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折れた心に癒しを求む

 その日、詰みセーブが完成した。



 初見で首が飛ばされた。

 油断をした訳ではない。

 むしろ気を張り、感覚を総動員して初手を伺っていた所。


 先に仕掛けてやる!

 そう思い鎌首を突き出し、重心を前に向けた瞬間であった。


 初動を察知する事すら出来ず。

 斬られたという感覚を覚えさせる間もなく。

 視界が反転し、切断された自分の体を見上げる事となった。


 HP(130/682)


 訳も分からず、守護者に聞けばHPが残ったまま首を飛ばされたという事を教えられ。

 意識した途端に思考が真っ白になったのは今でも鮮明に覚えている。

 無論、ロードである。



- NowLoading -



 こちとら不死身よ、何度だって挑んでやるぜ。

 そんな気概で挑んだのも今では良い思い出だ。


 どうにか2度目は初手を『触手』を硬質化させる事により防ぐ事に成功する。

 まるで視えなかった、ただこの場所に剣が飛んでくるという意識の元で防いでいたにすぎない。


 だが自分はその初手をどうにか受けただけであり。

 その次の突きを避ける事が出来なかった。


 剣の振りを知覚が出来なかった、自分は初手を防げた驚きで口を開けていた。

 無論狙いは、その口の中。あっさりと実にあっさりと頭部を貫通され2度目の致命傷を受けたのだった。



- NowLoading -



 そんな一方的な攻防を何度か繰り返すうちに動きが読めてきた。

 これが『セーブ&ロード』の力よ…

 しかし読めたからと言ってまだどうこう出来るレベルではない。

 どうせ知覚出来んのなら…此方も全力で最高の速度を見せて先制攻撃だ。



 開幕バックステップからの、頭部を後方。

 触手で無理やりバランスを整え、全力で側面より回り込む!


 相手の剣士は動かない。

 一瞬のうちに背後を取り、後頭部へ横薙ぎの一閃。

 当たるとは思っていない、その先を予想。どう避ける?


 そして瞬間自分の首が跳んでいた。

 何度目だろう。最早、首を跳ばされるのには慣れっこだ。

 一体自分は何度死んでいるのだろう。



- NowLoading -


―――確認 首を跳ばされました


- NowLoading -


―――確認 致命傷を受けました


- NowLoading -


―――確認 意識がありません


- NowLoading -


―――確認 身体の維持が不可能


- NowLoading -


―――確認 『蛇王の呪い』発動 強制ロード開始


- NowLoading -


―――確認 以下省略


- NowLoading -


- NowLoading -


- NowLoading -


- NowLoading -


- NowLoading -


 勝敗にして100戦100敗

 あれは、勝てん。今の自分では少なくても。

 心の中で師匠と呼ぼう。次の再戦は日をおいてからだ。

 次で勝てねば。あと100回殺されよう。



―――確認

 新たな攻撃スキルとして『蛇王流剣術』を新規に作成

『触手剣技 - Lv4』『見切り - Lv2』

『ガード - Lv2』『抜刀 - Lv2』『触手マスタリー Lv4』

 以下のスキルが『蛇王流剣術』に統合されます。



 …ああ、今までので覚えていた奴ね。

 『触手マスタリー』が気になる所だけど…今はそんな気分ではない。


 あれは、本物だ………

 剣の道で生き、剣の道で終わるという漢の完成形だ。


 自分は一人泣いていた。

 ロードしても消えぬ心の痛みに身を焼かれながら

 ただひたすらに泣いた。歓喜と痛みと悔しさに苛まれながら。

 『リトルスネーク』のままに泣いたのだ。


 今では『リトルスネーク』のままでもEランク程度の魔物になら遅れを取らない程度まで強くはなれた

 ステータスなど無意味。それを体言する事が出来る程にまで成長する事が出来たのだ。


 1日が経過し。2日が経過し。3日。4日と。

 結局再戦の決心が付かず泣き続けた。

 あの恐ろしさをその身に刻み込まれたのだ。

 しかし、引かぬ…絶対に引かぬ。

 守護者よ、ロードだ。



―――確認 データ2をロードします



 ………データ2は所謂進化前を保存したものだ。

 師匠への再戦はデータ1である。


 何故データ2を選択したのか。

 行くぞと決心しても違うロードを選択してしまうのだ。

 心が屈服している証である。


 この一週間、ずっとコレである、なんて情けない。



―――確認 気分転換をお勧めします 『スネークリング』へ進化します



 へ………?



