幼女とお風呂と蛇さんと
蛇のヨルンは休暇中です。
暖かな室内でゆったりモードなのです。
ぺっとり体を床に預ければ温水の波紋が発生し体がほんのり火照ります。
湯気が立ち込める室内は霧が出ているかのようですなー。
うおー! 温泉じゃあー!
とまでは行きませんでしたがお風呂です。
しかし大浴場です。人間一人が入るには広すぎるような空間の中に一人と一匹。
一人は飼主であるアリエル。
そして一匹はこの自分。蛇のヨルンでありますよ。
その他は誰もいません。
そしてこのお風呂は彼女、つまり女性であるアリエルさんのご自宅にあるらしいです。
そしてお風呂です。彼女、つまり女性であるアリエルさんは全裸でございます。
まあ…ヨルンさんは蛇ですし。
まじまじと見られても羞恥心はないのでしょう。
一緒の湯船に入る事は拒否ですけどね。
ヨルンさんは湯船から溢れ出る温水を浴びるだけでも十分です。
そういえば蛇ですが体温の調整はどうなのでしょう。
少し心配になりましたが、魔物ですし。
普通の蛇もシャワーで程くぬるめな温水で洗ってあげるとトイレもついでに済ませるぐらいに問題無いとも聞いています。
今のヨルンが感じる温度も暑すぎず寒すぎずと別に問題はないようです。
ともあれ今は目の前の裸体が気になりますよ。
湯気に隠れる女体の全貌はアレですね。
DVD購入者の特権です。
購入したら湯気が晴れますよ?
残念ながら運送業者との連携はしていませんので直接販売のみですけどね。
しかも住所は不明ですし、そもそもにDVDの製作段階で詰まります。
というか今はもうブルーレイな時代でしたっけ。
ヨルンさんの知識は遅れていますからなー。
まあ折角ですので実況と参りましょう。
まずは目につく場所ですが、顔立ちは良いです。
傷一つなく、整った容姿は高貴な印象を受けますな。
それでいて体のラインは優雅な曲線を描き、なんとも恵まれた体系をしているのが分かります。
だが曲線であれば蛇である自分に勝るものなし。
蛇は曲線美の塊なのですよ。ふんすふんすっ!
なんて張り合っても仕方ありませんね。
でも比べてしまうのには理由があります。
アレですよ、女性であれば持っている筈の膨らみが。
対となり聳え立っている筈の山が、見当たりませんな?
ふむ、年齢的には…その童顔からして成長の余地はあるように思えますが。
言ってしまいますと。ぺったんこです。まな板です。
これではヨルンさん、お胸に突っ込んで挟まれる事も出来ません。
そして先程成長の余地はと考えてみましたが。
実は彼女、ダークエルフという種族らしいです。
年齢も一応、成人年齢という事らしく、これ以降大きく成長する事は無いようなのです。
つまりは見込みなしって事ですね。
…それはそうと、ヨルンの知るダークエルフの知識が増えましたね。
そこそこな褐色肌。ダークというにはもっと黒い物かと思いましたが。
褐色っ子なんですな。身長の方もなんというか…
自分の体は人間よりも小さいという事もあり、気にもしてなかったのだけれど。
他者と比べてみると彼女、アリエルの身長は低め…でしたね。
つまり、ダークエルフという種族の特徴を纏めてみるに。
褐色で、背は低めで、まな板である。
心のメモに残しておきましょう。
そんなこんなでヨルンさんはシャワーを浴びてます。
シャワーとは言っても温かいお湯がドバーっと流れる滝みたいなもんです。
ガボガボガボーッ…でもまあ、温かいので良しとしましょう。
タマゴの中にお湯を溜めてタマゴ風呂なのじゃー。
ヨルン用の風呂桶はあるのですがタマゴに浸かるのです。
さてと、ゆったりヨルンも羽を休めましょう。
どこから話すべきか迷ってしまいますが。
まず…前回の戦いより数日が経ちました。
ヨルンさんは先にも言った通り、休暇中なのです。
理由としてはランクDの魔物を相手にした結果。
すぐに復帰困難な程の深刻なダメージを受けていた。
という建前の元に強制的に出場停止処分を受けたのでした。
実際の所、裏で何かあったのかと勘潜ってしまうぐらいにゴタゴタしてましたし。
まあ…闘技場を丸一日使えない状態にしてしまったみたいですし。
飼主であるアリエルも色々無茶をして対戦を組んでしまったらしいですし。
頭を冷やせ。暫く大人しくしろ。目立ち過ぎだ。それとお前等臭い。
とかなんとか、ペストマスクのサイレンさんに叱られておりました。
しかし臭いと言っておきながら、マスクから漂う香料も程よく匂います。
つまり、サイレンも臭い。そう反撃しようとしましたが喋れませんでした。
アリエル側はといえば、臭さは全てヨルンの所為だ、という点だけ力を入れて反抗してましたな。
一応ヨルンは対戦後に雑用の方々から水をかけられブラシでゴシゴシされ現れましたよ。
最後に頭を撫でまわされた後に開放されたのですが、結局匂いが全て落ちる事は無かったみたいです。
でもそれは数日前までのお話し。
今ではヨルンさん。完全に。完璧に。
むしろ以前よりもプラス方向に綺麗になってます。
タマゴもツヤツヤでフローラルな良い匂いがしますよ。
ふぃー、癒されるわぁ。
そんな様子を浴槽の中から伺うアリエルも、無防備そのものであり。
ザバァーと飛沫を上げて立ち上がってはヨルンの方へ向かってきたりもします。
福眼福眼~って奴ですかねぇ。
そういえばこのヨルンの飼主さん。
他に魔物は持ってないんですかねー?
