物騒な交流方法ですが楽しめてます
フゥ…ふー。シー……シー………フシャー………ッ
阿鼻叫喚の正しい使い方。
泣き喚く冒険者をただ一方的に蹂躙していくその様はまさしく。
『アサシンヴァイパー』なのであろう。
外で様子を見ていたエルフが室内に乱入するよりも早く室内の制圧に成功し。
腕前の分からぬ彼等ですらも、『スケイルシュート』による射撃にて四肢を打ちぬき無力化させる。
動くもの等誰一人として存在しない。
自分は勝負に勝ったのだ。
『アサシンヴァイパー』との勝負に。
誰一人としてまだ死んでない筈。
毒を飲んでしまった男には、触手を口内に進入させ、胃袋に到達する前に毒気は取り去った。
見た目的には、多分暗殺されてるような、そんな姿に見えただろう。
だって口の中に触手です、絵面的に酷いことになってました。
引き抜くときの長さを見たら、もうこりゃ死んだって思われたに違いない。
多分であるが、暫く食道炎に悩まされるだろうけど、自分は謝らない。
冒険者の癖になさけないぞ~…責任転嫁はデフォルトスキル。
警備していたっぽいエルフの男女もなんとも、まあ情けない。
猫耳な子が可愛かったのだが、何気に実力が伴っていたので
ついつい顔面触手パンチをクリーンヒットさせてしまった。
鼻血で顔面が真っ赤に染まったのには罪悪感が湧いてしまう。
他の面子も、これでは森の中で生き残るには難しい。
点数としては100点中の20点である。
自分はエルフもドワーフも、人間の冒険者達も、ついでに猫耳も。
総勢18名を一瞬にして無力化させる事に成功したのだ。
個人的にだが、そこにだらしなく大股開いて、横たわる猫耳獣っ子が特に気になる所。
種族としてはどんな名前なのだろう。
見渡せば、怪我の具合を放置すれば死んでしまう輩も目に入る。
最低限の処置は施してやるが。
今後どうなるかは知らん。止血だけだ。それしか自分には出来ぬ。
・『液体操作』
・『触手』
この二つのスキルを上手く使い、止血の処置を施したが。
正直今後も彼等が冒険者を名乗れるかどうかは分からない。
後は彼等の努力と根性に任せよう。
では後始末も終えていよいよお楽しみのお時間です。
自分が『アサシンヴァイパー』の本能に打ち勝ったご褒美だ。
「酒だーお酒だー!」
まあ、自分の欲求が勝っただけのお話なんだけどね。
小腹が好いたので彼等が用意したであろう料理を少々つまみながらお酒を探す。
美味しく感じるものの、想像とはちょっと違う変な味付け。
味覚がおかしくなってるのか。はたまたこの世界の料理がそういう物なのか。
奥の部屋にてそれっぽい樽を発見。
匂いを嗅げばやっぱり酒樽。
ラベルのような物が貼ってあるが何が書いてあるのかは分からない。
そっくりそのまま樽を抱き上げると。余裕があったので樽を2つ分担ぎ上げる。
まだまだ余裕。さらに2樽分を触手に巻きつけ回収。
合計4つも軽々しく持ち運べるなんて魔物最強である。
このまま持ち帰ろうと思ったところで一つ疑問が沸く。
この世界のお酒って美味いのか?
持ち上げた4つの樽をその場に置き。
触手を突き刺した。開け方分からんし。
そのまま豪快に持ち上げ口飲みしてしまった。
んー?まあ、なるほど。そこそこ。葡萄?果物酒?
魔物の味覚ってどうなのか。
とか思っていたがとりあえず酒の味は感じられるようだった。
ぐいぐい。くいー。
―――確認 *********
ふむ、もう一樽無くなってしまったか。
ではこっちは?
というか今何か言ってなかったか?守護者?
んー。んー。んむんむ。少し酔ってきたかもしれない。
所謂エールと呼ばれる種類だろう。
安物な感がするが、まあイケる。
ぐびぐび。ドッドッドッドッ~。
―――確認 ***!***!***!