 と言う間もなく体が白い光に包まれ、自分は『スネークリング』となった。

 まったくの予想外ではあったが、守護者権限にて進化させられたようだ。

 心のBボタンを押す暇もなく。


 しかし、守護者の言う事も尤もだ。

 気分を変えねば出来る事も出来なくなっていた。


 となればこの姿で何をしたいかだ。

 元々、この姿でしたい事といえば人間との交流の為。

 強さを得てからこの姿になりたいと思った事にあり

 選択肢を最後と決めていたのだ。


 今の自分は、強くなれたのだろうか。

 未だに枯れていなかった涙が瞳から流れ落ちる。



「ねぇねぇ。どーしたの?」

「蛇さんが泣いてるよー?」



 どこからか声が聞こえてくる。

 守護者ではないようだ。

 守護者はこんなロリショタっ声では無いし。

 心配してる素振りを見せてくれるが、自分で自我はないとか言い切っちゃってるし。

 その割には、今回もだけど慰めてくれたりするんだよね。



「すねーくりんぐだよねーあれ」

「すねーくりんぐだねーあれ」



 んー?と思い見渡すも姿は見当たらず。

 守護者がついにロリショタっ声をマスターして癒してくれてるのかなとか思うも。

 やっぱり気のせいだよなー。と意識をはっきりさせた所でも、さらに声は続く。



「こっちだよこっちー。」

「ばかー!食べられちゃうよ!」



 んー?やっぱり聞こえる。

 熱源でも反応なし。となると泉側?



 ふと泉を見れば。そこに移るは。

 あらあら、可愛い。


 『ベノムパイソン』のような醜悪さは無く

 『アサシンヴァイパー』のような格好良さも無い

 『スネークリング』には一種の幻想的な可愛さが見受けられた


 こりゃあ、危険な魔物じゃなければ一家に一匹欲しいレベルだな。


 うっとりポージングをすれば、その体はゆるやかな曲線を描き。

 背中で輝く『蛇王の象徴』と合わさりその姿は天使のような。

 妖艶でなやめかしく。思わず舌舐めずりをしてしまいそうで。


 自分のその姿にのめり込んでしまうぐらいに美しかった。

 美的感覚もいよいよもって、魔物になってしまったかな。


 なんて自画自賛してみたが。

 声の主はどこにやら~と探してみれば。


 なんだ、自分の頭上に何か小さいものが居るではないかい。

 小人に羽を付けたかのような可愛らしい姿のお客さんが。


「みーつけた~」


 と声に出そうとしたが発音的には笛のような音が出たとだけ。

 それでも意味は通じたようで。


「きゃーみつかったわー」

「たべないでー!」


 なんて逃げ惑うものだからついつい。


「ほらほらー、にげないとたべちゃうぞー」


 といって暫くやんわり追いかけてみたとさ。

 癒されるわぁ、といっても本当に食べられる恐怖で逃げてたのなら謝る他無い。



「それできみたちはー。だれだい?」



「この泉のせいれーだよー」

「キミあのちいさいへびさんだよねー?」

「ボクたちのこえ。きこえるようになったのー?」

「急になきだしちゃったとおもったら進化しちゃうんだもん」

「びっくりだよー」

「びっくりだよー!」



 へぇ、そりゃあ、ロードしてすぐも泣いてたら急に泣いてるようにも見えるか。

 しかし泉の精霊たぁ、たまげたな。

 とりあえず自分も名乗らねばとは思ったものの、名乗れるといったら種族名だけだったな。



「んー、そうだよ、進化してーのスネークリングだぞぅ。まいったか!」



「でもー。おかしいよねー?」

「ねー?」

「スネークリングってすっごい蛇さんなのよ」

「すっごい蛇さんなのよー」

「あんな、ちいさいへびさんからなれる訳ないのよー」

「ありえないのよー!」

「わたしたちせーれーがおてつだいするのにー」

「なきむしへびさんがなれるなんておかしいのよー!」

「それに~」

「それにね~」

「せなかが すっごいのー」

「とっても おっきいの~」



 ほえー。そーんな過程があるのですか。

 精霊さんが手助けしての進化ねぇ。

 まあ自分にはユニークスキルの手助けがあったから進化出来た訳だけども。

 それとだけど、もっかいおっきいのーって言ってもらえるとへびさんよろこぶの~

 という心の声は外にはもらさずに。



「だから、まいったかー!なのだー。フーッシャッシャッー。」



「まいりましたー!」

「だからたべないでねー」


 良いぞ良いぞ。食べるのは最後にしてやる。

 いや、ホントに食べたりはしないから安心してね?

