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【蛇の通り道】-1-

 ここは【蛇の通り道】と言います。冒険者用の宿泊施設ですね。


 比較的安全な場所を選び。見通しの良い高台に構えられたこの建物は。

 森の見張り台としての役割も果たしていたりもします。


 故に、他の宿よりは護衛としての人数は多めに配備されていて

 冒険者達も多く、この宿を拠点として構え森の探索へ赴いているようで


 毎日毎日。沢山の冒険者達で溢れています。

 中には、うちの食べ物だけが目当てでやってくる物好きも居るようで。

 見慣れた顔ぶれ。常連客も多いですね。


 簡単な紹介でしたが。

 後はみなさんの目でお確かめください。


 道なりにこの坂を下りて行けば、森の入口となっております。

 裏手には倉庫がありますね。

 冒険者の方々が一時的に物資を補完しておく場所です。


 なるべく貴重品の方はお預けにならないよう、お願い致します。

 人の出入りが多いもので、間違いや盗難の恐れがありまして…ご容赦を。


 他には簡単な武具の手入れ等は、外に簡易な工房もありますので其方を使用しても構いません。

 多少値は張りますが、職人の方もいますので頼んでみるのも良いかもしれませんよ?


 えーと。この辺でこの【蛇の通り道】の紹介は大丈夫でしょうか?

 はい、なんでこんな名前なのかって?



 確か。この宿が建てられたのが3年前でして。

 その時に『スネークリング』っていう魔物がいたという話を聞いています。

 この付近の森に居座っていたらしいのですよ。

 魔物にしては温厚な性格のようで。ランクにしてC+でしたっけ?

 C+ですよC+。ちょっと怖い気もしましたが。

 他の弱い魔物が全然寄り付かず。逆に安全になってるんじゃないかって誰かが言い出したらしくて。

 気の強い冒険者が、ついつい酔った勢いで、ちょっかいを出したって聞いてます。

 確か。一緒に飲みたいとかで、お酒で釣るなんて言い出したと聞いてますよ。

 それが上手く行ったらしくて。この宿にその魔物がやってくるようになったとか。


 えーと。今はもうその姿は見られませんけど。

 話に聞く限りだと。それが理由でこんな名前がついたとか聞いています。


 あれ、ちょっと残念そうですね、冒険者さん?

 私も少し残念ですけど。魔物なんですよ。魔物。


 この【蛇の通り道】の看板魔物。なんて噂が立ってしまった辺りから。

 教会より討伐依頼が出てしまって…その~。

 それ以上の事は私には。


 いえ、そんな事よりも冒険者の方達には、楽しい旅を。

 私達も可能な限りお手伝いしたいと思っています。


 それでは、どうぞごゆっくり。



ザッ―――



 …?


 なにやら森の様子がおかしいようです。

 口を半開きにして森の様子を眺めていた獣人の方が今隣にいます。


 私もぼけーっとその様子を見ていました。


 あたりはもう夜なのですが。魔物の中には夜に活動する個体も多いのです。

 私達には月明かり程度でも『暗視』の能力で視界の確保は苦にはなりません。

 私のお隣にいる猫耳の方もこの『暗視』を持つ仲間として夜の警備にあたっていた所でした。


 なんというか。

 蛇のようなおっきい魔物が空を飛んで翼竜を相手にしていました。



 驚くべき事にその蛇のような魔物は、ランクがC+であろう翼竜達を一瞬のうちに撃退してしまったようです

 あまりに一瞬の出来事だったので。私達は顔を見合わせてしまいました。


 再び元の場所へ視線を移すと、その蛇が此方を向いているではありませんか。

 背筋が凍りました。距離的には相当離れている筈なのですが。

 心臓が破裂しそうなぐらいに鼓動が早くなっているのが分かります。


 宿の名前が【蛇の通り道】なだけあって、あんな蛇もここを通り道にするのではないか。


 そんな不安が過ぎりましたが、杞憂だったようです。

 そう思いたい限りでした。もしも、あんな魔物がココにやってきたとしたら。

 私達でこの宿を守りきれるのでしょうか。

 巨大な蛇の魔物は宿とは違うどこか遠くへ移動していきます。


 再び私達は顔を合わせて。暫くそのままの状態で固まっています。

 見張りとしては失格ですね、隣の子は自分よりも危険に敏感なせいで、まだ震えています。


 暫く私も動けませんでした。

 宿の付近に仕掛けられている魔法のトラップが発動したとあれば

 気合を入れ直して動きますので。お許しを…

 やっぱりランクC以上の魔物を見かけると、遠巻きでも腰が抜けてしまいます。


 これでもランクDの魔物が相手なら遅れは取らない腕前は持っていますけど。

 ランクCからはなんだか桁が違うんですよ。

 今回のも………本当にランクCなんですかアレっていうレベルでしたし。


 一刻も早く上司に報告したほうが良いのではないか?

 とも思いましたが、気が張りすぎて、その日は見張り番から動く事ができず。

 お隣の猫耳さんも涙目で擦り寄ってくるので動くに動けませんでした。


 今は危険と言える様子は感じられないので、今夜の出来事は明日にでも報告するとします。

 比較的安全な区域だなんて、誰が言ったんでしょうか。

 いえ、他の区域はもっと危険かもしれません。


 私達、この仕事をもっと慣れる必要があるみたいです。

 猫耳さん、一緒にがんばろうね…

 だから、私を一人にしないで欲しいのです…



   *   *   *

初の別視点は一般エルフの女性から

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