そんな疑問を抱き、この数日ヨルンなりに調べてみました。
どうやら過去には居たようです。
ヨルンさんが寝泊まりするお部屋…。
そうでした、今やヨルンは自室持ちです。
といってもただの魔物小屋ですよ。
変な物が壁に掛けられてたりしているのですが、
ドラゴンっぽいソレは記憶によればワイバーンのような絵ですね。
他には使い古された大きめの、ふかふかしたソファーのような物があったぐらいです。
まあ…連想の出来る材料はこの程度しかありませんけどね。
それに今はお風呂の最中です。アリエルが頭を撫でてきてますよ。
いつものスキンシップのお時間です。
顔を重点的に責められてヨルンさん困ってしまいます。
終いにはタマゴの中に手を突っ込まれて中どうなってんのよ?
なんて言われて弄られる始末。なんとも遠慮のない飼主ですな。
それにしても生まれて間もなくな闘技場生活。
言葉も出なければ意思も通じず、戦わされるだけの毎日。
今になって考えてみれば絶望的な状況であったと思われるのに…
今ではこうしてお風呂でゆったりと戯れておりますぞ。
ぼーっと幼女が触れてくるのを堪能しているとカプリと噛みつかれたりもしました。
甘噛みですが、自分…魔物ですよ?
真似して噛みつき返されたらどうするんですか?
どうやらアリエルは蛇がお好きのようで結構触ったりしてくるのです。
しかしタマゴについては邪魔だと思っているようですね。
確かに何をするにしてもこの巨大なタマゴは普通に邪魔であるのだけれど。
付け外し…出来ないんですよねー。
着脱可能であれば戦闘時だけ持ってくれば良いとかやりたいんですけど。
それは無理なのです。外してしまえばタマゴはもう使えなくなってしまう…
そう確信しておりますし、後戻りは出来ないと理解している訳です。
戻れるなら挑戦しちゃうんですけどねー。
どちらかしか選べないというのなら、自分はこのタマゴを保持しますぞ。
便利ですし、愛着沸いてますし、なんか掃除しなくても綺麗ですし。
今では疲れを感じる事もなく持ち上げる事も可能ですし。
地面から浮かせて持ち運びながら全力移動も可能です。
タマゴにお湯を溜めて重量を増した状態でもなんのその。
未だに好き放題し続けてくれるアリエルが頭を引っ張り、ヨルンを寝転がそうとしてくれました。
やられっぱなしでもなんですし、アリエルの頭からお湯をぶっかけてやりましょう。
タマゴの中に手を突っ込んで、力任せに引き抜こうとしたお返しです!
バシャーン。
タマゴ本体をぶち当てる事のないよう細心の注意を払っての行為であります。
見事に濡れ濡れのアリエルが出来上がりましたが、お風呂ですので問題はアリエマセン。
腰に手を当て、仁王立ちアリエルとなった幼女姿には丁度良い湯気で裸体を隠すご都合主義。
もし湯気が晴れたとしてもヨルンの蛇頭が秘部をしっかりガードする系のカメラワークが使われている筈。
とはいえこれから行われるじゃれ合い全てを健全で済ませるには、かなりのテクニックが必要でしょう。
アリエル流ケンカキックが飛んで参りました。
きわどい角度で隠すべき場所は見えていません。
それをヨルンは軽やかにバックステップをして蹴りを避けました。
バランスを崩したアリエル。ヨルンがタマゴを地面より浮かせます。
それにより障害物が増え、他者の視点からアレやらソレやらが見える事は無いでしょう。
しかしながら、努力を続けるヨルンなどお構いなし。
この場には蛇と幼女しかいないのだ。無駄な努力を意に介す事もなく、
続けてアリエルのジャンプ飛翔からのクロスチョップ!