 口に出すと本当に怯えそうな子達だから冗談でもやめておく。


「ところで、この泉のせーれーという事は」


「ということはー?」

「なんでしょかー?」


「泉をまもったりとかなんなりしてるん?」


「べつにー?」

「すんでるだけよー?」


「へー、そーなのかー」


 なーんだ、別に大それた泉って訳でもなさそうだ。

 ともあれ、こんなに可愛い子でよかった。

 ものすごくデカクてキモい精霊が出てきていたら心がへし折れる所だったよ。


「それでだけど。キミたち。せーれーなんだよね?」


「せーれーなのだー。まいったかー!」

「せーれーなのよー。まいったかー!」


「まいりましたー!で、ふたりだけなの?」


「そうなのよー。わたしたちだけー」

「いずみがちいさいから。わたしたちだけー」


「ふーん。ということは。いずみがなくなっちゃったら?」


「うーん?」

「なんでー?」


「えーと、ここからうごいて べつのばしょにいけるのかなー?なんて」


「むりでーす」

「むりなのよー」


「………」


「どーしたのー?」

「かなしそうなかおー?」


「また、きていいかな?」


「もちろんだよぉー」

「かんげいするよー!」


「それじゃーじぶんはでかけるよーそれじゃねー」


「いってらっしゃーい」

「またきてねー」



 ………ちょっと名残惜しい。

 けれど、腹は空くものだ。

 彼等を食べる訳にも行かず狩りをせねば。

 何となくアレを見ていると食欲が湧いてきてしまうのは何故だろう。

 別に、本当に食べてしまっても良いかもしれないという感情も沸き上がる。


 どちらにしろまた来てあげないといけない気がする。

 蛇の直感が何かを告げたのだ。近いうちに何かがありそうだという。

 ともあれ、今はまだその時期ではないのだし。

 いざとなればスキルも便利なものが取り揃っている。今は今で出来ることをせねばね。


 前世のマッピングを頼りにあちら此方へ散策中。

 ふと、古ぼけた建物がある事を思い出す。


 特に『蛇王の象徴』は縛っていないのでフル解禁。

 移動手段は低空飛行しながら極力目立たぬように移動するのだ。



 そうして、見かけるは巨木の中にログハウスを構えたような珍妙な建物。

 熱源感知を使用しても誰も居ないようだ。


 少々探索しても問題あるまい。

 レッツ不法侵入!

 無論この森にそんな法律など無いのだが。



 近づいた時に何か、魔法が炸裂するような仕掛けがあったようで。

 いわゆる、地雷のような物が爆発し、なんとも言えない臭いが立ち込めたのだ。


(す………すっごい臭いんだけど)


 なんとも言えぬ臭気に身を強張らせるものの、それ以上の反応はない。

 まあ…耐えられない程ではないので。

 足元に気をつけながら建物内にお邪魔するのであった。


 そうして中を散策すれば、人が一人住んでも問題無いだけのスペース。

 調理場。寝床。そして極め付けに書籍の山が揃っていた。

 歓喜に震えた、運がよければ言語の習得に役立つかもしれない。

 と思い、夜通し本の解読に明け暮れたのだった。



 そして次の日には頭を抱えて白目を剥いている自分の姿が其処にある。



 フゥ…そりゃあそうだ。言語の基礎も分からぬのだ。

 せめて言語入門 幼稚園児のような、子供でも分かる本があれば良いのだが。

 どれもこれも、図形に注釈と思われし文字。

 さらには文字と文字が重なり合い訳も分からない暗号文とも取れる形式。

 他にも開いた瞬間、閃光のような魔法が辺りを包み。今の自分のように白目を向いて天を仰ぐ蛇を作り出すような本ばかりなのだ。



………認識が甘かった。



 本があれば。書物が揃っていれば何かしらの掴みを得られるかもしれないと思った自分が浅かった。

 だが…だがしかし!諦める訳には行かない。

 手がかりはこれしかないのだ。


・『鑑定』

・『解析』


 スキルも動員しどうにか理解出来るようにがんばるのだ!

 そういう訳で寝る間も惜しみ。食事すらも満足に取らず。

 解読に明け暮れる毎日を過ごし。6日目の事であった。


 人間である。

 齢50以上は軽くあるであろう人間である。

 しかも本を解読する余り集中しすぎて気付かなかった。

 『危険感知』を持ってしてでも一切の反応が無かったし。


 今の自分では体力はおろか、気力も根こそぎ付きかけていて。

 仕方なくロードで戻ろうかと考えていた所であったが。


 その人間は話をかけてきたのだ。



「*********」



 ダメだった、聞き取れはするも意味が分からない。

 ただ…理解は出来た。心配しているようだった。

 仕方なく起き上がり、警戒するも人間はやさしく語りかける。


「****?****」


 勿論意味は分からない。

 周囲には本棚から抜き取られた本が幾重にも重なっている。

 なんだ、自分はこんなにも読み進めていたのか。

 そりゃあ疲れる訳だ。後で片付けておかないと怒られちゃうなぁ…


 なんて思った所で意識が途切れてしまう。

 ああ、不味ったなー。死ななきゃいいけど…勿論相手さんが………



    *   *   *

即落ち蛇さん。

ロードしても勝てなかったよ

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