クラゲと蛇
水着回でしたが戦闘イベントが発生しました。
巨大なクラゲの化け物が現れたのです。
水面で飛沫を上げ続けていたヨルンに釣られるかのように様に姿を現したクラゲモンスター。
ザッパァーと津波を引き起こしての派手な登場でした。
登場するなり伸ばしていた触手はヨルンに向けられていて、
逃げる間もなく捕らえられ、されるがままに蛇の体はグルグル巻きにされました。
そのまま連れ去られる事の、様子を見れば周りが驚いております。
そうしてヨルンはパックンとお口の中に放り込まれる事のクラゲ頭内から外を眺める事になる。
透けるプヨプヨ蠢くクラゲの体内で動けぬヨルン。
全方位を視認出来るが故に、何と言いますか、囚われた気分にはなりません。
多分ですがヨルン以外の者が囚われてしまったのであれば、
クラゲさんの体内ですし、痛みに悶えて普通に死んじゃうレベルでしょう。
「きゃー、わきゃー、たすけーてー」
とりあえず悲鳴を上げて助けを求めれば、特に誰もが危機感を感じていない様子。
被害者である当のヨルンも、毒は効かない。
消化液のようなものにも耐性がある。
さらにはグニグニ動く体内にては心地良さすら感じている始末。
うーむ、シチュエーション的にも何かがおいしくない。
考えてみるにしても、この子はクラゲですよね?
クラゲ除けローションを塗りたくった女性陣の前に突如として現れた触手要因。
クラゲ除けとはいえ出会わなくなる訳じゃなく、実際の所は触ってもある程度大丈夫になるという品なのです。
その事は皆さん承知してますから良いのですが、如何せんこのクラゲは巨大すぎた。
ネーサン曰くに、突然変異ね。集まりすぎて肥大化したんじゃない?
どうやら特殊なイベント発生という事で、珍しい体験な模様。
そんなごく一般的なファンタジーなお話にて、
この様な状況になればある程度のパニックが起きるのは必然。
折角ですから、そのクラゲな触手でひと暴れしてもらいましょうか。
ちょっぴりやらしいイベントぐらい発生しそうですもの。
しかし何と言いますか、ヨルンファミリーの手にかかってしまえば襲われる側が入れ替わってしまうようです。
幼女二人の物理的なパンチキックによりクラゲは宙を舞った。
体格差等お構いなしの同時攻撃にて、クラゲは水中という地の利を失ったのだ。
その様子を見た、白と黒の幼女二人組は高らかに笑う。
魔法少女を名乗らせても良かったのですが、どう考えても物理な二人には似合いませんね。
打ち上げられた哀れなクラゲは現状を理解してないらしい。
砂浜の上でビタンビタンと蠢き苦しんでいた。
そこへ登場するはココアちゃんとエレナの二人組。
あまりの巨大さに驚くココアちゃんに向けられる触手に対してエレナは、
無造作にソレを掴み大きく腕を振るった。
これもまた体格差というものを感じさせずに振り回されるクラゲは何を思っているのだろう。
地面に叩きつけられた巨大なクラゲ。
そのクラゲに意思があれば、勝ち目など無きに等しいものだと悟るだろう。
自らの武器である筈の触手が全く意味をなしていない。
相手より大きい筈の、自身の体躯が全く役に立っていない。
そんな魔物はランクにしてEの魔物だった。
それが巨大化していたのだからE+といった所でしょうか?
Dランクになっていたかもしれませんが、別にヨルン達にとってはどうでも良い事です。
だけどそれだけではなんなので、一般冒険者の目線で考えてみましょう。
毒への対策は必須として、後は物理的に触手をどうにかすれば何とかなる相手。
対策をすればどうにかなる魔物だけれど、巨大化してるからその分難しくなっているって所ですかね。
そんな魔物は海へ逃げ帰ろうと、もたもたとその体を引きずっていた。
身の危険を感じる意思があるのだろうか?