あー。あー。それじゃこっちは?
少々守護者が煩い気もする、もしかして酔ってきたか? 守護者が?
うー。また同じ樽ね。ラベルっぽいのが同じだ。
エールエール。最高。普段呑んでないしな。よしよし。偶にはこーいうのも。
ごきゅごきゅ。きゅるるるーん。
―――確認 『***』***
………あー守護者がー。なーんか。言ってるー。
うへぇ。ヤバイ。。。呑みすぎた。頭動かしたら吐くかもしれん。
イカン。寝よう。動くと吐く。絶対吐く。
あー。…ダメだ。何しようとしてたんだっけ。
まあ別に危険なんて感じないし………おやすみ。
イカンね。本能のままに行動するとやっぱりロクな事にならん。
けど酒が飲めたから良し。この世界はまあ、良いもんだ。うむうむ。
うーん。やわらかい枕。今日は良く眠れそうだ。
そんなこんなで宿屋の中で動くものは無くなったとさ。まる。
* * *
気分すっきり、完全回復!今日も一日頑張るぞー!
でもー、なんですかコレー?紐でぐるぐる巻きにされてるんですけどー!
やだー、解いてよー、動きづらいですー。
こんな状況になっても危機感は無いのだが、
これで動きを封じたと思っている冒険者達が何やら話し合っているようだ。
そもそも、蛇を縛り上げたところで、何の意味があるというのだろう。
縛り方にしても、もうちょっと良い縛り方があるだろうに。
宙にぶらさげるとか。
頭と尻尾をこう、括り付けるとか。
ただ、ぐるぐる巻きにするってどうよ?
意味無くない? 蛇ですし自分、手も無ければ足もありません。
そんなコトを感じながら様子を伺えば、幸いにも死者は出ていなかったようね。
きっちり見覚えのある顔ぶれ18名が揃っている。
それが揃いも揃って元気なのだから驚きだ。
回復魔法でもあるのだろうか。
さてさて、どうしよう。全然危険が感じられない。
もう少しピンチな状態にしてもらえれば、少しは張り合いがあるというのに。
むうーん、こうなれば、おふざけモードに入るしかあるまいな。
やーよー、やーよー、縛りプレイはオコトワリなのー。
なんて騒いでいると眠りから覚めた自分に気付いたようで。
エルフの男性女性が慌しく会話のやりとりを繰り返す。
起き上がり小法師のようにゆらゆら揺れて周りの様子を観察すれば。
やはり服にこそ争った形跡が残っているものの。
大怪我をしたであろう部位の傷で目立った場所は無い。
やはり生きてさえいれば、傷を治す程度の事は出来る世界のようだ。
結構、内臓関連でヤバそうな状況の子も居そうだったのに。
案外この世界の医療的な。回復系の技術は高そうだね。
さてさて、状況の確認は出来た。
彼等の言葉は理解出来ないが
自分が目覚めた事で何やら対処を考えているようだが。
待っているほど阿呆じゃない。
と言う訳で、隙間に触手を込めての硬質化。
気合の一蹴で弾け飛ぶ縄。
驚き身をすくませる冒険者。
エルフの男性と女性は身構えるも引き腰だ。
猫耳っ子については腰を抜かしている有様。ちょっと可愛い。
連れ去りたい願望が湧き上がる。
事案が発生する前に目の届かない場所へどうぞ。
なんて思考をする余裕があるものの。
これ以上この場で何かをするのも可哀想になってきました。
お腹も空いてきたし。流石に朝食までご馳走になる訳にもいくまい。
仕方ない、弱者を甚振る趣味は無いので退散するとしますか。
という訳で、お酒はまた後で貰いに来るよと
伝わったかどうか知らないが退散するとしたのだ。
こうして、酒の味を覚えた自分は2度3度と通う事になりました。
通うたびに警備は厳重になって行ったのだが。
そんな試練を乗り越えてこその報酬なのだ。
会うたびに猫耳ちゃんには軽めのキスをプレゼントして。
傍にはエルフのお嬢さんが、その度に気絶してしまう猫耳ちゃんを介抱するまでがテンプレである。
3度目のキス時には、油断してしまい。
見事に猫耳拳が顎を打ち上げたのには見事と、大げさなリアクションで倒れこんであげた。
両手を天高く上げた猫耳ちゃんには盛大な拍手が送られた。
