体は多く魔分濃度の濃い場所にて自然発生する事も多々ある。
戦闘能力に乏しく生存率が低いのが稀少な理由。
長らく生存し過酷な環境を生き延びたこの種の進化先は時折
災害とも似た現象を引き起こす固体も確認されている。
つまり、今の姿では弱いという事だ。
進化とやらを果たせればそうでもないような、物騒な説明が聞こえたが。
他には守護者がユニークだったのに驚きだ。
しかし冷静に考えれば、自分自身の中の存在という事でユニークに間違いないのだろう。
何気に危険感知がLv2になっていたのにも驚きだ。
全然役に立っていなかったのにも驚いた。
意識して使いこなさねば駄目な系であろうか。
そして気になるのがなんだコレ?
称号だって? 『フェチズム:被食者』?
つまり、被食フェチ。自分が食べられる事が好きであるという事か?
ええ?守護者~?どういう事よ?
―――確認
『フェチズム:被食者』
食べられる事に対して抵抗が無くなった者への称号
精神的ダメージが抑えられる もしくは回復する可能性もある
あっ、有用な称号だ。うん、自分のようなスキルを持っていればの話だけど。
正直何度も食べられたり殺されたりなんてしていたら
そのうち発狂してしまう可能性もあるかもしれない。
なんて思っていた所だ。あれは何度も経験するべき体験ではない。
いやしかし、回復する可能性もあるのであればだな。
食べられるのも良いかもしれない。
実際あの中…温かかったし。
続いた痛みも、胃袋の中でもみくちゃにされてる内にどうでも良くなってきたし。
―――確認 『フェチズム:被食者』のレベルが2に上がりました
勝手にあげんなーっ!
いや、役に立つから良いんですけども。
足から、じゃないな。尻尾から、じわじわボリボリ食べられるのだけは簡便な。
想像しただけで、発狂しそうだ。
身を震わせた所で思い出してしまう。
まだまだ相当に寒い。
さっきの犬っころ、所轄狼っころはどうした?
さっきまで胃袋の中で暖まっていたが気が付けばもういないっていう。
倒したんなら毛皮ぐらい残しておいてくれれば良かったのに。
状況が良く分からないのがなんともですね。
『蛇王の呪い』も、どういった感じなスキルなのか良く分かってはいない。
なにせ受けた相手の姿形も見当たらないのだ。
丁度良い相手が現れれば、自ら瀕死のダメージを受けてみて試してみるのも良いかもしれないな。
HPが0に近くなっても発動するらしいから。
当面は自分自身に何が出来るかの把握になりそうだ。
そういえば、ほんのり自分の体が大きくなっているような気がする。
Lvが上がったからだろうか。
むしろ殺されるだけでなんで、Lvが上がるんだか。
この世界にはまだ謎が多い。
じっくりと探っていこう。
こんな簡単に生まれながらの強者みたいなスキルが揃うなんて
何か裏があるに違いない。
そう思い、気を抜かず行動しようとするのだが。
キエェェェーーーー!?
通り過ぎた何者かに弾き飛ばされ再び宙を舞うことになるとは思わなかった。
この世界での油断は、それイコール死を招く、そう理解した瞬間であった。
そしてナイスキャッチでお口に咥えられ、これは嘴ですな。
そんな大きなお口でこのわたくしめをどうしようと言うのかね?
勿論聞くまでも無い事だが、くるりと器用に頭と尻尾の位置を調整されれば。
後に待つのは、するりするりと体の中へ。
なるほど…こりゃ稀少な訳だ。
どいつもこいつも丸ごと呑み込んでくれるという。
無抵抗だったが故に…だろうか。噛み千切られる事もなく、ごっくんされました。
ずりずり体内へ落ちていく感覚をその身に感じながら、
何か抵抗できる案が無いか探してみるも現状のスキルでは対抗策は無いに等しい。
となれば、逆にである。
襲う側に回るとすればどうなるか。
先ほどの狼をイメージし、戦闘シミュレーションを行ってはみたが。
勝てるビジョンはまったく見当たらなかった。
多少なりとも牙は備わってはいる。
しかしダメージを与えられるのだろうか?
例えば、相手側もかみつきや、その鋭利な爪で切り裂いてきたら?