そう思ったが、そのクラゲの魔物の習性として、陸には上がりたくない。
それだけの理由で海に戻るという行動だけをしているようだ。
何となく皆してその様子を見物していたが、クラゲは海に入った途端に元気を取り戻す。
そして何事も無かったかのように再び立ち向かってくる巨大クラゲ。
その魔物の名はフィーフィー。毒と触手以外は特に脅威のない魔物である。
しかし単純が故に、地力が足りなければ命を落とす事にもなり得るだろう。
少なくても、ただの一般人が立ち向かえばあっさりと他界してしまうレベルであるのには間違いない。
面白くない。巨大クラゲへの助け舟を出すべきかとヨルンは考える。
水の中に戻った所で、野良魔物を相手に日夜無双をしているラノアさんにですね。
一般の巨大化した程度な魔物が勝てる訳が無かったんですよね。
何かこの子、水上を走り回れるみたいですし。地上で戦ってるのとなんら変わってないです。
男組も活躍する時だと張り切ったのは良いんですが、
一方的に巨大なクラゲを叩きのめすラノアさんを見て足が止まり、
再び宙を舞うクラゲを見て、出番は無かったなと消沈しています。
このままではいかんと思ったヨルンはいつものティアの姿となり、
巨大クラゲ強化のイベントを引き起こす。
ヨルンは巨大クラゲに眷属化を試みる。
魔力を送り込み、進化を促してみた所、進化しちゃいましたよ。
とりあえずの所は、何も命令を与えずに強くなったクラゲさん。
進化をしたので種族名も変わり、イルフィーとなったようです。
海の魔物第一号として名前も付けてあげましょう。
命名【リサリス】として所謂ネームドモンスターって奴ですよ。
強さにしてランクはD程度ですが海のモンスターなので良い参考材料です。
これでヨルンファミリーを相手取るにも、多少はマシになるでしょう。
名前が付いた事により、多少の思考能力が生まれたらしく、
突っ込んで体当たりに触手で掴みかかるだけだったクラゲは待つ事を覚えた。
触手を振り回し、鞭のように扱い、その速度も段違いとなる。
折角だからステータスも見てみよう。
――――――――――――――――――――――――
ランク.D- 種族名『イルフィー』名前『リサリス』
Lv:1 HP256/256 MP16777216/256
攻撃:113
防御:203
魔法:83
速度:153
――――――――――――――――――――――――
ふむ? ステータス的には低め?
でも考えてみればレベルは1ですものね。そう考えると高い感はするが、はてさて。
まだまだステータスに関しては違和感がありますな。
でも相変わらずにHPはカンストしてそうな値で同個体と比べればタフなんでしょう。
そしてMPだけは自分と同じだと思ったらアレですよ。
今のヨルンはクラゲに取り込まれてますからMPだけ共有されている状態である。
ヨルンとの物理的な繋がりを切れば元には戻るでしょう。
とりあえず、今の状態ならばリサリスはMPを消費するスキルは使い放題ですな。
しかしこのクラゲにMPを消費するスキルなんてあるのだろうか?
調べてみるとありました。
『再生能力』に『毒生成』と『飛翔』?
何気にこのクラゲ飛べるんですか?
だとすると相当に厄介な存在になったと思われますが、使ってみるよう指示した所。
自由に飛ぶというよりは、とある地点まで跳んで移動するスキルでした。
着地による衝撃はスキルにより無くなるようなので、移動用スキルですな。
戦闘に使うならば組み合わせは必須として、そろそろ始めるとしましょうか。
水着勢vs巨大クラゲの第2回戦をね。
そうして意気込んでみたものの、何というかまだまだ能力不足だった模様。
魔物にしてのランクがD-なクラゲでは…、触手があるのに勝てぬ…勝てぬのだ!
ココアちゃんを狙えばエレナに吹き飛ばされ、
幼女組を狙えばやっぱり単純に力負けをする。
ラノアさんに至っては触手が爆裂四散で捉える所ではありませんでした。
であるならば、サイレンさんに向けて飛翔を試み触手でぐるぐるに巻いてくれよう。
まあ結果は言わずともがな、クラゲのリサリスちゃんは全敗です。
別段特記して語る事もなく、解剖台の上に乗せられてヨルンが取り出されました。
「あなた方のお陰で助かりました。私の名はヨルン」
と言った所で突っ込みでお馴染みとなってしまったエレナチョップがヨルンを襲う。
加減を覚えてきたチョップは、他の者へ繰り出されたとしても命に係わる事は無い程度には抑えられている。
この調子で加減を覚えてくれれば良いんですけどねー。
なんて思ってたらヨルンは叱られてしまいました。
「ヨルンちゃん、折角の海なんですから魔物を進化させたりなんて、変な事しちゃいけません」
「反省しています。調子に乗りすぎました」
素直にヨルンは謝った。お詫びとして何かないかと思案した結果。
暇そうな男共も何かしたい様子。そろそろ軽く何か食べないかい?