勿論効いてはないが、それが分かっているのか他の冒険者が手出しをしてくる事はなかった。
一人慌てたエルフのお嬢さんが抱き起こして頭を撫でてくれたのが気持ちよかったとだけ。
念の為セーブを行っておきましょう。
そんな日々を過ごし、警備の方達とも、ちょっとしたバトルを楽しみながら楽勝で済ませ。
その後にもガチな勝負を挑んでくる冒険者達を返り討ちにしながら、遊んではいたのだが。
流石に毎日タダで通うのは悪いと思い始め、
森で溜め込んだ価値のありそうな素材や森の落とし物を倉庫らしき場所に送りつけたりした所。
外回りのエルフから攻撃される事が無くなったのだ。
元々、あいつだ『アサシンヴァイパー』だ…
等と、この世の終わりの様な表情を見せてくれてましたし。
そんな状態だった彼等だったので、もう諦めていいよと
上司から言われたのかもしれない。
自分からの贈り物でお客として扱えみたいな立場になれたとか…ないよね?
下手に刺激して暴れられても困る系な魔物です。
そんな扱いにされてる説が濃厚です。
でも依然として襲ってくる冒険者が後を絶ちませんし。
まあ迷惑でもなく自分にとってはお遊びも同然なので、
それ等と相対する時は宿の外にてお相手するようになっている。
宿のみんなも、口を揃えて同じような言葉を言っているので多分
外でやれーという事だろう。
そういう場合は、そのまま外に出て。
森の中まで退避する。ほどよく冒険者との距離をとり。
こっちへおいでよ。ついておいでよ。ほらほら早く~。
意味が通じてるか分からないが、面白いように付いてくるのだ。
大して距離は離れずについてくる冒険者達はなんとも律儀な事だ。
天然のちょっとした土と短い草が生えている程度の広間があるので、そこへ待機。
大抵の冒険者はそこで相手にするようにしている。
不意をうたれる事なく真っ向勝負が殆どです。
そんな冒険者は複数で襲い掛かってくる事が多く。
装備品もそこそこで、いかにも戦闘が強そうです。
ですが、魔物でありその姿で結構な年数を生き抜いてきた自分にはそれ等を脅威に感じる要素は感じられれず。
腕試し。とまではいきませんでしたが。
対人間という事で新しい戦術を試して楽しむ実験場となっていた。
ついでに彼等が共通して持っていた
綺麗なメダルを記念に数枚失敬したりと遊んでいたのだが
これが元で冒険者達に狙われる事になろうとは微塵も思わなかった。
理由は定かではないが、どうしても取り返したいらしく。
次々と冒険者が送り込まれてくる謎の状態になってしまいました。
気が付いたのは身に付けているそれ等を取り返して帰ってく冒険者が見受けられたからだ。
そして今のこんな状況が作り出された訳であるが。
………これで10PT!
と心の中でカウントし、そこそこの腕前であろう冒険者を一蹴する。
少なくてもあの冒険者の宿に居座っていた連中とは格段にレベルが違った。
勝ったという証の為に、銀製だろうかと思われるメダルを失敬する。
その他には一切手をつけない。
が、逃げ帰る彼等が落とした道具袋は別だ。
中身を見れば、回復薬かなんかだろうか。
ポーションの類が数個見られたり。
携帯食であろう乾燥肉等も手に入る。
なんだ、良いコト尽くめではないか。
正直魔物を相手にするよりも実益がある。
干し肉美味ぇ。乾燥果物甘い。香辛料もあったりした。
なんてしてると、自分が野党のようにも思えるが。
襲ってくるのは相手なので問題はない。
それに相手から襲ってくると分かれば、自分がココに居るぞと。
腰を据えて待つ事で、挑戦者がどんどん向こう側からやってくる。
何故だか分からないが、自然とそんな流れが出来てしまったのだ。
そんな流れの中。
目的の物が取り返せなかった冒険者が泣いて帰っていく現場も目撃してしまったので
良心が痛み、ひっそりと夜中に今まで集めていた勲章を全て返してしまった。
エルフのお嬢さんが影ながら見ていたから、意図は察してくれるだろう。
………30PTめ!