きわどいですが、色々きわどいですが、ヨルンは体を丸めて受け止めました。
下手な事をして怪我をさせてしまっても困りますからね!
そのまま両手で首を締め上げようとアリエルがやってくれたわねー。
なんて言いながら掴みかかってきました。
まあ脅威ではありませんし、クギュウクギュウ鳴いておきましょう。
クギュークギューウッ!
いえいえ意外と力がありました。
ちょいとばかり苦しいです。クギュー!
そのままネックハンギングツリーに持ち込まれ、ヨルンさん少しばかり苦しいです。
そしてなんと驚くべき事に…尻尾のタマゴまで持ち上がるほどアリエルの筋力があった訳ですか。
普通の幼女ではありえない…成人年齢を満たした合法ロリと分類される存在であるが故の強さですね。
だがヨルンさん負けはしませんぞー。
ちょいと体を捻り、レバーをカコンと動かします。
これは先程ヨルンが使用していたお湯をダバーする系のレバーなのです。
ザッパァー。ドドドドドドドッ…
頭から水を被ったアリエルの髪の毛はワカメやモズクのような海産物とも似た状態となり。
どことなくホラーチックな姿となるアリエル。
漂わせる覇気は別にありませんが、怒りだけは伝わってきます。
再びヨルンとアリエルの距離は離れ、幼女の裸体が怪しく濡れ濡れなのを確認してしまいました。
今度は正面に腕を組み湯船へ逃げ帰ってしまいましたよ。
不貞腐れたかのようにプイッと振り向いて、もうヨルンお方を向いてくれません。
なんだか悪い気がしてきました。
そう思い、謝るべく湯船に近づいたのが失敗でしたな。
アリエルは水場で得物を狙うワニの如しに凄まじい瞬発力で組み付き、
そのままヨルンは力任せに浴槽へ引きずり込まれました。
ドバッシャーン! ガボガボガボッ…。
押さえつけられる頭を引き上げられ湯船の外へ顔を出す。
特に緊急を要する事態でもありませんでしたが、息を整えアリエルと顔合わせになりましたな。
顔が近いです、ヨルンの頭を押さえて笑っておりました。
そんなアリエルの顔はは引っかかったわねー! っていう顔ですわ。
ヨルンはしてやられたわー! という顔をしてやるわー。
…
……
………
その後は平和でした。
特に情報もなく、まったりと幼女の背中をゴシゴシしてあげましたよ。
ヨルンさんも幼女からブラッシングでございます。
うーん、ちょいと固めだけど鱗が傷つく程でもないですな。
大浴場での戯れは1時間程でした。
なんとも濃密なお時間を楽しめましたよ。
そんな平和な時間にも終わりがやってきます。
ちょっと長く入り過ぎたかなー。
ヨルンさん湯船の中にはそんなに入れませんでしたが満足です。
体がホカホカしすぎたので水を被って冷やしたりもしてましたけどね。
アリエルもしっかりと髪を洗い魔術で乾かしておりました。
便利である。元素魔法を操って出来る、生活魔法という類で確かにそーいうのがあった覚えがありますな。
ドライヤー的な物が無くても魔法を使えば良いのです。
アリエルさん、それなりに高スペックなのですな。
ポンコツアリエルと呼んですいませんでした。
そうして飼主の理解を改め大浴場より外へ一人と一匹。
外へ出ようとしたその時だった。
「あれ、ドア開かないんだけど?」
一糸纏わぬその幼女は出口のドアに蹴りを放っている。
そんな姿を見てヨルンは再びアリエルにポンコツを付け直してしまうのだったが。
どうにもおかしい?
ドアが開かないなんて事あります?
室内のドアに鍵なんて付いてませんでしたし。
嫌な予感に胸騒ぎを覚えるヨルンは、アリエルの足元へ擦り寄っていくのだった。
* * *
幼い女の子アリエル誕生。
実際の年齢は知らぬ。




