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念願の言葉を習得出来そうです

 心配は杞憂だった。

 美味い飯も食えて腹も膨れ。

 久しぶりの睡眠で調子も上場。


 やはり人間の作る飯は美味かった。

 むしろ、なんで人間が親切にしてくれるのかは分からないが。

 所謂ここは魔法使いのアトリエみたいな場所なのだろう。


 自分とした事が、人の生活感が無いと思い

 我が物顔で無警戒であったのが恥ずかしい。

 ついでに目を覚ましたら、しっかりと元の場所に本を直しておいた。

 4本の触手を巧みに扱う自分を見て

 人間は感嘆の声を上げていたのにはこれまた、やらかしたと思った。


 しかし、人間は珍しいものを見るような目つきで次々と話を掛けてくる。

 独り言に近いが、どうやら自分が『スネークリング』であり。

 敵意の無い存在であると認識されているからこその反応であると推測される。



 これが『エビルパイソン』等であったのならそれこそ大騒ぎとなり。

 争いごとに発展していたのかもしれない。



 ともあれ、本の解読には失敗した。

 肝心の人間の会話も全然分からず。

 途方に暮れてしまった。言語の習得が一つの詰み状態となったのだ。


(せめて、この魔法使い風のおっちゃんが

 会話の基礎を叩き込んでくれるのならなぁ)


 と声を漏らすも、言語になっている訳もなく。

 ヒューヒュー音を鳴らすだけで時だけが過ぎていく。



 やがて、帰ろうとしても人間が引き止めたり名残惜しそうに声を上げるので。

 暫くは一緒に生活する事となったのだ。



 ある意味念願の、人間との交流の一つを得る事が出来たのだ。

 こういうのも、まあ悪くない…



 そんな流れでアトリエ生活が始まった。

 料理も美味いし、理解は出来ないが暇を見て語りかけてきてくれる。

 兎にも角にも理解がしたい、そんな思いが通じたのか。

 守護者のアナウンスが久しぶりにやってくる。



―――確認 守護者が得た情報と統合し 基礎言語の一部を習得しました



 うおー、きたー!言語取得キター!一部とあるが、それでも大きな前進だ。

 少々こすズルイ手で覚えてしまった気がするが何はともあれ守護者には大感謝だ。

 今までにて最高の感謝の気持ちを送りたい。



―――確認 心の底からの喜びを感じました



 うむうむ。何時もどおりだがこれがまた嬉しい。

 もう守護者が擬人化して自分の中から出てきてくんないかな。

 そういえば触手関連で露骨に拒否反応起こしてたな。

 ありゃ、なんだったんだろ。冗談のつもりだったんだが。



 いや、待て?

 昔、冒険者マニュアルがどうとか言っていなかったか?

 もしかして自分の中の存在と言っておきながら自分より知識があるのでは?



―――確認

 平行して解析に挑戦した結果です

 冒険者マニュアルについては守護者に付属するオマケです

 言語。文字についての一切の情報はありません。



 なんか矛盾してないか?と思うも。

 この世界はスキルによる便利機能が横行しているのだ。

 多少の理不尽さには目を瞑ろう。

 絶対何か隠してるだろうけど、この守護者は。



―――確認 そんな事ないよ☆



 ………もしかして

 守護者のレベルが上がってたりもしたからネタが増えたのかね。

 ともあれ、まあ。悪い気はしないし。メリットだけ得られているんだし。

 信じよう。とことん信じよう。長い付き合いの相棒だ。


 そう、今は言語だ言語。どの程度理解出来るようになったのか。

 おっちゃん、また喋ってくんないかな。



 まあ、日課の本漁りでもしてればそのうち話しかけてくるだろ。

 その次は食料漁りでもしようかしらね。


 という訳でやってきました、理解の出来ぬ知識の宝庫。

 いずれ理解してやる。だが今はまだ無理だ。しかし出来んことはない。

 がんばるぞい。ふんすふんすっ。


 そして数時間が経過。

 半日が経過。


 気が付けばおっちゃんが横に居る。

 相変わらずに自分の様子を伺い、メモのような物を取っている。


 偶には、そのメモを見てやるも良さそうだ。

 鎌首を持ち上げ、尻尾のみで立ち上がるのも慣れたものだ。


「おぉ。うむ。今更何に驚く事がある」


 その様子に驚きもするも、今更何に驚く事がある。

 ………今更何に驚く事がある?


