もらいもの1
適当な人選で世渡りの仕事を手伝え、ということらしい。まぁこの世界では特に何もなく、適当に生きていただけなので特に問題はないか、親が少し心配するかも知れないが、その程度だろう。と晄は考えた。
だが、そのまま仕事を手伝うにしても先立つものは必要だ。そもそもどういう道具が必要か見当がつかない。とりあえず出来る限り予想のつくものだけは要求することにした。
「・・・色々と手伝わされる理由はアレですが、大体わかりました。とりあえず世渡りをするのであれば異世界の言語とかはどうするんですか?あと必要なものってなんでしょう?」
「あー、そうだねぇ、それじゃあ<言語理解>のスキルをあげよう。あとは物品はそのままあげる訳にはいけないんだよね、ルール上ー。だからキミの持ち物を変質・変換して、それで各世界を渡ってもらおっかな。荒事もあるかもしれないからちょっとそのへんは考えていじっちゃうかー。」
おぉう、スキル制なのか、この世界以外は。いや、目に見えていないだけでこちらの世界も実際はスキルが存在するのかも知れない。そこはまぁどうでもいいのだが今「荒事」という言葉が聞こえた。となるとつまり。
「・・・荒事があるのなら喧嘩すらも経験のないただのおっさんなんですけど、色々大丈夫ですかね、そこ?」
「ダイジョブダイジョブ、キミの身体もちょっと丈夫にして、ある程度武器振り回せるようなスキルもあげるよー。モノじゃなくてスキルだからね、ルール上はおーけーなのだよ!・・・グレーゾーンだけどね・・・うふふ・・・。」
「最後に何か不穏な言葉が聞こえた気がしますけども・・・。まぁそういうことであれば大丈夫ですかね。」
「うんー。じゃあキミの持ち物もいじっちゃおう、何を持ってるのかなー。」
今の服装は赤のワイシャツに黒のパーカー、上にテーラードジャケットを羽織っていて、ジーンズと茶色の革靴を履いている。持ち物はスマートフォン、財布、鍵に、黒の大きめのリュックサックだ。容積32リットルくらいのモノで、割となんでも入れられる。中に入っているのは、水筒に着替えくらいだが。
「・・・んー、どうしようかな。とりあえずこの情報端末から加工しよう。」
そう言うとアストレイドはスマートフォンに手を翳し、なにやらぶつぶつ言いながら目を閉じた。すると、スマートフォンが淡く光を放ち始め、徐々に発光が強くなり、目の前が白い光で満たされた。
光が収まると、スマートフォンが変化していた。黒かったボディは色はそのままに銀で縁取られ、メーカーの書いてある部分は[astrayde]と、変更されてあった。
「うん、これでおーけーかな。人工知能のようなものが搭載されていたから、人格形成をして、その後に機能を色々拡張しておいたよん。あ、名前はキミが決めてねー。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
「宜しく願います、マスター。つきましては先程アストレイド様からありましたように、名を戴ければと存じます。」
と、知能と人格を持ったスマートフォンからは、涼やかな女性の声が流れてきた。
「・・・ホントに人格が・・・。名前かー、名前ねー。名前・・・ねー・・・。うーん。ぬー・・・?じゃあ携帯って意味から、そこをもじってイルにしよう。宜しくね、イル。」
「承認致しました。私の名称はこれよりイルとなります。今後共末永く宜しくお願い致します。マスター。」
「うん。」
このイルが、今後自分の性質が変わっても、長い長い付き合いになる相棒になるとは、露とも知らず、晄はイルへと微笑みかけた。
「あ、あとその子は魔法・魔術・魔道とかそういったモノが使えるようにしておいたよー。あとは状況に応じての機能拡張が出来るからねー。例えばマッピングとかね。それと元々防塵・防水・耐衝撃性を持ってたみたいだからいじったら不壊属性ついちゃったから壊れる心配ないからねー。」
のっけからえらくチート染みたモノを貰ってしまったようだ。
装備・ステータス関連はあと1、2話くらいかなーと思います。