そう案を出してくるコインさんはイケメンですな。乗らぬ理由は無いので準備開始です。
屋台でも作って砂の混じった不味い焼きそばでも作るお時間ですかね。
イケメン騎士さんの方は、屋台を見せればそういえば色々と作れるんだったなと材料を漁ってます。
ある物と言えばパンに野菜にお肉も少々。飲み物を入れておく樽も用意してあります。
その場で料理する用に鉄板もありますし、刃物なら包丁代わりのナイフも良いモノを揃えてます。
後はそうそう、氷も作れるんで用意しておいたんでしたっけ。
そんな中でイケメンさんが作るのはフルーツを乗っけただけの、かき氷でした。
作り方は単純。ナイフで氷を削って器に盛ってますよ。
後はフルーツを乗せて甘いシロップをかけて完成です。
単純なだけに女性陣を引きつけてますね。
もう一方の目立たないフツメンは普通に焼きそばを作ってますね。
鉄板をヨルンが熱して後はお任せです。
適量でヨルン特製のちょいと辛めなソースをかければ、匂いだけは美味しそうに出来上がりました。
という訳でココアちゃん、その他数名が焼きそばを食べたり等して休憩です。
別に勝負をしている訳ではないですが、人気の方はかき氷だったようでイケメンさん大勝利って所ですかね。
在庫が大量の焼きそばが後に残されてしまった。
なのでヨルンは焼きそばを食みつつ、水着鑑賞を続けるとします。
砂が噛む度にジャリジャリと感じる程度に入って本当に不味い焼きそばだった。はみはみ。
ついでに頑張ったクラゲのリサリスにも差し入れです。
サイレンさんに解剖されましたが今では元気に海辺を泳ぎ回っていますし。
折角ですから色々食べさせてみましょう。
不味い焼きそばは、もそもそと食べています。
普通ですね。なんとなく食べて。食べて、食べての在庫を完食です。
体が大きいだけあって結構食べてくれますね。
なんだか満足気に体をフヨフヨさせていますが、どのぐらい食べられるのでしょう?
折角だからかき氷も食べさせてみましょう。
甘いシロップをかけてから差し出せば、触手で突っついた後にお口に運びましたね。
みるみるうちに吸い込まれていきます。
食べきった後には、ピョンピョンポヨンと跳ねて喜びを表現しているようです。
食べ過ぎな気もしますが、この子はそこそこな巨体ですから大丈夫でしょう。
楽しくなってきたヨルンは色んな種類の食べ物を用意して何を食べるのかの検証も行った。
水着姿を鑑賞するという目的も忘れて十数分の時を過ごすしているヨルンは思い出す。
満足したであろうリサリスのブヨブヨな傘の上に乗り、海へと向かいました。
時を同じくして、海で泳ぐ事にも飽きた女性陣は砂浜に集まり始める流れとなり、
ヨルンはリサリスと一緒に海で泳ぐ練習をしながら、砂浜で集まる女性陣を眺める存在となる。
多分ですが、この泳ぎ方はクラゲ流なので蛇の自分には合ってません。
ですが何となくこの流れに任せた泳ぎ方、悪くない気もしますね。
水面に浮かんで頭を垂らす蛇となり、ヨルンは海蛇となるべく体を慣らすのだ。
そういえば女神さんは特に海に入る事もなく、やってきてからずーっとネーサンと戯れてましたね。
泳ぎたい訳でもなく、一緒になって遊びたいだけだったんでしょうか。
その後、暫くするとネーサンが周りを集めて何やら話し合い始めました。
ヨルン達も呼ばれたので行ってみましょう。
どうやらとあるスポーツをするみたいですね。
海と言ったらアレでしょう。ルール的にビーチバレーっぽいですね。
2vs2に分かれて対戦する流れになったようです。
チームとしては3チーム出来上がりました。先ずは女性陣だけでリーグ戦ですよ。
エレナとココアの百合ではなく、仲良しチーム。
アリエルとアリスのパワフル幼女チーム。
サイレンとラノアの大人びたケモ女性チーム。
うーむ、マトモなのがいねえ。
レベル差も何も調整してませんが、実際対戦すりゃ分かるでしょう。
お遊びですし深くは考えぬのです。
とりあえず、ルールについてはネーサンが出して皆さんに説明中です。
そのルールの中でもヨルンの知る通常のビーチバレーとは違ったルールの説明もされてますね。
1.一部のスキル、主に魔法の使用は禁ずる。
2.使うボールは当たるとそこそこ痛い。
3.戦闘不能となったものは退場する。
4.コートの補強にヨルンが頑張ったので大穴が開いたらヨルンの所為。
5.優勝者には景品を。参加賞もあるよ。
まあ妥当なルールでしょうね。
女神さんもリーグ戦後に参加するみたいですけど、そりゃあ皆さん勝ち目無くなっちゃいますものね。
そんでヨルン達、魔物組ですが女神さんと一緒に後でやってみる流れになりました。
誰と組みましょうかね。妥当なところでサプと一緒でしょうか。
ついでに男性陣は審判係です。参加させても良いんですが、彼等としては見物だけしたいようですし。
ボール拾いは彼等に任せ、ヨルン達もお手伝いをしましょう。
という流れでビーチバレーが始まる訳ですが、
この時のヨルンはまだ、ただのお遊びスポーツ気分だったんですよ。
先程のルール説明の時に察するべきでした。
あんな説明が出てくる段階で、楽しむ為だけの遊びでスポーツなんかやらせるもんじゃないねと。
* * *
ペット感覚な眷属が増えた。
それにしてもヨルンは良く食べられること。