 と確かにそう理解が出来た。

 ふむ。ほほう。おっちゃん。もっと喋れ。


 うれしくなって、おっちゃんの頬を突っついたりなどじゃれついたりしてみせる。



「こらこら、どうした。今日はやけに懐っこいのう…」



 うむ。間違いない。確かに理解できる。

 しかし残念ながら此方から喋りかけるには声帯の関係にて無理そうである。

 だが大きな一歩である。理解が出来るという事は。

 此方からの伝え方次第で、可能性はあるという事。


 真っ先に思いつくのは文字であるが。

 …文字ではあるが、今の自分ではまだ、その文字すら理解が出来んのだ。

 むむむむむ。。。。。悔しい。



 しかし、ふと目に留まる言語があった。

 それは、おっちゃんの文字で、日記のようだった。


 そして彼が手に持っているメモと見比べてみる。

 どうやら、どちらも、自分を観察した事を書き綴っていたようだ。


 気になったので、おっちゃんには悪いがメモを奪い

 日記と照らし合わせてみる。

 ほうほう、これが一文字として。

 同じような事を書いているような気がするが。

 この部分は日付だろうか。

 そしてこっちの文が本文として始まり。

 4本の触手が書いてある特長を捉えた上手な絵も描いてあり。

 あれが、こうなって。この部分が~



 ………そんな様子をおっちゃんがじーっと見つめていた。



「ふぅむ。分かるのか?お主?」


 そんな問いに首を振る。


「それは分からんと捉えて良いのか」


 首を縦に振る。


「ふぅむ。。。わしの言ってるコト分かるのか?」


 さらに首を縦に振る。


「これは。もしかすると。そうじゃな。こっちへ来い蛇よ」



 ………もしかすると転機が訪れるかもしれない。



 言われるままに後を付いてゆけば。そこはおっちゃんの寝室であった。

 簡素な作りのテーブルと魔法の灯。そして大きめのベットに謎のインテリア。

 そして極めつけに魔除けの香料が備わる囲炉裏のような物。


 この臭いを嗅ぐと気の遠くなるような。

 それで居て近づきたくなくなるような。

 不思議な感覚を覚える物なのだ。

 この世界の人間は、こういった物の類で魔物を避ける手段を持っていたりもするらしい。

 まあ今は火が消えてそんな臭いもなにもしないのだから大丈夫ではある。



 そして、おっちゃんが自分を呼んだ理由は何か。

 今までの本とは違った可愛らしくもどこか、奇妙な動物達が書かれた本だった。

 埃を被ったその本は何十年も昔の本のような、少し煤けているような気もする。



「この本はな。わしがむかーし子供の頃に見とった本なのじゃよ。

 まあ、中身は子供向けでちょっとした言葉遊びの本なのじゃがな」



 そうして本を開くと、表紙は酷く汚れていたものの、中身はまだまだ見れた物である。



「どれ、少し読んでみるとするかの」




―――とある国に 王様が二人居ましたとさ

―――二人の国王はとても仲良しで 国民のみんなから好かれていました

―――ただし二人の国王は いつも些細な事で 喧嘩ばかりしていました

―――剣術こそ最強! 魔法の方が凄い!

―――そんなこんなで今日も喧嘩をしているようです

―――うわー ぐわー 今回は頭にたんこぶを作った王様が出来上がりました

―――次の日も同じような喧嘩です

―――ぬわー ぎょえー 今回はまっくろこげの王様が完成です

―――今度はどんな喧嘩をするのか楽しみですね



 といった内容だった。まさに児童書である。

 そんな内容の本が同じようなレベルで数十項存在していた。

 折角なので内容を覚えつつ、書いてある文字と照らし合わせる。

 なんともまあ、一人で覚えるよりもあっさりと。

 数々の単語とその並びを覚える事が出来たのだ。



 そんな読み聞かせが数日続いたが。

 二人の王様も最後の最後には国を分けての大戦争を引き起こす事になろうとは思わなかった。

 児童書で戦争起こすか普通…とは思ったものの。


 世の中の児童書には悪党と認定された系の登場キャラクターが

 末恐ろしい方法によって惨殺される系の物も少なくない。


 勇者や魔王が出てきてなんやかんやでハッピーエンド。

 に収めるのは流石はファンタジーである。



 もしかすると大昔に実際にあったお話でしたとかいうアレではないのかと感潜ったが。

 流石に争いごとが幼稚すぎるのでそれはないと切り捨てた。



「さてさて、これで全部じゃのう」



 毎夜毎夜聞いていたお話もこれで全部かぁ。

 少し寂しい思いをするも、今日のお話も文字と照らし合わせて単語を取得せねば。


「少しは楽しめたかな? 次からはちと勉強をしてみようかの。

 おまえさん。興味があるようだしの」


 ………お願いするよ、おっちゃん!

 喋れはしないが、これはもう目を輝かせえてお願いするほかあるまいて!


「うむうむ、分かった分かった。続きは明日じゃよ。ほっほっほっ」


 どうやら言語だけでなく、文字の習得の日も近そうだ。



   *   *   *

魔法使いんおっちゃん宅。

生活必需品が揃った快適空間となっております。

野生時に比べればのお話し。

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