避ける術は無い。
現状、こうしておとなしく呑み込まれ。
『蛇王の呪い』にて相手を消し飛ばしてしまう案しかないのだ。
何かこう、攻撃手段として優れた物が存在すれば
こんな手段の他にチャンスはあるんだが。
先ほどの狼と比べて快適な鳥さんの体内にて
あれこれシミュレートするも良い案は思いつかず。
こりゃあ…臭いさえ無ければ快適なんだけどなぁ。
―――確認『フェティシズム:被食者』がレベルが3に上がりました
あぁ、眠くなってきた。考えるのはココまでだな。
そうして深い眠りに付き、そういえば鳥のナカな訳だなぁ、とふと思う。
飛んでる鳥を消し飛ばした場合、そのナカにいる自分はどうなるか。
別に落下して死ぬようなダメージを受けても『不死の肉体』でどうにでもなるだろうが。
もしもだが『蛇王の呪い』とやらがとんでもなく派手な呪いだったら?
こんな危ない能力が警戒されない訳がない。
嫌な予感がするような。でも今の自分に一体何が出来るというのだろう。
死にかけの自分の頭ではそれ以上の思考は続かず。
―――HP(0/34)
・スキル『蛇王の呪い』
・スキル『不死の肉体』
―――HP(49/49)
ごめんねぇ…強くってさぁ。
主に『蛇王の呪い』がだけど。
・スキル『危険感知』に反応。至急警戒を。
ついに初の危険感知がキター!
瞬時に肉体が強張るも何がどうなったかはまだ分からない。
時間にして数秒後、自分は地面に盛大に叩きつけられた。
とりあえず、頭から地面にめり込むような、
その系のギャグ補正は無かったようでした。少し残念。
―――スキル『受身』の習得に成功
ふぇー…死なないと分かっていても
体中の筋肉が悲鳴を上げているのが分かる。
体感だが8割方のHPを持っていかれたと思う。
―――HP(39/49)
………どうやら大したダメージでは無かったようだね。
心情的にも余裕だったものね。
しかし『危険感知』とは一体なんだったのか。
再度、危険感知を試みるも一切の反応が無い。
つまりは、落下の危険を教えてくれた?
お陰で意識の無いままに叩きつけられる状態だけは免れた。
そう何度も『不死の肉体』に頼ってはいられない。
駄目人間…もとい駄目蛇になってしまう。
これでも現世では有用なスキルは廃して地雷と呼ばれるスキルばかりを取り
先へ進める事に定評のあるゲーマーだったのだ。
とはいえ、自分にとってのスキルとは必要なら使ってしまえ。
必要の無い時には封印してしまえ。
という認識が殆どだ。基本出し惜しみはしないスタイル。
取得出来るものならなんでも取得!
選択肢が出たのなら十分に悩みぬき気分で選択だ!
ただ、何の気無しに取得していたスキルが
大抵使えないスキルが多かっただけの事。
個人的に楽しければ良い。楽しくなければ縛れば良い。
思い出した頃に使ってみると意外な発見がある。
スキルというのは奥が深いものだ。
故にこの世界もそうであれば良いなと思う。
とりあえず、この『不死の肉体』は今の自分が置かれた現状に置いて必須の物である。
それに加えての『蛇王の呪い』
多分だが『不死の肉体』だけだったのなら。
早々に自分の置かれた現状を呪うだけ弱者と成り下がっていた事であろう。
RPGで例えるのであればだ。
終盤のダンジョンにLv1のキャラクターを放り込まれ。
延々と敵に出会っては殺され、
強制コンティニューをさせられては殺されを延々とを繰り返す事になっていたのかもしれない。
それに加え、現実に苦痛が与えられる。
下手をすれば、強敵の目の前で復活。
直ちに殺されるを繰り返すのもあるかもしれない。
最悪、丸呑みにされれば延々とお腹のナカで暮らすことになっていたのかもしれない。
流石に、ネガティブな事を考えすぎだろうと思う。
現実問題として、今はなんとかなっているのだ。それでいい。
今は、一切の全てを生き延びる事に使わねば。
この世界を知ることすら難しいのだし。
着実に強くなるという報酬が貰え。
なおかつ自分を襲った相手が死んでいるという安心感。
冒険感覚で気の向くままに見て回るには自分は弱すぎると実感せねばなるまい。
この世界で生き残るには魔物としての能力を駆使しなければならない。
今の自分に見える世界は弱肉強食の世界でしかないのだ。
なのであれば、強くなって勝手気ままに生きられるようにするだけさ。
そう心の中で誓ったのだった。
―――称号『決意を得た者』を得ました
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昔のRPGで良くある序盤が辛い系なんとやら。私は好きです。
表現方法が少なく、何のヒントも得られず。情報も無くほっぽり出されるあの感じ。
しかし本作品とは、殆ど関係の無いお話でした。