そんな事があったが、挑戦する冒険者の数は減らなかった。
そして、何故だか冒険者達の中でも観戦者が出始めるようになった。
冒険者の腕前もさらに高くなっていて一筋縄ではいかなくなった相手も数名確認できた。
装備でいう品質も、皮や木製で出来ていた程度の冒険者ではない。
全身鋼鉄の鎧に身を包んでいても尚、動きが軽装のようで俊敏な人間も現れたのだ。
そういう相手にこそ手加減が難しい。
どの程度痛めつければ諦めが付くのか。
少なくても死者は少なく済ませているつもりだが。
正直に、何度かこれは命に関わる傷だなと思い、
治療を優先させてあげる為に戦闘を離脱した事もあった。
「*****!!!」
剣から衝撃波を巻き起こす剣士には初見で驚かされた。
反応遅ければ死なないまでも大打撃だったかもしれない。
技名でも口に出しながら放つのであろう事を知った辺りからの対処は余裕であったが。
同じ人間で同じ武器を持っても戦い方が千差万別。
各々が強みを持ち出しそれをぶつけてくるのだから。
此方としても戦っていて楽しみが多い。
他にも、魔法使いを前衛に。弓を使うものが後衛というスタイルの二人組み冒険者。
なんともまあ、浪漫に溢れる武器よ。
ショートソードに魔力を込めているであろう淡い光を放つその武器は流石の自分も欲しくなった。
ついつい触手で触りたくなり、絡めとった矢先。
物凄い衝撃で触手が弾け飛び、唖然としてしまったものだ。
ありゃあ、ヤバイ、魔物絶対殺す剣だわ。
援護の弓もなんか光ってるし。受けえたら相当痛そうで、その戦闘は必死に避ける事となった。
あと珍しい相手といったら、一人でやってきた格闘家であった。
人間としては中々に上位の筋肉であった。
防具は布地であったが、作りがなんとも奇妙な。文字のようなものが刻まれていた。
そして素手なのである。魔物相手に素手とは、無謀であるとは思ったのだが自信があるのだろう。
強さの程で言えば、まあまあであった。
だけどそこい等の冒険者達よりは強かった。
縛りとして此方も触手グーパンで相手をしてやったのだが。
何度打ちのめしても立ち上がってくる。
何度ひれ伏しても立ち上がってくる。
投げ飛ばし、体当たりをし、頭突きでいなしたりもした。
だが、何度でも立ち上がり、此方を睨み付けてくるのだ。
ふらりふらりとダメージが抜け切っていないのかと思っていたが。
途中より彼が回復魔法の使い手であると気付いたのには我ながらの反省点である。
自分の真似をしていたらしい、その格闘家は。
上体を足の先だけで支え、左右どちらへも瞬間的に移動する歩行術を彼は自分から盗んだのだ。
生半可な筋力やバランス感覚では真似できない、ましてや人間の体で魔物の動きを。
それに気が付いた時には、改めて本気をだして相手にしたものだ。
動けなくなった彼を見たとき、正直死んだのか?と思った。
………50PT突破!
こんな数にもなれば、リベンジしてくる冒険者も多くなってくる
驚かされるばかりだ。此方の攻撃に対処してくる猛者がとにかく多い。
1体1の対戦であれば負けはないのだが、複数戦にて攻撃後の隙を狙い。
魔法による攻撃。ヒット確認の後の剣撃。
時にはピンポイントで剣士の連撃に合わせ圧力を上乗せする矢を打ち放つ弓使いもいた。
一歩間違えれば剣士にヒットするだろうにとも思ったが。
それが彼等の考えだした連携の一つなのだろう。
そんなリベンジ組の中には初期からの参戦者も居る。
自分の中で3馬鹿と呼んでいる。
女性をリーダーとした男性二人を従える3人組。
基本的な戦術は女が命令し、男が頑張る。それだけである。
一見馬鹿みたいに見える3人だけど、実力だけはおりがみつきだった。
もはや名物と化したような3人組は正直、手を抜くと負けるかも。ぐらいのレベルである。
男二人はとにかくタフであり、パワーがあり、尚且つ身を挺して接近し、
結構な重量であろう自分の体をも、軽々と持ち上げらられた事すらある。
女側は隙を見せれば、手に持った女王様のような鞭で叩く、絡める、音のみで威圧する事もあり意外とやりおる。
しかも、なんとなくだけど。叩かれると嬉しい。
お陰で『フェチズム:マゾヒスト』のレベルを守護者から上げられてしまった。
珍しい相手といえば、剣士と魔法使いの2人組みがいた。
別に組み合わせ的には普通だ。
しかし剣士というには、少し小振りな剣と、短刀の二刀流。
魔法使いの方はといえば、なんと魔方陣を地面に描き。魔法を停滞させるではないか。
剣士はヘタレだった、魔法使いも未熟だった。
しかし、なぜか分からないが、、強かった。
一発一発が馬鹿げた威力だったからだろう。
挑むだけの力はあったが、経験が足りなかった。一昔前の自分を思い出す。
まだまだ自分も未熟な所が多いので互いに精進しような。
といった所で、魔法陣に剣士を放り込み、魔法の暴発にて勝利。多分生きてるよね?
そして一際目立った強者組には手こずった。
4人PTである。構成的に、自己の主観ではあるが。
勇者 戦士 魔法使い 僧侶
そんなイメージの組み合わせだった。
男男女女である。顔立ちも良く、女性側の胸元の膨れ方もレベルが高い。
数が多ければそれだけ手強い相手であるとわかってはいたが。
このPTはそれまで相手にしてた人間達よりも別格。
役割がしっかりと統率され、尚且つ連携の水準も高く。
正直負けてしまうかもと思ったレベルであった。
戦士の囮っぷりがとにかく見事。全然無視が出来ないのだ。
魔法使いはとにかく、高火力。久しぶりに熱い!寒い!と味わったものだ。
勇者については。他の者達のミスをカバーする。とにかく聡い。統率者といった感じだ。
僧侶はいわずともがな。一番最初に倒したい相手だったが。他の壁が厚すぎて無理でした。
結果長期戦となり。相手側が降参といった感じで幕を閉じた。
………80PTを突破した
一見さんで軽くあしらえる系PTはカウントには入れてない。
全体的にレベルは高くなったものの。
それでも興味本位でやってきた冒険者というのは多いもの。
自分が敵として認められる相手が来なければ数には加えない。
しかし、そんな中で面白いPTがやってきた。
半裸の半ズボン集団である。
筋肉ムキムキ。スキンヘッドも混じってる。
前世ならヤバイ。怖い。関わりたくない。尻尾巻いて逃げるレベルの集団だ。
だが今や自分は魔物であり能力的にも大分余裕のあるお陰で彼等を一見した感想が。
面白いなアイツ等である。
実際、強さで言えば他の冒険者達が上だった。
戦い方でみても、やっぱり面白いなコイツ等であった。
なんで筋肉光るの? 鎧着てる奴等よりも体が硬いんだけど?
毎回ポーズ決めた後に攻撃してくるんだけど!
今までで一番驚かされたかもしれない。面白さ的な意味で。
折角なので力と力のぶつかりあい。
技などいらぬ。押して押して、正面からの体当たり。
頭と頭で額を合わせて押し合い睨みあい。
やはり力だけなら、冒険者の中では最強だった。
が、魔物にはまだまだ敵わなかったらしく。
仰向けにぶったおれるマッチョメンで草原が暑苦しくなったとさ。
最後に纏めて触手で縛り上げた後に勝利のマッスルタワーを作成。
4段重ねになったまま去っていくマッチョ達。
余力をまだまだ残していたのか、ポージングを決めたまま消えていった。
実は力比べしたかっただけで本気で戦ってたら強かったんじゃ?
まあ、やってくるPTは面白い奴等だけではない。
勿論強い相手もやってくる。むしろ先程のマッチョメンが例外なだけだ。
このファンタジーな世界において、人間達にどんな職業があるかは分からないが。
軽装な剣士系も居れば重装備のタンク型。弓使いに魔法使い。
特殊な装備の、魔獣使いのような獣を引き連れた者も見受けられた。
回復魔法とやらは存在するも戦闘中での使い勝手は悪いという印象がある。
瞬間的な回復ではなく、持続的な治癒を行う。ようなイメージだと感じ取れた。
戦ってる最中に全回復とかされたらちょっと危ない戦闘も多かったからね。
良くあるRPGで回復しながら挑まれるボスキャラの気持ちが少し分かった気がするよ。
この世界の回復が弱めで助かった。
………そして100PTめ!
ついに目標としていた100PTを撃破した!
毎日毎日、日の出ている内に次々とやってくる冒険者達。
90辺りを越えた所から毎回負けるかもしれない。『蛇王の呪い』を発動させてしまうのではないか。
という寸前の所まで追い込まれた事もあった。
その所為もあって、午後には早々と早引けさせて貰った日もある。
そんな逃げ帰るような自分の様子を見て。
冒険者達も歓声を上げていた時もあった。
悪い気はしない。認められているんだなと嬉しくもある。
ともあれ、念願の100PT抜きである。
―――確認 心からの喜びを感じました
うむうむ、守護者も喜んでくれている。
きりが良い数字というのはなんとも気分が良い。
さて、明日からどうするべきか。
目標を達成したのだが、これからも冒険者達は挑戦を繰り返すだろう。
自分としては嬉しい所もあるが、こればかりを繰り返す訳にもいかない。
負ける気はしないが、折角の人間との交流だ。
それが例え争いというなの交流でもだ。
変化が欲しいと、その夜中に物思いに耽っていた時だ。
―――確認 『危険感知』に反応あり 直ちに警戒を!
久しく反応を示さなかった『危険感知』が反応を示した。
守護者よ。データ1に『セーブ』を頼む。
―――確認 データ1に『セーブ』をしました。
鎌首を持ち上げ、その源である人間を見据える。
初老の男だった
無精髭が生えているものの。
どことなく一種の気質を備える者の眼光を放っていた。
この場所に人間が来るという事は自分への挑戦者という事なのだが。
目の前の彼は違ったように思える。
彼はこの自分『アサシンヴァイパー』を見定めに来たのだと直感する。
人気の無いこの夜更けを狙い…である。
月明かりに照らされ、視界は十分。
数々の冒険者に踏みならされた足場は最早天然の闘技場であり。
彼等冒険者が持ち寄った品にて枠組みまでされている始末である。
まさか、まさかではあるが。
いわゆる、本物の勇者。とかその類の人間なのではないだろうか。
そんな風格を漂わせる目の前の相手は、準備が出来次第、戦いだという意思が感じ取れる。
歓喜した、目の前のこの相手は自分より各上の相手であると理解したからだ。
だからこそ『セーブ』をしたのだ。
こいつは『蛇王の呪い』なんかで倒して良い相手ではない…
自らの手で。この持ちえた技量でのみ打ち倒して良い相手なのだ!
今宵はいい日になりそうだ。
* * *
人間側の言葉が理解できず苦しむ主人公を期待しましたが。
別にどうでも良さそうな主人公側のフリーダムさ加減に負けました。
死なない程度に痛めつけられる程度であれば
【蛇の通り道】系の冒険者達は寛大に迎えてくれるようです。
【蛇の通り道】にやってくる冒険者であるならば面白半分にやってくるようです。




